トラブルなく放送越えたっていいと思うんだ

「……ここは」

都内の病院。
その一室でコリジョン・ナンバーズは意識を取り戻した。
左肩を始めとした目立った傷には簡単な処置が施されていて、さすがにまだ痛むが何とか動けそうだ。

「思ったより早く気づいたな」
「オボロ……すまない、会って早々二度も助けられた」

オボロに礼を告げ、ベッドから降りようとするが痛みに顔を歪める。

「まだ動けるような状態じゃねえ、無理するな」
「しかし、あまり悠長にするわけにもいかないだろう、旅の扉を見つけなければ」

放送までに旅の扉に辿りつけなければ会場の崩落に巻き込まれる。
このシステムがある以上のんびりしていては例え体調が万全であろうとも待ち受けるのは死、のみだ。

「旅の扉の場所ならわかってる」
「何?」

予想だにしない言葉にコリジョンは目を丸くし、オボロは先ほどの拡声器による放送について説明を始めた。


「死ぬな、殺すな、諦めるな。か」
「知ってるセリフなのか?」
「いや……だがロボロワではこんな誓いを交わしたグループがいた。私たちは殺さない、殺されない、殺させない」

死ぬな、殺すな、諦めるな。
言葉こそ違えど、その基本理念は同じものだ。
コリジョンはそのまま黙るが、その言外の空気からオボロは一つの事実を悟る。

「同郷か……」
「確証はない、例えそうだろうと姉には誰だったのか予測もつかない」

ロボロワの書き手の死、二人とも改めて言葉にこそしないが考えていることは同じだ。
オボロが気まずい空気を感じている間に、コリジョンは痛みを堪えながら外へと出ようと歩き出した。
慌ててその体を抑え、抵抗するのを無視してベッドへと押し戻す。

「まだ寝てろって言ってるだろうが」
「くっ……だが!」
「落ち着け、まだ体力は戻りきってねぇんだ」
「だが……同じロワの書き手かもしれない者が、命がけでこれだけのフラグを皆に伝えたのだ! 姉だけ呑気に寝ているわけには……!」

オボロの言葉にも耳を貸さずコリジョンは尚も外に出ようと食らいつく。
確かに同郷の書き手、言わば戦友とでも言うべき相手がこれだけ大きな事をしたのだからじっとなどしていられないだろう。その気持ちはオボロもよく分かる。
とはいえ、まだコリジョンの怪我は治りきったわけではない。埼玉に行く間に無常の騎士のような相手と対峙することとなったらオボロ一人でコリジョンを守りながら戦うこととなる。
悩むオボロの表情からそのことに気づき、コリジョンも気まずそうに視線を彷徨わせるが今さら撤回するわけにもいかない。

「お困りのようですね」

「誰だ!?」

硬直状態となった二人へ横手から声がかけられる。
そちらを警戒しながら飛び退り相手の姿を確認しようとするが、傷の痛みでわずかに遅れたコリジョンは腕を掴まれてしまった。

「しまった! コリジョン!」
「くっ、Iえsむぎゅ!?」

即座に抵抗しようとするが、行動に移るよりも早くその女に力強く抱きしめられ手足をじたばたさせるだけに終わる。

「まずは一人ゲット、ロリっ子とはいい感じですね♪」
「―――! ―――!!」
「……マーダーじゃ、ないみたいだな」
「紹介が遅れました。私はGR2の書き手、パヤロワ断章と申します」

パヤロワ断章の腕の中でもがき続けているコリジョンは置いておき、オボロと二人は互いの方針を教え合う。
パヤパヤの件でコリジョンが一層強く暴れたが、肩の傷に響いたようですぐにその抵抗は止んだ。

「繋ぎですか、なるほど、中々面白そうな目的です」
「まぁ、俺自身の方針ってわけじゃねぇけどな……」
「――!」
「それはともかくどうでしょう? 私としてもせっかく見つけたコリジョンさんを手放すのは惜しいですし、一緒に旅の扉へ向かいませんか」

その提案は双方に利点がある。
オボロにとっては先ほど考えたマーダーとの戦いになった場合コリジョンの事を任せられ、
パヤロワ断章としてはサイクロン号という移動手段を使わせてもらえる上、パヤパヤ要因として有望そうな人材を一人確保できる。

「異論はなさそうですね」
「ああ、そうだな」
「ぷはっ! お前たち、少しは姉の話を聞け!」

あっさりと話が纏まりそうだったところで、ようやく拘束を抜けだしたコリジョンが叫ぶ。

「何かご不満でしょうか?」
「同行すること自体に異論はない! だがその……ぱ、パヤパヤなんかに協力する気はないぞ!」
「何故ですか!?」
「心の底から意外そうな顔をするな!」

