462 :名無しの紳士提督:2016/01/01(金) 23:01:31 ID:WgoJ.gPI
新年明けましておめでとうございます。新春一発目のSSを投下します
鹿島との年末年始のお話で、、この前のクリスマスの話の続きです
今回も独自設定やわかりにくいネタがたくさんあります
NGは『練習方法は実践する事だけ―年末年始編―』でお願いします
463 :練習方法は実践する事だけ―年末年始編―:2016/01/01(金) 23:02:16 ID:WgoJ.gPI
「Guten Tag」
「Buon giorno」
「?…………こんにちは……」
提督室の大掃除を一段落させていた俺は突如外国人の美女二人に声をかけられた。
俺は乏しい知識から外国語での挨拶とわかり、日本語で返した。
「君達は………艦娘か?」
「私はビスマルク型戦艦のネームシップ、ビスマルクよ」
「私はヴィットリオ・ヴェネト級戦艦2番艦、リットリオです」
「ビスマルクにリットリオだと……今日来るはずのドイツ艦とイタリア艦がもう来たのか?
だが約束の時間にはまだ早いはず……」
「少し早過ぎでしたか。遅れないように早く来たんですが」
「それよりもあなた、提督はどこにいるのかしら?」
「…………私が提督だ…………」
そう。俺がこの鎮守府の一番上に立つ提督だった。
「あなたが提督!?冗談はやめなさい。
そんな格好の提督がいて、お掃除なんてしているかしら」
いるんだよここに。汚れないようにジャージを着て掃除をしているけど、俺は提督だ。
「生憎だが私は今日提督としての仕事をし始めたばかりでね、
不測の事態のせいで引き継ぎもほとんど出来ずに提督になる事になったからな」
「提督が掃除なんてするのかしら?」
「提督だろうが掃除をするものだ。
厳密に言うと大掃除の指示が俺の提督としての初仕事なわけだが」
「その初仕事をサボるなんていい度胸してるじゃないの、このクソ提督!」
「仕事をサボって女性と楽しそうに喋っているなんて、鹿島さんが泣くわよ」
海外艦娘と会話している俺を咎め、叱責する声が聞こえた。
駆逐艦娘の曙と霞だ。昔からきつい口調な彼女達だったが、
俺が提督になってからそれが更に増した気がする。
霞は俺が立派な提督になれるように厳しくあたっている節があるし、
曙は…まあ掃除をサボって美女と会話してたら俺にはああも言いたくなるわな。
彼女は不遇の運命だった駆逐艦曙の艦娘故か上官的な存在に無意識に反発する癖があったが
俺に対しては提督でない頃から関わりがあったからか、
俺に対しての言葉遣いがあまりきつくなかった。
「掃除は一段落したよ。それで海外艦のビスマルクとリットリオの二人と話をしていて…」
「ビスマルクとリットリオ?もう来たの?…………少し見苦しいところを見せたみたいね」
「……提督、この鎮守府の艦娘の上官への口の聞き方は酷いようね。
この鎮守府、少し規律がなってないようね」
「誤解しないでね。この鎮守府で口が悪いのは私たちくらいよ。
それと、この司令官がここの司令官に任命されたのはつい先日だから、
この艦隊の規律等についてこの新米司令官を責められるものではないわ」
霞は厳しい艦娘で、真面目にやらなかった時の叱責はきついが、全力で望んだ末の結果や、
その人物に責任を求められないような事を理不尽に責めるような真似はしない。
彼女に厳しく言われ続けたからといって、
彼女を脊髄反射で拒絶するのは少し思慮が足りない事だろう。
「提督、お掃除終わりました。提督室は……あら?」
昔からこの鎮守府の中心人物として働いている大淀が足柄と共に部屋にやってきた。
「ビスマルクにリットリオ!もう来られたのですか!?」
「そうよ。あなた達は?」
「私が大淀です。よろしくです」
「私は妙高型重巡洋艦三番艦足柄よ。よろしくね」
「こちらこそよろしく。ところで、この男の人が提督なの?」
「ええ…提督となったのは先日からですけど…
前提督が突如新泊地へ赴く事になったので、引き継ぎや準備が不十分で…
今は出撃や演習、遠征の指示等の艦隊指揮は私が代行しています。
それ以外のことは提督に順次させていっています」
「だからといって大掃除の指示が初仕事になるなんてな…」
「掃除は大切なことよ!掃除をすることによって心も引き締まるし、
大掃除は一年の汚れを全部落として、
新年を新たな決意で迎えるために特に大切なことなのよ!
