shion(2006-11-26)
≪魑魅魍魎 美食の宴≫ 第二章 天狐
鬼一口組の名の由来は、組長の刺青である。
世の全てを貪欲に飲み込む、という意味らしい・・・が、鬼一口に遺恨がある・・・とも言われている。
世の全てを貪欲に飲み込む、という意味らしい・・・が、鬼一口に遺恨がある・・・とも言われている。
事務所に、さきほどの狸が帰ってきた。
この狸、名を吾蔵という。
この狸、名を吾蔵という。
「組長、あきまへんでした」
さっきとは打って変わって関西弁で話し出した・・・組長の前では関西弁、という決まりでもあるらしい。
さっきとは打って変わって関西弁で話し出した・・・組長の前では関西弁、という決まりでもあるらしい。
「そうかぁ・・・まあええ、次があるわ」
どっしりと座椅子に座る大狸、組長の金治。
金長狸の再来ともうたわれる、傑物である。
毛には白いものが混じっているが、その貫禄は他を寄せ付けないものがあった。
どっしりと座椅子に座る大狸、組長の金治。
金長狸の再来ともうたわれる、傑物である。
毛には白いものが混じっているが、その貫禄は他を寄せ付けないものがあった。
「組長、猫又の城田の野郎が、まだ金を返しよりません」
新入りの豆狸、吉二が言った。
新入りの豆狸、吉二が言った。
「・・・しゃあない、尻尾の一本でも詰めたれ」
彦二はビクビクしている。
彦二はビクビクしている。
「組長、自分が吉二に付いてったてもええですか?」
吾蔵がフォローを入れた。
「ああ、その代わり、抜かるなや」
二匹は深々と一礼すると、事務所を出た。
吾蔵がフォローを入れた。
「ああ、その代わり、抜かるなや」
二匹は深々と一礼すると、事務所を出た。
「あ~、組長にはいつ会っても怖いです~」と吉二はため息をついた。
「まあ、あの人も昔からああいう訳じゃないんだがな」
「ところで兄貴、組長の机に置いてある子狸の写真、あれ何ですか?」
「ああ、秘密の話だがな、組長にはお嬢さんが居たんだ・・・」
「お嬢さん、ですか」
「だが、この稼業に付く以上、何が降りかかるか分からない。だから、組長は娘さんを捨てた」
「で、お嬢さんは・・・」
「一、二年前に一度だけ様子を見に行かれたようだ。結婚して、可愛い子供もいるらしい。小さな港の村で、幸せに暮らしてるそうだ」
「じゃあ、あれはお孫さんの写真ですか」
「ああ・・・たぬ・・・何て言ったかな」
「まあ、あの人も昔からああいう訳じゃないんだがな」
「ところで兄貴、組長の机に置いてある子狸の写真、あれ何ですか?」
「ああ、秘密の話だがな、組長にはお嬢さんが居たんだ・・・」
「お嬢さん、ですか」
「だが、この稼業に付く以上、何が降りかかるか分からない。だから、組長は娘さんを捨てた」
「で、お嬢さんは・・・」
「一、二年前に一度だけ様子を見に行かれたようだ。結婚して、可愛い子供もいるらしい。小さな港の村で、幸せに暮らしてるそうだ」
「じゃあ、あれはお孫さんの写真ですか」
「ああ・・・たぬ・・・何て言ったかな」
そんなことを話していると、前から別の狸が走ってきた。
「あ、兄貴~、金の油揚げは手に入りましたか~!?」
「いや、まだだ。これから城田の野郎をちょいと痛めつけに行くところだ」
「そ、それどころじゃありませんぜ!天狐さんが、天狐さんが・・・!!」
「あ、兄貴~、金の油揚げは手に入りましたか~!?」
「いや、まだだ。これから城田の野郎をちょいと痛めつけに行くところだ」
「そ、それどころじゃありませんぜ!天狐さんが、天狐さんが・・・!!」