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上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/当麻と美琴の恋愛サイド/幸福の美琴サンタ/Part2 - (2010/02/03 (水) 00:47:07) の編集履歴(バックアップ)




 12月24日 PM6:17 晴れ

 御坂美琴は公園の前の道路に一人立ち、待ち人が未だ来ないことに苛立っていた。
 待ち合わせ時間は午後6時である。

美琴(全く、どうしてアイツはいつもいつも私を待たせるのかしら……)

 その日の美琴はモコモコした白いニットのコートに、赤を基調としたプリーツスカート、ニーソックスに猫の刺繍が入った手袋
といった出で立ちであった。そのコートはボタンが小さな花の形をしていたり、丸いぽんぽんが付いていたり、フードが動物の耳
のような形をしていたりと、相変わらず趣味が全開している。丈は股下あたりまであり、スカートがチラチラ見えている。
 もちろん中は制服でないため校則違反だ。
 その可愛らしい服装とは裏腹に、美琴の眉間は徐々に険しくなっていく。

上条「わりぃ御坂」

 駆けてくる足音と共に横から声を掛けられる。

美琴「アンタねぇっ!……………」

 用意していた文句を放とうと声のする方を向いたが、上条の姿を見た瞬間、出しかけた言葉を飲んでしまった。
 その代わり溜息が漏れる。

美琴「はぁ……でアンタ、今日はどんな事件に巻き込まれて、どんな女の子を救ってきたわけ?」

 上条はこの寒空の下、学ランだけの格好であった。こんな日にそんな格好なのもツッコミたいところだが、美琴の目は別の物
に引かれる。上条の体には所々擦り傷があり、よくみると顔も一部腫れていたのだ。

上条「い、いや。違う!断じて違います!これは………なんというか、男の友情を確かめ合うために拳を交えたというか何というか」

 それでも美琴は睨み続ける。
 上条はその視線から逃れつつ「さ、さぁ寒いしささっと行こうぜー」と美琴の脇をすり抜けようとする。
 が、美琴はそ上条の制服を掴むことでそれを制した。

美琴「ほんとのこと言いなさいよ」
上条「ほんとです」
美琴「………………………」
上条「………………………わ、分かった分かった。詳しく話す。だからそんな悲しそうな顔すんな」
美琴「別にそんな顔…………ん?」

 上条が目の前に1メートルくらいの大きな紙袋を差し出す。

上条「今日補習があって、その後コレの仕上げを学校でやって、一旦帰って着替えてから来ようと思ったんだけど、途中で
    ダチに捕まっちまったんだよ」
美琴「……で?」
上条「『上条当麻。そのあからさまにプレゼントっぽい物はなんだ?吐け、吐かねぇと絶対帰さねぇ』とか糞真面目な顔で
    言われて……粘ったんだけど、そいつらがあまりにしつこくてさ、仕方なく言ったら……」

 美琴が先を促すと、上条は少し恥ずかしそうに視線を逸らす。

上条「『常盤台のお嬢様とイブにデートだと!?』、『ぎゃー負けた。上やんの不幸がフラグに負けたー!』、『殺す!!』
    とか言われて……」
美琴「…………」
上条「襲ってきたので、殴り合ってました。ごめんなさい」
美琴「…………嘘くさー」

 とりあえず『デート』という単語には触れないでおく。

上条「嘘じゃねぇって!このアザは土御門の馬鹿、こっちの傷は青髪の馬鹿だ!アイツら……今度覚えてやがれ」

 思い出して上条は怒りに震える。

美琴「まぁ、今回は信じてあげるけどさ。アンタ、あんま隠し事すると承知しないわよ?」
上条「ん、良いけど。何でお前がそんなに怒るんだ?」
美琴「ッ…………あ、アンタが馬鹿だからよ!」
上条「……わけ分かんねー」
美琴「ほら!」