……大掃除の段取りを一任してくれたことは感謝するけどね…」
「一任というと聞こえはいいけど、要するに丸投げってことじゃない?」
「司令官にまかせるよりはよっぽどマシよ。この司令官、あまり掃除しないし」
「それもそうね」
酷い言われようだが大体事実だから仕方ない。
この鎮守府に勤めるようになってから自分では掃除を頑張るようになったと思っていたが、
それでも霞にとってはまだまだらしい。
しかし霞に大掃除の段取りの指示を一任した判断は間違ってなかっただろう。
彼女は掃除に対するこだわりが人一倍強いらしく、
去年の大掃除で霞が担当した部分は他と比べて少しだが綺麗に感じた。
まあ普段他人に目をやらない俺が霞に目をやったのは
きつい事を言われたので霞に言い返せる欠点を見つけてやろうとしたのではなく、
四日市に“かすみ”という名前の清掃船があるから、霞もきっと掃除が上手かもしれない
という根拠のないアホらしい考えだったが、どうやら当たっていたらしい。
余談だが“かすみ”を所持している団体の本拠地は千歳町という場所で、
近くには大井の川町や曙町、
少し離れた所には清掃船かすみの名前の由来先と思われる霞という場所がある。
艦娘達と直接の関係はないにしろ名前が一緒なものが沢山集まっているので、
ちょっとした話のタネにはなるかもしれないし、ならないかもしれない。
「みなさん、お疲れ様です」
聞けば心躍る可愛らしい声が聞こえた。
「もうすぐ3時ですし、少しお茶にしましょ…あら?あなたたちは?」
「ビスマルクよ。よおく覚えておくのよ」
「リットリオです。覚えておいてください」
「ビスマルクとリットリオ……
私はこの鎮守府の提督さんの秘書艦を務めます、
香取型練習巡洋艦二番艦、鹿島です。よろしくね。
よかったらお二人もお茶、どうぞ」
鹿島は初めて見た人が勘違いしそうな感じの笑顔ではなく、
誰が見ても普通の笑顔といえる表情で言った。
「提督さんのリクエストの汁粉サンドです。どうぞ」
そう言って鹿島はあんこが薄く挟まったサンドイッチを出した。
「それじゃ、いただくわね」
もぐもぐもぐもぐ……
「この甘み、たまらないわね」
「喜んでもらえてよかったです。なにぶん汁粉サンドは初挑戦でしたので、
色々と試行錯誤を重ねました。その甲斐があったようですね」
「本当おいしいわ。日本の文化を取り入れたサンドイッチ、素晴らしいわ」
ビスマルクやリットリオら海外艦娘達には大好評なようだ。
「カツサンドが一番だけど、これもおやつとして考えたら中々いけるわね」
「餡もくどくなくておいしいですけど、白玉も餅に近い食感がいいですね」
足柄や大淀も喜んで食べていた。
「あれ、提督さん、お口に合いませんでしたか?
……長良さんや木曾さん、伊勢さん達も…
何か気になる点でもありましたか?」
「いや、美味しかったよ……」
確かにとても美味しかった。
サンドイッチは鹿島の代名詞と言えるくらい彼女にとって得意な料理であり、
具材である餡や白玉もとても美味しかった。
「美味しかったですよ本当に。でも…その……何て言えばいいのか…言いにくいですけど…」
「俺の知ってるしるこサンドじゃない!」
「そうそう、私たちの知ってるしるこサンドじゃないのよね」
東海地方出身の人がしるこサンドと言われたらこれを出されたならまず驚くだろう。
「……司令官、鹿島に何て言ったのかしら?」
「何てって……今日は軽くしるこサンドでいいって言ったはずだ…」
「クソ提督には頭が回らなかったのかもしれないけど、
サンドイッチが得意な鹿島さんにしるこサンドって言ったら
お汁粉を挟んだサンドイッチって発想すると思うわ」
「確かにしるこサンドってだけ言ってそれっきりで、
鹿島は少し驚いた顔だった気がしたけど別に何も聞いてこなかったからな。
とにかく俺が指示を明確に出さなかったせいだ」
「まあそうなるな」
「これが戦闘関係だったら大変なことになっていたかもしれないわ。
これからは情報をちゃんと共有するように気をつけなさい」
俺は時々自分がわかっている事は相手もわかっていると思い込んでしまう癖がある。
