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上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある少年の告白成就/Part04 - (2012/04/01 (日) 21:25:36) の1つ前との変更点

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---- #navi(上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある少年の告白成就) <第四章> 「はぁ、はぁ、御坂は…どこだ?」 再び自販機のある公園に戻ってきた上条。 しかし美琴の姿は見当たらない。能力はもう使えないので独力で探すしかない。 …と、そこに美琴と同じ常磐台の制服を着て自販機の前でジュースを買おうとする少女を発見した。 近くに行って確認して見ると、シャンパンゴールドに近い茶色の髪、今時時代遅れのルーズソックス そして花柄のヘアピンをしている「御坂美琴」だった。 「御坂!」 思わず叫んだ。 アイツがこちらを向く。俺がアイツの元まで走っていこうと、足を踏み出した。 ―――そのとき世界が止まって見えるほど、冷たい視線が向けられたような気がした――― 一歩一歩、近づいて行き、彼女をまじまじと見てもその瞳には光が見受けられない。 顔以外を見ると足には土埃が付いており、制服には傷があった。どう考えても正常ではない。 そして本能と呼べるようになった不幸センサーが危険を通告してきた。 (今ならまだ間に合う!早くアイツから離れるんだ!)                          (…何言ってやがる。俺はどんな不幸とも向き合うって決めたんだぞ!) (アイツも巻き込むとか考えてるんじゃない!お前の運命に関わることなんだよ!)              (…だったら尚更、俺はアイツと向き合う。運命なんてこの手で全部変えてやる!) 本能と理性のせめぎ合いは理性が若干上回り、彼女に手が届くところまで歩み寄った。 まだ俯いている彼女の手を強引に取り、そこでもう一度声をかけた。 「御坂…スマン、俺、お前との約束の件、答え聞かせてなかったな」 「…」 「随分待たせちまったが…聞いてくれ御坂、俺の本気を!」 「…っ」 「俺は『は…て…』えっ…?」 彼女が何か呟いているが、上条には聞こえなかった。 今度は上条の目を見据えて、美琴は叫んだ。 「放してよ!!」 …何を言われたのかまだ分からない。 sんな上条の手を振り払い、美琴は上条から半歩下がった。 「今更何よ?アタシの事なんてどうでもいいんでしょ?  アンタ、アタシが入院している間一度も見舞いに来なかったくせに、よくアタシの前にのこのこ顔を出せるわよね。  退院した時、真っ先にアンタのところに行ったのに、全部スルーされるし…  昨日だってメールしたのに結局見てないんでしょ?」 知らなかった。いや、知らなかったでは済まされない。 でもあまりにもおかしい話だ。 俺はかの戦いで意識の失った御坂の傍で、三日三晩彼女の手を握っていt。 彼女が意識を取り戻したという知らせは医者から伝え聞いただけだったが、見舞いも毎日欠かさず行ったのだ。 見舞い品tして、奮発して購入したゲコ太グッズの数々も、結局彼女に会えなかったので 常磐台の、あの寮の寮監に頼m込んで特別に置くことを許してもらった。 退院の知らせからは…全く彼女からの連絡が取れない状況にあった。 ―――不幸にも程がある。明らかに『かみがかっていた』 「もう…アタシのことなんて…、ほっといてよ!!!」 「御坂、待ってくれ!俺の話を聞いてくれ!御坂あああぁぁぁ!!!」 アイツがその場から離れtゆく。 手を伸ばsば届く距離にあったはずなのにアイツの手を、心を、掴mなかったのだ。 そんな上条に追い討ちをかけるかのように、美琴を追おうtした足はぴくりとも動かせなくなった。 足、胴、腕、首の順に徐々に動kが鈍くなっていく。金縛りにでもあったような感じだ。 「御……、さ……、…………―――---」 いわゆる底なし沼に、美琴を思う上条の思いh堕ちていくようだ。 ――どこで間違えたのか? ――最後に上条が抱いた幻想tは何だったのか? そんなことばかりが、人間dいうtころの重力のyうなもので彼を更に深い闇へt沈めていく。 