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#navi(上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある異世界の上琴事情)

EXTRA EDITION_1(二日目:ナイトドライブ)

『ピピピピピ、ピピピピピ、ピピピピピ、ピピピピピ、ピピピピピ、ピピピピピ』

(琴)「ハイ、じゃあ今日はここまでね」
(上)「お、終わったァ……」
(琴)「当麻、お疲れ様」
(上)「ホント、疲れた~……」
(琴)「これくらいで何言ってんのよ。明日からはもっとビシビシやるわよ」
(上)「う゛……」
(琴)「ホント……勉強になるとだらしないんだから……」
(上)「うう……だってよぉ……」
(琴)「コレでもかなり優しくしてあげてるつもりなんですけど?」
(上)「た、確かに付き合う前はもっとキツかったけどさ……」
(琴)「だってぇ……当麻ったら、すぐに『オレはレベル0だから』とかって言い訳ばっかりなんだもん……」
(上)「あ……そ、それはさあ……」
(琴)「でもさ……イジけた当麻もちょっとカワイかったりして……、そうなるとイジめたくなるのよね……」
(上)「……不幸だ……」
(琴)「……やっぱり……カワイイ。(じーーーーーーーっ)」
(上)(うっ……、な、何だ……その視線は?)
(琴)「じーーーーーーーーーーーーーっ」
(上)(あ……も、もしかして……)
(琴)「じーーーーーーーーーーーーーっ」
(上)「美琴……コッチ、来るか?」
(琴)「うんッ!!!」

 上条の地獄の集中補習が始まって二日目。
 【喫茶店エトワール】裏の警備員(アンチスキル)詰め所で行われている上条の課題対策も同じく二日目である。

 本来なら、机の一角を使って、肩を並べて……と行きたいところなのだが……。
 アッコさんからも言われた通り、勉強中は『イチャイチャ禁止令』が出てしまっている。
 その為、美琴が必要以上に上条に近付くとペナルティが科せられるようになっていて、そのペナルティが三つ以上になると、アイスホッケーのように上条は『ペナルティ・ボックス』に閉じ込められてしまい、美琴と離されてしまうのだ。
 そして二人は同室にいるにも関わらず、15分間の『顔を合わせられないペナルティ』を喰らわされる。

 昨日の夜はこの仕掛けを知らずに、『イチャイチャモード』が展開してしまったため、早々に上条は『ペナルティ・ボックス』に閉じ込められた。
 上条も驚いたが、それ以上に美琴のパニックぶりはスゴかった。
 せっかく一緒に勉強出来ると思っていたのに、いきなり上条がドコかに連れ去られてしまった。
 その上、いつまで経っても帰って来ない。
 正に『おあずけ』を喰った形になった美琴は、15分後に現れた上条に思わず抱きついてしまった。
 すると、再び上条は『ペナルティ・ボックス』行きとなり、美琴は再び『おあずけ』を喰らうハメになった。
 そして再び15分後に上条が現れると、美琴が思わず抱きついて、またまた上条は『ペナルティ・ボックス』行きになる。
 ……コレを延々と繰り返しそうになった。
 さすがに3度目に溜息混じりのアッコさんからの忠告があって、その後二人(主に美琴)は必死で『イチャイチャ』をガマンしながら勉強に勤しんだのである。

 つまり、課題に取り組んでいる間は、二人は『イチャイチャ禁止令』に縛られており、側にも寄れないのだ。
 さすがにコレは『学園都市最強のバカップル』にキツかったようで、昨日も今日も勉強が終わると美琴はそれまでの『おあずけ』を一気に解消すべく行動に出る事になる。
 だが、自分から行動を起こすのは恥ずかしいらしく、上条に無言の訴えを投げかけるのだ。
 昨日はその美琴からの無言の訴えが分からず、ふくれっ面と共に『電撃の槍』を浴びせられた(部屋は耐電処理されているので無事)上条だったが、さすがに今日は気付いたようだ。

 しかし……誰だ? こんな仕掛けを考えたのは……。

(琴)「エヘヘ……当麻ぁ……」
(上)「スゴい甘えッぷりだな……」
(琴)「だってぇ……」
(上)「オレも……実はさ……」
(琴)「うん……」
(上)「美琴……」
(琴)「当麻……」