艦隊指揮をする上ではそのような癖は死に繋がりかねない。
俺は今この場で失敗しておいてよかったと思った。
次からは絶対に失敗してなるものか。
「はぁ…着任早々言いたくはないけど、こんな人が提督だなんてね……」
「彼は新任提督なんだ。少々のことは勘弁してあげてくれ。
不満があるなら君が提督を立派にしてあげてもいいのではないか?」
「…そうね、新任提督なら育て甲斐があるものね。
いいわ。私が提督としての心構えを一から教えてあげるわ」
不満げだったビスマルクは日向の言葉に乗せられて上機嫌になった。
日向の人間観察力…前々から思っていたが並大抵ではないかもしれない。
俺は彼女を人間観察力を身につける為の師匠にしたいと思いつつあった。
「でもあなたが提督に付きっきりになったら鹿島が怒るわよ。
彼女は艦娘の他に未来の提督を育てる練習巡洋艦で、提督の秘書艦で……
そして何より提督のお嫁さんだから」
「ええっ!?この提督……結婚していたなんて……」
「つい先日……クリスマスに籍だけは入れたのですよ。
クリスマスを記念日にしたいからって書類も揃ってないのに無茶しますよ。
婚姻届けだけ届けて書類は後からでもいいとはいえ…」
「戸籍関係の書類なしって…何考えてるのよ。ちゃんと準備しときなさいよ」
「26日以降にちゃんと用意してもう出しておきましたよ」
「けど……前々から司令官と鹿島は仲が良かったみたいだったけど、
精々司令官が鹿島を片思いしているってくらいに思っていたのに
まさか結婚を決めてしまうほど二人の仲がよかったなんて思わなかったわ」
「だって提督さんと気持ちが通じ合ったのがクリスマスイヴの日でしたから。
どうしても気持ちが抑え切れなくて、
翌日役所に行って籍だけは入れておいたんですよ。
クリスマスが結婚記念日っていうのもとてもロマンチックですしね」
「二人がそうなるに至った理由は、
提督が新泊地の司令官として着任する事が内定していて、
離れ離れになってしまうからってことがあったからかもしれませんね」
「そうですよ。イヴの日に香取姉から提督さんの新泊地行き内定の話を聞いて、
それでもしかしたらもう二度と会えないかもしれないって思って…
気持ちを伝えずに離れ離れになってしまう前に
せめて思い出だけでも作りたいって思ったんです」
「ちょっと待てよ。思い出だけでも作りたいって……」
「ええ、実は最初はすぐに結婚しようとは考えていませんでした。
結婚しようって考えたのは、結局提督さんが新泊地に行かずに済んで、
それから……色々とあった時ですね。
結婚していれば、提督さんが本当にどこかへ行かなくちゃならなくなっても、
妻であれば一緒に行けるように融通も利かせてもらえるでしょうし」
「しかし…色々とって……イヴの夜に提督が新泊地に行かずに済むとわかって、
それからクリスマスの日に入籍したわけだろう。時間から考えて急過ぎないか?」
「いいじゃないですか。情熱的に恋の道を突き進み
愛し合うってとっても素敵なことじゃないですか」
「そうよ。若さに任せて自分の信じた道を貫く……
ホント、若いっていいわねえ…私もこんな情熱的な恋をしてみたかったな…」
「足柄…あなたはまだ若さに憧れるとか、
そんなこと言うような年齢じゃないでしょ。
それに情熱的な恋がしたかったとか、あなたの旦那と子供が泣くわよ」
「確かに情熱的な恋には憧れたわ。
でも今の私には暖かな家庭という、平凡な幸せが一番大事なのよ。
暖かな家庭……提督と鹿島だってきっと築けると思うわ」
「まあ提督は指揮官としての力はまだまだだけど、悪い人間じゃないし、
一度好きになった女性と結ばれておいて捨てるような人じゃないでしょうしね」
「あら?曙ったら、もしかして提督のことが気になっていたのかしら?」
「バ、バカ!?何言ってるのよ。ホント、冗談じゃないわよ!
第一私はまだ子供なのよ!年齢的に釣り合うわけないし、
提督が子供の私なんて相手にするわけないし……」
「曙ちゃん……」
「……鹿島、あなた、絶対に幸せになりなさいよね!
