とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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第1章 プレゼントの悩み


佐天「御坂さーん」
初春「こんにちわー」
美琴「ん?あ、二人とも久しぶり!」
佐天「お買い物ですか?あ、クリスマスプレゼントとか!」

 12月25日の日中に皆でパーティーをしようという約束があった。
 もちろん画策したのは黒子である。

美琴「え?う、うん。ままま、まぁね。あなたたちあてのは先週買っちゃったけどね」
初春「わぁぁ。セレブな御坂さんからプレゼントを貰えるだなんて感激です」
美琴「えっと……私のセンスにあまり期待しないでね。ははは……」
初春「そんな謙遜しないで下さいよー。私達は丁度さっき買ったところです」

 袋詰めされた大きな荷物を掲げる初春。

佐天「あれ?てことは今選んでるのは白井さんあてですか?」
美琴「えっ?いや、黒子のも先週買っちゃったんだけど、今のは他の奴向けで……なんていうか、先々週から悩んでるんだけど
    決まらなくてさ……」

 佐天と初春が互いに顔を見合わせる。

佐天「誰あてなんですか?」
美琴「えっっ?あ、うんと……二人は多分知らない人。別にどうでも良い奴なんだけど、一応色々世話になったというか、
    あげなくてもいい奴なんだけど……なんていうか、義理みたいなもので」
初春「は、はぁ。そんなに悩んでるんでしたら、及ばずながら私達も選ぶの手伝いましょうか?」
佐天「そうですよ御坂さん。セレブリティな物以外なら私達も協力できます」
美琴「ははは、そうね。さすがに私も悩みすぎて何が何だか分からなくなってきたところだから、助かるかも」
初春「決まりですね!それで、どんな方なんですか?」
美琴「へ?」
初春「贈り相手です」
美琴「………言わなきゃ……駄目、かな?」
初春「え?」
佐天「さすがに相手が分からないと………」

 言いたくないのだろうか、と思いつつおずおずと佐天が言う。

初春「好みとかは分からないんですか?」
美琴(うーん……巨乳、は好きなのかな?ってこの場合関係無いか。食べ物は……よく分からないわね。服装はいつも適当だし
    ……あれ?もしかして私ってアイツのこと全然知らない!?)

 頭を抱えて考え込む美琴。

佐天「いやいや初春。相手の好みって実際言われると中々分からないもんじゃん?」
初春「確かにそうですねー。あ、じゃぁ、特徴とかはどうです?」

 『特徴』と聞かれて、美琴は目を閉じて再び考え込む。

美琴「………………………………………」
初春(あれ?何か御坂さん)
佐天(顔が真っ赤……?)
美琴「えっと、とりあえず馬鹿で鈍感な奴よ」
佐天「……ほ、他には?」
美琴「かっこつけで、見境無く他人の問題を勝手に解決しようとする……とか、自分を省みなさすぎるとか」
佐天「お節介な駄目人間ってことですか?」
美琴「え?違う違う、全然そんなことない!!アイツにも良いところはあるのよ。うんと、困った人を絶対見過ごさないとか、
    意外としっかりしてるとか」

 徐々に俯き、掛けていたマフラーの先を指で弄りはじめる。

美琴「誰とも分け隔て無く接するとか、私より強いとか……わた、私を守って……とか、真剣な目が……とか……」

 何かゴニョゴニョ言いながら真っ赤になっていく。
 それを見てさすがに二人は気付いた。

佐天「御坂さん、それってもしかして……ん?」

 見ると初春が佐天の袖を引っ張り、少し頬を赤らめながら首を振っていた。

初春「分かりました御坂さん。もう少しで良いプレゼントが思いつきそうです」
美琴「ほ、ほんと!?」

 パァッと美琴が笑顔になるのを見て、初春は若干心が痛む。
 しかし今は心を鬼にしなければならない。
 美琴とはそこそこの付き合いだ。「その人のことが好きなんですか!?」なんて聞いて、美琴が素直に答えるわけがないこと
くらいは分かる。

