428 名前:2-683[sage] 投稿日:2015/03/13(金) 13:07:12 ID:zciMEekA
「のわきー! しょるいおわったから遊んでくるね!」
流石です司令。
身の丈に合っていない椅子から飛び降りるように立ち上がった司令は、年相応に駆けて執務室を出て行った。
目で追ったあの背丈も背中も肩幅も、この鎮守府のどの駆逐艦にも及ばない小さな体躯であるのに、
働きぶりは立派なものだとつくづく舌を巻く。
と言っても流石に執務を全てあの司令が一人で背負っているわけではないのだけれど、
それでも肉体年齢としてはまだ未熟というハンデがあるために、あの司令を見くびる艦は一隻とて存在していない。
物思いに耽るのも程々に、一先ずは自身に残る責務を果たすためペンを握り直した。
あの司令の父は昔からの持病を理由に椅子を子息に譲って早くに退役したが、
書類上ではそのようなことにはなっていない。
つまり、上層部には報告せずこのような環境になった。
ただし完全に隠居に入ったわけではなく、治療の傍らに裏から子息を補佐することもあるらしい。
全ての艦を一堂に会して退役を知らせた、
皺が出来始めた顔で申し訳なさそうな念を漂わせたあのときの様子は今でも憶えている。
うまく鎮守府を動かしてきた人ゆえに残念であったが、同時に初めて失望も覚えた。
命のやり取りがついて回る軍に子供を置くなんて、と誰もが考えただろう。
"前"のときも、そして今もこのような事例は聞いたことがない。
だがその失望に包まれたのも僅かな間だけだった。
「……ん? 司令、野分に何かお求めですか?」
庁舎の壁に向かって野球ボールを投げている司令をベンチから遠目で眺めていると、
不意に司令はそれを中断してこちらに駆け寄ってきた。
私の名前の由来には及ばない程度の風が司令の軍帽を吹き飛ばそうとし、
司令はその軍帽をグローブを持っていない方の利き手で抑えている。
「遊んでたらおなか空いたよう」
「ではおやつにしましょう。今日は何がいいですか?」
「のわきの作るものならなんでもいい!」
幼くして感情のままに他者を喜ばせるとは、流石です司令。
その無垢で快活な笑顔を見せられてしまうと、戦いのことなど忘れてお菓子作りに耽ってしまうではないですか。
「おんぶー」
背中を向けて屈んであげると、司令は迷いなく私に乗艦した。
難なく立ち上がる。私が艦である以上、人の子一人乗せるなど何の苦もない。
ないのですが。
「重くなりましたねえ司令」
「えー? メタボリック、シンドローム、なのかなあ?」
「そういう意味ではないですよ」
そんな言葉まで知っているとは流石です。
司令の体調管理は司令のお父上やこの鎮守府の艦が気遣っていますから、司令が言っているようなことはありません。
人の子の成長は早いことを実感しながら私は庁舎へ戻った。
「司令、"野分"の言葉の意味ってご存知ですか?」
「ううん、知らない。どういういみなの?」
「お父上に聞いてみるといいですよ」
この司令は、何事も吸収が早かった。
人の子とは総じて頭が柔らかいらしく、
退役を宣言してからも指導のために残った父を迅速に病魔の撃沈へ専念させた。
執務も艦隊指揮もまともにできるようになってしまった司令を、そうさせた父を、誰が軽蔑し続けようか。
それでもそれは与えられた知識の範囲内での話で、逆に知っている必要のない古い言葉は知らないようだ。
この司令はあくまでも、この鎮守府をあたかも父が運営しているように周囲に誤解させるために仕立てられたのだ。
大人の勝手な都合で島流しの憂き目にあった司令は、やはりまだ子供なのだ。
自分勝手だとは思うがそれでも。
子息を成熟していないうちから利用してしまう事になってしまうが危険に晒されないよう努める、と、
赤の他人が後続の司令になって今まで守ってきた伝統やら采配やらを失うよりはいい、と。
諦めの感情から垣間見せる責任感を伴う顔で説得されてしまって私は折れたのだ。
この鎮守府の伝統や采配その他諸々は気に入っていたため、あの元司令を認めてしまった。
仕方ないですねえ。と。
「のわきのホットケーキおいしい~」
