7人の魔女+α

まず、一人。

キャッスルエリア、北西の城。その中に設置された玉座に、悪魔のフラグ建築士は腰掛けていた。
その姿は放送を過ぎたことにより、幼児化が解除され元の年齢のものに戻っている。
また脱衣拳にボロボロにされたバリアジャケットも、修復が完了していた。

「死んだ死んだ、ずいぶん死んだねえ。これはみんな、鬱になってるかな?」

まるで愛しい人とデートの約束を取り付けたかのような明るい声で、建築士は独り言を漏らす。
放送で告げられた死者の中には同じkskロワの書き手や、彼女の分身である心に涙を姿に罪をの名前もあった。
だが、その事実は彼女に何の感情も抱かせない。彼女にとって、自分以外の存在は鬱フラグを作り出すための材料に過ぎないのだから。

「さて、放送も終わったし……。動き始めるかなあ」

愛用の武器であるストラーダを手に取り、建築士は立ち上がる。そしていきなり、部屋と廊下を繋ぐ扉に向かって突進を始めた。
彼女の突き出したストラーダが、扉を破壊する。そして扉の向こうには、巨大な斧でストラーダを受け止める少女……舞い踊る車輪の姿があった。

二人。

「不意打ちグサリで鬱にしてあげようかと思ったんだけど……いい反応してるじゃない」
「問答無用で奇襲……無差別マーダーですか。せっかく命を拾ったと思った直後にこれとは、私も運がない」

自嘲気味に呟きながら、車輪はストラーダをはじき返す。

「あれ? そんなこと言える立場なのかな? あなたには、私と似たにおいを感じるんだけどなあ」
「失礼な、力押しで殺そうとしてくるあなたなどと一緒にしないでください」

車輪は否定したが、建築士の言っていることはあながち間違いでもない。
彼女たちは分類上はマーダーに位置するが、ただ殺せればいいと考えるシンプルな無差別マーダーではないのである。

「まあ、あなたがどんなスタンスだろうが、どんな信念の持ち主だろうが、私には関係ないけどね。
 私は鬱をばらまく、ただそれだけなの」

建築士はストラーダを構え直し、今一度攻撃をしかけようとする。だがその瞬間、彼女は背筋に強い悪寒を感じた。

「っ!」

とっさに回避行動を取る建築士だが、間に合わない。浅くではあるが、刃が彼女の背中に傷を刻み込む。

「今のを避けるとは、なかなか……。さすがはなのはといったところかな?」

振り向いた建築士が見たもの。それは影の中から姿を浮かび上がらせる仮面の少女……無常の騎士だった。

三人。

「フェイトちゃん? でもちっちゃいってことは……。さっきの変態さんとは別人かな?」
「……事情はわからないが、出会ってそうそう変態扱いされるのは心外だな」

仮面の下で、無常の騎士は憮然とした表情を浮かべる。

「まあいい。この姿でなのはを手にかけるのは若干抵抗があるが……。死ね」

淡々と告げると、無常の騎士は手にした物干し竿を横薙ぎに振るう。狙いは一点、首。
だがその斬撃は、ストラーダに受け止められる。

「残念、死ぬのはそっちだよ。それも、とびっきり欝な死に方をプレゼントしてあげる」

どこまでも冷徹な声で、建築士は言う。

「面白い。やれるものならやってみるがいい」

熱のこもらぬ声で、無常の騎士も返す。そのまま、二人は白兵戦を繰り広げ始めた。

(ふむ……。ここは撤退するのが最善の策かな)

そして二人の戦いを傍らで見つめながら、車輪はそんな風に考えていた。
二人の戦いに最高のタイミングで乱入し、漁夫の利を得るという策もある。
だがそれはタイミングを誤れば、二人を同時に敵に回すという最悪の結果を招きかねない。
彼女たちの実力が未知数である以上、決していい策とは言えない。
それにお人好しの対主催ならともかく、共に迷いのないマーダーでは謀略を張り巡らすのも難しい。
ならばここは我関せずを選択し、放置しておくのがベターだろう。
そう考え、車輪は来た道を引き返そうとする。だがその道は、一人の少女によって塞がれていた。

