非エロ:提督×加古 17-182

182 :名無しの紳士提督:2015/06/18(木) 01:37:44 ID:Gq/85leA
あの加古が射程圏内に入ってくる、どころか
ストライクゾーンど真ん中に来るとは誰が予想したというのか


以下提督×加古で駄文、シチュ捏造キャラ捏造です。



「ああ…いきたくねーなぁ……」

後部座席の車窓に流れる黄昏の街を憂鬱そうに眺めながら、隣りに座った艦娘は何度目か分からない大袈裟な溜息をついた。
その溜息は流れるように大あくびに変わり、普段の彼女ならば絶対に100%無縁であろう香水の香りがもたらしていた優雅なアンニュイ感が、一瞬で霧散する。

「寝るなよ。加古」

有り得ないとは思うが、隣席に座る私は念のため冷たい声で釘を刺した。

「これはお前の『懲罰』なんだからな」
「…分ぁかってるよ。提督」

お偉方含め、多くの関係者を集めての艦娘観艦式。
つい数日前に改二への成長を遂げ、ひどく大人びた彼女の雄姿は、多くの人の注目を集めるところ…であったのだが。

「右向け、のところで間違って左向いちゃっただけじゃん?古鷹の説明が分かりにくくて眠くなってさぁ」
「お前が寝てて指示説明も予行もまともにやっていなかったのを、古鷹のせいにする気か」

う、と眉を顰めて口をヘの字にする加古。

「…こんなことは言いたかないけどさ。あたしがいつも眠いのには、ちょっとだけ深い理由…」
「知ってる。着いたぞ」

何か言いかけた加古を無視し、運転手に礼を言って正面玄関前に横付けした車から先に降り、反対側に回って降りるのを手伝ってやる。

「それにしたって、観艦式後のレセプションによりによってあたしを連れて来るなんて……いくらなんでも酷すぎるよ」

高めのヒールに、夜の帳の降りた海をあしらった濃紺のドレス。
背後に同じ色のしなやかな一房を垂らし、片目にさらりとかかるベースの形は変えないままに、照る月を思わせる銀の髪飾り。
純白の手袋を嵌めた両腕の上、露出した健康的な両肩に至る上腕を飾るのは、偽装代わりの薄青色のリボン。
慣れないメイクに落ち着かなさそうな彼女の姿を改めて正面で見て、薄笑いを浮かべるのを抑えきれなかった。
女性としての振る舞いが期待され注目もされる社交の場所は、彼女にとってとんだ苦痛に相違無いだろう。
もっとも私自身もあまり得意な方ではないが、このちょっとした悪戯のおかげて多少は楽しめそうな気がしている。

「夜のパーティじゃ眠くなるに決まってるじゃんか………ふあぁ」

……だが何を着せてどこに連れてきても、こいつのペースは変わらないような気も同時にしてきていた。

「おお。これは美しいお嬢さんをお連れだ」
「部下ですよ。昼にお見苦しい姿をお見せしたので、夜は多少なりとも皆さんの目を愉しませようと」
「ど、ども…」

背広姿の恰幅の良い高官が、ドレス姿の加古を褒める。
料理にも好きな酒にも少ししか手を出せず、カチンコチンに固まっている加古を見ると笑いを堪えるのも一苦労だった。


高過ぎない天井を飾る豪華なシャンデリアに、高級な絨毯。
仄かな黄灯りに照らされた立食形式のテーブルには色とりどりの酒、料理、スイーツ。会話を邪魔しない程度の奏楽。
思っていたよりもずいぶんと広い会場には、知人も見知らぬ人もずいぶんと集まっていた。当然、全員が深海棲艦の脅威と日々戦う軍関係者である。

「あそこにいる軽そうなオッサンが横須賀鎮守府の提督。金剛型を四人も侍らせてマフィアのボスみたいだが、実績は特級だ」
「へー…」
「和服の香取を連れてきているあの女性は舞鶴の提督。ふたりとも流石に洗練された振舞い、大人の女性という感じだな。良くこの場にお似合いだ」
「……」