 美琴は自分の足下に置いていた、上条の物より一回り小さい袋を漁ると、中から白と水色のストライプ柄をした小包を
取り出し、上条の胸めがけ投げつけた。
 上条はそれを危うく取ると、数秒して察したかのような顔をする。

上条「ん、これって、クリスマスプレゼント」
美琴「じゃないわよ」
上条「へ?」
美琴「アンタあてじゃなかったんだけど、たまたま余ったのよ。アンタに貸すわ」

 美琴が開けるように促し、上条が赤いリボンをほどくと、出てきたのは黒っぽい手袋であった。手の甲の部分には猫の
マスコットが刺繍してある。
 上条はその愛らしい(悪く言えば子供っぽい)デザインに少しげんなりする。

上条「気持ちはありがたいけど、受け取れねえよ、だって」
美琴「アンタが右手の能力を使ったら破けちゃうからって?じゃぁ今日は使わなきゃ良いじゃない」
上条「いやお前」
美琴「それとこれも」

 そう言って今度はオレンジの小包を投げてよこす。
 開けてみるとそれは青緑色のマフラーであった。
 何やら刺繍がしてある。

上条「……TOMAはーと?」
美琴(や、やば!1カ所直し忘れた!?)
美琴「か、勘違いしないでよね。それも同じ理由。親戚の『とうまくん8歳』にあげる予定だったけど、色々あって駄目に
    なったから、今日だけ貸してあげるってだけよ!」
上条「……………」
美琴「返事は?」
上条「いやだからさ、俺が借りるのはまずいって。最近だって、不幸体質のおかげでどんどん防寒具が奪われていくんだぞ。
    預けてたら1時間くらいでボロボロになるのが目に見えてるっての」

 上条の何かを諦めたような表情を見て、美琴は少しイラつく。

美琴「……………………私が良いっつってんだから良いの。それとも柄が嫌なわけ?」
上条「いやそう言う訳じゃ」
美琴「ならありがたく受け取っておきなさいよ。はいはいさっさと付ける、ほら!」

 そう言って無理矢理上条をマフラーでぐるぐる巻きにすると、上条も渋々と言った感じで手に持っていた可愛い手袋を付けた。

美琴「あとこれ、ついでにあげるわ」

 美琴は何やらカード状の物を上条の左手に握らせた。
 どうやらお守りのようだ。

上条「………恋愛成就???」

 形はお守りだが、ピンク色のそれにはケロヨンとピョン子が描かれ、その間には『恋愛成就(はぁと)』と書かれてあった。
―――ように見えた。
 一瞬手袋のような物が目の前をサッ!と超高速で移動したかと思うと、手に握られていたお守りは『幸福守』と四つ葉
のクローバーが描かれたものに変わっていた。

上条(あ、あれ、幻視?俺、疲れてるのかな………)

 美琴の方を見ると、何故か上条を背にしてうずくまっている。

上条(何やってんだこいつ?つか、こいつってこう言うの信じるキャラだったっけ?)
上条「えっと……………さ、サンキュ」

 とりあえず好意は受け取っておく。
 一応右手では触れない方が良いかも、と思い左手でポケットに仕舞う。

美琴「安かったから、ついでに買っただけよ。これもクリスマスプレゼントじゃないから」

 何のついで?とは敢えて聞かないでおく。

美琴「さて!」

 美琴は立ち上がって静かに3回深呼吸すると、上条の方を振り向く。

美琴「左手出しなさい」
上条「?」

 言われるまま左手を差し出すと、美琴がそれを手袋をした右手で掴む。
 上条はふと、美琴のしている手袋の柄が自分のしているものと同じであることに気付いて少し可笑しくなる。

