デンジャラス・トライアングル

ゼフィエフがマイクを使ってから、5分20秒後。
「そいつ」はやってきた。

「ふん、初っ端から勇次郎とはな。性格は気に入らないが、強さは申し分ない」

「そいつ」は、両手に一丁ずつ銃を持った黒猫だった。その姿はまさに、猫型サイボーグ・クロちゃんそのものだった。

「貴様……。名前と作戦目的を言え!」

猫の姿を確認したゼフィエフは、それだけで人を殺せそうな大声で問う。それに対し、黒猫は笑いながら答えた。


同時に、黒猫は手にした二丁の銃……ハカイダーショットとアポロマグナムをゼフィエフに向ける。

「そういうことで、死ね!」

二つの銃口から、同時に弾丸が放たれる。だがその時には、ゼフィエフはすでに移動を開始していた。
弾丸は標的を捉えることなく、むなしく虚空を飛び去っていく。

「銃器などに頼るとは、なんたる軟弱! 恥を知れ!!」

驚異的なスピードでマスクドハカイダーに肉薄したゼフィエフは、その小さな頭をつかんで力任せに投げ飛ばす。
しかしマスクドハカイダーはくるりと空中で回転し、近くの建物の壁に足を付いて激突を回避した。

「わかってないな! 銃は男のロマンだ!」

その体勢のまま、マスクドハカイダーは銃を乱射。だが、人間離れした速度で動き回るゼフィエフを捉えることができない。

「いくら勇次郎でも、速すぎるだろう! 人間の動きではないぞ!」
「人間の動き? そんな常識に囚われていて生き残れる場所だと思うか!」

再度接近したゼフィエフの蹴りが、マスクドハカイダーを襲う。しかしマスクドハカイダーは大きくジャンプしてそれを避け、ゼフィエフの背後に回る。 

「邪ッ!!」

引き金を引こうとするマスクドハカイダーだが、それよりも速くゼフィエフが回し蹴りを放つ。
マスクドハカイダーは今一度後ろへジャンプし、大きく距離を取った。

「……貴様、この俺を舐めているのか?」
「どういう意味だ」

文字通り鬼の形相を浮かべながら、ゼフィエフは唐突に言った。
その意味がわからず、マスクドハカイダーは顔をしかめる。

「その姿、貴様の真の姿ではあるまい! この俺を相手にして、戦力を隠すなど自信過剰もいいところ!
 最初から全力で来い!!」
「ほう、気づいていたか」

ゼフィエフの指摘に、マスクドハカイダーの口角がつり上がる。

「だが、正確ではないな。俺は確かに二つの姿を持っているが、どちらが真の姿ということはない。
 こっちの姿はスピード重視、もう一つの姿はパワー重視。そういうことだ」
「ご託はどうでもいい。見せてみろ、そのもう一つの姿とやらを!」
「そんなに見たいのなら……。いいだろう、見せてやる!」

二丁の銃を上空に放り投げながら、マスクドハカイダーは叫んだ。

「トランスフォーム!」

叫びと同時に、彼の体は変形を始める。肉球のついた両手が引っ込み、人型の両手が現れる。
足も胴体に収納され、人間を模した足が飛び出してきた。
そして猫の顔は装甲が裏返り、透明なフードにおおわれた脳が特徴的な黒い戦士の顔となる。
機械仕掛けの悪魔、ハカイダー。マスクドハカイダーは、その名前の通りの姿に変身していた。

「トランスフォームというよりも、その無茶な変形はゲッターチェンジだな……。質量保存の法則も何もあったもんじゃねえ」
「塩漬けの原始人が生き返る世界の住人に言われたくはないな」

馬鹿にしたような笑みを浮かべながら言うゼフィエフに対し、マスクドハカイダーは自分が投げた銃を受け止めながらクールに返す。

「ククク、ちげえねえ。まあ、そんなことはどうでもいいんだ。さっさと第2ラウンド、始めようじゃねえか」
「いいだろう」

鬼神と破壊者。戦いを求める二人の男が改めてぶつかり合おうとした、その時。

「待て、貴様ら!」

突然、第三の声がその場に響いた。

『誰だ!』

共に怒気をはらんだ声をあげながら、二人は声の主を捜す。そこに現れたのは、黒いマントを羽織った金髪の少女だった。

「私は百万の愛でられし魔法使いの父。『今回は』安価漫画ロワからのエントリーだ。
 まあ自分でもこの異名は長いと思うので、百万とでも呼んでくれ」

強者二人から殺気を向けられているにもかかわらず、平然とした態度で少女は自己紹介を行う。

「貴様、なぜ俺たちの戦いを止める! まさか貴様、どんな状況でも争うのはよくないなどとふぬけた考えを吐くつもりではあるまいな!」
「まさか」

ゼフィエフの言葉を、百万は即座に否定した。

「ならば、なぜ俺たちの戦いを止めた。俺たちが戦っていたところで、貴様には何の関係もあるまい」
「いや、あるね」

今度はマスクドハカイダーからぶつけられた問いに、百万は小悪魔の笑みを浮かべる。

「もったいないじゃないか」
『もったいない?』

百万の答えに、二人は揃って怪訝そうな声を漏らした。

「勇次郎にハカイダー。共に強力なマーダーになれる存在だ。
 なのにどちらかがうちのホルト先生のようにかませ犬になってしまったらもったいない。そういう意味だ。
 序盤からマーダー同士つぶし合うより、その力を対主催にぶつけてキルカウントを稼いだ方がロワのためになると思わないか?」
「なるほどな……」
「…………」