提督、もし鹿島を泣かせたりして不幸にしたら、
その時のあなたはクソ提督だからね」
「あ、ああ、絶対に不幸にはしないって約束する。
約束するよ、絶対に不幸にはしないってね」
急に曙に話を振られてつい一瞬言葉に戸惑ってしまい、
念を押すように鹿島を不幸にはしないと誓った。
しかし女の子ってどうしてみんな恋バナが好きなんだろうな……
男の俺が口を挟む余地なんて全然ないくらい話に切れ目がない。
もしここに青葉と如月と秋雲がいたなら
最早収集をつけるのは無理だったかもしれない。
まあ、仕方ないから汁粉サンドイッチをバクバクと食べていたけど、
急に振られた時の為に耳を少しは傾けておくべきだった。
「あら、いけない。ちょっと休憩するつもりだったのに長話しちゃった」
「いいのよ、あなたたちと楽しくお話が出来たから」
「そうですよ。素敵な歓迎ありがとう」
「そうじゃなくて……業者さんや一般職員たちに他の艦娘…
彼らが大掃除をしているというのに私たちだけいつまでも休んでられないわ。
特に私は汁粉サンドを用意してって言われて
ずーっと汁粉サンドイッチを作っていて、全く大掃除してなかったし…
あっ、提督さんのせいじゃないわ。確認しなかった私が悪いのだし…」
鎮守府は広い。務めている艦娘や職員達
(男だけではなく、艦娘ではない女性もいる)だけでは掃除しきれない。
ましてや彼らは掃除に関しては素人である。
簡単な掃除ならともかく本格的な大掃除となると清掃業者に頼まざるをえない。
そこで鎮守府の外まわりの清掃に関しては業者に一任する形を取っている。
清掃業者は鎮守府と契約を結んでいるわけだが、
別に鎮守府専属ではなく、他にも得意先はある。
外部機関に等しい存在である為に内部機密流出防止の為、
鎮守府関係者による監視も欠かせないわけである。
彼らは清掃作業をしない事になるが、清掃業者の清掃作業の方が効率がいい為、
彼らは監視に専念出来るわけである。
鎮守府内部はさすがに内部関係者がせざるをえないだろうが、
監視者以外は外まわりに人手を取られない為効率はよくなる。
「司令官、倉庫の大掃除、終わりましたわ」
「玄関の掃除も終わったよー。お疲れちゃーん。
あ、そうそう、外まわりももうすぐ終わりみたいだよー」
「司令官、トイレ掃除、全て終わらせました」
どうやら鎮守府中で大掃除が終わったようだ。
「もう掃除できるところはないの……」
「パッと見ですけど、もうどこも終わりのようです」
「そう……」
鹿島は少し暗い顔だった。
「鎮守府の掃除がとりあえずひと段落したみたいね。
でも最後に私が確認するわ。もしまだ不備があったらその時に言うから」
「わかった。ところでこの部屋は……」
「…………とりあえず合格ね。でもだからといって毎日の掃除は怠らないことね」
「ありがとう……」
「提督室はもう掃除の必要はないのですか……」
「気になるところがないわけではないけど、でもわざわざ掃除をするまでもないわ」
「そうですか……」
「そうだ、鹿島、業者達の土産にペットボトルの熱いお茶を用意してくれないか?」
「ペットボトルのお茶ですか?」
「そうだ。大工や電気業者なんかが来た時にそういった事はするものじゃないのか?」
「今まではしたことはありませんけど……」
「そういうところに気を利かすのもいいけど、仕事もちゃんとしてよね」
「ああ……とりあえず熱いペットボトルのお茶がなければ
冷たいペットボトルのお茶とか、缶コーヒーとかでもいい。
業者の人数分より少し多めに用意しておいてくれ。
あと何かちょっとした食べ物とかないか?