思わず自分の格好を見下ろし、いじわる、と小声て言った彼女を無視して見つけた知人に声を掛ける。

「これはどうも。お久しぶりです」
「おぉ、誰かと思えば呉鎮守府の。立派になりやがったなこの野郎」
「こちらは部下の加古。私が世話になった先輩格、佐世保の提督だよ。……長門も、久しぶり」

かつて部下だったこともある、黒のドレスを優美に着こなした長門と加古は同時に頭を下げた。
ヒグマに背広を来たような佐世保提督とは、しかし長身同士でもありミスマッチの妙である。

「重巡の加古か?話に聞いてたより美人だな。昼は遠くて良く分からなかったが」
「えぇ。うちではトップクラスの美人になりましたよ」

えっ、と加古がこちらを見る。
あどけない少女と、色香のある大人の女性の、ちょうど中間点に来た彼女の独特の表情が――不意に、自分の本音の部分に直撃しそうになる。

「はっはっは。コイツが人を褒めるとは、よほど気に入られてるんだな。加古ちゃんは」
「あ、え、いえそんな、じゃないそのような…‥」

まあ仲良くしてやってくれよ、本当は人様に簡単に胸襟を開く奴じゃないんだからな――彼はそう言って豪快に笑った。


佐世保の提督と旧交を温め別れた後、加古が袖を引いてきた。頬を僅かに赤く染めているのはこの場の気恥ずかしさからか、はたまた酔いによるものか。

「提督、美人て」
「世辞だ世辞。真に受けるな。…あ、これはどうも」

極力冷たい声で、加古と眼も合わせずに次の知人と社交辞令を交わす。

「良い目をした艦娘さんですね」
「ええ。私の一番のお気に入りです」

再び驚いた表情でこちらを見る加古。

「こう見えて根は真面目そのもの、戦場での気合いと仲間を思う気持ちも、誰にも劣らず強い」
「ほう…」
「本当に、良い艦娘ですよ。人としても、艦としても。私の指揮能力には勿体ない位の逸材でした」


酒のせいか。状況のせいか。それとも――
予想以上であったそれを、至近距離で楽しむという至上の贅沢に箍を緩まされたのか。
まあいい。今日は言ってしまおう。全部。
正直これ以上、懸想を溜め込んでいたくはない。

「それにしても、改二で大きく変わるものですね」
「ええ。見た目も麗しくなりましたが、中身も一線級の武勇艦に相応しい成長を遂げました」

驚きながら赤らめた顔で、絹手袋の片手を素肌の胸元に当てて。
動悸が抑えきれない表情で軽く震える加古の姿が、――愛しすぎて。

「オンとオフの切替上手で。私は気を抜くのが苦手で、いつもその切替を見習わねばと思っています」
「なるほど」
「古鷹、青葉、卯月、天龍――軽巡から駆逐艦まで友人も多く、鎮守府の重要なキーパーソンであり」
「て、提督…」

加古が何か言いたげな顔で割り込んで来たが、私は最後まで言い切ると決めたのだ。

「…なにより、人付き合いの苦手な私が今の鎮守府に馴染めたのは、明るくて飾らない彼女の性格のおかげなんです。それにどれほど救われたか……だからこそ」

加古に――愛してしまった艦娘に、視線を送る。

「私が結婚(仮)をする相手を選ぶ日が来たら、彼女しか居ないだろうな、と」
「――!」

我ながら不自然かと思った爆弾発言に、加古は口を半開きで丁寧なアイラインに飾られた純粋な瞳を見開いていた。

「おぉ、それはそれは。結婚式(仮)には忘れず呼んで下さいよ」
「えぇ。彼女が私の指輪を受け取ってくれるなら、ですけれど」

酒の席の冗談と取ってくれたのかどうか。震える思いで半笑いの知人と別れた後、もはや過呼吸に陥りそうな加古に平静を装って声を掛ける。

「さて。今日はもういいだろう。部屋まで送ってやるから」


ぐっすり休め、と彼女が最も望むであろう言葉を掛けてやった――つもりが、真っ赤になって俯いたままのその表情にあまり変化は見られなかった。


このあとむちゃくちゃ夜戦した。




+ 後書き
お目汚し失礼しました
続きは後日に


これが気に入ったら……\(`・ω・´)ゞビシッ!! と/

最終更新:2018年09月08日 19:18