森がくれたおやすみ

書き手バトルロワイアル3rd。
その第一の会場はミニチュアの日本列島であった。
そこでは数々のドラマが繰り広げられて多くの者が散っていった。

――そしてこの場を借りて。日本列島本当にお疲れ様でした。

そして生き残った者(正確には無事に旅の扉をくぐった者)はこの第二の会場に辿り着いた。
旅の扉での移動なので例え一緒に扉をくぐった仲間も新会場到着の際には近くにいない事もある。
首尾よく一緒になれる事もあるが、現在フォレストエリアにいる少女はそうではなかったようだ。
その少女の名はギャルゲ写本(本人曰くゆーちゃん)。
直前に知り合った5人の仲間と共に旅の扉をくぐったのだが、ここにいるのはギャルゲ写本独りきりだ。
どうやら他の5人はどこか別の場所に飛ばされたらしい。

(そうそう一緒にはなれないか。パヤロワ断章は頼りになりそう?だったが、仕方ないか)

それ以上に先程の放送ではギャルゲ・ロワイアル2ndの同志の名前も呼ばれていた。
それに一抹の悲しさを覚えつつもギャルゲ写本は今度の事について思案を巡らせ始めていた。
ここで立ち止まっていても何にもならない事が分かっているからだ。

(とりあえずここでもさっきと同じように書き手ロワ3rd完遂に向けて――ああ、当然恋愛フラグは最優先だ。
 で、これからどこへ行くかだが――ん?)

しばらく物思いに耽っていたギャルゲ写本はふと前方の茂みから聞こえてきた物音に意識を向けた。
いろいろと考え事をしている最中でも常に警戒は怠っていなかった事が功を奏した。
少し前に何かが崩れる音も聞こえたが、それは少し離れた場所のようなのでとりあえず保留していた。
だが今度の物音はすぐ傍にある茂みからであり、誰かが潜んでいるのは明白だ。
しかも隠しようもない殺気が茂みから溢れだしていてこちらの肌理細やかな肌を刺している。

「さて、鬼が出るか蛇が出るか……」

それほど躊躇う事なくギャルゲ写本はその茂みに足を向けていた。
そして腕を胸の前で組み豊かな胸をさらに強調しながら一歩一歩歩み寄って行く。
もちろん突然の奇襲に備えて警戒は解かないままで。
ここで出方を窺って時間を浪費するよりもこちらから動いてみる事を選択したのだ。
日の光も疎らな薄暗い森の中でギャルゲ写本と茂みの距離が徐々に縮まっていく。

5m……4m……3m……まだ気配はそこにある……2m……1m……0――



「ぶひ!」



そして茂みから茶色い物体が飛び出してきた。
しかもギャルゲ写本はその物体に見覚えがあり、同時に不敵な表情を複雑にさせるものだった。

「ボ、ボタン!?」

ボタン@CLANNAD。
ギャルゲ・ロワイアル2ndにも出ているウリボウの名前だ。
本来なら藤林杏のペットであるが、ギャルゲ・ロワイアル2ndでは如月双七の支給品として登場している。
その登場話『花がくれたおやすみ』が所謂「九鬼流=空気流」と言われる所以の一因になったとかならなかったとか。
なにせこの話は双七が支給品をチェックしてボタンを発見→なんだかんだでお花畑で戯れつつ寝るという話だ。
どこか語弊があるかもしれないが、おそらくこれで合っている。

そしてこの話を書いたのが、他ならぬギャルゲ写本なのだ。

実はボタンはこの次の話で双七を守るために自爆している。
それでギャルゲ写本は複雑な表情を浮かべたのかもしれない。
自分が出したからボタンは死んでしまったのではないか、つまりボタンを殺したのは自分ではないか。
それはまさしくボタンの死に悲しむ双七のよう――と、いつのまにかギャルゲ写本の表情は元の不敵な笑みとなっている。
確かにそれが理由かもしれないが、それなら参加者が死ぬごとに悲しまなければいけない。
その気持ちが全く無いと言えば嘘になるかもしれないが、一々そこまで落ち込んでなどいられない。

――本当のところは分からないが。

(それにしても――趣味が悪いね!!)

