nanaki(2006-12-12)
≪魑魅魍魎 美食の宴≫ 第二章 天狐
「こいつは…?袋狢?おい。連れて行け」
「袋狢だって?まだいたのか…」
「お前の役目は終わったんだ…残念だったな…」
「袋狢だって?まだいたのか…」
「お前の役目は終わったんだ…残念だったな…」
―嫌だ…アンタだけは分かっていると信じていたのに…結局は…アンタも同じだ…やめてくれっ…連れて行かないで…おいっ…何とか…何とか言ってくれよ…!
――…
「はっ!!!!」
どれくらい寝ていたのだろうか。俺は今薄暗い洞窟の中で横たわっている。
辺りを見回すが暗くてよく分からない。
先ほどまで妖怪狐連盟の銀狐組を全滅させたと思ったんだが…
辺りを見回すが暗くてよく分からない。
先ほどまで妖怪狐連盟の銀狐組を全滅させたと思ったんだが…
「おう。起きたか…」
突然暗闇の中から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「お前…天邪鬼…」
そう。声の主は天邪鬼。俺がいる組織「天狐」の下僕のうちの一匹だ。
はっきりいって役にはたたない。
「…何だ。伝吉。狐に抓まれたみたいなツラしやがってよ…」
「うるせえ…俺は狢だ。袋狢だよ。狐なんかと一緒にすんじゃねえ」
「フン…。お前はな烏天狗の森の中でぶっ倒れてやがったんだよ。そこをたまたま通りかかったオレが助けてやったんだ。ありがたく思え…おっと…別に助けたくて助けたんじゃねえからな?たまたま通ったらそこに狢がいて邪魔だったからだぞ?」
「分かったよ…お前はどこまで天邪鬼なんだよ。ちくしょう…どいつもこいつも…」
「何?」
「何でもねえよ」
こんな奴と話している時間はないのだ…早く天狐に報告しなければ…
「痛ッ…」
「おいおい。まだ動くなよ…。お前倒れたときに怪我してんだからよ」
「怪我…」
見ると足首から血が滲んでいる…俺としたことが…
「おい」
「何だ」
「オレよぅ、前々から思っていたんだが…。お前気付くといつも何か触ってるよな。それ、何だ」
「ああ…お前には関係ねえよ」
「冷てぇなぁ~伝吉よぉ~。助けてやったんだからよ教えてくれたっていいじゃねえか、あ、分かった昔の女の贈り物か何かか?」
「そんなんじゃねえよ」
「じゃぁ、なんだよ…」
「ちっ…」
俺は仕方なく懐から「それ」を出す。
「それ」は真っ白な石で何かの獣の牙のような形をしている。
「おいおい…何だ…そりゃぁ…」
「…昔の…仲間との証だよ」
「はぁ?昔の仲間ぁ?ぎゃはははははは!!!笑わせてくれるぜ、伝吉よ。お前にも仲間がいたのかよ!!」
「……」
「そうかそうか…それで?」
「あ?」
「だから、それでその仲間ぁ、どうなったかって聞いてんだよ」
「そんなこと…お前には関係ないだろ」
「フン。まぁいいや。だがな、伝吉。いつまでも過去に囚われてるとお前、―死ぬぞ」
「なんだと?」
「それ…狐の石だろ」
「!!おっ…お前…何故それを…」
「それと全く同じ物をオレは最近見たんだ。確かそれも狐が身に着けていたよ。え?本当に狐の石っていうのか?それ」
「まさかっ…この石は…」
この石は、あいつとの友情の証であり仲間の証…
―これは僕と伝吉の友情と仲間の証だ。ずっと持っていてくれ…
そうだ。アンタはあの時そう言ったじゃないか…。なのに…。
「おい」
「何だよ」
「そんなもの、持っていても仕方ないだろ。捨てろ」
天邪鬼はその石を眺めながらあざけ笑っている。
「うっ…うるせえよ!天邪鬼!てめぇ、黙って聞いてりゃいいたい放題ぬかしやがって!!」
俺は天邪鬼の首めがけて突進する。
「おっ…おい!まてまて!冗談だよ!冗談!!そんなに怒ることねえじゃねえかよ…」
「天邪鬼…」
「なっ…なんだよ…」
「その狐…どこで見た…」
「あ?ああ…確か最近出てきた店で…太郎そば…だったかな…そこで俺、ただ食いして逃げてきた所をばったり鉢合わせよ」
「…それで」
「へ?チクんじゃねえぞ?え?違う?あ、狐?その狐は確か真っ白な狐で…そうそう、ひょろっとした小柄の狐と一緒にいたよ…それで…って…おいっ!伝吉!!どこいくんだ!!」
―見つけた…長年俺を苦しませてきたアンタを…ようやく見つけた…
俺は走った。足の怪我はとうに治っているようだ…
まずは太郎そば…か…
「…宗旦…」