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魑魅魍魎 美食の宴_第二章5

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KARASU(2006-10-25)

魑魅魍魎 美食の宴≫ 第二章 天狐

「どうしたってんだい?」
「何か、外で女が暴れてるんでやんす!」
「女が?ここには誰も入れるなって言っただろ?追い返しな」
「それが、自分は呼ばれて来たんだ、って騒いでて・・・」

夜行はゆるりと顔を上げた。

「どんな女じゃ?」
「すっごい別嬪です。赤子抱いてやした。もう柳の葉で叩くから痛くて痛くて・・・」

風の神は鞭打ちになった背中を見せた。

「そりゃあわしの客じゃ。入れてやっとくれ」
「夜行さんの?」
「おお、あやつらに対抗する駒じゃ」

それを聞いて風の神は出て行った。

「先生、それって、龍球に引っ越したアノ子ですか?弟子だっていう」
「左様。最後まで渋っておったがの、昔の話をしたら快く引き受けてくれたわい」

それは脅迫ではなかろうか、というクダのツッコミは喉元まで上り、また腹の中に落ちていった。
明日は我が身。にだけはなりたくない。

風の神に伴われて現れたのは、少々目元がきついが文句なしに美人と言える、柳女の柳葉卯月。
龍球というリゾート地で居酒屋「ヤナギ」を切り盛りしている、一児の母でもある。

「お久しぶりですね、センセ?」
「お前さんも、随分と丈夫そうになったのう。龍球の水がよほど合うと見える」
「ええ、お陰様で。店も順調ですよ」

柳葉は顔を綻ばせた。

「宗旦、女将、紹介しよう。柳葉卯月だ。性格はこの通り荒いが、耳の早さでは、わしの後継はこいつしかいないと思うておる」
「一言余計ですわ」

柳葉はひんやりとした笑みを浮かべたが、海千山千の夜行にそんなものは通じない。

「お嬢、こちらは宗旦狐と、鬼婆の女将だ。猩妖の主にも合わせたかったんじゃが、時間が合わなんだ」
「初めまして。よろしくね」
「お噂はかねがね伺っております」
「おや、どんな噂なんだかねェ」

紹介された三人は軽い挨拶を済ます。
そして

「じゃああたしはちょっと外すよ」

と鬼婆は出て行った。


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