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魑魅魍魎 美食の宴_第二章15

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nanaki(2006-12-12)

魑魅魍魎 美食の宴≫ 第二章 天狐

「こいつは…?袋狢?おい。連れて行け」
「袋狢だって?まだいたのか…」
「お前の役目は終わったんだ…残念だったな…」


―嫌だ…アンタだけは分かっていると信じていたのに…結局は…アンタも同じだ…やめてくれっ…連れて行かないで…おいっ…何とか…何とか言ってくれよ…!


――…



「はっ!!!!」

どれくらい寝ていたのだろうか。俺は今薄暗い洞窟の中で横たわっている。
辺りを見回すが暗くてよく分からない。
先ほどまで妖怪狐連盟の銀狐組を全滅させたと思ったんだが…


「おう。起きたか…」


突然暗闇の中から聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「お前…天邪鬼…」


そう。声の主は天邪鬼。俺がいる組織「天狐」の下僕のうちの一匹だ。

はっきりいって役にはたたない。

「…何だ。伝吉。狐に抓まれたみたいなツラしやがってよ…」

「うるせえ…俺は狢だ。袋狢だよ。狐なんかと一緒にすんじゃねえ」

「フン…。お前はな烏天狗の森の中でぶっ倒れてやがったんだよ。そこをたまたま通りかかったオレが助けてやったんだ。ありがたく思え…おっと…別に助けたくて助けたんじゃねえからな?たまたま通ったらそこに狢がいて邪魔だったからだぞ?」

「分かったよ…お前はどこまで天邪鬼なんだよ。ちくしょう…どいつもこいつも…」

「何?」

「何でもねえよ」

こんな奴と話している時間はないのだ…早く天狐に報告しなければ…

「痛ッ…」

「おいおい。まだ動くなよ…。お前倒れたときに怪我してんだからよ」

「怪我…」

見ると足首から血が滲んでいる…俺としたことが…

「おい」

「何だ」

「オレよぅ、前々から思っていたんだが…。お前気付くといつも何か触ってるよな。それ、何だ」

「ああ…お前には関係ねえよ」

「冷てぇなぁ~伝吉よぉ~。助けてやったんだからよ教えてくれたっていいじゃねえか、あ、分かった昔の女の贈り物か何かか?」

「そんなんじゃねえよ」

「じゃぁ、なんだよ…」

「ちっ…」

俺は仕方なく懐から「それ」を出す。

「それ」は真っ白な石で何かの獣の牙のような形をしている。

「おいおい…何だ…そりゃぁ…」

「…昔の…仲間との証だよ」

「はぁ?昔の仲間ぁ?ぎゃはははははは!!!笑わせてくれるぜ、伝吉よ。お前にも仲間がいたのかよ!!」

「……」

「そうかそうか…それで?」

「あ?」

「だから、それでその仲間ぁ、どうなったかって聞いてんだよ」

「そんなこと…お前には関係ないだろ」

「フン。まぁいいや。だがな、伝吉。いつまでも過去に囚われてるとお前、―死ぬぞ」

「なんだと?」

「それ…狐の石だろ」

「!!おっ…お前…何故それを…」

「それと全く同じ物をオレは最近見たんだ。確かそれも狐が身に着けていたよ。え?本当に狐の石っていうのか?それ」

「まさかっ…この石は…」

この石は、あいつとの友情の証であり仲間の証…

―これは僕と伝吉の友情と仲間の証だ。ずっと持っていてくれ…

そうだ。アンタはあの時そう言ったじゃないか…。なのに…。

「おい」

「何だよ」

「そんなもの、持っていても仕方ないだろ。捨てろ」

天邪鬼はその石を眺めながらあざけ笑っている。

「うっ…うるせえよ!天邪鬼!てめぇ、黙って聞いてりゃいいたい放題ぬかしやがって!!」

俺は天邪鬼の首めがけて突進する。

「おっ…おい!まてまて!冗談だよ!冗談!!そんなに怒ることねえじゃねえかよ…」

「天邪鬼…」

「なっ…なんだよ…」

「その狐…どこで見た…」

「あ?ああ…確か最近出てきた店で…太郎そば…だったかな…そこで俺、ただ食いして逃げてきた所をばったり鉢合わせよ」

「…それで」

「へ?チクんじゃねえぞ?え?違う?あ、狐?その狐は確か真っ白な狐で…そうそう、ひょろっとした小柄の狐と一緒にいたよ…それで…って…おいっ!伝吉!!どこいくんだ!!」


―見つけた…長年俺を苦しませてきたアンタを…ようやく見つけた…

俺は走った。足の怪我はとうに治っているようだ…

まずは太郎そば…か…

「…宗旦…」


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