おろ!?湯煙の出会いは要注意!!◆BtEbuU13e2



月明かりのみが照らす薄暗い夜の世界。
そんな世界の片隅で一人のどちらかといえば可愛い系より美人系の顔立ちをした女性、千葉さな子が巧みに剣を振るっている。
千葉さな子は齢二十に満たない若い女性特有の瑞々しい肌に汗をにじませていた。
剣を振るう度に洋風に現せばポニーテールという称する形に結んでいた、腰まで届く長く漆黒の黒髪は大きく揺れている。
その姿はある意味では幻想的な雰囲気すら漂わせていた。
ただ、その振るっている剣を除いては。

「ああもうっ!何ですのこの剣は?いくらわたくしでも、こんなの長すぎますわよ」

思わず文句が出てしまうが、さな子が振るっていた剣は五尺に迫るかという長さなのである。
このアンバランスさが幻想的雰囲気にある程度の違和を覚えさせていた。
彼女自身は道場で長刀の師範をする技量はあるのだが、それでもこの長い日本刀、通称物干し竿は長すぎる。

「………でもこれしきで根を上げるわけには行きませんわね。それに実際にわたくしに渡されたのならば、
少なくとも参加者の 誰かはこれを扱えるはずですもの。
長刀師範が長刀に振り回されたらただの笑いものですわ……………つぁっ!」

一度息を整えると再び刀を振り回す。
何度か余りの長さに持て余し気味になるが、徐々に剣筋が安定を見せ始める。
そして小一時間ほど振り回していると、ようやく元来に近い剣筋になっていた。
しかしこの飲み込みの速さは普通ではない。
そもそも長刀とは薙刀の別称である。故に薙刀の師範のさな子に長刀など普通では扱えるわけも無い。
だが、小太刀の達人であり、日本刀の心得がある千葉さな子だからこそ、薙刀での長物使いの経験が日本刀に応用され、
この五尺余りの日本刀を思うように操れる事に成功していた。

「………流石のわたくしでも疲れてきましたわね。後は最後の仕上げに………」

そうするとさな子は近くにあった若干太めの木に目を向けて歩き出す。
そして木が刀の間合いとなる距離まで近づくと立ち止まり、しばし目を瞑る。

「……………っ!」

小さな気合の声と同時。
刀は大きな弧を描き、その次には木は切り倒されていた。

「……思ったとおり切れ味は上々。それに斬った際に衝撃も僅か。最初は『何これ?』と思ったけど、慣れたら良い刀ね」

斬った瞬間に僅かに怖い顔を覗かせたが、すぐにほころび元通りの歳相応な表情に戻る。

「…………はあ、流石に疲れましたわね。それに汗を結構……せっかくですし近くの旅籠にでも行きましょう。
誰かに出会う前にこの汗を流してしまいたいですし」

さな子は刀を鞘に納めると旅籠に向かい歩き出した。
そして道中に歩きながら、人別帳を開く。

(そういえば何方がいらっしゃるのかしら。………龍馬さんはやっぱりいらっしゃるのね。敬助さんや甲子太郎さんも
いらっしゃるみたいですし、心強いですわ。……ですがお父様とお兄様はいないのね。
どうしてわたくしだけを呼んだのかしら?)

剣道勝負なら自分より相応しい気がする両名が居ないのは流石に疑問を隠せないでいた。
しかしその時ちょうど旅籠が目に入り、すぐに疑問は吹き飛ぶ。

「別に今はどうでもいいわね。そんなことは後であの柳生宗矩って人に聞いたら済むことだし、まずは汗を流しましょう」

と、明るい調子で奥にある脱衣所で着物を籠に入れて、髪を解き、刀を適当な物陰に隠して温泉へ入っていく。

「ふうっ、生き返りますわね。やっぱり温泉はいいですわ」

きめ細かい白い肌が湯を弾く。
細身のスタイルは一糸纏わぬ姿でもやはり引き締まって見える。

「はあ、幸せですわ」

千葉さな子は安心してお湯につかる。
この後に起こる彼女にとっての悲劇など知る由も無い、幸せそうな表情で………


***

「参ったでござるよ」

頬に十字傷を持つ男。緋村剣心は歩きながら難しい顔で考えこんでいた。
右手に一本の刀を持ちながら。

(どうする。この刀は逆刃刀ではない。しかもかなりの切れ味なのは間違いない。
これを振るえば間違いなく拙者は人を斬ることになる。
抜刀術以外であれば峰の方を使えば何とか出来るが……やはり逆刃刀を見つけぬと不味いか、
この際木刀でも構わぬが)

