nanaki(2006-10-25)
≪魑魅魍魎 美食の宴≫ 第二章 天狐
烏天狗の森を小さな妖怪が歩いている。
ほっかむりを被り、いかにも怪しい面体だ。
もうどれくらい歩いただろうか…すっかり陽は暮れている。
ほっかむりを被り、いかにも怪しい面体だ。
もうどれくらい歩いただろうか…すっかり陽は暮れている。
「…ああ、暗くなっちまった…どこかで休むか」
小さな妖怪は辺りを見回す。
すると山の上の方から黄色い光が見えた。
すると山の上の方から黄色い光が見えた。
「あれは…店かな…とりあえず行ってみるか…」
歩き出したその瞬間だった。小さな妖怪の小さな背中に悪寒が走る。
「……! いや…まて。あっ、あれは…店じゃない…まさか…」
小さな妖怪が見つめる先には血に飢えた獰猛な妖怪が獲物を待っていたのだ。
しかし。
その妖怪はどこかに行ってしまったようだ。
「ああ、あの方向は…頭の…」
伝えるか?そう思った。
「今となっちゃ、あんな奴等どうでもいいじゃねぇかよ。もう仲間じゃないし、逃げてきたくせに今更戻っても…」
―あんな奴等にはもう俺は必要の無い妖怪、どうにでもなれ―
小さな妖怪・天邪鬼は歩きつかれて棒のようになった足を引き擦り、森の闇に消えた。