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850 名前:とある未来の・・・第四章(1)[sage] 投稿日:2010/04/29(木) 00:22:09 ID:dQiP1xmQ 4.頼み事 「不幸だ・・・・・・」 上条当麻は朝の日差しを浴びながらがっくりとうなだれている。 彼が『不幸』と言う時は大抵彼の同居人であるシスターに噛まれていたり 現在彼の想い人であるとある少女に追い掛け回されたりする時に言うのだが 今回は別の意味でよくある『不幸』であった。 「どうしたんだ親父?」 朝食を食べ終えた当瑠がキョトンとした表情で聞いてくる。 自分と似た顔立ちの彼がのんきな表情をしていると、何故か ムカムカしてぶん殴りたくなってくるが、彼に罪は無い。 「ふっ、息子よ・・・・・・良くぞ聞いてくれた」 ふふふ・・・・・・と上条をよく知らない人間が見たら 「ママあれなにー?」「こら見ちゃいけません」と言われる表情をしている。 だがしかし当瑠は上条が手の端に握っている物に気づいたようだ。 「・・・・・・親父・・・・・・それ・・・・・・」 なんてこった、そう言って当瑠も頭を抱える。 上条が握っているものはそれほどまでに頭を悩ませるものなのだ。 「あぁ・・・・・・長期休暇ももう少しで終盤だってのに・・・・・・これだ」 そう、長期休暇もすでに終盤。 上条の長期休暇は充実したものだった。 好きだと思える人ができ、そしてその人とデートをした 恋する純情少年となった上条にとってこれは大きな収穫であり さらに新たな一歩を踏み出す土台となる休暇となった。 「こんな大きな壁が残っていたなんて・・・・・・」 しかし、そんな幸福を、簡単に神様がくれるわけがなかった。 幸福の代償として支払わされるのは『不幸』。 なぜこんなことに気づかなかったのか・・・・・・。 いや気づかなかったのではない、気づくことを忘れるくらい幸せだった。 運命は残酷である。 本当は想い人と今日だって会いたかった。 もう一度言おう、運命は残酷だ。 せっかく積極的になろうと思ったのにこれだ。 (くそ!なんて俺は馬鹿だったんだ!) 自分を叱咤する。 それは過去に自分に対する怒り。 どうしてもっと日常を大切に出来なかったのか。 学生として一番大事な事はなんだった。 そう、答えはすでに出ていた。 「課題を終らせるのすっかり忘れてた」 気分は夏休み最終日のようだった。 851 名前:■■■■[sage] 投稿日:2010/04/29(木) 00:22:34 ID:QuyIsRqg >>847 gj! 852 名前:とある未来の・・・(2)[sage] 投稿日:2010/04/29(木) 00:22:41 ID:dQiP1xmQ 「親父・・・・・・どうしてもっと早くに終らせなかったんだ」 遊んでる場合じゃなかっただろ、と息子に言われかなりしょげる上条。 すでに部屋の片隅で膝を抱えて震えている。 「う゛・・・・・・みざがぁ・・・・・・」 課題よりも逢えない事の方が大事だ。 今日も彼は想い人のビリビリ(つまり御坂美琴の事であるが)と会う気満々で そのための計画までめったに使わない携帯のネット機能でデートスポットを  探したのにその結果がこの様だ。 会うどころか上条の進級すら危うい。 「・・・・・・親父・・・・・・母さんに会いたい気持ちは分かる。 だけど、これから先のことも考えれば、親父のやるべき事は決まってるんじゃないか?」 ずいっと大量の課題を押し付けられる上条。 その課題をもう一度見直す。 数学、物理、生物、化学、英語などなどとても一人の力では一日で終らすなど無理だ。 「待てよ・・・・・・一人?」 チラッと横目で息子を見る。 「おい・・・・・・まさか俺にやらせようってのか?」 「息子よ・・・・・・お前は住む場所を与えられている、いわば居候だ」 居候だろうが家の手伝いなど全くしないシスターもいるのだが そんな事は気にしないし、今の居候は立場が弱いはずだ。 「お前には、手伝う義務がある・・・・・・」 ユラァと幽霊のように立ち上がる上条を見て 当瑠が慌てたように後ずさる。 「待て!親父!宿題は自身の力でやるから意味があるんだ! 他人の力を借りて終らすなど言語道断!卑怯者する行為だぞ!!」 言っている事は正論で全く間違いではない。 だが、今の上条に一般常識は通用しない。 「俺が・・・・・・俺が・・・・・・寝る間も惜しんで立てた計画が・・・・・・」 ふらふらと当瑠との距離を詰めていく上条。 