できればここでお菓子をよばれてほしかったところだが彼らも彼らで忙しい。
手で食べられるようなものとかないか?」
「えーと……あっ……」
鹿島が少し考え込んだあと何か思い当たったようだ。
「どうした?」
「実は……お汁粉を固めるために
ゼラチンや寒天の量の調整をしていたら餡が薄くなって、
薄まった分餡を足したら今度は普通の餡みたいになっちゃって、
それでまた寒天とかを足していって……」
……何となく予想はつく。ある意味駄目なパターンだ。
「つまり作りすぎちゃったってわけか」
「……はい…」
やっぱり。
「まあいい。サンドイッチ用のパンはいくつある?」
「サンドイッチ用のパンだったら長期保存が効くものがたくさんあります」
「よし、それで汁粉サンドイッチを沢山作っておいてくれ。
業者達のお持ち帰り用だけでなく
他の艦娘や職員達にもよばれてもらう為にだ」
「分かりました、急いで準備します。足柄も手伝ってください」
「わかったわ」
「リットリオ、私たちも手伝いましょう。
サンドイッチくらいなら私たちでも作れるわ」
「ええ、私たちも行きます」
鹿島は足柄とビスマルクとリットリオと共に準備に向かった。
「あっ、提督さん、忘れないうちにひとつ聞いておきたいんですけど、
しるこサンドって一体どういうものですか?」
「しるこサンドは餡をビスケットで挟んだ東海地方のお菓子だ」
「そうですか……分かりました」
そう言って鹿島達は再び準備に向かったのだった。
「提督さん、今年最後の夕焼けです。綺麗ですね」
「ああ、あの時は見れなかったけど、今こうして見ると感慨深いな」
大晦日の夕方、俺達は全てを終えて夕焼けを見ていた。
「提督さん、今年もあっという間でしたね……」
「ああ……今年は年末、特に一週間が今までにないほど慌ただしかったけどな」
「疲れましたか?さすがに提督ともなると苦労が今までの比ではないでしょうし…」
「まだまだ!こんな事でへばってちゃ、提督なんてやってられないよ」
「元気ですね。でも、無理はしないでくださいね」
「わかってるよ」
わかってるけど、どうしても俺はそこら辺の加減ができない。
やるかやらないかが極端であり、やると決めたらそれしかないという事もかなりあった。
いい加減な具合にやるべきだけど、そこが俺には難しいんだよな。
「だったら鹿島さんが司令官を見てあげればいいじゃない」
二人きりで夕日を見ていたところに突如可愛い乱入者が現れた。
一人前のレディを自称する暁だ。
「暁ちゃん、何か用事かしら?」
「鹿島さんにコーヒーを作ってもらいに来たの。
大晦日だからちゃんと起きていられるように
濃いブラックコーヒーを作って」
「ミルクは…」
「一人前のレディにはいらないわ」
「そうは言ってもなあ暁、ただでさえ珈琲を飲むと
カフェインの効果でトイレが近くなるぞ」
「トイレくらいひとりで行けるもん!」
「それくらいならいいだろうが、珈琲をブラックで飲んだら
わかめの味噌汁を戻す事になるぞ」
「はあ?」
二人は俺の発言に驚いていた。
「俺は中学一年の大晦日の前日に大人に憧れて珈琲をブラックで飲んだ事があるが、
それで胃を荒らしたのか、
その日の昼食に出たわかめの味噌汁を戻す事になってしまったんだ。
そうなってしまえば一人前のレディどころではなくなるぞ」
「……ミルクはそれなりにお願いね。お砂糖はいらないわ」
「はいはい」
暁の言葉に鹿島は優しく答えたのだった。
「あの、提督、ちょっといいですか」
また乱入者が現れた。今度は夕張だ。
「何だ?」
「実は相談があるんですけど……
今日の午後十時半から明日の午前四時半まで暇を戴けないでしょうか?」
「……CSのアニメチャンネルでアレを見たいのだな。駄目だ、認めるわけにはいかん」
「そうですか……そうですよね……」
「後でブルーレイを貸してやるから今日は精一杯働け」
「本当ですか?ありがとうございます。ところでアレって何のことだかわかります?」
「十二星座の戦士達が大活躍するアニメだろう?」
「そうですよ」
「君は持ってないのか?」
「ブルーレイもDVDも……ネットの公開も見逃しちゃったし……」
「……何のことだかさっぱりです……」
鹿島は話についていけないようだった。
ちなみにアレの最終巻はクリスマスイヴ発売である。
色々あってその日に買えず、
自分へのクリスマスプレゼントにはできなかったが。
「あっ、もうすぐ日が沈むよ」
「ええっ!?」
暁の注意に日の入りを見逃しかけていた俺達は日の入りをなんとか見届けた。