最後に彼の瞳kら流れ落ちた雫も、彼の心と同じyうにきっと綺麗に洗い流されてしまうnであろう…。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――  「ああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーー!!!」  突如布団を蹴り上げ、もがき出した上条を見てインデックスは慌てふためいた。  「ど、どうしたのかな、とうま」  「ーー、………へっ?」  上条にも状況が把握できなかった。熱で頭が焼き切られるようだ。  どうやら高熱が出ているようで、突然起きだした上条の全身に徐々に熱が伝わっていく。  「あれ、俺何して…」  「わわっ!とっ、とうま!」  ドサッ、と倒れかかった体を何とかインデックスが支えてくれた。  そのままベッドの方に上条は押し戻される。その後、頭には熱冷ましのシートが貼られた。  「とうま、どうしちゃったの?何かさっきもうなされてたし…」    (……どういう状況だ?)  「インデックスさん、昨日は焼肉パーティーのはずでしたよね?」  「?そうなんだよ。今日は祝日で、小萌が特別にとうまのところに行っていいって言うから朝来てみたんだけど   …とうまが高熱出して倒れてるんだもん!まったく…介抱するのにも困ったんだよ!」  「…そうか、ありがとな。インデックス」  彼女にはここんところ助けられてばかりである。俺なりのささやかな配慮のつもりだった。   (ったく、世話焼いているのはどっちなんだよ…これじゃまるでインデックスの方が保護者じゃねぇか)   と、心の中でインデックスに対する偏った見方を訂正しようと試みる。  そして再度夢の内容について考えてみた。   (…つまり何だ?常磐台に行くところから全部夢だったっつうことか?    …    …    …あれ?俺、あの寮に何しに行ったんだ?)    思い出せない。どんなに頭を捻っても欠片一つ思い出せない。  元から出来の悪い俺の頭は熱もあったためか、上手く頭が回らない。  沸騰寸前になるまで考えても、お花畑以外何も思い浮かばない。  (…まあ所詮夢だし、そんなに気にすることはないと思うんだが、)  ――かつて一度だけ、上条はこの類のものに嵌められたことがあるのだ。  『黄金練成(アルス=マグナ)』  アウレオルス=イザードという、かの錬金術師が使用した能力。  世界の全てを呪文と化し、それを詠唱完了することで行使可能となる錬金術の到達点。  その効果は、「頭の中で考えた通りに世界を歪めてしまう」というもの。    相手に対して「砕けろ」と思えば砕け散り、「忘れろ」と思えば完全に忘却し、「死ね」と思えば是非も無く即死する。  上条はこの術にかかり、彼と対峙した際の全ての記憶を忘れさせられた。  もし彼と同じ類の術式が、今の上条に掛けられているのだとしたら…  (俺の右手で頭に触れれば、記憶は戻るはずなのになぁ…)  打ち消した感触がないのだ。依然として記憶が戻る気配もない。  ――それとも、よほど思い出したくないことなのか?    ◇  ◇  ◇       「大丈夫、とうま?熱はどう?」  「…ああはいはい、ちょっと待ってくれよ。…36度、平熱だな。もう大丈夫だろ?」  「良かった…心配したんだよ」  俺は、念のためもっと寝た方がいいんだよ、という彼女の言うことに従い、取りあえず横になったが  ちっとも寝付けない。――それどころか胸の奥底からざわざわと嫌な感触が沸いて出てくる。  「そういえばね、とうま。さっき見た悪い夢について、教えてくれないかな?」  「?よっと、何だよいきなり……まあ途中まではかなり鮮明に覚えてるんだがな、その後のことは何一つ   思い出せねえんだよな。」  「それでもいいから!つべこべ言わずにとっとと白状するんだよ!」  「ああ~はいはい、分かりました言わせていただきますよ!」    ・    ・    ・  「ふーん。つ・ま・り、とうまはわたしをイギリスに帰して、自分は一人で学園都市から   出て行かなくちゃならない、かわいそ~なお話かぁ~。ふーーーーーーーーーーーーん」   (あれ、俺その事は伏せたつもりなのに…結局墓穴掘っちまった?)  「あの、インデックスさん?これはその…何と申しますか…」  「問答無用!」  