 『キュッ』と抱き合う二人。
 補習期間という『不幸』の中で、シッカリ『幸せ』を満喫している。

(ア)「そろそろ満足したかなぁ~?」
(上琴)『『ボンッ!!!(////////////////////)』』
(琴)「あ、ああああああああ、ああああああああああああアッコしゃん……」
(ア)「ンッフッフッフ~、ビックリして離れるかと思ったら、抱き合ったままなの? そりゃあれだけ『おあずけ』を喰らっちゃったらねぇ……」
(上琴)「「あうあう……」」
(上)「あ、あの……アッコさん……? も、もしかして……」
(ア)「うん、ずっと見てたわよん♪」
(琴)「あうあう……」
(ア)「結婚式に見せるビデオがまた増えちゃったわね」
(上琴)「「見せないッ!!!!!」」
(上)「第一、この補習が終わったら消すんじゃなかったのかよ……」
(琴)「コピー取らないんなら残しておきたい気もするけど……」
(上)「え゛!?」
(琴)「当麻が私と結婚するのを躊躇ったら、私を弄んだ証拠として……ブツブツ……」
(上)「み、美琴さん……何を仰っておられるのでせう?」
(琴)「当麻が『コッチにおいで』って言ったから、私は仕方無く当麻の側に行って……そしたら抱き締められて……ブツブツ……」
(上)「あ、あの視線は……無視ですか?」
(琴)「当麻のご両親にこのビデオを送りつけて……そしたら……ブツブツ……」
(上)「何、とんでもないコト考えてんだッ!?」
(琴)「とっ、当麻がッ……私をお嫁さんにするって言ってくれたら……ブツブツ……」
(上)「(もう、そのつもりだよッ)」
(琴)「ヘッ!? 何か言った? 当麻」
(上)「何でもねえよッ!!!!!(////////////////////)」
(ア)(あ~あ、上条君、言っちゃえばいいのに……。……でも、あのバカもなかなか言ってくれなかったもんなぁ……プロポーズ。男ってどうしてこんなに鈍感なのかな?)
(マ)「オーイ、そろそろ帰らねえと遅くなっちまうぞー」
(ア)「ボンッ!!!(////////////////////)」
(マ)「ヘッ!? 何赤くなってんだ?」
(ア)「うッ、ウルサいわねッ!!!」
(マ)「ヘッ!?」
(ア)「きょっ、今日はアンタが二人とも送りなさいよッ!!! もうちょっと二人で居させてあげてもイイだろうからさッ!!!」
(マ)「お、おう……えッ!? でも何で、オレが……」
(ア)「あッ、アタシは……その、ちょっとする事があるからッ……イイわねッ!!!」
(マ)「あ、ああ……ゎ、分かった……」
(上琴)「「……」」
(マ)「アレ……? なあ、オレ……何かしたか?」
(上琴)「「さあ……?」」
(マ)「まあ、イイか。……それじゃあ、二人とも裏で待ってるからな」

 そう言うとマスターはそのまま部屋を出ていった。
 『ポツン』と取り残された二人は……。

(琴)「と、当麻……」
(上)「何だよ……美琴……」
(琴)「マスターってさ……」
(上)「あ、ああ……」
(琴)「当麻より鈍感かもね……」
(上)「……だな」
(琴)「アッコさん……苦労してるんだろうなぁ……」
(上)「うん……そうだな……」

 ……ところで……
 お二人さん……。
 いつまで、抱き合ってるの?