初春「本当です。ですが、もう少し詳しく教えて頂きたいので、とりあえずどこか座りましょう」

 初春の妙に真剣な眼差しに少したじろぎつつ、美琴は首を縦に振った。


 ◆


 3人は別の階にある喫茶店で飲み物を買うと、その外側にある椅子に向かい合って座った。
 時期のせいか喫茶店の中は喧噪にまみれていて、重要な話をする場に相応しくないと初春が判断したためだ。

初春「それでなんですが」
美琴「うん」
初春「どういう風に出会ったんですか?」
美琴「え?それって」
初春「重要なことです!」

 初春の、さも重大そうな顔から逃れようと佐天の方を見ると、佐天も同様に重大そうな顔をして頷いていた。
 美琴は諦めたように話し出す。

美琴「6月に……馬鹿な不良10人くらいが私に絡んでた時に…………」
佐天「時に?」
美琴「助け……ようとしてくれた」
初春「お強い方なんですか?」
美琴「ん?強い……かもしれないけど一応無能力者よ」

 『見ず知らずの女性一人を助けるべく、10人くらいの不良相手に果敢に向かっていく無能力者』

佐天(そ、それって何て少女漫画?も、もう駄目初春。私顔がにやけるのを抑えきれない)

 と目で訴えつつ初春の背中をバシバシ叩く佐天。

初春(佐天さん我慢です我慢)

 などと目で返すが、二人の目尻はもう緩みきっている。

佐天「お、お二人の間で一番印象に残ってる出来事は何ですか?」
美琴「うーん。詳しいことは言えないんだけど、私が絶望の中にいた時に唯一アイツだけが気付いて、アイツだけが救い出し
    てくれたこと……かな」
佐天(うは~!ないそれ。や、妬ける!)
初春「年上なんですか?」
美琴「うん。高一」
初春(ですよねー。さすが御坂さん大人!)
佐天「て、手は繋いだんですか?」
美琴「えっと、どうなのかな、繋いだと言えば繋いだし……」
初春「身長はどのくらいですか?」
美琴「私より頭半分くらい高いかな?」
佐天「き、キスはしたんですか?」
初春(ちょ、佐天さん)
美琴「ふぇ?きき、キスだなんて、何で私がアイツと、そんなこと……」
佐天「してないんですか?」
美琴「………か、間接キスくらいは……ゴニョゴニョ」

 再び俯いて真っ赤になる美琴。

初春(み、御坂さんが可愛い)
佐天(なんという純情さ)

美琴「って!これちょっとプレゼントの話とは違わないかしら」
佐天「え、えーそうですかー?」
初春「あ、御坂さんは今のところどんなプレゼントを考えたんですか?参考にしたいんですが」
美琴「そうねぇ…………まず、手袋はとりあえず却下」
初春「へ?どうしてですか?」
美琴「なんというか、諸事情により…………」

 あの右手に手袋は色々まずいから、とは説明しにくい。

美琴「次に考えたのが、手編みのマフラー。実は途中まで作ってたんだけど…………」
佐天「やめたんですか?」
美琴「うん、諸事情により…………」

 ふと気付いたら模様がハート柄になっていたとは口が裂けても言えない。
 ちなみにとりあえず完成させている。

美琴「あとはセーターとか、手作りクッキーとかも似た理由により却下。他にも食べ物とか、救急セットとか、ゲコ太パジャマ
    とか、開運グッズとか、もうよく分からなくなっちゃって……」
初春「えーっと………とりあえず容姿はどういう風なんですか?誰かに似てるとか」

 うーん。と美琴は考え込む。

美琴「説明するのが難しいわね。髪はツンツンしてて、体型は普通。顔は普通に卵形で、いつも不幸そうな表情をしてる……。
    身長はさっきも言ったとおりで、多分171cmくらいかな?」
上条「168cmだぞ」
美琴「あ、そのくらいか……………も………………???」

 美琴がギギギギとぎこちない動きで前を見ると、初春と佐天が二人仲良く両手で口を覆って驚いている。
 目元がにやけていて頬が赤いのは気のせいだろうか。
 再びグギギギギとぎこちない動きで後ろを振り返ると、噂の張本人がけだるそうに立っていた。
 学生服なのは補習だろうか。