「なんとか日がスッと落ちる瞬間を見ることができたわ。ありがとう暁ちゃん」
「えへへ……」
「ごめんなさい鹿島……邪魔をしたみたいで」
「いいのよ、日の入りの瞬間はちゃんと見られたし。
あなたも綺麗な夕焼けを見れたでしょう」
「はい、綺麗でした。でも二人きりの時間を邪魔してすみません」
夕張は俺達に少し負い目を感じているようだった。
もっとも、暁ちゃんの時点で邪魔されたと言えなくもないが。
「いいのよ、みんなで見る夕焼けも格別ですから。
……提督さん、そろそろ年越し蕎麦ができる時間ですね。
私達は夜が忙しいですし」
「ああ。年越し蕎麦を食べて、今年最後の仕事を頑張ろう」
今年最後の夕焼けを見終わった俺達は、
年越し蕎麦を食べて夜の仕事に備えるのだった。
そして、年が明けた。
「新年、あけましておめでとう」
「おめでとうございます、提督さん」
俺は真っ先に鹿島に新春の挨拶をし、鹿島も俺に今年初めての新春の挨拶をした。
「司令官……あけまして……おめで…と…」
「寝るな暁!」
俺は暁を揺さぶって無理やり起こした。
本当はあまりするべきじゃないだろうが、
暁を眠らせてぷんすか!させちゃうのもちょっと可哀相だ。
「うぅ~……コーヒーが少し薄かったかも……もうちょっと濃いコーヒーを……」
「やめろって。これ以上飲んだら本当に腹を壊すぞ」
「でも……」
「……しゃあない。鹿島、珈琲を作ってやれ」
「珈琲を!?いいの!?」
「ああ、濃さはそれなりで頼むが……」
「皆さん、新年あけましておめでとうございます。ぜんざいをどうぞ」
「ありがとう、伊良湖……そうだ、鹿島、珈琲はもう少しだけ濃く作ってやってくれ」
「提督さん!?」
「いいから」
「……はい……」
鹿島は渋々濃い目のコーヒーを作った。
「どうぞ……」
「ありがとう。これをぜんざいに……」
「提督さん、何を!?」
「コーヒーぜんざいだ。
ぜんざいの甘さと珈琲の苦味がマッチして美味しいぞ。
暁、どうだ、食べるか?」
「当然よ!」
暁はコーヒーぜんざいをかわいくふーふー冷ましながら食した。
「うーん……なかなかいけるじゃない。
一人前のレディもたまにはこういうのを食べてもいいわね」
「それじゃ私たちも試してみるわ…………うん、美味しいです」
「これはなかなかですね」
「だろう?」
こうして俺達は初日の出の時間まで任務をしつつ
たまに料理の話題を喋り合っていた。
途中でリットリオもやってきたが、
甘口抹茶小倉スパゲティと甘口いちごスパゲティをとても気に入ったのか
任務中にも食べるのかたくさん持ってきてやってきたのだった。
そして初日の出の時間……
「綺麗……特にフッを出てくる瞬間が……」
「これが日本の初日の出……素晴らしいわ」
「今年一年……いいこと……ありますよう……に…………」
各々が感想を述べる中、暁は力尽きたのか、
初日の出を見届けた後、可愛い寝息を立てて眠りについた。
「あら?暁ちゃん、眠っちゃいましたか…」
「ここまでよく頑張ったな、暁……」
俺達は初日の出を見終えて暁を褒めた後、
暁を背負って彼女の部屋のベッドに寝かしつけた後、
新年最初の仕事を大淀に聞きに提督室に行くのだった。
「新年最初の夕焼けも、日の入りも、とても綺麗でしたね」
「とても綺麗だったな」
そして新年初めての仕事(主に挨拶だが)を終え、
仕事から解放された俺達は風呂に入ったあと、夕焼けを見ていた。
今日の夕方から明日まで俺達は正月休みだ。
大淀には苦労をかけるが、彼女が休んでくださいと言ってきたので
俺達はその行為に甘えようと思う。
「提督さん、今日も一日お疲れ様」
最愛の人の思いやり溢れる言葉と笑顔、
それが疲れきった俺に再び立ち上がる力を与えてくれる。
「あぁー、ありがとう…」
でもやっぱり疲れるものは疲れる。
特に今回の正月は提督になって初めての正月だ。
今までも鎮守府では正月だからといって
特に変わった事をしてきていたわけではなかったが、
普通の士官とは違い一応最高責任者の身となって迎えた正月だ。
やはり精神的に緊張してしまう。
「ありがとう鹿島、いつも支えてくれて。でも…」
それでも弱い面を見せるわけにはいかないと力を振り絞って元気に振る舞った。
「提督さん、そんなに無理しちゃダメですよ。
弱いところを見せられないって気持ちはわかるけど、
せめて私と二人でいる時くらい、弱いところを見せてほしいな」
そうは言われても中々他人に弱い所を見せられないのが男である。
