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第一章 秋更けて冬が始まる


秋ももう終盤を迎え、学園都市の一部の地域では粉雪も降っているらしい。
上条の住む第七学区はまだ銀杏の花弁が舞う季節で、11月終盤だと言ってもかなり寒い。
その寒い季節になって初めて、上条に彼女が出来た。
学園都市のレベル5、御坂美琴。
超電磁砲と呼ばれる彼女を意識し始めたのはロシアからだったのかもしれない。
一端覧祭も終わり、上条は久々に御坂と会う事になり嬉しさを舞い上がらせていた。
真っ黄色に染まった銀杏の花弁が上条の目の前に落ちて、足を急がせた。
待ち合わせ場所は第七学区の公園。
恋はここで始まり、そして上条の世界は一変した。そう良い意味でだ。
フゥゥッと秋風が上条の刺々しい髪の毛を揺らし、秋の終わりを告げるように木の葉は散る。
時刻は既に四時を越えていて、寒い秋風が吹いて上条は両手を制服のポケットに突っ込んだ。
その時、上条の後ろから御坂がやってきた。

「おお、御坂。どうしたんだ?急に呼び出して」

夕日が上条と御坂の影を作り出し、喪失感を持たせる。
暖かな季節は終わりを告げ、また新しい季節が始まる。
そんな時だった。彼女は涙を流し、そして一言だけ告げるとすぐに帰っていく。

『別れて、お願いします。上条さん』

その一言で十分だった。
怒る理由もそこで出来た。上条は御坂へ向かって怒鳴るが聞く耳を持たない御坂はその公園を去っていく。
上条は溜息をついて、つい先程までの楽しみを、そして嬉しさを奪われた様な気がして悪態ついて家へ戻っていく。 




                            *


上条は1人、ベッドに腰掛けながら思い詰めていた。
腹がたった。初恋という部類に入る『恋』だったのに遊ばれたような気がして。
ずっと手元には数カ月前に二人で撮ったツーショット写真を待ち受けにした携帯を握り締めていた。
妙なプライドというべきか、こっちから連絡なんて取ってやるもんかという。
未練なんてない、と思いながら上条は御坂美琴に関する電話番号やメールアドレスから全て消し去り、着信拒否にしてそしてメールを全て削除した。
今日の夜に帰ってくる同居人の帰りを待ちながら料理に腕を振るって待っていた。

「ただいまなんだよ!」
「おじゃましまーす!」
「邪魔すンぞー」

インデックスは打ち止めの家に行ってきたらしいが連れてくるなんてな、と呟きながら主婦のように「ご飯出来てるぞ?」と笑顔で言う。
そんな上条を不審に思った一方通行は目を伏せてコタツに足を突っ込んだ。
それに続き打ち止めとインデックスも足を入れて「あったかーい!」とホカホカしながら言う。

「おし、打ち止めと一方通行の分は用意してないから今から作るけど、取り敢えずコレでも食っといてくれ」

と三人分の豚汁をコタツの上においた。
「美味しそうなんだよ!」とインデックスが叫んで冷ましながらゆっくりと飲んでいく。
一方通行は猫舌なのか、かなりの時間を要しながら息で豚汁を冷ましていく。
と、途端に一方通行が立ち上がり「トイレどこだァ?」と聞いて上条が指差すも無理矢理手を掴んでトイレではない個室に連れ込んだ。

「おい、三下。お前、オリジナルか銀髪シスターと何かあっただろォ?」
「……な、何の事か上条さんはわかりません!」
「……そォかい、テメェが何にもねェンならどォしようもねェわな」

一方通行はリビングへ戻りコタツに足を入れて、豚汁を啜った。 



                            *


1人になると考えてしまうのが人間の癖だ。
インデックスは結局、黄泉川家に泊まるらしいし、取り敢えず注意事項等をきっちりを注意して送り出した。
先ほどまで騒がしかった部屋は一変して静かになり、時計の針の音が部屋に響きあっていた。
上条の消し忘れたモノがひとつあった。それは写真。
一枚目は一端覧祭で常盤台を訪れた時に白井黒子と戦った時の写真。ドロップキックを顔面に受けて情けない顔になっていた。
二枚目も一端覧祭で撮った写真で、たこ焼きを食べさせ合っていた時の写真。両方共熟成したリンゴの様に赤くなっていた。
三枚目は最近だ。ゲームセンターでレーシングゲームで必死に打ち込んでいる御坂の姿。凛々しいのが少し癪だが。
四枚目はその帰りに寄ったお洒落なカフェだった。テラスだったので肌寒かった記憶が新しい。
そんな写真を眺めている時点で上条には未練がましいという事が分かる。
それを理解した上条は無心の表情で写真フォルダを全て削除して、携帯電話をベッドに放り投げた。

「……はぁ」

初めて心から人を想えたのは間違い無く彼女だ。
記憶では会って二日程度で学園都市最強の第一位と戦った。
おもえば何故だろう?と疑問に思う。
あの頃は純粋な気持ちで動くことが出来た。戦う理由は『助けたいから』。
しかし、『グレムリン』や『レイヴィニア=バードウェイ』なんて化け物が表に出てきて上条は『使い勝手の良い脅威』となって
『バゲージシティ』や『ハワイ』でそれぞれの思惑通りに動いてしまっていた。
それからだ。人を素直に信じられなくなったのは。
唯一の光は御坂美琴だったような気がする。
告白された時は、嬉しかったし永遠にこの時が続くってことも信じてた。
きっと彼女を見れてなかった。『光』として、和らぎとして、そしてそれが当たり前のようになっていた。
「側に居れるだけで俺は満足だ」なんて思ったいたりなんてした。
今更理由なんて考えても仕方がないのは分かっているし、未だに彼女が何故居なくなったかを理解できない。

「俺は子供(ガキ)だ……、だからアイツの泣いてた意味がわからない」

ボソッと呟いた。 







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