「悪いけど……。死んでもらうわ!」

聖剣エクスカリバーを携えたその少女は、名を魔王ヴァルハラといった。

四人。

狭い廊下で、二組四人の少女がぶつかり合う。
悪魔のフラグ建築士対無常の騎士。舞い踊る車輪対魔王ヴァルハラ。
武器と武器がぶつかり合う金属音が絶え間なく響き、魔力弾が飛び交う。
だが、そんな状況は長くは続かなかった。

「まったく、どいつもこいつも……。マーダー同士でつぶし合ってどうするか」

あきれ顔でやってきたのは、エヴァンジェリンの姿を持つ少女……百万の愛でられし魔法使いの父。
その後ろには、南春香の姿を借りるカオス・クライの姿もある。

五人、そして六人。

「氷結・武装解除(フリーゲランス・エクサルマティオー)!」

まだ自分たちに気づいていない四人の少女に対し、百万はためらうことなく魔法を放つ。
だがそれは、攻撃魔法ではない。名前を見ればわかる通り、敵の武装を解除させる魔法だ。

「えっ!?」
「くっ!?」
「なっ!?」
「わっ!?」

建築士のストラーダが。無常の騎士の物干し竿が。車輪のディアボリックファングが。ヴァルハラのエクスカリバーが。
それぞれの得物が、使い手の手を離れ宙を舞う。
ついでに、車輪とヴァルハラの衣服は一瞬で凍り付き、粉々に砕け散ってしまった。
一方建築士と無常の騎士は魔力が高いため抵抗(レジスト)に成功し、袖が少し凍り付いた程度である。

「うそ、新手!?」
「これは少し旗色が悪いかな……」

慌てふためくヴァルハラ。苦笑いを浮かべる車輪。残り二人は無言のまま、床に落ちた自分の武器を素早く拾い上げる。

「ああ、安心しろ。私に貴様らと戦う意思はない」

そんな中、百万は視線を集めながら悠々と語る。

「せっかく危険人物が七人も集まったのだ。それぞれつぶし合うのは得策でないだろう?
 そう思ったから、戦いを止めたまでだ」
「七人?」

百万の発言に、ヴァルハラは首をかしげた。その場には、何度数えても六人しかいない。

「そこで隠れているやつ、さっさと出てこい」

自分の左後方に積まれた箱に視線をやりながら、百万が言う。
数秒の間を置いて、その影からレミリアの姿をした少女が姿を現す。
深紅の悪魔(カーディナル・デビル)その人だ。

「べ、別にビビって隠れたわけじゃないんだからね! 隙を見て一網打尽にしようとしてたんだから!」
「はいはい……」

最後の一人。これで七人。


◇ ◇ ◇


数分後。七人の少女は、玉座の間で円になって座っていた。

「つまり、ここで私がつぶし合うメリットは薄い。それよりも同盟を結んで、それぞれがロワを混乱させた方がいい。
 あなたが言っているのはそういうことだね、百万さん」
「ああ、そうだ」

自分が主張したことを反復する建築士に対し、百万は満足そうにうなずく。

「なるほど、我々LSロワの『7人の魔女』の再現というわけですか」

ニヤリと口元を歪めながらそう語るのは、車輪である。

「ああ、LSロワでも7人の危険人物による同盟があったと聞く。それと同じようなものだと思ってもらってかまわん」
「あれ? というかあなた、LSロワの書き手じゃなかったの? エヴァの姿だったから、てっきり……」
「いや、私の所属は安価漫画ロワだ」
「そーなのかー」
「違うキャラが混ざってますよ、悪魔さん」

悪魔の隣で、車輪は溜め息を漏らす。

「とにかく、危険人物は多い方がロワを盛り上げることができる。同盟を結び、相互不干渉を決め込んだ方が効率的だと思うがな。どうだ?」
「私はそれでいい」

真っ先に肯定の意志を示したのは、無常の騎士だった。

「私は直接手を下すこともあるが、基本的には扇動マーダーだ。ここで全員を相手取って戦うよりは、同盟という策に乗る方が性に合っている」
「私も策を弄するタイプなのでね。仲間がいる方がやりやすい。その話に乗りましょう」

続いて、車輪が提案に乗る。その後は雪崩式に、全員が同盟を許諾した。

「決まりだな」

おのれの望むままに事が運び、百万はほくそ笑む。

「ちょっと、百万さん。私、いちおう対主催なんですけど……。なんでマーダー同盟に組み込まれちゃってるんですか?」
「ふん、ならばこの場で一人だけ同盟を拒んで袋だたきにされるか? 別に全員でこのまま行動するつもりはない。
 この場だけおとなしくしていればいい。嘘つきのお前なら簡単だろ?」