「……ありがとうございます」
これでよかったのか否かと私が自問自答に駆られていることなど露知らず、
口の周りがシロップで汚れることも気にせず顔を綻ばせる司令を見ると、私の悩みも幾分か薄れてしまう。
この司令が嫌がっていないのだから、私たちがすべきことはこの司令を守るだけだな、と、
思考停止のようでありながらすとんと私の腹に落ち着いてしまったのだから申し分ない。
すかさずちり紙で司令の口元を拭うのも秘書である私の責務だ。
「のわきはにゅうきょしてね」
普段よりほんの少しだけ引き締まった、恐らく引き締まっている顔の司令を、艦隊皆の艦が一斉に見下ろしている。
最早慣れたものですが、世間一般的には異様な光景に写ることでしょう。
「おおがたかんのみんなは多少のひだんはガマンできるけど、こがたかんはそういうわけにもいかないから。
もう少しきかんを守れるようにがんばってほしい」
私の随伴艦を務めた大型艦一同は静かに頷いた。
"前"のときの戦法ではむしろ逆ではあるのですが、
過去に囚われすぎるのはよくないという元司令の言い分に皆納得しているために誰も何も言わない。
口だけでなく実際にこの戦法で充分な戦果を挙げているのだから、元司令の功績と影響力はただならぬものだ。
そうして元司令の戦法をそのまま受け継ぐこの司令もまた、皆から信頼されている。
「のわきももう少しかいひできるようになろうね」
「はい、精進致します……」
この鎮守府にいるほとんどの艦はこの司令の父がまだ帽子を被っていた頃から訓練を重ねている。
かくいう私もその多くのうちの一隻で、練度もそれなりに良いものであると自負していたが、買い被りだった。
司令から率直にこう指摘されてしまってはまだまだだ。
己の顔の筋肉が今どうなっているかも自覚する余裕もないままに、司令は解散命令を出した。
今日の出撃はこれにて終わった。
私の場合は入渠してから司令の執務を手伝い、艤装の点検などを経て眠りにつく。
艦隊の皆がこの執務室から立ち去り、さて私もドックへ赴こうと踵を返した直後。
「のわき。少し話があるから。ごめんね」
いえいえ。
司令のお話とあらば水底に沈もうが受け入れるために這い上がって参る所存です。
私のことは気にせずなんなりとどうぞ。
司令は机の椅子にも座ろうとせず、その場に佇んで口を開いた。
この執務室が、今はやけに広々と感じる。
見た目以上に人口密度が低く感じ、司令との遠近感がいささか過剰なまでに大きい感覚を覚えるのは何故だろうか。
年相応な普段の活発さが鳴りを潜めたような、はたまた借りてきた猫のような、
そんな諺を思い起こさせる程に軍帽の唾に目を伏せて鎮守府に取り残されたように佇む司令が原因だろうか。
「のわき。ぼくのやっていることは正しいのかな? みんな、ぼくをわるく思っていないかな?」
いきなり何を言い出すんですか、司令は。
司令が執り行う采配は、司令のお父上から見事に受け継いだ立派なものではないですか。
あの元司令も、今の司令にも、誰も歯向かう輩はいません。
日頃から"流石です"などと口癖とも疑うほど司令を褒め称える私ですけど、
それは別に司令をおだてて言っているわけではないのです。
心から出た感想を飾らずそのまま述べているだけなのです。
「逆に聞きますが司令。司令はこんなことをさせるあなたのお父上を恨んでいますか?」
「ううん。お父さんは体が弱いし、ここのみんなも大事だから。どうして?」
この司令がこうして重い責務をしっかりと認識した上で背負っているのもまた、
年相応な感情から来る動機が原動力なのだろう。
駆逐艦である私でさえ見下ろす小さな体躯の少年に心配をかけてしまうなど、私たちは、あの元司令は、情けない。
しかし、元司令や司令の采配があって私たちはやっと敵に立ち向かえるのだ。
逆に司令の運命を捻じ曲げたであろう元司令や私たちを恨んでいないか心配だったが、杞憂のものだったようだ。
私は安堵し、次いで司令も安堵させるために、司令の低い目線と自身の目線を合わせるために私は屈む。
さっきまでの艦隊の皆を叱っていた司令の顔はどこへ行ったんでしょうね?