上条「いっつも不幸で悪かったな」

 美琴は全力で顔を戻すと、膝を抱えて小刻みに震え出す。

佐天「ねぇねぇ初春。この人だよね、どう考えても」
初春「みたいですね。キャー超展開!」

 小声で話しているが、二人はもう興奮で何が何だか分からなくなっている。
 ふと目が合う。

初春「は、初めまして。私達、御坂さんのお友達をさせて頂いております。初春飾利と…」
佐天「さ、佐天涙子です」
初春・佐天「よろしくお願いします」

 その馬鹿丁寧な自己紹介に、上条の口は「おっ」となる。
 普通人で、かつ礼儀正しい人というのが周りにほとんど居ないせいか、こんなことにすら感動を覚えてしまう。

上条「ご、御丁寧にありがとうございます。俺は上条当麻という普通の高校生です。御坂とは………あれ?御坂、俺にとって
    お前って何だ?」
美琴「知らないわよ!自分で考えなさい。………ていうかアンタ、さっきの話、どどど、どこから聞いてたのよ」
上条「えーっと………俺は上条当麻という普通の高校生です。御坂とは」
美琴「だーーー!!それ以上言わなくて良いっつか無視すんなコラ!大体にしてアンタのどこが普通なのよ」
上条「別にいいだろ。良いだろ普通って!素晴らしいことじゃねぇか普通って!!」
美琴「何力説してんのよ!」
上条「……ああ、聞いてたのならツンツン頭がどうとかいうあたりだけど……お前いつまでそっぽ向いてんだ?」

 美琴はそれを聞いて胸をなで下ろし、2回ほど静かに深呼吸した後振り返る。
 何故かそれと同時に初春と佐天が顔を隠すように反対側を向いてしまったが、そんなことを気にする余裕は無い。

美琴「で、女子学生3人水入らずの所に何の用?」

 さっき上条のことを話していた時とは打って変わった態度に初春と佐天が少し驚く。

上条「お前、いつだったか『用が無きゃ話しかけちゃ駄目なの?』って怒ったことありませんでしたっけ?」
美琴「う、うっさいわね!…………ってもしかして、ほんとに用事無いのに話しかけたの?」

 用もないのに、女子中学生の輪に割って入るというのは、ただならない関係なんじゃないか?と考えて少し期待する。

上条「いや、用はあるんだけどな。ほら、俺の携帯未だにおかしくてさ-。この前の返事出せなかったから直接伝えようと思って」
美琴「……………で、何のメールよ」

 少しガッカリしつつ、返ってこなかったメールを思い浮かべながらそう尋ねる。

上条「12月24日の予定について」
美琴「うっ!」

 ちらりと初春と佐天の方を見ると、二人は直立不動でカチコチに固くなっていた。目は明後日の方を向いている。

美琴「そ、それで?」
上条「とりあず……あのメールは本気なんでせうか?それともからかってるんでせうか?」
美琴「は?」
上条「いや、ほら!あるじゃん!『クリスマスの予定ってあるの?』って質問に期待を込めて『無いよ』って答えたら
    『やっぱりだろうと思ったキャハハー』っての!!こえぇ……女ってこえぇ!」
美琴「はぁ?」
上条「ああそうですよ、ありませんよ!土御門も青ピも何だかんだで予定あるって言うし、俺だけポッカリ状態ですよ!」

 実は上条にクリスマスの約束を取り付けようとする攻防は裏であったのだが、上条の不幸体質が大活躍した結果、誰も予約を
取り付けられないという奇跡的状況に陥っていた。美琴のメールも同様の理由だろう。
 ちなみに土御門と青髪ピアスは、「勝った。上やんの不幸がフラグ体質に勝った!」などと訳の分からないことを言って喜ん
でいた。

美琴「ちょ、丁度良いわ。とあるレストランにクリスマス限定でゲコ太グッズプレゼントをやってるところがあるんだけど、
    複数人限定らしいのよ。というわけで付き合ってもらうわよ」