(上琴)「「あうあう……」」



『ヒューーーーーーーーーーーーーーーーーン』

 二人が店の裏に回ると、そこには『HsSSV-03(ドラゴンドライブ)』が有った。
 それを見て上条はガックリと肩を落とし、美琴は眼をキラキラと輝かせている。

(琴)「マスター、コレで送ってくれるのッ!?」
(マ)「ああ、そうだけど……上条、どうした?」
(上)「一昨日の悪夢が……」
(マ)「何言ってんだ? オマエ……」
(上)「あ……アハハ、アハハハハ……ハァ……」
(琴)「ホント、だらしないんだから……」
(上)「そう言うけどよぉ……」
(マ)「何かあったのか?」
(琴)「一昨日、この車でココまで送って貰った時に、黄泉川先生……だっけ……。あの人が運転してたんだけど、ジェットコースターみたいで面白かったのよ」
(上)「オレは死ぬかと思った……」
(マ)「非装備モードでの臨界だな……。黄泉川のヤツ、テストとか何とか言って……自分が楽しんでただけじゃねえのか?」
(上)「え゛……」
(マ)「安心しろよ。そんなに飛ばさねえって。……第一、オレは黄泉川ほど、運転上手くねえからさ」
(琴)「えーーッ? つまんない」
(マ)「何だよ? 嬢ちゃんはそっちがお気に入りなのか?」
(琴)「だってぇ……面白かったんだもん……」
(上)「あ、アレを面白いで済まさないで欲しい……」
(琴)「ねえ、マスター……、またやって欲しいな。ジェットコースター」
(マ)「悪いが嬢ちゃん、それはダメだ」
(琴)「え?」
(マ)「アレは黄泉川が乗ってたから出来たんだ。現役の警備員(アンチスキル)が搭乗してるから、サイレンも鳴らせるし警告灯も回転させられるんだ。オレにはそれをする資格がねえ」
(琴)「コマンダーだったのに?」
(マ)「だ・か・ら……今はタダの喫茶店のオヤジなの!!! 他に保管するところがねえから預かってるだけで……保管する限りは好きに使ってイイとは言われてるがよ……」
(琴)「だったら、バレなきゃイイじゃない」
(マ)「オイオイ……常盤台のお嬢様の台詞じゃねえぞ。……オイ、上条……何とか言えよ」
(上)「無理……。こうなった美琴は何を言っても無駄……」
(マ)「じゃあ、諦めるのは……オマエだな」
(上)「え゛……?」
(マ)「ホレ、乗った、乗った。明日もあるんだから、あんまり遅くなる訳にも行かないからな」
(琴)「ヤッタァ~! ジェットコースターだぁ~~~」
(上)「ふ、不幸だ……」

 オイオイ、警備員の資格はイイのかよ……。
 というツッコミを無視して、マスターは『ドラゴンドライブ』を発進させる。
 美琴と当麻はシッカリ後部座席に並んで座っている。

『ヒュイイイイイーーーーーーーーーーーーーーーーーン……』

(マ)「まあ、オレも必要な装備してねえから、通常モードだけどな」
(琴)「イイの、イイの。エヘヘ……楽しみィ~」
(マ)「コリャ、確かに何言っても無駄だな……。分かったよ、ちょっとだけだぞ」

 とマスターが言った時だった。
 急に通信が入ってきた。

『ザザッ……第三学区で宝石強盗事件発生。犯人は第七学区方面に逃走中……ザッ……』
『ザッ……犯人グループは白のワゴン車で、ナンバーは……ザザッ』

(マ)「宝石泥棒って……珍しいな……」
(琴)「物騒ねぇ……」
(上)「不幸だ……」
(マ)「何か、上条だけ会話になってない気がするんだが……」
(琴)「イイから、イイから。ねぇ、マスター、早くゥ~」
(マ)「しょうがねぇなぁ……。ホンじゃイッチョ行くか!」
(上)「えッ!? ちょっと待って。心の準備があああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!」

『ゴワッ!!!』

 上条の叫び声と共にフル加速に移る『ドラゴンドライブ』

(琴)「キャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ」

 美琴は大喜びである。
 一方上条は……

(上)「……」

 ……気絶してるね……。
 上条が気絶し美琴が喜んでいる時、対向車線に多くの青い回転灯が見えた。
 どうやら、逃走中の犯人の車を補足したらしい。

(マ)「コリャ、時間の問題だな」

 そうマスターが呟いた時、異変が起こった。
 交差点の左から、いきなり大型の重機っぽい駆動鎧(パワードスーツ)が飛び出て来たのである。

(マ)「チッ!」

 マスターは瞬時に『ドラゴンドライブ』を180°回転させると、後方の加速用バーニアを展開、フル制動に入る。
 『ドラゴンドライブ』は重機っぽい駆動鎧の出て来た交差点の数メートル手前で停止する。

