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*小ネタ 良い夫婦の日
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上条当麻は食卓の椅子に腰掛け、お茶を飲んでいた。
古い木製の椅子が上条の体重を一心に受け止めてギシギシと音をたてる。
向かいの席には美琴が座り、
「お茶、おかわりいる?」
「そうだな。もう一杯くれねーか」
にっこり笑って上条から湯飲みを受け取った。
コポコポ、と使い込まれた急須から煎茶が湯飲みに注がれる。
美琴は七分目ほど注いだところで、
「はい、どうぞ」
「おう」
上条は自分の湯飲みを受け取りじっと見つめる。
この湯飲みは新婚旅行で熱海に行った時に美琴が使っているものとセットで買ったものだ。以来一二年間、上条家の食卓の片隅にある。
上条はまだ熱い煎茶を一口含んでから、
「お前と結婚して、もう一二年経つんだな」
「そうね。早いものね」
「……悪りぃな」
「ん? 何が?」
「必ず幸せにするからって約束したのに、俺はいまだにうだつの上がらぬサラリーマンだ。住まいは狭いし、給料は安い。苦労ばかりかけてるよな、実際」
「そうね」
美琴は軽くうなずいて、
「でもアンタと結婚して正解だったと思うわよ。苦労してるって事はそれだけ毎日が新しい発見の連続って事だし、子供達は元気に育ってる。それに、アンタと毎日一緒に暮らせるんだもの。私は十分幸せよ」
「そっか」
上条は苦笑した。
「そういや、子供達は寝たのか?」
「うん」
美琴は背後を振り向いた。
ふすまの向こうの部屋で長子の麻琴を筆頭に五人、その隣の夫婦の寝室に二人が寝ている。
「あ、この子は起きてるわね」
美琴は笑って自分のお腹を指差す。
生後六ヶ月になる八人目の子供だった。性別は生まれてくる時のお楽しみと言う事で特に聞いていない。
「……あのさ、今日って何の日か知ってる?」
両掌で赤茶色の湯飲みを転がしながら急に真顔になる美琴。
「……え? ええ? えっと……何だったっけな。結婚記念日じゃねーし、お前の誕生日でも俺の誕生日でもない。子供達はもちろん違うし、ゴミの日は昨日だった」
慌ててうんうんうなりながら腕を組んで考え込む上条。
美琴はくすりと笑って、
「今日はね、一一月二二日。当て字で『良い夫婦の日』って言うのよ」
「な、なんだそっか……俺はまたてっきり二人の記念日を忘れてお前に怒鳴られるのかと思ったよ」
上条はほっと胸をなで下ろす。
「私達は良い夫婦になれてるかしら?」
「夫はダメだけどその分妻がしっかりしてるからな。バランスは取れてんじゃねーの?」
上条が湯飲みを右手に持って顔の前に掲げる。
美琴も同じように湯飲みを掲げ、
「良い夫婦に」
「乾杯」
二人の間で湯飲み同士がカチン、と音をたてた。
終わり。
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*小ネタ 良い夫婦の日
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上条当麻は食卓の椅子に腰掛け、お茶を飲んでいた。
古い木製の椅子が上条の体重を一心に受け止めてギシギシと音をたてる。
向かいの席には美琴が座り、
「お茶、おかわりいる?」
「そうだな。もう一杯くれねーか」
にっこり笑って上条から湯飲みを受け取った。
コポコポ、と使い込まれた急須から煎茶が湯飲みに注がれる。
美琴は七分目ほど注いだところで、
「はい、どうぞ」
「おう」
上条は自分の湯飲みを受け取りじっと見つめる。
この湯飲みは新婚旅行で熱海に行った時に美琴が使っているものとセットで買ったものだ。以来一二年間、上条家の食卓の片隅にある。
上条はまだ熱い煎茶を一口含んでから、
「お前と結婚して、もう一二年経つんだな」
「そうね。早いものね」
「……悪りぃな」
「ん? 何が?」
「必ず幸せにするからって約束したのに、俺はいまだにうだつの上がらぬサラリーマンだ。住まいは狭いし、給料は安い。苦労ばかりかけてるよな、実際」
「そうね」
美琴は軽くうなずいて、
「でもアンタと結婚して正解だったと思うわよ。苦労してるって事はそれだけ毎日が新しい発見の連続って事だし、子供達は元気に育ってる。それに、アンタと毎日一緒に暮らせるんだもの。私は十分幸せよ」
「そっか」
上条は苦笑した。
「そういや、子供達は寝たのか?」
「うん」
美琴は背後を振り向いた。
ふすまの向こうの部屋で長子の麻琴を筆頭に五人、その隣の夫婦の寝室に二人が寝ている。
「あ、この子は起きてるわね」
美琴は笑って自分のお腹を指差す。
妊娠六ヶ月になる八人目の子供だった。性別は生まれてくる時のお楽しみと言う事で特に聞いていない。
「……あのさ、今日って何の日か知ってる?」
両掌で赤茶色の湯飲みを転がしながら急に真顔になる美琴。
「……え? ええ? えっと……何だったっけな。結婚記念日じゃねーし、お前の誕生日でも俺の誕生日でもない。子供達はもちろん違うし、ゴミの日は昨日だった」
慌ててうんうんうなりながら腕を組んで考え込む上条。
美琴はくすりと笑って、
「今日はね、一一月二二日。当て字で『良い夫婦の日』って言うのよ」
「な、なんだそっか……俺はまたてっきり二人の記念日を忘れてお前に怒鳴られるのかと思ったよ」
上条はほっと胸をなで下ろす。
「私達は良い夫婦になれてるかしら?」
「夫はダメだけどその分妻がしっかりしてるからな。バランスは取れてんじゃねーの?」
上条が湯飲みを右手に持って顔の前に掲げる。
美琴も同じように湯飲みを掲げ、
「良い夫婦に」
「乾杯」
二人の間で湯飲み同士がカチン、と音をたてた。
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