パヤロワ断章とコリジョンが不毛な言い争いを続けるのを聞き流しながら、オボロは時計と地図を見て先の予定を考えておく。
どちらにしろこのまま三人で行くことは間違いないようだし、ならば下手に口を出して矢面に立ちに行くこともない。

(つっても、埼玉へ直行するしかねぇか)

タイムリミットまで残り一時間程しかない、サイクロン号の速度ならあっという間に埼玉に到着できるだろうが、そこから旅の扉を探す工程がある以上時間的余裕はあまりない。

(しかし、今頃大バトルでも起きてる可能性もあんだよな……)


「隣の県でバトルが起こったか……ここまで派手なのが来るとはおねーさんも予想外だったよ」

ギャルゲ写本はたった今消え去った長野県の方を眺めながら、ぼんやりと呟いた。
まだ埼玉県でpiovaゲージが溜まりそうな雰囲気はない、時計に目を落とせば時刻は放送まで後一時間を切ろうというところだ。

「むう、少し当てが外れたな、もう少し人が集まるものだと思ったが」

埼玉でバトルがないのであれば、自分の介入のしようもないし恋愛フラグを探すこともできはしない。
先に次のフィールドまで行ってしまうというのも手だろうか、旅の扉は日本各地にあるのだろうし、次フィールドへ向かった参加者もそこそこ出てきているころだろう。

「仕方ない、もうしばらく様子を見て……おや、噂をすればというやつか」

足を止めて上空を見る。
その直後、フラップターがギャルゲ写本の真横へと降り立った。

「さあ、埼玉県に到着しましたよ」
「助かった、って人が一人しかいないではないか……」
「こっちも合わせれば二人、いや、三人だし一つの纏まりとしては丁度いいんじゃないかしら」

後部のオープンデッキから脱力の救世主と六代目が降り立つ。
それを見届けて、三遊亭鏡は再びフラップターで飛び立つ準備に入る。

「それでは私は他の二人と合流してきますので、ボマー商会を今後ともよろしくお願いします」

宣伝と共に三遊亭鏡が再び空へと舞い上がり、ようやくギャルゲ写本が口を開いた。

「彼は旅の扉を探さないのか?」
「ああ、彼とその仲間は運び屋とやらをやるらしい」
「……運び屋?」
「言葉通りだよ、参加者を西へ東へ支給品一個でどこまでも、って。他の二人が客を拾ってる間に私たちだけ送ってもらったの」

なるほど、書き手ロワならではの方針ということか。相変わらず予測すら困難な動きをする連中が集まる場所だ。
ギャルゲ写本が納得している間に二人は周囲を見渡し、その表情を曇らせる。
埼玉県に旅の扉があると聞いたとはいえ、その教会の詳しい場所がわからなくてはどうしようもない。
これからどう動くべきか、悩む二人へとギャルゲ写本は虚空を指し示して再び声を発する。

「君らが捜しているものならここにあるぞ」
「何……?」
「どういうことかしら? 旅の扉らしきものは見当たらないけど」
「話せば長くなるのだが……ある条件を満たさなければここの旅の扉は使えないらしい、以上説明終了」

答えはまだ教えない、さっさと教えてしまっては教会の悪魔を移動させるという話を全て無にすることになってしまう。
それはダメだ、立てたフラグが無と化すことなどロワでは日常茶飯事ではあるが、それでもできる限り活かしてあげたいというのが書き手としての想い。
だからこそ限界ギリギリまで答えは隠す、言わばクイズ勝負と言ったところか。

「なるほど、piovaゲージですね」
「……は?」

いきなり出た答えにギャルゲ写本は間の抜けた声を上げながら振り向く。
そこにいたのは器用にも三人でサイクロン号に乗ったコリジョン・ナンバーズ達。
パヤロワ断章が一人降りてギャルゲ写本へと歩み寄っていく。

「どうも、私パヤロワ断章です。ギャルゲ写本さんですよね?」
「なるほど、貴方か……」

相手の正体を知り頭を抑える。
GR2において、来ヶ谷唯湖と来たらクリス君を連想するのは極々当たり前のことである。
そしてクリスと言えばpiovaゲージ、つまりGR2の住人にとってギャルゲ写本の姿こそが最大のヒントとなるのだ。

「piovaゲージとは何だ?」
「簡単に言えば欝度ですね、恐らくある程度欝になればここの旅の扉が使えるようになるのでは……あってます?」
「……まいった、正解だ」