百万の解説に、マスクドハカイダーはある程度の納得を見せる。
ゼフィエフは沈黙しているが、少なくとも明確な反論はないらしい。

「百万といったな。俺たちをこうやってたきつけるということは、貴様は扇動マーダーというところか?」
「さあ、どうだろうな」
「何?」

はぐらかすような返答に、マスクドハカイダーはわずかな動揺を見せた。

「私のモデルであるエヴァンジェリンは、安価漫画ロワでは対主催だ。しかし同時に、『悪い魔法使い』でもある。
 つまり私は対主催に転んでもマーダーに転んでも、おかしくないということさ。
 もう少し様子を見てから、面白くなりそうな方に転ぶつもりだよ。
 君たちをたきつけたのは、単に書き手としてロワが盛り上がりそうな行動を選んだまでだ」

「エフッ、エフッ、エフッ」

百万が自分の考えを述べた直後、奇妙なうめき声、否、笑い声が周囲に響く。
それは、ゼフィエフの口から発せられていた。

「おのれの取るべき道も即座に決められぬとは、なんたる軟弱! 貴様のようなふぬけが、ロワをつまらなくするのだ!
 貴様ごときが俺に指図するなど、笑止千万! 消え失せい!」

怒号と共に、ゼフィエフは百万に向かって拳を振り下ろす。だがその拳が命中する直前、百万の姿は本当に消え失せてしまった。
影を使った転移魔法により、一瞬でどこか他の場所へ移動したのだ。

「ちっ、臆病者が……!」

忌々しげに呟きながら、ゼフィエフは拳を引く。

「さて、とんだ邪魔が入ったが……続けるか?」
「やめておこう、興が削がれた。それに、奴の言うことにも一理ある。
 貴重なマーダー同士が、序盤からつぶし合うのもロワのためにはよくあるまい」

マスクドハカイダーはゼフィエフの問いにそう答えると、銃を収めゼフィエフに背を向けて歩き出した。

「貴様がやる気をなくしても、俺が戦いを続ける気だったらどうする。背を向けるのは致命的だぞ」
「ないな」

ゼフィエフの言葉を、鼻で笑うマスクドハカイダー。

「せっかくの上等な餌を、わざわざまずい状態で喰うとは思えん。貴様に勇次郎としての矜持があるならな。
 さらばだ、史上最強の生物の姿を持つ男よ。縁があればまた会おう」

そのまま、マスクドハカイダーはその場を去っていった。残されたのは、最初からそこにいたゼフィエフのみ。

「どいつもこいつも、俺を虚仮にしおって……。誰か……誰か俺と戦う奴はいないのかああああああ!!」

苛立つ心のままに、ゼフィエフは叫ぶ。その様子を、百万は近くのビルの屋上から見下ろしていた。

「期待しているぞ、オーガよ。存分に、この書き手ロワという祭りを盛り上げてくれ……」


ここは地獄の一丁目。鬼神は猛り、黒猫は去り、魔女は嗤う。


【神奈川県 横浜 一日目 深夜】
【【暴流】ゼフィエフ (◆05fuEvC33.)@漫画ロワ】
【状態】健康。怒り頂点。
【装備】なし
【道具】支給品一式、カラオケマイク、不明支給品0~2
【思考】基本:皆殺し。


【マスクドハカイダー@ロボロワ
【状態】正常
【装備】ハカイダーショット@ロボロワ、アポロマグナム@ロボロワ
【道具】支給品一式、不明支給品0~1
【思考】基本:殲滅
    1:できるだけ強い奴と戦う。正義の味方ならなお良し。
※クロ@サイボーグクロちゃんと、ハカイダー@人造人間キカイダーの二つの姿を持っています。
 口調や声は、クロの時でもハカイダーのものです。


【百万の愛でられし魔法使いの父@安価漫画ロワ】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式、不明支給品1~3
【思考】基本:しばらく様子を見て、対主催かマーダーか決める。
    1:ロワを面白くできそうなことがあったら、積極的に首を突っ込む。
※外見はエヴァンジェリン・A・K・マクダウェル@魔法先生ネギま!です。

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グラップラーゼフィエフ 【暴流】ゼフィエフ クロスするその度に……
マスクドハカイダー 継ぐのは魂
百万の愛でられし魔法使いの父 クロスするその度に……

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最終更新:2009年06月07日 23:22
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