「私たちはあなたのお父上を慕っていましたし、そのご子息である司令もまた慕っています。何も心配はいりません。
恥ずかしいのか誰も口には出しませんが、今の司令がいるこの鎮守府で生かされて、皆幸せに思っていますよ」
「ほんと?」
…………。
「のわき?」
「はっ……。本当ですよ。ええ、本当です」
司令。
即答できなかった野分をお許し下さい。
司令の疑問への返答は一寸の偽りもないのですが、違うのです。
恥ずかしながら野分は不安げな顔でこちらを見上げる司令に見蕩れてしまいました。
司令は大真面目に私たちのことを考えてくれているのに真面目にならず変なことにうつつを抜かす私をお許し下さい。
それでも司令の精神状態の荒波を無くすためと我に返れば、
時間をかけずに索敵するよりも素早く言葉を組み立てることができるのです。
「司令のような子に戦争へ協力して貰わなければならない点は私たちが間違っているでしょう。
ですが、司令が私たちにしていることに何一つとして間違いはありません」
「むっ、司令官をコドモ扱いするならけんぺいさんにおせっきょうしてもらうよ!」
「失礼しました。司令はおしゃまさんですよ」
「それ使い方違うー! 司令官をバカにするのわきなんかドックでしずんじゃえ!」
「はい。司令は大丈夫ですか? 一人で寝られますか?」
「だからコドモ扱いしないでよ!」
自身が手傷を負っていることも忘れて執務室を出た。
自身の扱いがおざなりになるくらい、司令との掛け合いを楽しく、幸せに感じてしまう。
しかし司令のいる空間とは隔絶された廊下に出た途端、溜まっていたであろう疲労が一挙に押し寄せた。
私は扉越しで司令に気づかれることのないように小さく嘆息し、遠い遠いドックを目指した。
433 名前:2-683 山城[sage] 投稿日:2015/03/13(金) 13:10:46 ID:zciMEekA
次
「ううっ……、ふこうだわ……」
今自分の目の前で跪いてしまっているこの小さな少女は、戦艦(仮)山城だ。
あるいは戦艦(予定)山城と称しようか。
此奴も艦娘の一隻なのだが、此奴は他の艦とは事情が異なる。
山城の微かな悲鳴で振り返ってみれば、鼻緒が寸断された高下駄が一つ山城の足から別離を遂げてしまっていた。
鼻緒が切れる程山城は建造されてからこの下駄に波瀾万丈な歴史を刻んで来た訳でもなく、
ましてや山城は物を粗雑に扱うような子でもない。
だから自分は今日も唯々この山城を哀れむだけなのだが、自分はそれよりも山城の言葉が気に障った。
「こら。どこでそんな言葉を覚えてきたんだ。全く」
「だってふこうなんだもの……」
自分は屈んで山城を咎めたが、山城は訂正しなかった。
目線を合わせようとしても、幼い為か山城は気付いてはくれず地に視線を落とすばかり。
"不幸"等と言う言葉を教えたのは一体どこのどいつだ? 全くけしからん。
でも山城は常に自分の目の届くところに置いているし。
彼奴でもない此奴でもないと艦の写真付き名簿がモンタージュのように頭の中で次々と切り替わり、
結局絞られた心当たりは名簿ではなく自分の書斎となった。
……幼くして文学に関心を寄せるのはいいが、短所もある事に気付かされた。
然し時既に遅し。
「嗚呼もういじけない。明石に下駄を直して貰うぞ。ほら」
「……ん」
体を回転させて背中を向けてやると、軽い重みがのし掛かった。
両腕で臀部を支え、転がっている高下駄を拾い上げ、自分らは明石の元へ向かった。
これまた山城に言わせると"不幸"な事に、生憎鼻緒の在庫が切れてしまっているらしい。
鼻緒が切れ在庫も切れ、次は自分の靴紐も切れるのかもしれないなと皮肉った。
勿論心の中でだ。山城の前で明るくない話は避けたい。
暇でもない明石に履物屋へ遣いに行かせるような図太い神経を持ち合わせていない自分は己の足で向かうことにした。