一発でここまで言い当てられては足掻く気にもならない。
脱力の救世主達が騙されていたことを責めるような目で見てくるがさらっと受け流す。
それに答えを見つけたところでまだ旅の扉は通れない、肝心の条件を満たすのはそれなりに手順が必要だ。

「とはいえ、いきなり欝になれって言ってもなぁ……」
「難しい話しね」

そう、欝になれと言ったところですぐ欝になれるわけじゃない。
心理的に追い詰められるというのは、そう簡単に作り出せる状況ではないのだ。

「うーん、ここは仕方ありません。一先ず」
「パヤパヤはしないからな」
「くっ……!」

パヤロワ断章の言葉を先読みしてコリジョン・ナンバーズが切り捨てる。

「それは残念だ、おねーさんも可愛い子は大好きなんだがな」
「っ……!? さ、さっさと次のフィールドへ行くぞ!」

言いえぬ悪寒を感じながら叫ぶが、それに応える者はいない。

「そう言ってもな……欝にするのにだって一手二手必要なのはお前だって知ってるだろ」
「姉ならばできる」
「ほう……」

自信ありげに言うコリジョンへ、ギャルゲ写本の目つきが鋭くなる。
キャラの心理描写に重きをおく彼女にとって、安易な心境変化はいい印象を持てない。
そんな視線を受けながら、コリジョンはオボロの肩へと手をかけ小さく呟いた。

「すまん、放送後には治るから許せ」
「あ?」
「IS――『破壊』」

次の瞬間、オボロの目の前に一人の人物が現れる。

「こいつは……?」
「スバル・ナカジマ、姉が書いているロボロワの参加者の一人だ」

コリジョンの説明に何人か数歩離れて警戒しだす。
ロボロワのスバルが発狂マーダーとなっていたという話はクロススレなどでもちょくちょくネタとされている。自分たちに襲いかかってこないとは限らない。

「安心しろ、別に危害を加える能力ではない……そもそも対象者は姉が触れている者限定だ」
「おい!? それって俺――!」

オボロが抗議の声を上げかけるが、それより早く呼び出されたスバルがオボロ目掛けて殴りかかった。
避けられるタイミングではない、他の面々が思わず顔を顰め――何も起こらぬままスバルが消えたことに首を捻る。

「何だ、失敗か?」
「いや、成功だ。見てみろ」

コリジョンの言葉にその視線を追う。
何もなかったはずの空間に、ギャルゲ写本が作りだした幻影の大聖堂がはっきりと浮かび上がっていた。
感心したような声が上がる中、ただ一人ギャルゲ写本のみがコリジョンへと説明を求めるような視線を送る。

「姉のIS『破壊』は対象の精神を壊しロボロワのスバルの心とすり替える。とはいえ調整はした、発狂状態では欝と言えないしな……今回は自分が人殺しだと突きつけられ絶望した瞬間の心と入れ替えた」
「……半ば洗脳だな」
「うちのロワは洗脳されたキャラが多いからな。何、放送を過ぎるか一時間も過ぎれば治る……相手がなのはキャラだったなら、一時間も持たせるつもりはなかったがな」

がくりと膝をついたオボロを小さい体で抱えあげ、自身の能力の説明をしながら微笑を浮かべるコリジョンへギャルゲ写本はその表情を緩めない。
前述した通り、あまり強引なやり方はいい印象を持てない、その上洗脳となれば尚更だ。
だが、それと同時に「能力」の一言でその事を押し通したことを評価する。
書き手ロワは書いた作品がそれぞれの力となる場、ならばどんな理不尽な内容でもその理屈を通せるだけの作品を書いたということだ。

「リリカルクラッシャー……か」
「呼んだか?」
「いや、何でもない。では共に新境地へ行こうではないか」
「……ついてくるのか?」
「パヤロワ氏も一緒なのだろう? ならば私も一緒で何の不都合があろうか。ああ、私のことはゆーちゃんと呼んでくれて構わないぞ」
「わざわざISを使う必要はなかったな……姉も欝になってきた……」