(琴)「くぅッ!? ……あッ、……アレは……」
(マ)「アレって、レイバー(多足歩行式大型マニピュレータ)の改造版じゃねえかよ……。あんなモン、どっから?」
(琴)「れ、レイバー?」
(マ)「学園都市の切り売りした技術を使って、外の世界で作られた人型の重機だよ。建設現場じゃかなり役に立ってるらしいぜ」
(琴)「アレって……逆輸入だったんだ……」
(マ)「何だよ、嬢ちゃん。アレ、知ってんのか?」
(琴)「ぅ、うん……。前にちょっとね……」
(マ)「フーン、……で、どうするんだ?」
(琴)「もちろん……」
(マ)「もちろん?」
(琴)「追っかけるに決まってるじゃない!!!」
(上)「ふえッ……アレッ、ど、どうしたんだ……?」
(マ)「だろうなッ!!!」
(上)「え……、あの、なに……、何がどうなってるんでしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!?」

 目が覚めた途端に、再びのフル加速を経験させられる上条さん。
 カワイそうに……。
 一方、マスターはフル加速に移りながら、様々な指示を出していた。

(マ)「ボギー」
(ボギー:以下ボと略)『ハイ、マスター』
(マ)「後部シートのシートベルトにセーフティ・バーを追加しろ。そして、簡易の耐G装備に変更」
(ボ)『了解しました。マスター』
(琴)「マスター、誰と話してるの?」

 美琴が疑問を投げかける。

(マ)「コイツのAI(人工知能)さ。標準装備じゃなく、オレ専用だけどな」
(琴)「マスター専用のAI?」
(マ)「ああそうさ。オレが現役時代からの相棒でな。旧世代なんだが、コイツだと無理が通るんでな。……楽しめるシチェーションだ」
(琴)「ィヤッタァ~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ!!!」
(上)「降ろしてくれえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええッ!!!」

 と、上条が叫んだら後部座席にジェットコースターの安全バーのようなモノが降りてきて、シートに完全に固定される。
 と同時に首や肩を柔らかいクッションで保護される。
 但し、その分首は動かせなくなり、視線は正面に固定される。

(上)「あ、あの……マスター……。首が……」
(マ)「しばらくガマンしろ。折れるよりマシだろ? 怖かったら、目を瞑っていろ」
(上)「え゛……」
(マ)「ボギー。パワーゲインセーフティを『ステージ1』に変更。セーブモードは解除だ」
(ボ)『了解しました。ですが、マスターの装備がそれに合っておりませんが?』
(マ)「構わねえよ。いつもの事だ」
(ボ)『了解です。セーフティ解除。パワーゲイン『ステージ1』に移行。3、2、1、システムオールグリーン。解除完了』
(マ)「リニアシステム起動。機体高度は30センチを基本に確保。後部ウィングのレールバンカーのセーフティ解除」
(ボ)『了解しました。リニアシステム起動。機体高度は30センチを確保。レールバンカーのセーフティ解除。解除完了。戦闘形態ステージ1準備完了』
(マ)「それじゃあまあ……チョットだけ、本気で行きますかッ!!!」

 マスターはそう言うと、アクセルペダルを一気に踏み込む。
 先程、制動に使った後方のバーニアがフルブーストされ、今までとは比較にならないGが全員に掛かる。
 加速途中に数台の警備員のパトカーがスクラップにされていたのが一瞬だが見えた。
 どうやら重機レイバーにやられたようだ。

(マ)「オイオイ……やられっ放しかよ……」
(上)「あ、あの……マスター……?」
(マ)「ア? どうした、上条?」
(上)「スゲえ、つまんねえ事聞くけど……さ……」
(マ)「ああ」
(上)「この車って……今、走ってんの? それとも……飛んでんの?」
(マ)「時速300キロを軽く超えてんだ。この速度で路面のギャップを拾ったらどうなると思う?」
(上)「今サラッと……スゴいコト言わなかった?」
(マ)「えッ?」
(上)「時速……何キロ超えてるって……?」
(マ)「もう一度聞くか?」
(上)「イ、イヤ……イイです……」
(琴)「キャーーーーッ、時速300キロ超えなんて、地上じゃ初体験だぁ~~~~~~~ッ」
(上)「美琴ォ……。ふ、不幸だ……ぐえッ!?」

 上条が悲鳴を上げた理由は……。
 前方から飛んできた、重機レイバーのアームの残骸を『ヒラリ』と華麗に避ける『ドラゴンドライブ』
 機体性能にはまだまだ余裕があるようだ。
 だが……、乗っている人間は……そうは行かない。

(琴)「キャァア~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ! た~のしィ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ!!!」