何も非はない明石に申し訳なさそうに在庫切れを告げられて更に落ち込んだ山城を何とかすべく、
自分は肩車で誤魔化す処置を取り、頭上の山城に声をかける。
「どうだ山城。いい眺めだろう」
「うん……!」
肩車とは体重の軽い幼子の特権である。
自分も含め平和な幼少期を謳歌してきた者なら、
今山城が味わっている気分を誰もが共感し懐かしむことができるだろう。
例に漏れずこの山城も戦から隔絶される生活をさせている為、感性はまだまだ健全であったようだ。
自分は安堵した。
行き倒れた幼子のような雰囲気を醸し出し、
あまつさえ突如として"不幸"なる単語を使い出した数十分前は膨大な不安に押し潰されそうになったものだが、
非常に手短な感想を述べる山城の声色には元気が戻ってきていた。
先程の似合わぬ面影がころりと消え失せ、年相応に喜ぶ山城の軽い重みを両肩で感じながら歩みを進める。
机に向かっている時間が多いのと運動が好きではない山城に合わせた行動サイクル故、
こうして散歩がてら出歩くのも貴重な運動だ。
流石に履物屋からも鼻緒を取り上げる程神は鬼ではなかったようだ。
神はあくまでも神である事を信じよう。
山城が気に入った柄の物を幾つか購入できたので、帰路に着く。
交通量が少ない故に舗装されていない田舎道をやはり肩に山城を乗せて歩いてゆく。
遠くが霞んで見えない都会の景色とは全く異なるので、排気ガスの臭いがない。
そしてあの履物屋も海から離れている場所ではないので、慣れた潮風が心地良い。
……心地良い。少し風が強くなってきたが。
然し私の軍帽は山城が抑えている為に吹き飛ばされる事はない。
はっはっは神め潮風め。海軍の人間をこの程度の風で吹き飛ばす等甘いぞ甘
「いたぁい!」
どうした山城!!
自分は肩車する山城の両脇を両手で抱き、至極慎重に着陸させる。
高下駄のない方の足袋が汚れてしまったが、そこまで意識は回らなかった。
すまん。帰ったら洗濯してやるから、我慢してくれ。
山城は眉を顰めて目を強く瞑っていた。
「目に……すなが……ぐすっ……」
おお神よ。やはり貴方は実は鬼ではないのでしょうか。
舗装されていない田舎道も良い事ばかりではないようだが、それにしてもこれはあんまりだ。
いたいけもないこの少女が一体この地に何をしたと言うのですか。
この少女に涙を浮かべさせる権利が貴方にあると言うのですか。
せめてやるならこのわたくしめを選んで欲しかったです。
待て。山城を肩車した状態で自分の目が潰されてしまっては山城が危険だ。
どちらにせよ神は外道だ。畜生だ。超弩級の畜生だ。超弩級戦艦扶桑も真っ青だ。
「こら擦らない。目パチパチしてみなさい」
神へ反逆する呪詛を頭の中で並べ立てている場合ではなかった。
当然の道理だが山城は瞑った両目のうちの片方を手で擦ろうとしたので、自分はその片手を押さえる。
すまん山城。だがこれもお前を思っての事なんだ。
恨むなら私でなく神を恨んでくれ。
怒りの矛先が私に向けられれば私は死んでしまう。
「……~~!」
山城は瞼を痙攣させながらも、必死に、懸命に、健気に瞬きを行ってくれた。
然し成果は振るわないらしく、幾度も繰り返そうが改善しなかった。
勿論自分は成す術もない。
「……おんぶにするか」
非常に不本意だが諦めの選択を選んだ私は背中を向けて屈んだ。
すると、縋り付くようにやや強めに衝撃が背中を走った。
山城が私の背中にしがみついた事を確認し、自分は打って変わって落ち込んだ調子で歩き出す。
山城は私の背中に横顔を当てている。
未だに瞬きを繰り返しているのだろうか。心配で心配で胸が張り裂けそうだ。
臀部を支える両腕も不調になったようで山城が若干重く感じる。
「すん……、やっぱりふこうだわ……」