「み゛ざがをさそう計画が・・・・・・」 黒いオーラを充満させ息子を取り込もうとする。 オーラが当瑠の体を包み込み、身動きが取れなくなっていく(ような気がする) ひっと小さな悲鳴が聞こえる。 「おや・・・・・・じ・・・・・・まて・・・・・・」 もはやこれまで、という顔をした当瑠に上条はニヤッとする。 捉えた獲物同然、後は彼の前に課題を押し付けるだけだ。 そして自分はそのままハッピーライフへと赴く。 上条の頭の中はすでに美琴と遊びに出かける妄想が開始されていた。 「ちょっと、落ち着きなさいよ」 突然頭部に軽い衝撃が加わった。 853 名前:とある未来の・・・(3)[sage] 投稿日:2010/04/29(木) 00:23:19 ID:dQiP1xmQ 後ろを向いてみるとそこにいたのは美詠だ。 課題を丸めて片手に持って腕を組んでいる。 そして、一度溜息をついて上条をテーブルに座らせた。 「お母さんに逢いたいのは分かるから、やっちゃいなさいよ」 ほら、ペンも持つ、と母親みたいにあれこれやられる。 それはいいのだが美琴と似た顔の少女に手を握られたり 背後に回られたり、顔が近付くといかに黒オーラ上条でもドキッとしてしまう。 「う゛う゛・・・・・・やりたくない・・・・・・」 ペンを握ってもやりたくないのはどうせ問題が分からないからで 数学や物理であれば式を見ただけでイヤになってしまうし 英語なんて単語を見るだけでも気分が悪くなる。 「・・・・・・・・・・・・そんなに嫌なわけ?」 こくこくと首の動きだけで伝えると、美詠は課題を上条からひったくると 問題をすらすらと解き始めた。 物凄い速さで数式が書かれていき瞬く間に一ページ分の問題が解き終わる。 「ほら簡単じゃない。 ・・・・・・教えてあげるから、次のページから解説聞いときなさいよ」 なんだか以前もこんなことがあった気がする上条だが 中学生に勉強を教えられることに情けなさを感じながら 美詠が分かりやすく解説する問題を解く。 「・・・・・・」 美詠が何を言っているかさっぱり分からないときがあるが 例えや表現は上条にもしっかり伝わるし、質問すれば即座に答えてくれる。 「さっすが常盤台のお嬢様だな・・・・・・」 美詠ほどの速さではないにしろ上条の数学の課題はどんどん終っていく。 数学ってこんなに簡単だったっけ?と疑問が浮かんでくるくらいだった。 美詠に聞こえるように上条は呟いていた。 「ふふん、伊達に学園都市第三位じゃないわよ?どんな問題でもどーんとこいよ!」 そう言って薄い胸を張る。 自然と上条の視線はそこに行ってしまうわけだが、今度は重い衝撃が上条を襲う。 「なにすんだ!当瑠!」 面白くなさそうな表情で当瑠が上条の頭部に鉄拳を喰らわしていた。 「なーに、イヤらしい目で見てんだよ親父」 多少見下した言い方をする当瑠。 なんだか本気で起こっている気がしないでもないが上条はあえて何も言わない。 「美詠、この問題なんだけど――――ぐぇ!」 当瑠を無視して分からない問題を美詠に聞こうとすると 腕を首に回されて美詠から遠ざけられた。 そして、入れ替わるように当瑠が美詠の隣になる。 「美詠、俺にも教えてくれよ」 そう言う当瑠に美詠は首を傾げた。 「なんで私があんたに教えないといけないのよ?」 「この後のために決まってんだろ?俺もこれと同じ事するんだから。 それにいつも教えてくれるじゃねぇか」 尤もなような事を言って、上条の課題を奪い取り、勝手に問題を進めていく。 先ほど自身でやるのが宿題だといっていた人物とは別人のようだった。 美詠も別にいやという訳では無いらしく、顔を少し赤らめながら当瑠から少し離れて 専属の家庭教師を始めた。 854 名前:とある未来の・・・(4)[sage] 投稿日:2010/04/29(木) 00:23:44 ID:dQiP1xmQ 数学の課題が奪われてしまい、さてどうしようと思う。 そこで視界に入ったのは英語の課題だった。 単語を見ただけで気分が悪くなるのは変わらないが、他の教科よりは楽だ。 それもそのはず上条はとある携帯アプリで英会話には心得がついているのだ。 発音は駄目でも意味や文法は少しは分かる。 「・・・・・・えっとこれは・・・・・・」 初めの問題は解けた。 二問目もなんとなくだが理解でき自身を持って答える。 他の問題も結構すらすらと解けていき、俺って結構やるじゃんなんて思ったりする。 (・・・・・・そういや英語の方も御坂に教えてもらったような) つい先日のことをいつの間には思い出していた。 