剣心は刀を鞘に納め、夜空に輝く月に目を向ける。

「………しかしここでも月は綺麗なのでござるな…………では参るか」

剣心は心を落ち着けてから旅路を急ぐ。
素早く歩き続け、かなりの距離を進むと、剣心の目に旅籠が飛び込んできた。

「宿……でござるか。逆刃刀かその代わりの物が見つかるかもしれない。一応入ってみるか」

剣心は旅籠へと入っていく。
そしてすぐ、ある気配を感じ取った。

(っ!誰かいる。何処だ。……風呂場のほうでござるか。敵でなければいいのでござるが……)

剣心は自身の気配を殺しながら、見ず知らぬの相手の気配の方へ向かう。
そして脱衣所に入り、そこを素通りし温泉の扉に手を掛けた。

このとき注意深く行動し、脱衣所を調べれば起こらなかった悲劇を、この時の剣心には知る術は無かった。


「誰でござるっ!」

勢い良く入り、中を見渡す。
するとその場には一人の全裸の女性がちょうど風呂から上がるところだった。

「えっ!?」
「おろっ!?」

女性は突然の事に体が硬直する。
剣心も全く予想外の出来事に思わず目を丸くしてしまう。

そしてしばしの硬直の末、ようやく両者が動き出す。

「…………見ましたわね」
「いっ、いや拙者はそんな………不可抗力で……悪気があったわけでは……」
「この覗き魔変態助べえ男おおおぉぉぉっっ!!!」
「おっ、おろーーーーーー!!!!!!」

おろおろする剣心には避ける術など無かった。
次の瞬間には無数の風呂桶が剣心の頭部、腹部、胸部、など全身に直撃し、そのまま剣心は意識が遠くなり、深淵の闇へ
と沈んでいった。


そして数十分後。


「うっ、ここは」

剣心は旅籠の一室で目を覚ました。
そして目の前には先ほど剣心が全てを見てしまった女性(最も今では着物を着なおしている)がいた。

「この旅籠の一室よ。わたくしが運んで差し上げたんですから、感謝しなさい」
「そうでござるか。感謝するでござる。それで拙者はどれほど眠っていたでござるか?」
「半刻も寝て無いわよ。わたくしが着物を着て、髪を結んで、あなたをここに運んだらすぐに目を覚ましたのだから」
「そうでござるか」

すると剣心は立ち上がるが、すぐによろけてしまう。

「おろっ!」
「何してるのよ。無茶はやめなさい」

するとさな子は倒れそうな剣心の肩を持つ。
そして一度剣心を床に座らせる。

「まあ流石にわたくしも悪いと思ってるわ。いくらなんでもあれはやりすぎでしたわ」
「いや。それは拙者のほうこそ…………すまぬでござる」
「べっ、別に謝罪なんていらないですわよ」

剣心は深々と頭を下げるが、さな子は僅かに顔を赤くして剣心から顔を背ける。

「おろ?」

しかし剣心はそれを特に気に止めず、別のことに話を振る。

「そういえばおぬし、名前はなんていうでござる。拙者は緋村剣心と申すが」
「えっ、名前?さな子よ。北辰一刀流の千葉さな子」
「おろっ!?」

そこで剣心は顔をしかめた。
いや、動揺を隠せないでいた。

(千葉さな子?確か竜馬殿と婚約をされていた女性。
いや、それならもっと年配の女性の筈。こんな薫殿とほとんど同じような 歳のはずが……)

「ちょっと、何を驚いてるの?」
「いっ、いや、別になんでもござらんよ」

さな子の対し剣心は生返事を返す。
しかし明らかに動揺は消えずに居た。


【はノ伍 旅籠の一室/一日目/深夜】

【緋村剣心@るろうに剣心】
【状態】健康 全身に軽度の打撲
【装備】斬鉄剣@ルパン三世
【所持品】支給品一式
【思考】
基本:この殺し合いを止め、東京へ帰る。
一:千葉さな子殿?年齢が合わぬが……
二:逆刃刀か木刀がほしい。
【備考】
京都編終了後からの参加です。
京都編での傷は全て完治されています。


【千葉さな子@史実】
【状態】健康 
【装備】物干し竿@Fate/stay night
【所持品】支給品一式
【思考】
基本:殺し合いはしないけど、腕試しはしたいかも。
一:これからどうしましょう?
二:龍馬さんや敬助さんや甲子太郎さんを見つける。
【備考】
二十歳手前頃からの参加です。


時系列順で読む

投下順で読む


試合開始 緋村剣心 船頭多くして、船山昇る
試合開始 千葉さな子 船頭多くして、船山昇る

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2009年03月28日 08:24