つい最近男を知ったばかりの鹿島でもそんな男心はわからないだろう。
まあ最近女を知った俺だって女心は中々わからないものだから人の事は言えないが。
「特に今回の年末年始はとても慌ただしくて
あなたもかなり疲れていたでしょうから……
今回は私に任せてくださいね…」
「任せるって…」
何の事か疑問に思う間もなく鹿島は俺のパジャマのズボンを下着ごとおろした。
「…………」
「…………」
沈黙が走った。鹿島は意外さにきょとんとしていた感じだった。
俺のちんちんが小さくて皮を被っていたからだ。
勿論真正包茎というわけではなくちゃんと剥く事ができ、
勃起した時はちゃんとそれなりのサイズに膨張する為、行為の時に困る事はない。
だから臨戦態勢にない今小さくてそれを言われてもほとんど気にはしない。
「……ふふっ、可愛い」
鹿島は悪戯っぽい笑顔で言った。俺を馬鹿にするような事はしなかった。
まあ一度関係を持った事があったわけだから、
その時に最大限に膨張したモノを見た事があったからだろうけど。
「…ちょっと自信ないけど、お口で可愛がって、大きくしてあげますからね…」
「口で?待て…」
俺の止める声も聞かず鹿島は俺のちんちんの皮を剥き、口に含んだ。
「んん…」
「あっ、痛かったですか…?」
「いや、痛くない。ちょっと気持ち良くて…」
「よかった。でもこれからもっと気持ち良くさせてあげますからね」
と言って再び俺のちんちんを口に含んだ。
根元を唇で軽く甘噛みしながら、亀頭を舌で優しく舐めた。
「ぐ……」
俺は声を出さぬよう歯を食いしばった。
そんな俺を気にする事なく鹿島は亀頭を舐めていた。
ペロリ…ペロリ…
鹿島の舌技は決して強い刺激を与えるものではなかった。
しかし経験がないに等しい俺にはそれさえも十分過ぎる刺激だった。
また、鹿島自身もそんな経験はない為、
どれくらい強くすればいいのかの加減がわからないのかもしれない。
しかし彼女の優しい舌技がまるで彼女の心を表しているようだった。
小さな子供の頭を手で慈しむように優しく撫でて育むかのごとく、
舌で亀頭を優しく刺激して勃起を促していた。
やがて俺のちんちんは硬く大きく膨張した。
「もうちょっと刺激を強くしてもいいぞ…」
俺の言葉に鹿島が行為で応えた。先程よりも舌の動きが少し激しくなった。
鈴口や裏筋を舌先で刺激されたり、唇の甘噛みを強めたりしながら扱いたり…
鹿島のテクは決して上手とは言えないだろう。
だが俺の堪え性のなさにはそれでも絶頂へと導くには十分だった。
何よりも愛する人にされているという事実そのものが
テクとかそういったものを超えて大事なものだった。
「もう射精る…離れて…」
もう我慢出来ないと俺は伝えた。だが鹿島は口を離さなかった。
それどころか強く吸ってきた。そこまでが限界だった。
ドプッ!ドププッ!ドクンッ!ドクン!ドビュッ!
一週間ぶりの射精だった。溜まりに溜まった欲望が鹿島の口の中に激しく解き放たれた。
「ん……んんー…………んー!」
鹿島は口を離す事なく、次々と発射される濃厚な精液を喉を鳴らしながら飲み込んでいた。
ドビューッ!ビューッ!ビュー!
あまりにも溜まっていたからか、まだ吐き出され続けていた。
それでも鹿島は飲み込み続けていた。
まるで俺の愛情を全て受け止めようとしているかのように…………
「…ん………ん…………」
やがて射精は止まった。だが鹿島は鼻で息をしながら咥え続けていた。
そして口内に吐き出された濃厚な白濁の欲望を飲み込み、
萎えたちんちんについていたものも舌を這わせ、綺麗にお掃除フェラしていた。
「…ぁぅ……ふぅ……」
「鹿島……ごめん……」
口を離し、一息ついた鹿島に俺は謝った。
おしっこの出る所から出たものを飲ませてしまった事に少し心が痛み、
気持ち良かったとはいえ素直に喜べなかった。
「……気持ち良かったですか?」
「…ああ、とっても気持ち良かったよ…」
「うふっ、よかったぁ……」
しかし鹿島の顔を見ていると素直に気持ち良かったと言うしかなかった。
そして俺の素直な言葉を聞いた鹿島は、
自分のした事が間違っていなかったと裏付けられた事により、
とても安心した顔で嬉しそうに言った。
その笑顔は俺の心から申し訳なさを消していった。
「アイスキャンディで練習したつもりですけど、上手く出来るかやっぱり不安でした」
「上手く出来ていたよ。でもなんでこういう事を?」
「お正月はめでたいじゃないですか。だからそんな日くらいは飲んじゃおって思って」