 ……でもないようです……。
 若干一名を除けば……。

(マ)「ボギー。通信回線を開け」
(ボ)『了解しました。マスター』
(マ)「前方の追跡中のパトカー。運転手は……黄泉川か?」
(黄)『ザザッ……こ、コマンダー!?』
(マ)「やっぱりそうか。黄泉川、デカ物はオレが引き受ける。前のワンボックスを追え!!!」
(黄)『でッ、ですが……』
(マ)「心配すんなって。コッチはコレに乗ってるんだからな」
(黄)『了解しました。ではお願いいたします!!!』
(マ)「オレの後ろに付け!!! 3カウントでヤツを止めるから、そのスキに前に出ろ!!!」
(黄)『了解!!!』
(マ)「嬢ちゃん、上条。しっかり掴まってろよ!!!」
(琴)「な、何をするの?」
(マ)「レールバンカーぶち込んで、コイツの足を止める!!!」
(琴)「やりたいッ!!!」
(上・マ)「「ハァ!?」」
(琴)「私にやらせて!!! その『レールバンカー』を撃つのッ!!!」
(マ)「あ、あのなぁ……」
(上)「マスター……、諦めて……。美琴の眼がキラキラしてるから……」
(マ)「わーったよ……。ッたく、ボギー! 後部右座席に『レールバンカー』の照準を渡せ!!!」
(ボ)『了解しました。マスター』
(マ)「両肩の稼働部の付け根に照準を合わせろ!!! バンカーが突き抜けた瞬間にフックが掛かる。その時に全力制動でヤツを止める!!!」
(琴)「任せて!!!」
(マ)「照準をロックしたら、3カウントで撃て!!!」

 マスターがそう言った途端、前を行く大型重機レイバーが機体を大きく左右に振り始めた。
 どうやら、ロックオン用のレーザーを感知したらしい。
 ところが……

(琴)(えッ!? 照準から……外れない? シッカリ追尾してる)

 『ドラゴンドライブ』の機体も大きく左右に振れる。
 乗っている上条も美琴も身体を左右に持って行かれそうになる。
 だが……身体はシートに支えられ、照準は外れることなく、大型レイバーの機体を追尾し続けている。

(琴)(マスターがスゴいんだ。マスターが大型レイバーの動きを先読みしてるんだ……)
(マ)「ヘッ。さすがに黄泉川だな。シッカリ付いて来やがるぜ」
(上琴)「「えッ!?」」
(琴)(冗談でしょ? この状況下で後ろの事まで把握出来るなんて……)
(マ)「嬢ちゃん、急げよ。後ろがシビレ切らしてるぜ!!!」
(琴)「アッ!? ハイッ!!! ……照準、ロックオン!!!」
(マ)「スリーカウント!!!」
(琴)「3・2・1・行っけぇぇぇええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええッ!!!」

 まるで『超電磁砲(レールガン)』を撃つように美琴が叫び、トリガーを引く。
 見慣れたオレンジ色の閃光と共に、打ち出された『レールバンカー』が大型重機レイバーの肩を貫く。
 と同時にマスターが叫ぶ。

(マ)「黄泉川!!!」
(黄)『了解!!!!!』

 マスターは『ドラゴンドライブ』の前方のバーニアをフル稼働させると同時にタイヤを接地させ、フルブレーキングを敢行する。
 黄泉川のパトカーはその横をすり抜けてゆく。
 大型重機レイバーは撃たれた事に動揺していたのか、黄泉川のパトカーをそのまま通過させるしかなかった。
 一方『ドラゴンドライブ』は先程から全力制動に入っている。
 だが、相手は大型の重機レイバー。
 重量差があり過ぎる。
 そう簡単には止まらない……。
 ……はずだった。
 だが……、重機レイバーが『ドラゴンドライブ』を引き剥がそうと前方に加重を移そうとしたその一瞬前

(マ)「ワイヤー、切り離せ!!! ボギー!!!!!」
(ボ)『了解しました。マスター』

 機械的な音声が応えた途端、大型重機レイバーは前方ですっ転んでいた。
 自分の身体を支えようと出した両腕は、肩から無残に折れてしまっている。
『ギャギャギャギャ、ガガガガガガ……』
 大きな音と共に転がる大型重機レイバー。
 それを見ていたマスターが、ハンドルに付いたトリガーを引く。