美琴のことを思うと顔が少しだけ熱を持ったが だから解けたのか・・・・・・アプリ意味ねぇと落胆もする。 (・・・・・・この前の物理もあいつに教えてもらったな・・・・・) 思い返してみると上条は事あるごとに美琴に課題を手伝ってもらっていた。 英語では綺麗な発音でプロっぽく得意げに解説したり 物理や数学なんかではこれまた得意そうにわざわざ自分で作ったという 自主作成の問題解説プリントを作ってきて上条に渡してきたりしてくれた。 「べ、別に、アンタのためじゃないわよ! 私が口で教えるのめんどくさいから作ってきてるんだから!」 美琴が顔を真っ赤にしてそう言ったのを思い出す。 結局プリントを渡してもそれを見ながら口出しするので プリントを作った意味がなくなってしまったが。 ぴたり、と手の動きが止まってしまった。 (・・・・・・御坂) 今は彼女のことを考えている場合ではない。 頭で分かっていて、手を動かせ、問題に集中しろ、と脳に命令しても中々動かない。 それどころか美琴の顔の方がどんどん浮かんできてしまい課題に集中できない。 そうだ、彼女がいつも隣にいた。 めんどくさい、わざわざ呼ぶな、こっちも忙しい、いい加減覚えろ そんなふうに何度も怒られたが、最後には「しょうがない」と言って 問題を解いていってくれる優しい女の子。 自分は甘えている、どうせ彼女が解いてくれる、一緒にいてくれる。 ――――――俺、もしかして・・・・・・ わざと課題貰って美琴との時間をつくっていた? 一緒にいたかったから?少しでも多く逢いたかったから? その事に気づいて一気に顔が熱くなっていく。 ―――――前からあいつの事好きだったのか? やっぱり自分の気持ちに気づかないフリをしていただけだった。 855 名前:とある未来の・・・(5)[sage] 投稿日:2010/04/29(木) 00:24:14 ID:dQiP1xmQ 御坂美琴は寮のベッドの上でボウッとしていた。 何も考えていないわけではない、むしろ考えすぎていてそう見えるだけだ。 (・・・・・・楽しかったなぁ) 最終的にその言葉が自身の考えの中で結論が行く。 終着点がそこで、始まりの位置もそこなのだ。 (あいつも笑ってくれたし・・・・・・) カァッと頬から熱を帯びていくのが分かる。 いやいやするように顔を振るが熱は冷めてくれない。 むしろ『アイツ』の顔が浮かんできてしまい熱は強くなっていく。 (・・・・・・うぅ、逢いたい) のろのろと手を伸ばして手元にあるぬいぐるみを抱きしめる。 ぬいぐるみの胸辺りに顔をうずめて目をキュッとつむる。 浮かんできたのは昨日の出来事の数々だ。 昨日、というのは『アイツ』とのデートのことだ。 一緒に遊園地に行って、色んな乗り物に乗って、はぐれそうになって、 それがイヤで手を繋いで、お弁当を食べて、食べさせてあげて ・・・・・・最後に乗った観覧車では押し倒されて抱きしめられた。 (・・・・・・私のこと、好きになってくれたのかな?) 多分だが少しだけ自信が持てた。 嫌われてはいないと思う、今までよりは。 美琴は『アイツ』が自分に少しでも振り向いてくれた事に喜ぶ。 抱きしめたぬいぐるみに力が加わる。 (好き) 自分の方が『アイツ』の事が好きだ。 根拠もないが絶対そうだといえる。 きっと好きになったのは自分の方が先だから。 想いが伝えられなくて悩んでいるのは自分の方だから。 (好き) 言いたい。 『アイツ』と面と向かって、自分に素直になって言いたい。 まっすぐに顔を見て、目を逸らされたらこっちを向かせて。 ・・・・・・抱きしめながらでもいい。 (私はアンタのことが好き・・・・・・) 誰よりも、何よりも。 『アイツ』が、『上条当麻』が好きだ。 (アンタ以外の人なんて好きになれない) とても素敵な人だから。 誰よりも鈍感で、誰よりもぶっきらぼうで、めんどくさがりで でも、誰よりも優しい、そんな人だから。 ――――御坂美琴は上条当麻のことが誰よりも好きだと言える。 856 名前:とある未来の・・・(6)[sage] 投稿日:2010/04/29(木) 00:24:46 ID:dQiP1xmQ 「あー!なーに物思いにふけってんだか!」 ぬいぐるみを体から離してベッドから立ち上がる。 時計を見るとそろそろお昼時で、食堂に人が集まり始める時間だった。 「着替えなくっちゃね」 今日は朝から寝巻きな事を思い出してクローゼットを開ける。 そこには着慣れた制服がかけられていて美琴は素早くそれに着替えた。 ものの数分で『常盤台のお嬢様』が完成する。 