コリジョンとオボロは絶望に暮れながら。
ギャルゲ写本とパヤロワ断章は活き活きとした表情で次々と旅の扉を潜っていく。



その数分後。

「うむ、終わったようだな」
「そうみたいね、コーヒー御馳走様」
「何、礼には及ばん」

いつの間にやらコーヒーブレイクに移っていた脱力の救世主と六代目も後に続いていった。

【一日目・早朝/埼玉県・上空】

【三遊亭鏡 ◆G/G2J7hV9Y氏@らきロワ】
【状態】健康
【装備】『ボマー商会』の襷@自作
【道具】支給品一式、フラップター@らきロワ、不明支給品1~3
【思考】
 基本:まともにロワの相手をせず、適当に楽しくやる。
 1:えー、今度こそここらで一席……。
 2:商会内での私の立ち位置はまるで山田君……雑用係ですな。ま、それもいいでしょう。
 3:さて、合流しなくては。
[備考]:
 笑点のピンクです。


【新フィールドへ】

【コリジョン・ナンバーズ@ロボロワ】
【装備】サイクロン号@ロボロワ
【所持品】支給品一式、雷神の槍@DQロワ、不明支給品0~1
【状態】左肩に裂傷、全身にダメージ(小)、処置済み
【思考・行動】
 1.先が思いやられる……
 2.いるのならば◆o.lVkW7N.A氏の運命を繋ぐ
 3.全てのものを繋ぐ
 4.なのはキャラになっている者は――壊す
【備考】
 ※外見はチンク@リリカルなのはStS
 ※繋ぐ物の優先順位は命>その他
 ※『破壊』
  触れた相手の心をロボロワのスバルと入れ替える。どのタイミングの心と入れ替えるかは調整が可能。
  放送を迎えるか、一時間経過することで元に戻る。

【剣客オボロ@RPGロワ】
【装備】無し
【所持品】支給品一式、不明支給品1~3
【状態】健康、『破壊』による精神汚染
【思考・行動】
 1.俺じゃない思考が……
 2.コリジョン・ナンバーズと共に繋いでいく
 3.俺自身の考えねぇ……
【備考】
 ※外見はトッシュ@アークザラッド

【パヤロワ断章@ギャルゲロワ2nd】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式、不明支給品1~3、765プロ所属アイドル候補生用・ステージ衣装セット@THEIDOLM@STER
【思考】
1:コリジョン・ナンバーズでパヤパヤ展開を狙う。
【備考】
※外見は音無小鳥@THEIDOLM@STERです。

【ギャルゲ写本@ギャルゲロワ2nd】
【状態】健康
【装備】雪走@○ロワ
【道具】支給品一式、不明支給品0~2
【思考】
1:この書き手ロワを完遂(優勝、脱出はとわない)
2:ただし全力で恋愛フラグは応援
【備考】
※last momentは数十秒の間、一人の行動を止めることができます
※光の先には? 幻影の大聖堂を出現させどこかの施設にワープを可能にする。本来転移先は扉に入るごとに変化。
 ギャルゲ写本が聖堂外にいるときは、個人又はその地域が欝な雰囲気でない限り彼女以外見ることも入ることもできない。
※ 何故かGR2にでてきた流派の剣術、拳法ができます
※ 姿は来ヶ谷唯湖@リトルバスターズ!です

【脱力の救世主@二次スパ】
【状態】健康。まだ辛さが舌に残ってるぞおい。
【装備】なし
【道具】支給品一式、コーヒーセット一式、
【思考】基本:検討中
    1:人がいればいいのだが
【備考】『修羅王』がゾフィーに変身できることを知りました。
    ※外見はパプテマス・シロッコ。

【FLASHの人 六代目◆FHFOUvdj5Q @アケロワ】
【状態】普通
【装備】放送用インカム(放送用、主催通話用の切り替えスイッチあり)
【持物】基本支給品、不明支給品0~2
【思考】
  基本:この書き手ロワをGAME OVERへと導く
  1:ひとまず放送はまじめにやる
※外見はニーギ・ゴージャスブルー@式神の城2ですが、男です。
※主催側の人間ですが、普通の参加者となんら差はありません。首輪もしています。
※放送を任されています、六代目の気分で放送の有無が変わります。
※六代目が殺害された場合「止めを刺した人間」に放送権が移ります。


※幻影の大聖堂が見えるようになりました。

時系列順で読む


投下順で読む


絶対運命交差点 三遊亭鏡 続・温泉少女/続・○○少女
絶対運命交差点 コリジョン・ナンバーズ 繋がる想い
絶対運命交差点 剣客オボロ 平原の七人
絶対運命交差点 パヤロワ断章 たとえ胸の傷が痛んでも
Gate of Royale ALTERNATIVE ギャルゲ写本 森がくれたおやすみ
絶対運命交差点 脱力の救世主 ぼんくらじお番外編
絶対運命交差点 FLASHの人 六代目 ぼんくらじお番外編

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2009年06月25日 17:53
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。