ガリッ、と上条のツンツン頭にインデックスが噛み付き、上条の絶叫は寮全体にまで広まった。  「――でも、もし本当にとうまがそんなことになっちゃったら、どうするの?」  「う~ん、そうだな。やっぱりお前はイギリスに帰すだろうな。悪いが、こればっかりは譲れない」  「もうちょっと悩まないの?…それに、とうまがいなくなったら、とうまの知らない身近な人が悲しむこともあるんだよ?」  「ああ~それは考えてなかったかもな。何でなんだろうな?…それに所詮夢は夢だろ?   俺が透明人間になったことも、現実で起きるなんてことはまずないだろ?」  「…とうま、これからわたしの言うことをよく聞いて」 突然放つオーラの変わったインデックスに少々驚いた。  彼女が真剣になって上条に話をするときは、決まって食べ物か魔術のことである。おそらく後者だろう。  「これは本当にあった話なんだよ」   ◆  ◆  ◆  インデックスが最初に言ったことは上条が見た夢自体のことについてである。       おそらく上条の見た夢は『明晰夢』という類の夢であるらしい。  この夢では、納得できないものや矛盾するものが出てきても、夢の中の本人は気づかない。  上条の場合、能力が飛躍的に上がったことは事実だが、透明人間のようになるまではいってない。  その上、学園都市以外の高校に転入する上で何も心残りがなく、あっさり決め付けてしまったこともおかしい。    …実例としてアメリカ第十六代のエイブラハム=リンカーンの『予知夢』がこれに該当するらしい。   …   ……    リンカーンは夢の中で、数多くの人が嘆き悲しんでいる声を聞いた。どうやらホワイトハウスらしい。   いくつかの部屋を探索してみたが、人の姿は全く見当たらない。しかし、目にするものは馴染みのあるものばかりだった。   多くの人がすすり泣いているのはいったい何故か。原因を探ろうとイースト・ルームに立ち寄ったリンカーンは驚いた。   そこには棺があったのだ。そして、葬儀に参列している者の一人に尋ねる。   「ホワイトハウスで死んでいるのは誰なんだ?」と聞いた。   「大統領です。大統領は暗殺されたのです」と参列者は答えた。   突如、大きな悲嘆の声が辺りを覆い、リンカーンは目が覚めた。    ――リンカーンはその晩はまんじりともできなかったという。   ……   …  この夢において「自分がその大統領のはずなのにどうして気付いてもらえないんだ?」と、  後に彼はその話を聞いていた妻に語っていたようだが、これがその明晰夢なのである。  問題は次、夢の内容である。  シスターであるインデックスの本分である『神』に纏わる夢の解釈がされた。  「とうま、眠たくない?ちゃんとついて来れてる?」  「…あ、ああ。大丈夫大丈夫。それよりも話の続きをしてくれ」  聞き流す予定だったが、実例まで出されると不幸の上条は今後のため聞かざるを得なくなる。  それに、ついこの間までカルト的思想で混沌とした魔術の世界に、どっぷりとまではいかないが浸かっていたのだ。  このぐらいならどうってことないのかもしれない。  次の夢の解釈は、『神の啓示・警告』であった。  中世の神学者、トマス=アクィナスが挙げた、夢を見る4つの原因の内の1つとされる。  「神の啓示・警告ね…。俺には神なんつうものは、不幸という点で切っても切り離せない   腐れ縁のようなものが、この右手のせいであるしなー」  「…でもね、もし本当にそんなことがあったらとうまはどうするの?」  「まーたその話かよ。俺は神様に恨み嫉みを買うような行為はしてないし、   むしろ努力賞の1つや2つはもらいたいくらいだ!   …でもな、もし仮に誰かが俺に助けを求めているのなら、例えそれが神様の作ったルールによるものだろうが、   ――俺が、そんなつまらない幻想はぶち壊してやるよ」  その言葉は、かつて最初にインデックスを救った少年のことを彼女に思い出させた。  非常に頼もしく思える。  ――しかし、この時ばかりはインデックスをより不安にさせている。  だから彼女は言う。彼が知るはずの無かった本当の真実を。  「わたしは思慮深いシスターだから、極力そういうことはしてほしくないんだよ」  「…ああ、分かってるよ。そんときゃ俺一人でけりつけるつもりだしな」  「だけどね、とうま、これだけは覚えていてね…」  「?」             ―   ―――   ―――――   ―『ただし、今度は一人じゃない』―                                                           「…」                       「…えへっ、一度は言ってみたかったんだよ。まあ、みことに先を越されたのは仕方の無いことだったけど…」  インデックスが名前で呼ぶのは、既に『その』美琴と親しい仲になっているからなのだろう。  当の上条は知らなかったことだが…いや、つい先ほどまで彼女の名前すら忘れていたのだ。 「それで、みことからの告白の返事は返したの?ま・さ・か、夢の中のことだからって忘れてたんじゃないよね?」     …今度こそ上条は固まった。  二人の間を春にしてはいやに冷たい風が吹き抜ける。                                                             「俺が…みさかに…告白された?」  「?そう聞いてるよ。みことがあの戦いで怪我した後も、とうまが三日三晩かんびょうしてたことも喋ってくれたし、   …まったく、お砂糖吐いちゃう程に甘すぎる話なんだよ!   …ねえ、聞いてるの?…とうま?」     ――ドサッ、      「う、うがあぁぁぁぁあああーーーーー!!!」  「とうま!!!」                                                            上条は彼女のさっきの言葉を聞き、夢の中で起きたのと全く同じ頭痛にもがき、苦しみ出した。   そして急にベッドに倒れて、また苦しみ出す上条に、慌てふためくインデックスであったが   これがただの頭痛の症状とは思えなかった。間違いなく『かみがかっていた』                               ――でも大丈夫、私の祈りで救ってみせる。『今度は私一人じゃない』                                ――だから行使する。     ――自動書記を制御できるようになって、初めて使うことになる、   ――彼女の持つ魔道書全てを注ぎ込んだ禁断の術式を… ---- #navi(上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある少年の告白成就)
---- #navi(上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある少年の告白成就) <第四章> 「はぁ、はぁ、御坂は…どこだ?」 再び自販機のある公園に戻ってきた上条。 しかし美琴の姿は見当たらない。能力はもう使えないので独力で探すしかない。 …と、そこに美琴と同じ常磐台の制服を着て自販機の前でジュースを買おうとする少女を発見した。 近くに行って確認して見ると、シャンパンゴールドに近い茶色の髪、今時時代遅れのルーズソックス そして花柄のヘアピンをしている「御坂美琴」だった。 「御坂!」 思わず叫んだ。 アイツがこちらを向く。俺がアイツの元まで走っていこうと、足を踏み出した。 ―――そのとき世界が止まって見えるほど、冷たい視線が向けられたような気がした――― 一歩一歩、近づいて行き、彼女をまじまじと見てもその瞳には光が見受けられない。 顔以外を見ると足には土埃が付いており、制服には傷があった。どう考えても正常ではない。 そして本能と呼べるようになった不幸センサーが危険を通告してきた。 (今ならまだ間に合う!早くアイツから離れるんだ!)                          (…何言ってやがる。俺はどんな不幸とも向き合うって決めたんだぞ!) (アイツも巻き込むとか考えてるんじゃない!お前の運命に関わることなんだよ!)              (…だったら尚更、俺はアイツと向き合う。運命なんてこの手で全部変えてやる!) 本能と理性のせめぎ合いは理性が若干上回り、彼女に手が届くところまで歩み寄った。 まだ俯いている彼女の手を強引に取り、そこでもう一度声をかけた。 「御坂…スマン、俺、お前との約束の件、答え聞かせてなかったな」 「…」 「随分待たせちまったが…聞いてくれ御坂、俺の本気を!」 「…っ」 「俺は『は…て…』えっ…?」 彼女が何か呟いているが、上条には聞こえなかった。 