「・・・・・・」 彼、上条は自分の制服の姿をどう思っているだろうか。 自慢をするわけではないが常盤台の制服はそこらの学校よりも可愛いと思うし 着ていてもイヤだと思うことは少ない。 「私服の私だと、どう思うかな?」 可愛い?と聞けばどう答えるか。 多分正直に「子供っぽい」と言う。 実際に昨日、自分の私服を見て、一気に自信がなくなったし 上条も自分に幻滅・・・・・・とまでいかないが一緒に歩きたがらないかもしれない。 「どうしよう」 別に今日着るわけではないが、急に気になり始めた。 もっと自分を見て欲しい、そんな欲求に駆られる。 それにして欲しいこともまだまだたくさんある。 「黒子に聞いてみようかな・・・・・・?」 おしゃれかどうかは分からないが自分よりもそういうことに興味がありそうな ルームメイトが思い浮かんだが、いやいやとすぐに思い直す。 ・・・・・・何を言われるか分かったものじゃないからだ。 (当分この問題は置いておこう・・・・・・) 少なくとも中学校にいる間は制服でいても何も不思議に思われない。 せいぜい回りから視線が少し集中するくらいだ。 それに上条と自分がいるところは見られても全くイヤではない。 私服はこの前決めたように雑誌でも持って買いに行けばすむ話しだ。 (それよりも・・・・・・) 今度は彼女にとってかなり重要な問題に直面する。 それは美琴がずっと言いたい事で、最近の出来事でその欲求が更に強くなったことだ。 (い、言わなきゃ・・・・・・今度あったら絶対いわないと!) 美琴は一人心に決める。 上条に一つの頼みごと、お願いをすることだ。 「よし!言うぞ!」 そのためにも今日はたくさん食べよう。 戦、といえば大げさだが、それくらい美琴は言いたかった事なのだ。 美琴はグッと拳を握り締めて気合を入れて、食堂に向かった。 ほんの些細で小さな願いを込めて。 857 名前:とある未来の・・・(7)[sage] 投稿日:2010/04/29(木) 00:25:12 ID:dQiP1xmQ 「よし、この問題を解けば・・・・・・」 上条当麻は相も変わらずテーブルに向かっていた。 しかし、いつもと状況が違うのは明白だ。 彼はたった一人の力で英語の課題を終らせたのだ。 最後の問題は長文の翻訳。 意味の分からないものは辞書を引いたが英語の下に日本語が書き込まれる。 「できたー!」 思わず右手を上げてガッツポーズをする。 かかった時間はおよそ三時間、すでに昼時は越えてしまっている。 「他の課題は・・・・・・と?」 この調子でやってやるぜと勢いづいて隣を確認するが 上条の隣に積まれていた課題の数々がなくなっていた。 「ない!!?」 ここでまさかの上条の不幸属性がその効果を発揮したのだろうか。 アレを提出できなければ留年は確実となり進級は絶望的になる。 「――――――なんでこうなんの?」 ふと、隣で声が聞こえる。 声の正体は当瑠であり美詠とまだ上条の課題をやっていた。 (・・・・・・なんであいつの隣に移動してんだよ) 課題は当瑠の隣に置いてあった。 つまれている課題を良く見てみると何回かめくった後があるように見える。 「まさか!!」 嫌な予感はしなかった。 積まれている課題を自分の目の前に引っ張り出し一ページずつ確認する。 (ほ、ほとんど埋めてある・・・・・・) ほぼ全ての課題が完璧に終っていた。 残っているのは国語の課題で、読書感想文だか少年の主張だかそんな感じの作文のプリントだけだ。 この分であれば上条でも残り二、三時間かければ終るだろう。 本当は喜ぶべきなのだろうが上条としては少しへこむ。 (なんでこいつ等こんなに解くのはやいんだ!!?) 自分は三時間近くかけて一つの課題を終らせたのに当瑠と美詠は その時間内にほとんどの課題を終らせてしまっているのだから、かなり悔しい。 「だからぁ、ここはこうなって・・・・・・こうなるからよ」 「ふーん・・・・・・なるほどなるほど」 「でさ、ここなんだけど・・・・・・ここがこうでさちょっと面白くない?」 「なんだこりゃ!?なんでこんな事になってんだよ」 なんかとてつもなく楽しそうに問題を解いていっている。 当瑠も美詠も同じように顔を見合わせて笑顔を見せていた。 初めは距離を少しとっていた美詠も教えにくかったのか近付いていて 肩がぶつかりそうなくらいになっている。 距離が近い事に当瑠の方は何か思うことがあるのか笑顔を見せながらも 少しだけ照れていて、ペンを持っていない片方の腕は所在無さげだが 何度もわきわきと動いて美詠の肩のあたりを行ったりきたりだ。 (・・・・・・め、目の前でいちゃつきやがって!) 今までの行動から見れば上条にも当てはまるし 当瑠と美詠は兄妹と言っている事も忘れて若干の嫉妬が浮かんでいるが気にしない。 しばらくして美詠の方が距離が近付いた事に気づいたのか当瑠と合った目をいきなり逸らし当瑠の体から離れる。 当瑠の方は一瞬残念そうな、ホッとしたような表情をして問題をまた解き始め 美詠は美詠で指をもじもじとさせて小声で遠目にぶつぶつと何か言う。 (あー!これ以上見てらんねぇ!) 嫉妬の炎が湧き上がるのが止められないので当瑠と美詠から視線を逸らし 作文のプリントを引っ張り出す。 他の課題もまだ少しだけ残っているが気分転換に作業を変えた方が集中しやすそうだった。 858 名前:とある未来の・・・(8)[sage] 投稿日:2010/04/29(木) 00:25:49 ID:dQiP1xmQ プリントを引っ張り出して出だしの文章を考えていると 前方でチャックを開ける音がする。 何事かと思って顔を上げると一人で絵本を読んでいた美春が彼女の鞄からプリントと本を出して鉛筆を握っていた。 鉛筆の握り方も基本通りで綺麗な形で持っているので教育をしっかり受けたのが分かる。 「・・・・・・何してんだ?美春?」 声をかけると特徴的な前髪(俗に言うアホ毛だ)がぴょこぴょこと動いて それに連動するように美春の顔が上がっていく。 「みはるもおべんきょーするの!」 ――――ほぅ・・・・・・なかなか可面白い事をいうじゃないか。 「よしよし、お父さんに見せてみなさい」 美春の年齢は五歳だ。 五歳と言えば小学校の低学年にも入っていない幼稚園児、きっと勉強といったって ひらがなの書き順だとかカタカナの『ソ』と『ン』の違いくらいだろう。 「パパにとけるかなぁ?むずかしいんだよ?」 馬鹿にするでもなく可愛らしく小首を傾げて笑顔で上条にそのお勉強を渡してくる。 「ふっふっふ、大人を舐めるんじゃありません」 上条は愛する娘に褒められるべく(かなり低レベルな願望だが)目を通す。 だがしかし、そのお勉強に驚愕する事になる。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はぃ?」 プリントに書かれている言葉は見たことも無い記号だが文字だかが綴られ絵も載っている。 そして記号か分からない文字のような物が説明していると思われる絵にはどこぞの国の壁画のようだった。 「美春ちゃーん、お勉強してたんだよねー」 子供特有の暗号化と思って聞いてみる。 「うん!お勉強してたよ!」 えらいでしょ、とエヘヘと笑いながら返してくる。 どうやら秘密基地の設計図だとか暗号では無いらしい。 だとすればこれは何なのか?上条は首をひねって更に聞く事にする。 「これってどこの国言葉なのかな?お父さんに分かるよう説明しなさい」 「『えじぷと』ってくにのもじだよ?」 ――――なんでそんな国のお言葉を勉強なさってらっしゃるんですか? 「えーっと?美春は一体どんなところに通ってるんだ?」 そういえば聞いていなかった事だった。 美詠は常盤台の中学校と言う事は分かるし、当瑠の制服は上条の通っている高校の制服に 酷似しているから多分上条の通っていた高校だと予想はつく。 では美春はどこに通っているのだろうか? 「ときわだいちゅうがく ふぞく ときわだいようちえん!」 おじょうさまだよえっへんと美詠よりも薄い胸を張る美春。 『常盤台中学 付属 常盤台幼稚園』それが美春の通う幼稚園らしい。 「こんなちっちゃな子に何を教えてるんだ・・・・・・」 大学でも『えじぷと』語なんて勉強する人間はそうそういないだろう。 むしろ世界史とかの史学で考古学者を志す人間がするはずだ。 間違っても幼稚園児がやるものではない、と上条は思う。 「みはるのようちえんって『えりーと』をめざしてるんだって。 ママはあんまりうれしそうじゃないけどね?みはるはこれすごくたのしいよ! マーちゃんはよころんでくれるし、ユーくんはそんなことせずにあそぼっていうんだけど・・・・・・」 なんか五歳児が勉強について語りだしたが とりあえずマーちゃんはいい子だと言う事とユーくんは美春のことが好きだろう ということくらいしか分からなかった。 859 名前:とある未来の・・・(9)[sage] 投稿日:2010/04/29(木) 00:26:16 ID:dQiP1xmQ 結局その後も美春と話していて作文は少ししか進まなかった。 頭に残っているのは作文の文字でなく美春の友達の話だ。 