ちなみにここまで0.2秒。
そのうち表情が変わったのは0.1秒、残りの0.1秒は発見だ。

ギャルゲ写本の眼はしっかりと捉えていた。
ボタンが茂みから飛び出すと同時に少し離れたところを動く影を。
それは先程まで感じていた殺気。
その影は刹那の間に高速で自分とボタンを迂回しつつ、あっという間に背後に到達していた。

(なるほど、ボタンで気を逸らせておねーさんを殺す気か。だけど……)

確かに並みの者なら必殺とも言える手だ(常識が通じない書き手ロワならどうなのか不明だが)。
しかし自分はギャルゲ・ロワイアル2ndのトップ書き手であるギャルゲ写本。
トップ書き手がこんなところで死んでいては示しが付かない。
そんな思いを抱きつつもギャルゲ写本は背後から迫る殺気に対して感覚を研ぎ澄ませる。
もしかしたらボタンをダシにした事への怒りが心のどこかにあったのかもしれない。
ギャルゲ写本が何を考えているのかは本人しか分からない事だ。
だが唯一つ確かな事がある。
それは既に迎撃の準備は整っているという事だ。

「九鬼流――焔螺子!!」

背後から聞こえてくる風を斬る音。
ゆえに相手が刀剣で斬りかかろうとしている事は明白。
自身が行う動作は全ての武術に共通する捌きの動作。
神速の勢いから振り下ろされる刃を横にずれる最小限の動きで回避。
そこから流れる動作でその場で身体を半回転。
本来の腕の捻りに身体全体の回転の勢いを加えた焔螺子。
それが襲撃者の身体に――

(――いない!?)

そこで終わりだった。
ついさっきまで背後にいた殺気がなくなっていたのだ。
今ギャルゲ写本の目の前にあるのは焔螺子の延長線上にあった妙に長い刀。
それは既に峰から焔螺子で叩き折られていて残骸と成り果てていた。
だがその刀を振るっていたはずの人物がどこにもいないのだ。



それもそのはずだ。



「後ろ!?」



件の殺気は再び背後に迫っていたのだから。



「――ッ! last moment」

ギャルゲ写本の力の一つlast moment。
それは数十秒間だが相手一人の行動を止める事が出来る、所謂時止めだ。

(とりあえずこれで時間は稼げ――)



そしてギャルゲ写本の胸を刃が貫いた。

 ◆

「……ぁ……がッ!?」

何やら信じられないといった表情を目の前の少女は浮かべていた。
それと同時に身体の動きを束縛していた力が消えた。

そして無常の騎士はここで初めて声を出した。

「私の得物がこれでなければ、あるいはこの勝負に負けていたのは私の方だったのかもしれぬ」

無常の騎士の手にある武器の名はガ・ボウ。
普段は紅の長鞘だが一度展開すると鮮血の紅を彷彿させるARMS殺しの短槍になるのだ。
しかし無常の騎士はギャルゲ写本のlast momentを間違いなく受けていた。
それなのになぜギャルゲ写本は無常の騎士の攻撃を止める事が出来なかったのだろうか。
それはlast momentの効果対象が『相手一人』だからだ。
つまり効果が及ぶのはあくまで人物であって、その人物が持っている道具には適用されない。
例えるなら銃を撃った直後にlast momentを使っても放たれた銃弾には何の影響もないのだ。
今回は無常の騎士がガ・ボウを展開させ始めた時にlast momentが使われていた。
もうその時には既に二人の身体は触れ合う程に密接していた。
それは一度展開し始めたガ・ボウの刃が十分届く範囲だ。
だからギャルゲ写本がガ・ボウの刃を避ける時間がなかったのだ。