今度は上条の目を見据えて、美琴は叫んだ。 「放してよ!!」 …何を言われたのかまだ分からない。 そんな上条の手を振り払い、美琴は上条から半歩下がった。 「今更何よ?アタシの事なんてどうでもいいんでしょ?  アンタ、アタシが入院している間一度も見舞いに来なかったくせに、よくアタシの前にのこのこ顔を出せるわよね。  退院した時、真っ先にアンタのところに行ったのに、全部スルーされるし…  昨日だってメールしたのに結局見てないんでしょ?」 知らなかった。いや、知らなかったでは済まされない。 でもあまりにもおかしい話だ。 俺はかの戦いで意識の失った御坂の傍で、三日三晩彼女の手を握っていt。 彼女が意識を取り戻したという知らせは医者から伝え聞いただけだったが、見舞いも毎日欠かさず行ったのだ。 見舞い品tして、奮発して購入したゲコ太グッズの数々も、結局彼女に会えなかったので 常磐台の、あの寮の寮監に頼み込んで特別に置くことを許してもらった。 退院の知らせからは…全く彼女からの連絡が取れない状況にあった。 ―――不幸にも程がある。明らかに『かみがかっていた』 「もう…アタシのことなんて…、ほっといてよ!!!」 「御坂、待ってくれ!俺の話を聞いてくれ!御坂あああぁぁぁ!!!」 アイツがその場から離れtゆく。 手を伸ばせば届く距離にあったはずなのにアイツの手を、心を、掴まなかったのだ。 そんな上条に追い討ちをかけるかのように、美琴を追おうとした足はぴくりとも動かせなくなった。 足、胴、腕、首の順に徐々に動悸が鈍くなっていく。金縛りにでもあったような感じだ。 「御……、さ……、…………―――---」 いわゆる底なし沼に、美琴を思う上条の思いは堕ちていくようだ。 ――どこで間違えたのか? ――最後に上条が抱いた幻想とは何だったのか? そんなことばかりが、人間でいうところの重力のようなもので彼を更に深い闇へと沈めていく。 最後に彼の瞳から流れ落ちた雫も、彼の心と同じようにきっと綺麗に洗い流されてしまうのであろう…。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――  「ああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーー!!!」  突如布団を蹴り上げ、もがき出した上条を見てインデックスは慌てふためいた。  「ど、どうしたのかな、とうま」  「ーー、………へっ?」  上条にも状況が把握できなかった。熱で頭が焼き切られるようだ。  どうやら高熱が出ているようで、突然起きだした上条の全身に徐々に熱が伝わっていく。  「あれ、俺何して…」  「わわっ!とっ、とうま!」  ドサッ、と倒れかかった体を何とかインデックスが支えてくれた。  そのままベッドの方に上条は押し戻される。その後、頭には熱冷ましのシートが貼られた。  「とうま、どうしちゃったの?何かさっきもうなされてたし…」    (……どういう状況だ?)  「インデックスさん、昨日は焼肉パーティーのはずでしたよね?」  「?そうなんだよ。今日は祝日で、小萌が特別にとうまのところに行っていいって言うから朝来てみたんだけど   …とうまが高熱出して倒れてるんだもん!まったく…介抱するのにも困ったんだよ!」  「…そうか、ありがとな。インデックス」  彼女にはここんところ助けられてばかりである。俺なりのささやかな配慮のつもりだった。   (ったく、世話焼いているのはどっちなんだよ…これじゃまるでインデックスの方が保護者じゃねぇか)   と、心の中でインデックスに対する偏った見方を訂正しようと試みる。  そして再度夢の内容について考えてみた。   (…つまり何だ?常磐台に行くところから全部夢だったっつうことか?    …    …    …あれ?俺、あの寮に何しに行ったんだ?)    思い出せない。どんなに頭を捻っても欠片一つ思い出せない。  元から出来の悪い俺の頭は熱もあったためか、上手く頭が回らない。  沸騰寸前になるまで考えても、お花畑以外何も思い浮かばない。  (…まあ所詮夢だし、そんなに気にすることはないと思うんだが、)  ――かつて一度だけ、上条はこの類のものに嵌められたことがあるのだ。  『黄金練成(アルス=マグナ)』  アウレオルス=イザードという、かの錬金術師が使用した能力。  