「ほらもうそれは言わない」
購入した鼻緒を明石の元へ納品してきた。
何事もなく無事に帰宅――家ではないが――できると言う
自分の期待をあっさり裏切った神への呪詛を頭の中で書き連ねる執務も忘れ、
夕暮れの茜色に染まる執務室の扉を開けた。
いつの間にやら静まり返っていた背中の山城へ声をかける。
「着いたぞ山城」
「…………」
「山城?」
どうした事か返事がない。
もしやと推測し来客用のソファに山城を静かに降ろして顔を確認すると、
山城の瞼は先程とは打って変わって安らかに下ろされていた。
眉を顰めている様子はない。目に入った砂は落ちたのだろうか。
「すー……すー……」
「……やれやれ」
自分は山城が目を覚まさぬよう割れ物を扱う手付きで横にさせ、土で汚れた足袋を静かに傷のない足から抜き取った。
それから眠る山城の横に腰を沈め文庫本を開いた。
まだ夜が来てもいないのにこうして本を開ける程度の執務量だから、山城の世話ができる。
この山城が生まれたのが敵の少ない海域沿岸に建つこの鎮守府でよかった。
その点は不幸でなく間違いなく幸運だった。
そもそも当初は工廠の妖精に戦艦山城を建造するよう命令したのだが、
誕生した姿はこのように特殊なものとなってしまった。
妖精が言うには設計図を元に建造したのに、何らかのミスなのかこのような結果になってしまったとの事。
建造したはいいがどうやらこの山城に戦闘能力は備わっていないらしく、重さで艤装もまともに持てないらしい。
原因を究明し、通常仕様の戦艦山城に改造したいのでその目処が立つまで待って欲しいとお願いされ、
その所為で止む無く私が世話を焼いている訳だ。
然し嫌々やっているわけではない。
幼子の扱い方を知らない当初こそ困ったが、今は違う。
もしかすると実は自分は子煩悩なのではないかと疑う程度には慣れ、寧ろ好んでやるようになってしまった。
何せこの山城、実に手がかかる。
今日も起きたように他の艦と比較して不運な出来事が不自然に多いのだ。
戦とも関わっていないのに、だ。
なので自分は山城が降りかかる不運から逃れるように目の届く場所に居させているのだ。
それなりの苦労はある。
あるが、山城がふとした時に見せてくれる無垢で無邪気な笑顔に自分は撃沈されてしまったのだ。
不甲斐なく不運の雨から完全に山城を守れている訳ではないが、
兎に角、自分はこの山城が笑顔を二度と見せてくれなくなるような事態を避けるために動いているのだ。
そして自分だけでなく他の艦娘共も。
今日の山城の不運によって損じた高下駄も、目を覚ます頃には明石が新品同様の状態にしてくれている筈だ。
音を発しない工廠は、恐らく閑古鳥が止まっているであろう。
暖かな夕暮れの陽と憑き物のない山城の寝息が、私の意識レベルを低下させてゆく。
一旦背伸びして栞を挟んだ本を目前の机に置き、山城が眠り続ける柔らかいソファに改めて体を沈めた。
……………………
…………
……
「ふぁ……、てーとく?」
「……すぅ」
「……ありがと……」
ちゅ。
440 名前:2-683[sage] 投稿日:2015/03/13(金) 13:21:06 ID:zciMEekA
以上!
艦娘と幼馴染の場合の話を書いてみたよ
特に山城については不幸に少しずつ曝され一見性格が暗くなっていくロリ城を提督が語彙を絞るように励ましつつ
それでも無邪気さが薄れていくがたまに昔の無垢な面を垣間見せる成長した山城を見たいがなかったので書いた
441 名前:名無しの紳士提督[] 投稿日:2015/03/13(金) 16:55:04 ID:SQzCpRz6
GJ! 戦艦娘が小さくなるシチュはよく想像してただけに嬉しいです。
これが気に入ったら……\(`・ω・´)ゞビシッ!! と/
最終更新:2015年09月17日 01:41