(ボ)『ピーピング・トム射出。ターゲットに命中確認。コレよりハッキングを開始します』
(マ)「終わりだ」

 そう言うとマスターは『ドラゴンドライブ』を完全に停止させる。
 そして、外に出て胸ポケットからタバコを取り出し、火を点ける。

(マ)「ふぅ~~~~~~~~~。やっぱ、この一服はやめられねえな」

 そうマスターが呟いた時、通信が入ってきた。

(黄)『ザザッ……コマンダー、コチラも犯人確保完了しました」
(マ)「早ええな……。手荒なコトはしてねえだろうな?」
(黄)『コマンダー程ではありません。犯人は一応生きております』
(マ)「それならイイ」
(上)「イイのかよッ!?」
(マ)「後は任せるぜ。イイよな?」
(黄)『了解しました。……あ、あの……コマンダー……?』
(マ)「何だよ? 黄泉川」
(黄)『子供達にあまりこの機材を扱わせるのは……如何なものかと……』
(マ)「あ……やっぱりバレてた?」
(黄)「相変わらずですね……そう言うところは……」
(マ)「まぁ、そう言うな。それだけオレが、コイツらを信頼してるってコトさ。でなきゃ、照準を任せる訳がねえだろ?」
(黄)『確かに……』
(マ)「じゃあな、黄泉川」
(黄)『レールバンカーを撃った子にお伝え下さい。良い腕だったと』
(マ)「ああ、分かった……『ピッ』……だとよ、嬢ちゃん」
(琴)「エヘヘ……」
(マ)「上条もよく頑張ったな」
(上)「え? お、オレ……オレは何にもしてねえけど?」
(マ)「良く言うぜ。照準を合わせてる時、嬢ちゃんの手をシッカリ握ってやってたクセによぉ?」
(上琴)『『ボンッ!!!(////////////////////////////////////////)』』
(琴)「み、見てたの……マスター(////////////////////)」
(上)「アハハハ……(////////////////////)」
(マ)「ほら、サッサと帰るぞ。でねえと事情聴取されちまうからな」
(琴)「あ……」
(上)「それは困る……」
(マ)「さあ、乗った乗った」
(上)「あ、あのさ……マスター」

 『ドラゴンドライブ』に乗りながら上条が聞く。
 後部シートは普通の状態に戻っていた。

(上)「あの大型重機レイバー、派手に前にすっ転んだけどさ……」
(マ)「ああ、アレか」
(上)「ああいうのってさ、普通は中のAIが制御してるモンなんだろ? あんな風に転ぶなんてさ……」
(琴)「マスターよ……」
(上)「ヘッ?」
(琴)「照準を合わせてた時に分かったの。全制動をかけるための前方バーニアをあの重機レイバーの膝に向けてたのよね? マスター」
(マ)「まあな……」
(琴)「バーニアの熱で膝の駆動部が溶けて、ほとんど動かなくなってたから、ワイヤーが離された途端に制御出来なくなって、すっ転んだって訳……」
(上)「へえ……あの瞬間にそこまで……スゲえな」
(琴)「普段はただのボケオヤジにしか見えないのにね……」
(マ)「褒めるか、貶すかどっちかにしろよ。オマエら……」
(上琴)「「アハハ……」」
(マ)「んじゃ、行くぞ」

 そう言ってマスターは『ドラゴンドライブ』を発進させる。
 先程のようにGが掛かる速度ではない。

(琴)「ねえ、マスタァ~」
(マ)「もうダメ。さすがにこれ以上は嬢ちゃんの頼みでもダメだ」
(琴)「え~~~~~~~~~~ッ(ム~~~~~~~~ッ)」
(マ)「上条、何とかしろ」
(上)「な、何とかしろって言ったって……」
(マ)「しょうがねえなぁ……ホラよッ」

 『キュンッ』

 マスターがチョットだけ勢いづけてハンドルを切る。
 シートベルトをしている最中の上条が横Gに押されて美琴の方に流れる。

(上)「わッ!? わわわわわ……」
(琴)「キャッ!?」

『チュッ』

(マ)「しばらく大人しくしてろよ。二人とも」
(上琴)「「ふ、ふにゃぁぁ……」」

 深夜の第七学区を駆け抜ける『ドラゴンドライブ』
 その後部座席からは、ピンク色のハートが夜空に舞っていたとか、いなかったとか……。

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