「ところで貴女はギャルゲ・ロワイアル2ndのトップ書き手であるギャルゲ写本、で相違ないか?」
「ああ、そうだよ」
「やはりそうか。ならば埼玉にあった大聖堂、あれも貴女の仕業か?」
「へえ、よく分かったね。おねーさん感心するよ」
「私の名は無常の騎士。トリップは◆HlLdWe.oBM。
 実はギャルゲ・ロワイアル2ndでも繋ぎ話をいくつか書かせてもらった身でもある」
「…………」

本来なら無常の騎士は先程7人の魔女と盟約を交わして南に行くはずだった。
だが無常の騎士は個人的な理由から行く先を東に変えてもらったのだ。
一番の理由は東のあるエリアだ。
本来行くはずの南にあるのはブリッジエリアであり、遮蔽物の少ない影ができにくい場所だ。
それに対して東にあるのはフォレストエリアであり、鬱蒼と森が続き影は縦横無尽にある。
まさに無常の騎士には最適の場所である。
そして適当に理由を付けて本来東に行くはずだった百万・カオス組との交渉の結果、東行きとなった。
わざわざ自分の手の内を晒す事は避けられたのは上々であった。

そしてフォレストエリアに入った直後に一人の参加者を発見する事になる。
それが来ヶ谷唯湖の姿をした書き手ギャルゲ写本だ。

実は無常の騎士は埼玉にあった教会もとい大聖堂に一つの疑問を抱いていた。
前述の通り、無情の騎士はギャルゲ・ロワイアル2ndでも書いていたのでその辺りの知識はそれなりに持ち合わせていた。
だからあの大聖堂を見た時、口には出さなかったが違和感を抱いていたのだ。
なぜミニチュア日本列島に本来日本には存在しないギャルゲ・ロワイアル2ndの大聖堂があるのかと。
だが確信もなかったのでその時点ではあまり気にしないでいた。
そしてこのたびギャルゲ写本と遭遇する事である仮説が思いついた。

つまりあの大聖堂はギャルゲ写本が作り出したものではないかと。

パロロワで来ヶ谷唯湖が出ているロワと言えばギャルゲ・ロワイアル2nd。
そして最も来ヶ谷唯湖と関係が深い書き手と言えばトップ書き手のギャルゲ写本である。
トップ書き手ほどの力ならば一から旅の扉付きの大聖堂を出現させる程の力を持っていてもおかしくない。
しかもギャルゲ写本は大聖堂を訪れた参加者が何処かに転移するという話を書いている。
これらの要素から上の仮説を導き出したのだ。

その時点で無常の騎士はギャルゲ写本を殺す気でいた。
理由は大聖堂のようなものを二度と作らせない事。
そうでなければ旅の扉を破壊して参加者をタイムオーバーにさせる策が意味を為さなくなるからだ。
確かに基本スタンスは扇動マーダーだが、なのはロワの金居のように時と場合によっては手を出す事も厭わないのが無常の騎士だ。

結果、最後は予想外だったものの目的は達成できた。
まずはわざと茂みの物音と殺気でこちらの存在を気付かせて近づいて来るように仕向ける。
そして支給品のボタン(GR2準拠で5m離れたら30秒後に爆発する首輪付き)を飛び出させて注意を引きつける。
次いで自分は全力のソニックムーブで背後に回り込んで斬りかかる。
ここで勝負がつけば良かったが、やはり相手は相当な実力の者でしっかりとこちらの行動に対処してきた。
そこまでは想定範囲。
保険として残しておいた『XANADO』で真下の影からギャルゲ写本の背後の影に移動して止めを刺す。
ここまですれば勝負は付くと無常の騎士は半ば確信していた。
実際に決着は付いた。
だがそれは止めの武器に使った自身の最後の支給品がガ・ボウだったからだ。
これが他の武器なら時を止められた無常の騎士の方が負けていたかもしれない。

「まんまとやられたよ。おねーさんの負けだ」
「運に助けられたようなものだ」
「運も実力の内、という訳で今の心境を一人称心理描写で100――」
「御免こうむる。私はそこまで……」

