欝展を愛でる会

「あはっ」

彼女は笑っていた。

「あはははははは!」

とても、とても幸せそうに。

「あははははははははははははははははははははは♪」

狂気ともとれるような表情で、笑い続けていた。

「凄い! 凄い凄い凄い!」

自分を見つめる二人にも構わず、彼女はただ喜びに打ち震える。

「こんなに素敵な鬱が作り出せるなんて! もうさいっこーだよ!」



そんな彼女、悪魔のフラグ建築士を遠目に見ながら風神と菜梨の二人は引き気味に視線を合わせる。

「どうします? 一応あの人も鬱展書き手っぽいですけど」
「別に私はぞろぞろと仲間を引き連れたいわけでもない、さくっとやってしまっていいだろう……まだ考察も纏まりきってないし」
「ふむ? それでは……フラッグ!」

言うが早いかユニオンフラッグカスタムを呼び出しその銃口をフラグ建築士へと向ける。
その引き金が引かれた瞬間、フラグ建築士の姿がぶれ――すぐ側に現れた菜梨によって動きを封じられた。

「な……」
「即座に回避行動に移れる判断力はなかなかだが、その程度予測できないと思ったか」

これは被のフォルスの応用、「回避行動に移ったフラグ建築士」の先では回避先に現れるだけだが、回避行動に移るため「ストラーダを起動させたフラグ建築士」の先ならばこの通り。
ストラーダを抑えられ驚愕の表情を浮かべるフラグ建築士に菜梨はにやりと笑みを浮かべ……その鼻先をフラッグから放たれた銃弾が通り抜けた。

「あやや、急にそんなとこ出てきたら危ないですよ」
「ど、どどどどこを狙っている!? かすった! 今かすったぞ! 死んだらどーする!」
「そう言われましても……回避ルートを予測して撃ってるのにその先に出てくる方が悪いと思うんですけどね、まあいいじゃないですか、誤殺なんて鬱展の基本ですよ」
「いいことあるか!」

目の前で口喧嘩を始める二人をフラグ建築士はぽかんと見つめ、しばらく悩む素振りを見せてから声をかける。
このまま後ろから刺し殺したら鬱というよりギャグになりそうだ、という判断が菜梨の寿命は延ばしたのだ。

「貴方達も、鬱展書き手なの?」
「あやややや、あなたのことをすっかり忘れてました、まあそうなります、問答無用で撃ちぬこうとしたのにこの人が邪魔をして」
「なっ、貴様が余計な考え起こしたせいだろう!」
「うるさいですね、また森の中に置き去りにしますよ」

全力で謝り倒してくる菜梨は置いておき、風神とフラグ建築士は対話に入る。
問答無用で殺しにかかった相手に何の警戒もないのはどうなんだと思いつつも、すでに毒気を抜かれていた風神は攻撃を仕掛けようとしない。
フラグ建築士が無警戒でいるのも、そんな自分の気配を見抜かれていたからかもしれない。

「ま、こっちのミクたんは置いとくとして、さっきあんなにはしゃいでいたのは何でですか? 正直気味悪かったですけど」

ミクたんって言うなー! などと声が聞こえてくるが華麗にスルー。

「にゃはは……この先から感じ取れた鬱の感情。それがとびっきりのものだったからついはしゃぎ過ぎちゃった」
「ふぅん、そんな凄い鬱展ですか」

風神も菜梨もフラグ建築士のように鬱の感情を喰らう訳ではない。
とはいえ両者とも鬱展開を手掛ける書き手、そこまで言われると興味がわいてくるのは確かだ。

「どうかな? マーダー同士で潰し合うのも勿体無いし、この鬱になってる人に会うまでは休戦ってことで」
「ふむ、私は異論ありませんね、というわけでそちらもいいですね? はい決定」
「……拒否権もなしか、まあ構わん」

一時的なチームとして行動することを決め、南へと進路を取る。

「そういえば森の方から来たんだよね、途中で女の子二人と会わなかった?」
「女の子ですか? いえ、会ってないですが」
「そっか、もう先に行っちゃったのかなぁ」
「?」

協定を組んでいる魔王ヴァルハラとカーディナル・デビルの二人の行方が多少気になったがすぐに思考から外す。
そも協定通りに行動するのだったらプレーンエリアまで行った後逆サイドへ向かうべきだっただろう。
とはいえそれでは因縁持ちのびーはちやコリジョン・ナンバーズとぶち当たる可能性が高い、因縁を持って分かれてすぐ再開するというのもあまり美しくない。

(まあ別にいいよね、協定の最後では臨機応変にってことだったし)

自己完結し、同行者となった二人に目を向けると風神が顔を歪めて頭を押さえているのが目に止まった。

「どうしたの?」
「あ、いえ、大丈夫です、なんでもありません」

慌てて取り繕うが、風神は自身に起きた異常に表情を戻せない。

『離れていても感じるぞ……この気持ち、まさしく熱血だ!』
(くっ、黙っててください、この状況であなたに出てこられたらやばいですから!)