美琴「宣言するわ」
上条「ん?」

 美琴は上条を不敵に見つめる。

美琴「今日は、アンタに能力使わない」
上条「………できればいつも使わないようにしていただけませんでせうか」
美琴「文句あんの」
上条「いや、無えけど」
美琴「んで、今日はアンタも右手の能力を使わない」
上条「へ?」
美琴「使ったら手袋が破けるでしょ。だから使っちゃ駄目。今日の私はアンタに幸せを届ける美琴サンタなのよ。だから
    アンタに降りかかる不幸は私が」

 バシャッ。
 話している途中で、昨夜降った霙で出来た大きな水たまりの上を車が猛スピードで走り、二人に大量の冷水を掛けていく。

上条「………」
美琴「………私が振り払うから!」
??「キャー!避けてー!」

 美琴が声に反応して上条の後ろを見ると、公園の隣にあるマンションから茶色い花瓶が放物線を描いて飛んできていた。
 このまま行くと上条の頭にクリーンヒットしそうである。

美琴(どうやったら花瓶がそんな軌道で飛ぶような状況になるのよ!!)

 思うが早いか頭の先から電撃を放とうとする………が、数瞬遅れて上条も気付いたらしく、「あぶねっ!」と言って美琴を
押し倒す。美琴は花瓶の方を見ていたためそれに対応できず、真後ろに倒される。
 カシャンッという妙に小気味良い音が二人の横50cmくらいの所で響いた。

美琴(う……あれ?酷い倒れ方したと思ったのに痛くない)

 美琴の頭や体と地面の間には上条の腕が挟まれていた。
 その事により美琴の真っ白なコートは泥まみれにならずに済んだが、代わりに上条の制服が泥まみれになり、そればかりか
さらに傷が増えることになった。
 美琴は出鼻を挫かれた事と、それを防げなかった自分に腹を立てる。

上条「御坂、大丈夫か?」
美琴「わー!耳元で囁くな馬鹿!」

 美琴は立ち上がりながら上条の制服の泥を手で払う。

美琴「アンタ、もうちょっと私の力を信用しろっての」
上条「しょうがないだろ。咄嗟だったんだから」
美琴「今日くらいはこの御坂美琴センセーを頼んなさい。アンタを不幸じゃなくて幸福にするってのが私からのプレゼント
    なんだから」
上条「へ?」
美琴「あーあー。血出てんじゃないのよ。ちょっと待ってなさい。救急セット持ってるから」

 上条は少し面食らう。
 考えてみれば、さっきの状況でビリビリしてこないのは美琴らしくないな、と美琴が消毒液を探すのを眺めながら思う。

美琴「ちょっと何でこのセット、消毒液が入ってないのよ!」
上条「俺に怒るなよ」

 美琴はキッと上条の方を睨んでから、逡巡してガーゼを取り出し、それに口を付ける。
 どうやら唾液で消毒しようとしているらしい。

上条「お、おい、それくらい自分で」
美琴「うっさい何赤くなってんのよ!任せろっつってんでしょうが」
上条「赤くなんかなってねーよ!」

 ギャーギャー文句を言い合いながらも、美琴は手際よく消毒し四角い絆創膏を貼り終える。

美琴「全く、さっさと行くわよ。ほら、左手」
上条「なんつか、気持ちはありがたいけどさ、あんま無理すんなよ」

 実は内心かなり嬉しいのを抑えてそう言う。

美琴「無理なんかしてないわよ。レベル5舐めんな」

 そう言って上条の左手を乱暴に取る。
 敢えて左手なのは上条に能力を使わないという誓いを忘れないためであり、かつ上条の不幸に対抗するためには能力が必要で
あったためだ。恐らくそこは伝わってるだろうと美琴は考える。
 手袋越しとは言え、手を繋ぐという行為に内心ドキドキしつつ、それを抑えるため気付かれないように何度も深呼吸をする。

美琴「行くわよ、ってもうこんな時間じゃん!走らないと」
上条「お、おい、ちょっと待て」

 上条が道路に横たわっていた大きな紙袋を掴むのを確認すると、美琴も自分の袋を持って二人で走り出す。




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