耳元で抗議するカオス・クライだが、百万はそれを軽くあしらう。

「さて、それでは細かい部分を詰めていくか」

その後、百万を中心にして細かい規定が決められた。もっとも、それは車輪と悪魔から教えられた「7人の魔女」の協定をベースにしたものだったが。

協定1:7人の間の協定を破った者は、残り全員の敵とみなされ、協定による保護の対象から外される。
協定2:7人は、次の放送までの間、互いに戦うことを避けるものとする。
協定3:当面、7人は4組に分かれて行動する。
協定4:4つの組は、ひとまずは城から東西南北の4方向に向かって進むこととする。
協定5:当面の組分けと進む方角は、以下の通り。
    東:百万・カオス組  西:ヴァルハラ・悪魔組  南:車輪・無常組  北:建築士(単独)
協定6:後は臨機応変で適当に。

「よし、こんなものか」
「まあ、ほぼ7人の魔女そのまんまなんですけどね。ワールド・イズ・マインさんに無断使用で怒られないといいんですが」
「なに、使えるものは何でも使うべきだ。気にすることはない」

車輪のぼやきに対し、百万はしれっと言い放つ。

「とにかく、たった今より我々の同盟は成立した。お互い、健闘を祈る」

こうして7人の少女による凶悪な同盟が、ここに誕生したのであった。

「ところで、早いところここから出た方がいいと思うぞ?」
「なぜだ?」

突然の無常の騎士の発言に、百万は首をかしげる。

「私たちと一緒に旅の扉をくぐったやつが、もう一人いてな。
 その男はこのマップに転移した時、たまたま頭を打ったようで気を失ってしまったから放置してきたのだが……」
「その男がどうした?」
「彼は、施設破壊が生き甲斐なのだ」
「…………!」

百万の顔が、一瞬でゆがむ。

「それを早く言わんか!! こんな城、絶好の標的ではないか!」


◇ ◇ ◇


同時刻。気絶から復帰したむっつりラナルータは、城を見つめながら物思いにふけっていた。
彼の脳裏に浮かぶのは、次のフィールドを目前にして命を落とした好敵手・フィールド破壊の貴公子だ。

「貴公子よ……。これが俺からの、お前への弔いだ」

右手を城に向け、ラナルータは呪文を紡ぐ。

「イ オ ナ ズ ン」

次の瞬間、城は大地を揺るがすほどの爆発に襲われた。


◇ ◇ ◇


「あ、危なかった……。本当に城が爆破されるなんて……」
「間一髪でしたね……」
「私に感謝しろよ? 私の支給品に取り寄せバッグがあったからこそ、『これ』をとっさに出せたんだからな。
 もっとも制限でたった2回しか使えないから、もっといい場面で使いたかったのだがな」
「どうでもいいから、出られる人から早く出てよ! 狭いー!」

イオナズンによって半壊した城の中。7人の少女は、百万が呼び寄せた『それ』の中ですし詰めになっていた。

やっぱりイナバ、イオナズンでも大・丈・夫!


【一日目 朝/キャッスルエリア・北西の城】

【悪魔のフラグ建築士@kskロワ】
【状態】ダメージ(小)、魔力消費(中)
【装備】ストラーダ@kskロワ
【道具】支給品一式、夢成長促進銃@kskロワ、不明支給品0~1
【思考】基本:鬱フラグを立てまくる
    1:北へ向かう
※外見はフェイトのバリアジャケットを着た高町なのはです


【舞い踊る車輪@LSロワ】
【状態】健康、全裸
【装備】ディアボリックファング@テラカオスロワ
【道具】刃に塗る毒全ロワセット
【思考】基本:バトルでは積極的に殺さないマーダー(本人談)
     1:無常の騎士と共に南に向かう
【備考】
※外見はプレセア・コンバティールのようです
※ディアボリックファングにはダメージを受ける毒と麻痺毒が塗られています。
 出展は不明。多分RPG系。