突然風神の熱血人格が目覚め、鬱人格とせめぎ合っていた。
あまりにも突然の異変に風神は状況が掴めない、鬱人格の方は確かにフラグ建築士の言うように鬱の空気を感じ取っている、だというのに熱血人格は熱血の空気を感じているようだ。

(熱血展開からの鬱ってとこですかね……なかなか私にとっては面倒な……)

鬱の空気が一緒に流れているため問題はないが、もし熱血人格に代わってしまった場合大変まずい状況だ。
右もマーダー左もマーダー、そんな時に空気を読まずに対主催になどなってしまえば……。

(いいですか、絶対出てこないでくださいよ! あなたも命は惜しいでしょう?)
『ふっ、甘いなフラッグ、そんな絶望的な状況を乗り越えてこそ熱血だろう』
(ああもうこの人はー! って私なんだけど!)

一人脳内で苦悩している風神も含め、この三人はある一つの共通の考えを持っていた。
遠くからでも感じられるほどの鬱の感情、それは放送を聞いて絶望した、などというレベルではない。
ということは他にいるのだ、これほどの鬱に落ち込ませるだけの力を持った何者かが。
そちらと出会ってしまえば彼女らも危険に陥る、無差別マーダーはマーダー同士殺し合う必要はない、と言ったところで止まらない可能性も高い。
そしてその対策こそが三人の持っている共通の考えだ、すなわち――

(けどよかった、盾にできそうな人が二人もできたよ、仲間に盾にされて死亡、うんいい鬱展開♪)
(危険な相手なら二人をけしかけて逃げればいいか……いやダメだ一人じゃまた迷うしどちらか連れていかなくちゃ)
(逃げ足なら私が一番でしょうし、後はこいつが出てこないことを祈るしかないですかねぇ)

天狗にラスボスに悪魔超人。
彼らにチームワークを求める方が酷な話である。

【一日目 午前/ワストランドエリア】
フラッグファイターF.Eニコロワβ】
【状態】リジェクトダイアルの反動(グミで8割方回復)、鬱担当人格
【装備】排撃貝@〇ロワ
【所持品】支給品一式、DMカード(強制脱出装置)(使用不可)、強力グミセット@テイルズ&テイルズ2nd(残りパイン、ミラクル)
 ラスカル@らきロワ、ねこねここねこ@テイルズロワ2nd
 Xbox360@ニコロワ 、DMカード(聖なるバリア・ミラーフォース)(使用不可)
【思考】
基本思考:ともかく生き残る。優勝・脱出などの手段は問わない。
1:とびっきりの鬱展を見に行く。
2:危険を感じたらダッシュで逃げる。
※決意を6/氏と勘違いしています
※熱血人格は風を操る程度の能力、鬱人格はモビルスーツをスタンドとして操る程度の能力。
 あまりに両極端な熱血展開・鬱展開になるとそれぞれの人格がそれに合わせて表面化します。
 また極端な状況でなくともある程度熱血展開・鬱展開になれば、埋もれている人格は顕在化している人格と会話が可能です。


【菜梨@テイルズロワ2nd】
【状態】健康
【所持品】フランヴェルジュ@テイルズ2nd不明支給品0~2
【思考】
基本思考:優勝し、萌えキャラじゃない天上王になる。
1:とびっきりの鬱展を見に行く。
2:危なくなったら迷わず逃げる、迷子にならないようどっちか連れてく。
※外見はミクトラン@TODです。SSの影響で方向音痴+萌えキャラになっています。
※名簿の裏に色々考察を書き込んでは消ししているようです。
※特殊能力:被のフォルス
一定範囲内の相手が何かしらの行動を起こす時、その行動先に瞬間移動する。
多少の誤差はあるが、だいたい相手の行き先を塞ぐ形で移動する。


悪魔のフラグ建築士kskロワ
【状態】ダメージ(小)、魔力消費(中)、絶好調
【装備】ストラーダ@kskロワ
【道具】支給品一式×3、夢成長促進銃@kskロワ、不明支給品1~6
    カラオケマイク、ビクトリームの魔本@アニロワ2nd
【思考】基本:鬱フラグを立てまくる
1:とびっきりの鬱展を見に行く。
2:危なくなったら速攻で逃げる。
※外見はフェイトのバリアジャケットを着た高町なのはです
※『迷える人形』
人間以外の参加者と二人きりになる空間を形成する
※『はじめてのこくご』
相手の台詞を全て平仮名のみにする。フラグ建築士が傍にいなければ効果は切れる。


※鬱の空気を流しているのは『邪神』です。
※熱血の空気を流しているのは【【破転】ワンキューです。

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問符「ナイトバードアイ」 フラッグファイターF.E  ?
問符「ナイトバードアイ」 菜梨  ?
平原の七人 悪魔のフラグ建築士  ?

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最終更新:2009年12月25日 22:08
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