美春がユーくんという子といるとあっちゃんという男の子がユーくんと良く喧嘩して困るとか マーちゃんはユーくんのことが好きで美春に相談してくるとかだ。 上条の結論としては「未来の幼稚園児はませてますなー」と「三角関係どころじゃない」だ。 情景はほのぼのとしているが状況はどろどろだ。 上条は一応「あっちゃんに素直になれといっておけと」アドバイスをして話を切った。 (・・・・・・なんで幼稚園児の悩みでこんなに疲れてんの?) 多分幼稚園児が語る悩みじゃないからだ。 おかげで集中も切れてしまい休憩を取ることにしようと上条は決めた。 美春は話し終わると眠くなったのか寝てしまっている 時計は午後二時で、天気もよくて暖かい、昼寝するにはちょうどいい感じだ。 スースーと寝息を立てる美春をベッドまで運んであげてタオルケットをかける。 美春の体はタオルケットを半分にしても十分に埋まるくらい小さかった。 (エリート幼稚園児も蓋をあけりゃただの子供だもんな) 気持ちよさそうに寝ている美春を見て頬が緩むが、そこで少し異変に気づく。 (そういや、やけに静かだな?) 当瑠と美詠の話し声が聞こえなくなっていた。 そういえば美春と話している途中で二人の声はだんだんなくなっていった気がする。 課題をやっていたはずの当瑠と美詠を見ると (やっぱりか―――) 案の定二人は寝ていた。 爆睡状態で恋人のように寄り添ってだ。 当瑠の腕が美詠を抱きしめるように肩に回っている。 (これがラッキースケベというやつですかね) 自分にも当てはまるが上条はそんなことには気づかない。 (しっかし・・・・・・兄妹とは思えないよなぁ) 二人で仲良く寝ている姿はとても兄妹には見えず、どちらかと言えばやはり恋人に見える。 (と、なに考えてんだか・・・・・・) 恋人だったらお似合いだなぁと考えてしまいその考えをすぐ打ち消し 休憩中に何をしようかと自分で考えることを切り替える。 部屋を見回して目に入ったのは携帯電話だ。 (いい暇つぶしじゃん) 携帯のゲームでもしようかと考え携帯を開く。 待ち受けの画面は何も設定されていないデフォルトもままで味気なかった。 ゲームよりもそれのことがなぜか気になってしまい フォトフォルダを開いて何かないかと探す。 クラスの友人との写真とかどこかも分からない風景まで様々だったが 不思議とある人物の写真はなかった。 いや、あるにはあった。 上条がドロップキックを喰らっていて倒れこむ姿と端に写る美琴が驚いた表情をしている写真だ。 しかしドロップキックの主のパンツの方が真ん中にあるせいでそっちの方がメインに見えてしまう。 早い話まともなツーショットとか人物写真は無いわけだ。 (――――な、なに御坂の写真を待ち受けにしようとしてんだ!いくら好きだからってそこまでするかい!) イヤ待て、とそこまで考えて思い直す。 好きな人の待ち受けってそんなに変か?と 好きとは違うかもしれないがアイドルの画像を待ち受けにしている人間もいる これは憧れとかに近いが、好きと言う意味では間違っていない、はずだ。 (写真・・・・・・・・・) 単純に欲しい。 たった一枚でもいいから彼女が写っているものが欲しいと思う。 なんで昨日のデートで撮らなかったんだと後悔する。 だが、チャンスはいくらでもある。 (これから作っていけば良いじゃねぇか、焦らなくてもいい) そうだ自分たちには時間がまだまだたっぷりある。 これから先いくらでも彼女と過ごす日はあるじゃないか。 ・・・・・・上条は発信経歴を開いていた。 (御坂・・・・・・) 気づけばベランダに出て通話のボタンを押していた。 860 名前:とある未来の・・・(10)[sage] 投稿日:2010/04/29(木) 00:26:55 ID:dQiP1xmQ プルルルル、プルルルルと電話の音が数回鳴る。 だが待ち人は中々電話に出ない。 (出かけたりしてんのかな?) 友人と話したりしてるのかもしれない、そうであれば気づかない可能性も高い。 出ないのであればそれは残念だ。 七回ほど音がなったところで切ろうかと迷っているとブツッと雑音が耳に入った。 『も、もしもし!みみ、みさかですが』 緊張した声で待ち人が出てきた。 「お、おう御坂!なかなかでないからどうしたかと思ったぞ」 電話が繋がって上条はしまったと思う。 話す内容を全く考えていなかった、逢えないなら電話でも 繋がったらいいなーくらいにしか思っていなかったのだ。 『ちょ、ちょっとね・・・・・・そ、それで?何か用?』 うっと上条は声に出してしまう。 一番今聞かれたくないことだった。 