【無常の騎士◆HlLdWe.oBM@なのはロワ
【服装】パピヨンマスク@なのはロワ
【状態】疲労(小)
【装備】物干し竿@アニロワ
【持ち物】デイパック、基本支給品、ランダム支給品0~2
【思考】
 基本:殺し合いに優勝する。
 1.コリジョン・ナンバーズを殺す。
 2.基本スタンスは暗殺と扇動マーダー。主に後者を優先。
 3.舞い踊る車輪と共に南に向かう。
【備考】
 ※「XANADO」:無常の騎士の持つ異能。暗闇の地形に潜ることができる。
  ただし、地形に潜れるのは10秒前後。再度潜るまでにもしばらく間を置かなければならない。
 ※外見はパピヨン@武装錬金のマスクをつけたフェイト@なのはA'sです


【魔王ヴァルハラ@RPGロワ】
【状態】健康、全裸
【装備】エクスカリバー@ギャルゲロワ2
【道具】支給品一式、不明支給品0~2
【思考】
 0:私は…。
 1:優勝して元の世界に帰ってロワ完結させる。
 2:深紅の悪魔と共に西に向かう。
【備考】
※外見はナナミ@水滸伝です。


真紅の悪魔(カーディナル・デビル)@LSロワ】
【状態】多少の打撲、疲労(中)
【装備】刀銀十字路(楼観剣@LSロワ)
【道具】支給品一式、必須アモト酸@ニコβ、不明支給品0~2
【思考】
基本:これでもマーダー路線です。
1:魔王ヴァルハラと共に西に向かう。
2:それはそうと毒★殺にも浪漫があるよね。
※:『Humpty Dumpty sat on a wall. Humpty Dumpty had a great fall.
  All the king's horses, And all the king's men, Couldn't put Humpty together again.』
  のタイトルも必殺技になっているようですが、何が起きるのか当人も判っていません。


【カオス・クライ@らき☆ロワ】
【状態】疲労(中)
【装備】稜桜学園の制服
【持物】争符・生命遊戯の支給品一式、不明支給品0~2
【思考】
基本:どんな手段でもいいから生き残る
1、今は対主催サイドにつく……つもりだったのに
2、百万と共に東に向かう
3、可能ならばKYMとも合流する
4、皆の前では普段は南春香のようなキャラを演じ、本性や能力は隠す
【備考】
※外見は南春香。人格は闇AIBOこと武藤遊戯。
※能力:とりあえずカオスと化す(一度使うとかなり疲労する)


【百万の愛でられし魔法使いの父@安価漫画ロワ】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式、不明支給品0~2、取り寄せバッグ(使用回数残り1)@ドラえもん、聖書@現地調達
【思考】基本:カオス・クライに同行する。
    1:ロワを面白くできそうなことがあったら、積極的に首を突っ込む。
    2:カオス・クライと共に東に向かう。
※外見はエヴァンジェリン・A・K・マクダウェル@魔法先生ネギま!です。
※取り寄せバッグは制限により「一度以上SS内で描写され、かつ現在特定の所有者がいない物」しか取り寄せられません。


【一日目 朝/キャッスルエリア・北西の城の前】

【むっつりラナルータ@FFDQ3rd
【状態】:健康
【装備】:斬鉄剣@アニロワ1st
【持物】:基本支給品
【思考・行動】
基本思考:フィールド破壊の貴公子以上の破壊をもたらす。
1:フィールド破壊の貴公子…。
【備考】
※見た目はタークスの黒スーツを着たアルス(DQ3男勇者)です。
※FFDQ3rdラジオMCのエドから生まれた完全な別人格・肉体です。
※第一放送を聞き逃しました。

※キャッスルエリア北西の城が半壊しました

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恐山ル・ヴォワール 悪魔のフラグ建築士 繋がる想い
みにまむ☆りべりおん 舞い踊る車輪 森がくれたおやすみ
ああ無情 無常の騎士 森がくれたおやすみ
ああ無情 魔王ヴァルハラ その名はモケーレムベンベ
きよひめのなく頃に~綿菓子編~ 真紅の悪魔(カーディナル・デビル) その名はモケーレムベンベ
作者は業者の回し者ではありません カオス・クライ  ?
作者は業者の回し者ではありません 百万の愛でられし魔法使いの父  ?
ああ無情 むっつりラナルータ 亜空の軽トラ むっつり・ラナルータ

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最終更新:2009年07月02日 21:47
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