世界の全てを呪文と化し、それを詠唱完了することで行使可能となる錬金術の到達点。  その効果は、「頭の中で考えた通りに世界を歪めてしまう」というもの。    相手に対して「砕けろ」と思えば砕け散り、「忘れろ」と思えば完全に忘却し、「死ね」と思えば是非も無く即死する。  上条はこの術にかかり、彼と対峙した際の全ての記憶を忘れさせられた。  もし彼と同じ類の術式が、今の上条に掛けられているのだとしたら…  (俺の右手で頭に触れれば、記憶は戻るはずなのになぁ…)  打ち消した感触がないのだ。依然として記憶が戻る気配もない。  ――それとも、よほど思い出したくないことなのか?    ◇  ◇  ◇       「大丈夫、とうま?熱はどう?」  「…ああはいはい、ちょっと待ってくれよ。…36度、平熱だな。もう大丈夫だろ?」  「良かった…心配したんだよ」  俺は、念のためもっと寝た方がいいんだよ、という彼女の言うことに従い、取りあえず横になったが  ちっとも寝付けない。――それどころか胸の奥底からざわざわと嫌な感触が沸いて出てくる。  「そういえばね、とうま。さっき見た悪い夢について、教えてくれないかな?」  「?よっと、何だよいきなり……まあ途中まではかなり鮮明に覚えてるんだがな、その後のことは何一つ   思い出せねえんだよな。」  「それでもいいから!つべこべ言わずにとっとと白状するんだよ!」  「ああ~はいはい、分かりました言わせていただきますよ!」    ・    ・    ・  「ふーん。つ・ま・り、とうまはわたしをイギリスに帰して、自分は一人で学園都市から   出て行かなくちゃならない、かわいそ~なお話かぁ~。ふーーーーーーーーーーーーん」   (あれ、俺その事は伏せたつもりなのに…結局墓穴掘っちまった?)  「あの、インデックスさん?これはその…何と申しますか…」  「問答無用!」  ガリッ、と上条のツンツン頭にインデックスが噛み付き、上条の絶叫は寮全体にまで広まった。  「――でも、もし本当にとうまがそんなことになっちゃったら、どうするの?」  「う~ん、そうだな。やっぱりお前はイギリスに帰すだろうな。悪いが、こればっかりは譲れない」  「もうちょっと悩まないの?…それに、とうまがいなくなったら、とうまの知らない身近な人が悲しむこともあるんだよ?」  「ああ~それは考えてなかったかもな。何でなんだろうな?…それに所詮夢は夢だろ?   俺が透明人間になったことも、現実で起きるなんてことはまずないだろ?」  「…とうま、これからわたしの言うことをよく聞いて」 突然放つオーラの変わったインデックスに少々驚いた。  彼女が真剣になって上条に話をするときは、決まって食べ物か魔術のことである。おそらく後者だろう。  「これは本当にあった話なんだよ」   ◆  ◆  ◆  インデックスが最初に言ったことは上条が見た夢自体のことについてである。       おそらく上条の見た夢は『明晰夢』という類の夢であるらしい。  この夢では、納得できないものや矛盾するものが出てきても、夢の中の本人は気づかない。  上条の場合、能力が飛躍的に上がったことは事実だが、透明人間のようになるまではいってない。  その上、学園都市以外の高校に転入する上で何も心残りがなく、あっさり決め付けてしまったこともおかしい。    …実例としてアメリカ第十六代のエイブラハム=リンカーンの『予知夢』がこれに該当するらしい。   …   ……    リンカーンは夢の中で、数多くの人が嘆き悲しんでいる声を聞いた。どうやらホワイトハウスらしい。   いくつかの部屋を探索してみたが、人の姿は全く見当たらない。しかし、目にするものは馴染みのあるものばかりだった。   多くの人がすすり泣いているのはいったい何故か。原因を探ろうとイースト・ルームに立ち寄ったリンカーンは驚いた。   そこには棺があったのだ。そして、葬儀に参列している者の一人に尋ねる。   「ホワイトハウスで死んでいるのは誰なんだ?」と聞いた。   「大統領です。大統領は暗殺されたのです」と参列者は答えた。   突如、大きな悲嘆の声が辺りを覆い、リンカーンは目が覚めた。    ――リンカーンはその晩はまんじりともできなかったという。   ……   …  この夢において「自分がその大統領のはずなのにどうして気付いてもらえないんだ?」と、  後に彼はその話を聞いていた妻に語っていたようだが、これがその明晰夢なのである。  