用なんかないと言えば怒るだろうか、それとも呆れられるか。 『どうしたのよ?用無いの?』 「えぇっと・・・・・・用というか・・・・・・何と言いますか・・・・・・」 どうしよう何も浮かんでこない、昨日まで考えていたはずの計画とかは全部飛んでしまっていた。 上条はひたすら考えた。 (どうすんだよ!このままじゃ切られちまう・・・・・・何をしたいか考えろ 俺は御坂に何を伝えたいんだよ!御坂に何を望んでんだ!?) 考えていくうちに今日の自分の姿が思い浮かんでくる。 今日は課題のせいで美琴と逢えなかった、顔が見れなかった。 いつでも顔がみたいと思った、だから写真も欲しいと思った。 ・・・・・・ならばせめて? 「・・・・・・用は無いんだけど」 『?』 「声が聞きたかった」 せめて、美琴の声だけでも聞きたかった。 元気なのか、それとも何か悩んでいるのか声を聞けば分かるから。 話しているだけで心地よくて幸せになれる。 『な、ななな、に・・・・・・言って?』 「呆れるか?でも本当だ、今日お前に逢えそうにないから それなら声だけでもって思って電話かけたんだよ」 美琴からの返事は無い。 やっぱり呆れられてしまったのだろうかと不安になる。 「・・・・・・迷惑だったよな?声聞けてよかったよ、切るぞ」 会話はあまりできそうにない。 一言でも聞けてよかったと思い通話を切るボタンに指を動かす。 『ま・・・・・・待って!!』 美琴が急に大声を出して上条を制止させた。 861 名前:とある未来の・・・(11)[sage] 投稿日:2010/04/29(木) 00:27:25 ID:dQiP1xmQ いきなり大声を出したので上条は驚いたようだ。 『ど、どうした?』 少し慌てた声を出して聞き返してきた。 声が少し遠かったので通話が切られる直前だったのだろう。 切られなくてよかったと思う、切られたら折り返しの電話も代えそうになかったからだ。 「あのさ・・・・・・私は用があるのよ」 『そ、そうなのか?』 「うん。直接じゃ恥ずかしいんだけど」 実際かなり恥ずかしい。 今までの自分を壊すのと同じくらいにだ。 『あ、逢ってじゃ駄目なのか?』 逢って話したいに決まってんじゃない、その言葉が喉からでかかったが それを飲み込んで話を続ける。 「逢ったら多分言えない、と思う」 『そっか・・・・・・』 落胆した声を出す上条。 その声がさびしげで美琴は心が締め付けられたが、自分の『頼み』は今の自分では逢って言うのは無理だ。 (私も十分意気地なしじゃない) 昨日上条に言った言葉が自分にも当てはまってしまい、少しだけ落胆する。 だがこれ以上引っ張るわけにもいかない。 まずは自分の頼みを上条に言わなければならない。 「うん・・・・・用って言うのは頼み事っていうかお願いなんだけど」 『お、おう、なんだ?』 電話越しの上条も緊張しているようで声は上ずっている。 美琴は一度つばを飲み込み深呼吸した。 「い、いうけど良い?」 『上条さんに出来ることならば、なんでもどうぞ』 ―――――ならお言葉に甘えるとしよう。 「――――――当麻って呼んで良い?」 862 名前:とある未来の・・・(12)[sage] 投稿日:2010/04/29(木) 00:28:01 ID:dQiP1xmQ ――――今なんと言ったでしょうか? そう聞き返したと思うがちゃんと伝わったかどうか分からない。 電話越しの美琴からは返事が返ってこない。 「み・・・・・・御坂さん?あの、なんと?」 『・・・・・・当麻』 名前で呼ばれて一気に体が熱くなる。 胸が締め付けられ、手はわけも分からないまま動いている。 「は、はい!」 『名前で呼んじゃダメ、かな・・・・・・』 ―――――嬉しすぎるんですが喜びをうまく表現できません 「い、いいですとも」 『ほ、ホントに?』 少し不安げな声で聞き返してくるが、上条は嬉しくて どちらかといえば舞い上がってしまっているので答えはどうしても単調になってしまう。 美琴も美琴で言ってからだいぶテンパッているようで二人の間で しばらく「本当に?」「はいどうぞ」「ホントのホントに?」「はい、どうぞどうぞ」という 問答と呼べない会話が続いた。 「み、御坂・・・・・・じゃぁ、俺からもいいか?」 上条はもうこの問答はしたくないと思い、自分も美琴に頼みをすることにした。 『な、なに?』 緊張した美琴の声が返ってくる。 ――――――お返しだこの野郎 「お前が名前で呼ぶなら『美琴』ってお前の事呼ぶことにする」 『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』 長い沈黙が続く。 