特別な日でなくても飲みそうとは思うが……
「それにこの前の大掃除、お手伝い出来ませんでしたから、
だからあなたが去年溜め込んでいたモノを全部吐き出させて、
綺麗さっぱり大掃除をして、スッキリさせてあげたかったんです」
鹿島は気にしていたようだ。別に俺は気にしていないのに……
「あら?また大きくなってる」
俺のちんちんは再び勃起していた。
あれで終わりとは思わず何かを期待するかのように……
「まだ掃除しきれていなかったみたい。もっとスッキリさせなきゃ…」
「鹿島…もっとしたい……」
「ああっ、あなたはじっとしていて。私に全て任せてって言ったでしょ。
去年から寝てなくてとっても疲れているでしょうし」
そう言って俺を押し倒してきた。
そして天に向かってそびえ勃つちんちんの鈴口に膣口をキスさせながら跨がった。
「こっちも……飲んじゃいます!」
鹿島は全体重をかけて俺のちんちんを飲み込んだ。
滑らかにちんちんを擦る刺激、そして鈴口と子宮口が激しくキスをする衝撃。
もし先程射精していなければ簡単に暴発していただろう。
「ん……」
「鹿島…大丈…」
「大丈夫だからっ!だから…私に任せて……」
まだ慣れていないだろうに、
濡れが少なくて痛みがないわけでもないだろうに、
鹿島は俺の為に激しく動き始めた。
「ううっ!くうっ!はあんっ!」
その動きは本当に激しかった。テクもなく、ただ力任せという感じがした。
だが単純な刺激にならぬよう時々止まったり、前後左右に動いたりもしたが、
結局激しい上下運動ばかりになっていた。彼女にも余裕はないのだろう。
感じた事のないような、自分で激しく動くのではなく、
他人から与えられる激しい刺激に一度発射していた俺でももう我慢はできなかった。
しかも新しい命を生み出す可能性のある行為をしているという事が、
本能を刺激していたのか、射精を早めようとしていた。
「私……もうダメ…です……ああっ」
鹿島が一際艶かしい声を出したかと思ったら膣が激しく締め付けてきた。
自分で動いたゆえに彼女は絶頂できたのか……
そう思って射精を抵抗する俺の心も虚しく……
ドビュルルルッ!ビュルルルッ!ビュクン!
彼女の胎内に先ほどよりも激しく射精した。
俺と鹿島が一つになっているように、
俺の精子がいるかどうかもわからない彼女の卵子と一つになり、
そして未来を作る為に…………
「うぅ……はぁ……」
動いてもいなかったのに疲れた感じがした。
元々の疲れを精神で耐えていたが、
二度の射精によってその緊張感が解けてしまったのか……
「あぁ……」
鹿島は俺にドサっと倒れこんできた。
「あ……ごめんなさい……」
「気にしないでくれ。この重みだって、今はとても心地いい……」
「…私…もう限界……です……」
彼女の動きが激しかったのは彼女自身も疲れに囚われまいとした為だろう。
いつも俺の事を第一に考えてくれていた鹿島。
彼女も緊張の糸が切れたのか、眠そうだった。
「ありがとう……いつも……この瞬間も……本当に、ありがとうな……」
「えへへ……私……頑張れました……?」
「よく頑張ったね…とても気持ちよかったよ……」
「そうですか……私も嬉し…………」
限界を超えた鹿島は寝てしまったようだ。
俺も相当眠気に襲われたが、どうにか布団に入った。
性器の結合を解くことはなかった。
互いに一つになり、温もりを感じ合う。
それだけでも本当に俺には嬉しいことだった。
「おやすみ鹿島……今年もよろしく…………」
最後の力を振り絞って鹿島に感謝した俺は夢の世界に向かった。
彼女との楽しい初夢の世界に行く事を願って…………
―終―
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後書き |
480 :名無しの紳士提督:2016/01/01(金) 23:19:22 ID:WgoJ.gPI
以上です
今回は前回書き忘れていた事や
回収しきれなかった限定ボイスから閃いたネタも入ってます
年末ボイスの時点で書ける話もありましたが、
正月話に書くものがなくなってしまう為、
年末年始という事で一つに纏めました
未だに文章力は拙いですが、
妄想力だけなら誰にも負ける気がしないという思いで書きました
それでは今年も一年よろしくお願いします
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これが気に入ったら……\(`・ω・´)ゞビシッ!! と/
最終更新:2016年09月15日 16:56