問題は次、夢の内容である。  シスターであるインデックスの本分である『神』に纏わる夢の解釈がされた。  「とうま、眠たくない?ちゃんとついて来れてる?」  「…あ、ああ。大丈夫大丈夫。それよりも話の続きをしてくれ」  聞き流す予定だったが、実例まで出されると不幸の上条は今後のため聞かざるを得なくなる。  それに、ついこの間までカルト的思想で混沌とした魔術の世界に、どっぷりとまではいかないが浸かっていたのだ。  このぐらいならどうってことないのかもしれない。  次の夢の解釈は、『神の啓示・警告』であった。  中世の神学者、トマス=アクィナスが挙げた、夢を見る4つの原因の内の1つとされる。  「神の啓示・警告ね…。俺には神なんつうものは、不幸という点で切っても切り離せない   腐れ縁のようなものが、この右手のせいであるしなー」  「…でもね、もし本当にそんなことがあったらとうまはどうするの?」  「まーたその話かよ。俺は神様に恨み嫉みを買うような行為はしてないし、   むしろ努力賞の1つや2つはもらいたいくらいだ!   …でもな、もし仮に誰かが俺に助けを求めているのなら、例えそれが神様の作ったルールによるものだろうが、   ――俺が、そんなつまらない幻想はぶち壊してやるよ」  その言葉は、かつて最初にインデックスを救った少年のことを彼女に思い出させた。  非常に頼もしく思える。  ――しかし、この時ばかりはインデックスをより不安にさせている。  だから彼女は言う。彼が知るはずの無かった本当の真実を。  「わたしは思慮深いシスターだから、極力そういうことはしてほしくないんだよ」  「…ああ、分かってるよ。そんときゃ俺一人でけりつけるつもりだしな」  「だけどね、とうま、これだけは覚えていてね…」  「?」             ―   ―――   ―――――   ―『ただし、今度は一人じゃない』―                                                           「…」                       「…えへっ、一度は言ってみたかったんだよ。まあ、みことに先を越されたのは仕方の無いことだったけど…」  インデックスが名前で呼ぶのは、既に『その』美琴と親しい仲になっているからなのだろう。  当の上条は知らなかったことだが…いや、つい先ほどまで彼女の名前すら忘れていたのだ。 「それで、みことからの告白の返事は返したの?ま・さ・か、夢の中のことだからって忘れてたんじゃないよね?」     …今度こそ上条は固まった。  二人の間を春にしてはいやに冷たい風が吹き抜ける。                                                             「俺が…みさかに…告白された?」  「?そう聞いてるよ。みことがあの戦いで怪我した後も、とうまが三日三晩かんびょうしてたことも喋ってくれたし、   …まったく、お砂糖吐いちゃう程に甘すぎる話なんだよ!   …ねえ、聞いてるの?…とうま?」     ――ドサッ、      「う、うがあぁぁぁぁあああーーーーー!!!」  「とうま!!!」                                                            上条は彼女のさっきの言葉を聞き、夢の中で起きたのと全く同じ頭痛にもがき、苦しみ出した。   そして急にベッドに倒れて、また苦しみ出す上条に、慌てふためくインデックスであったが   これがただの頭痛の症状とは思えなかった。間違いなく『かみがかっていた』                               ――でも大丈夫、私の祈りで救ってみせる。『今度は私一人じゃない』                                ――だから行使する。     ――自動書記を制御できるようになって、初めて使うことになる、   ――彼女の持つ魔道書全てを注ぎ込んだ禁断の術式を… ---- #navi(上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある少年の告白成就)

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