上条はダメか?と思ったがそうではないらしい。 『ふにゃぁ・・・・・・』 「み、御坂!?」 電話越しなので状況は分からないが、気絶一歩手前まで来たらしい。 ビリビリといった電撃の音は聞こえないので漏電の心配は無いようだが その後何度か呼んでやっと美琴は現実に帰ってきた。 「・・・・・・で?いいのか?」 『いい、呼んで』 ―――――――――よっしゃああああああああああ! 喧嘩で勝った時にもした事のないような本日二度目のガッツポーズをかます上条。 姿が見られたら間違いなくむちゃくちゃ恥ずかしい格好だが 上条の不幸属性はそこで発生する事はなく、誰も近くを通りかかったりはしなかった。 『・・・・・・ねぇ当麻』 喜びの舞をしていると不意に声をかけられた。 美琴の声なので喜びの舞は更に身振りが大きくなっていく。 「なんだ?」 『呼んでみただけ』 イタズラっぽい声を美琴はだす。 喜びの舞が嬉々とした異様な動きへと変わりだす。 「・・・・・・み、美琴」 動いているせいか、それとも緊張のせいかは分からないが 美琴と違ってすこしどもってしまう上条。 『な、何?』 緊張が伝染したため、美琴も落ち着きは無い。 「よん、呼んでみただけだ」 『そっか・・・・・・エヘヘ』 ――――――――むちゃくちゃ可愛いんですけどぉ! 今すぐ抱きしめたい衝動に駆られるが今目の前に美琴はいない。 それが残念で仕方なく嬉々とした異様な動きは終息した。 863 名前:とある未来の・・・(13)[sage] 投稿日:2010/04/29(木) 00:28:32 ID:dQiP1xmQ その後他愛のない話をしたりして時間を過ごし 電話を切ったのときには時刻は三時半になっていた。 (美琴・・・・・・か) すでに電話はしていなかったが切ってからも何度も彼女の名前を繰り返していた。 「美琴・・・・・・」 今ここに美琴がいたら迷うことなく美琴を抱きしめていただろう。 だが、美琴はここにいない・・・・・・それだけで上条は心が苦しかった。 「・・・・・・さて、そろそろ部屋に―――――て、うぉおおおお!!?」 上条が叫び声を挙げた理由は簡単だ。 ベランダから落ちたとかそんな命に関わる事ではない。 部屋に戻ろうとしたら窓に息子と娘が張り付いていたからだ。 「ふっふっふ・・・・・・親父見てたぞ?」 当瑠がガラララと窓を開けて上条を部屋の中に引っ張った。 体は難なく動いてしまい、抵抗もあまり出来ないまま部屋に入れられた。 窓に張り付いていたもう一人、美春はニヤニヤと上条を見下ろしている。 「パパ?だれとおはなししてたの?」 無邪気そうに見える笑顔だが実際はそんな事は全くない悪魔の笑顔だ。 どうしてそんな顔が五歳児の美春に出来るかは謎だが、今はそんな事を気にしている場合ではない。 美琴と話している事が知れれば何を言われるか・・・・・・想像するのは簡単だ。 「と、友達とだ」 差し当たりのない関係の人間と話している事にする。 だが、当瑠にはそんな嘘は通用しないらしく、ニヤニヤと笑う表情は一層歪んだ。 「へぇ・・・・・・母さんは『友達』かぁ・・・・・・」 「――――違う!美琴は・・・・・・ぁ!」 勢いで鎌をかけられたのにも気づかないで言ってしまい、嘘はすぐにばれる。 当瑠は上条が名前で呼んだ事も見逃さなかった。 「ほう、名前で呼びましたな・・・・・・なるほどなるほど」 「うぐっ!く・・・・・・」 言われるとかなり恥ずかしいが否定もする事が出来ない。 誰かに助けを求めようと思うと(全員が敵みたいなものだが)美詠がいた。 「・・・・・・・・・・・・・・・・」 美詠はもじもじとして顔も真っ赤なまま宙を見ていた。 ぶつぶつと小声で「うれしくなんかない、うれしくなんかない」と呪文のように唱えている。 上条にそれは途切れ途切れにしか聞こえなかったが、仕草から見て助けにならないのは明らかだ。 上条は徐々に当瑠と美春に詰め寄られていく。 「さぁ、何を話していたのか?」 当瑠が一歩上条を壁際に追いやっていく。 「ぜーんぶきかせてね」 ニコッとこれが笑顔だ、みんなこういう風に笑えと言われるくらいの笑顔を美春はする。 上条はそんな模範的な笑顔(ただ悪意しかその奥には秘められていないが)を見て ただ顔を引き攣らせ 「ふ・・・・・・不幸だーーーーーーー!」 いつものように口癖を言ってしまった。

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