KARASU(2006-10-25)
≪魑魅魍魎 美食の宴≫ 第二章 天狐
小さな妖怪、天邪鬼が森の中を歩いていると、ぽつりと灯りが見えた。
今度こそ店だ。
藍色の暖簾を潜って、中に入った。
今度こそ店だ。
藍色の暖簾を潜って、中に入った。
「いらっしゃいませ」
迎え入れたのは、美しい妖怪だった。
「何になさいます?」
「まず、熱燗」
「まず、熱燗」
頬かむりを取らないままカウンターに座り、注文する。
「お待ちどう様」
ことり、と徳利と猪口が置かれた。
天邪鬼はそれを一気に飲み干す。
天邪鬼はそれを一気に飲み干す。
「お客さん、そんな呑み方したら身体壊しますよゥ」
「うるへえ!おれがどんなのみかたしようが・・・ひっく、おれのかってだろうがよう!」
「そんな呑み方されちゃあ酒が可哀想じゃないですか。ほら、これでも召し上がって」
「うるへえ!おれがどんなのみかたしようが・・・ひっく、おれのかってだろうがよう!」
「そんな呑み方されちゃあ酒が可哀想じゃないですか。ほら、これでも召し上がって」
女将は筍の木の芽和えを天邪鬼の前に置いた。
天邪鬼は箸を取る。
天邪鬼は箸を取る。
「お、うめえじゃねえか」
「そうでしょう?」
「そうでしょう?」
女将はふふ、と笑う。
「少しは落ち着きました?」
「・・・ああ、見っともねえ姿見せちまって・・・」
「何があったかなんて聞きませんが、酒は楽しく呑みましょうよ」
「・・・ああ、見っともねえ姿見せちまって・・・」
「何があったかなんて聞きませんが、酒は楽しく呑みましょうよ」
女将の優しい言葉と笑顔に、天邪鬼の気持ちはほろほろとほどけていった。
「おかみよう、聞いてくれるかィ」
「何ですか?」
「おれは、なかまを裏切っちまったんだ」
「お仲間を?」
「何ですか?」
「おれは、なかまを裏切っちまったんだ」
「お仲間を?」
女将の柳眉が上がった。
「ああ、にげてきちまったんだあ。おれはひきょうもんなんだよお」
「そんな、」
「なぐさめなんかいらねえよ。ああ、ひきょうもんだひきょうもんだ」
「そんな、」
「なぐさめなんかいらねえよ。ああ、ひきょうもんだひきょうもんだ」
筍を食べながら愚痴をこぼす天邪鬼に、女将はぽつりと
「お辛かったでしょうね」
と、一言、落とした。
天邪鬼は、ばっと顔を上げる。
天邪鬼は、ばっと顔を上げる。
「さぞ、お辛いでしょうね」
もう一言。
「・・・今からでも、間に合うと思うかィ」
「お客さんが間に合うと思えば、間に合いますよ」
「お客さんが間に合うと思えば、間に合いますよ」
それを聞くと天邪鬼はカウンターから立ち上がった。
「女将、御代ここに置いとくぜ!」
「毎度。あ、お客さん」
「何でェ」
「その頭、可愛いですね」
「毎度。あ、お客さん」
「何でェ」
「その頭、可愛いですね」
そして、客のいなくなった店内で。
「あの天邪鬼、揺さ振りをかけられるかしら?それにしても、あちらも動きが早いわ・・・」
そう呟く、女将がいた。