そこで無常の騎士の言葉は止まる。

「これ以上は無駄なおしゃべりのようだな」

なぜならもう目の前の少女の息は絶えていたからだ。

「では、さようなら」

そして彼方から聞こえる小さな爆音。

「ああ、そういえば……」

ふと無常の騎士はある事に気付いた。

「……可哀そうな事をしたかな」

いつのまにか戦いの火蓋の切ったウリボウの姿はどこにもなかった。

 ◆

「すまないな。私の要望を聞いてもらって」
「別に良いですよ」

無常の騎士から礼を言われているのは舞い踊る車輪だ。
実は先程の戦い、いざという時には近くに控えていた舞い踊る車輪が手を出す手筈になっていた。
つまり結局ギャルゲ写本が生き残る可能性は限りなく低かったのだ。

「見返りと言ってはなんだが、さっき服を手に入れたから着るといい」

そう言って無常の騎士は取って来たギャルゲ写本のデイパックの中の衣服の山から光坂高校の制服を手渡していた。
理由は単純に全裸(あとノーパン)もとい破廉恥な格好が気に入らなかっただけだ。
アレな目に遭ったシャーリー然り、ノーパン状態だったチンク然り、彼方此方見えていたクアットロ然り。
そして一言礼を言いつつ服を着る舞い踊る車輪の横で無常の騎士は考えていた。

無常の騎士はなのはロワで胸を貫かれて死んでいったキャラを三人書いていた。
矢車想と武蔵坊弁慶とギンガ・ナカジマ。
そしてその三人とも誰かを守ろうと必死にもがいていた。

だからこそ思ってしまう。

ギャルゲ写本も何か守りたいものがあったのだろうかと。

だが――

「じゃあ行きましょうか」
「ああ、そうだな」

――そのような考えに浸るほど無常の騎士は感傷的ではなかった。

【ギャルゲ写本@ギャルゲロワ2nd  死亡確認】

【一日目 朝/フォレストエリア】

【舞い踊る車輪@LSロワ】
【服装】光坂高校の制服@ギャルゲロワ2nd
【状態】健康
【装備】ディアボリックファング@テラカオスロワ
【道具】デイパック、基本支給品一式、刃に塗る毒全ロワセット、GR2制服セット@ギャルゲロワ2nd
【思考】
 基本:バトルでは積極的に殺さないマーダー(本人談)。
 1:無常の騎士と共に東に向かう。
【備考】
※外見はプレセア・コンバティールのようです。
※ディアボリックファングにはダメージを受ける毒と麻痺毒が塗られています。出展は不明ですが多分RPG系。
※ギャルゲ写本のデイパックをもらいました(不明支給品は無常の騎士が持っています)。

【無常の騎士◆HlLdWe.oBM@なのはロワ】
【服装】パピヨンマスク@なのはロワ
【状態】疲労(小)
【装備】雪走@○ロワ、ガ・ボウ@なのはロワ
【持ち物】デイパック、基本支給品一式、不明支給品0~1(元ギャルゲ写本のもの)
【思考】
 基本:殺し合いに優勝する。
 1.基本スタンスは暗殺と扇動マーダー。主に後者を優先。
 2.コリジョン・ナンバーズを殺す。
 3.舞い踊る車輪と共に東に向かう。
【備考】
※「XANADO」:無常の騎士の持つ異能。暗闇の地形に潜ることができる。
 ただし、地形に潜れるのは10秒前後。再度潜るまでにもしばらく間を置かなければならない。
※外見はパピヨン@武装錬金のマスクをつけたフェイト@なのはA'sです。

【全体備考】
※フォレストエリアにギャルゲ写本の遺体と破壊された物干し竿@アニロワが放置されています。

時系列順で読む


投下順で読む


トラブルなく放送越えたっていいと思うんだ ギャルゲ写本
7人の魔女+α 舞い踊る車輪 その名はモケーレムベンベ
7人の魔女+α 無常の騎士 その名はモケーレムベンベ

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2009年06月21日 10:44
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。