 早口でまくし立てる。

上条「………またそのパターンかよ。つか、そちらのお友達さんじゃ駄目なのか?」
美琴「あ……」

 マズった!と美琴は心の中で叫ぶ。
 確かにそういうキャンペーンをやるレストランはあった。あったというか全力で探した。
 しかし残念ながら「男女のペア」とは書いていなかったのだ。
 だからこそメールという、ツッコミが入れられにくい方法を取ったのだが……

美琴「アンタは…………嫌なの?」
上条「そういう事じゃねえって、せっかくのクリスマスにグッズ目当てで俺なんかと居て良いのか?つってんの」
佐天(あ、鈍感だ)
初春(鈍感ですね)
美琴「……………………」
初春「わ、私達はその日ちょっと別の用事があるんですよ。ね!佐天さん」
佐天「え?……ああ、そうそう。そうなんですよ上条さん」

 良いタイミングで初春が助け船を出す。
 しかしどう考えても顔がにやけ状態であるため、端から見ると嘘がバレバレだ。

上条「ん、そうなの?なら仕方な……って、お前そんなに頼める人少ないのか?」
美琴「そういう訳じゃ…………………」
上条「?」
美琴「やっぱそうよね。アンタもクリスマスまで私に振り回されたくないか」
上条「……何勝手に自嘲してんだよ。う、嬉しいに決まってんだろ?そうなったら」
美琴「え?」
上条「聞き返すな馬鹿。で?ホントにいいのか俺で」
美琴「…………………………」

 思いがけない展開に美琴が黙る。

美琴(これ、肯定したら色々やばいんじゃ……しかも初春さんと佐天さんの目の前で……ああもう!どうすればいいのよ。
    どうすれば………って、ああああ、アンタ、そんな私をまじまじと見るんじゃないわよ。居心地よくなっちゃう
    じゃないのよー)
美琴「ふにゃー」

 一瞬気付くのが遅かった。美琴から漏れた電撃は四方八方へ放たれる。
 幸い近くに人は居なく、初春と佐天の前には上条が割り込んだ。

上条「お、お前なぁ!!」
美琴「……ごめん」
上条「誤る前に電撃止めろおおおおお!」

 叫びつつ美琴の左手首を掴んで事なきを得る。
 能力の暴発を友達の前でやってしまったせいか、美琴は恥ずかしそうに俯く。
 しかし初春と佐天は一瞬の出来事にほとんどぽかんとしていた。

上条「ほんと見境無しかよ」
美琴「あ、アンタが変なこと聞くのが悪いんでしょ!」

 悪態もいつもの勢いがない。
 とりあえず右手をこうしてれば大丈夫か、と上条が少し安心しかけた次の瞬間、どこかで聞いたことのある警戒音が後ろで鳴った。

上条(こ、このパターンは……)

 後ろを振り返ると、予想通り警備ロボが猛スピードで接近してくる。

上条「はははは……不幸だっ!」

 言い終わる前に全速力で逃げ出す。右手は美琴の左手首を掴んだままだ。
 振り返ると、一瞬遅れて初春と佐天も走り始めていた。
 一応、人にも商品にも損害はなかったようなので、警備ロボが途中で諦めてくれるだろう……なんて期待を込めつつ走る。


 ◆


上条「はぁ……お前と居るといつもこんな感じな気がする」

 とりあえず外へ出て、人気のない公園まで逃げまくった。
 ベンチに腰を下ろすと、昨晩雪が降ったせいかズボンがグチョグチョに濡れてしまい、仕方なく再び立つ。いつも通り不幸だ。

美琴「……………………」
上条(あれ?ツッコミなしですか)
上条「それで、手離して大丈夫なのか?」
美琴「うん」

 そっと手を離す。暴走は収まったようだ。
 初春と佐天と離れてしまったが、美琴の携帯に大丈夫だというメールが来ていたのを二人で確認して安心する。

上条「それでどうすんの?」
美琴「んえ?」
上条「24日の話」
美琴「…………私は、アンタと一緒が良い」

 走って疲れたためか、ずっと手を引っ張られていたおかげでぼーっとしているためか、美琴はあっさりそう言った。

上条「へ?」

 そして逆に今度は上条が混乱する番だ。

上条(あれ?ナニコレオカシイゾ。俺なにか間違えた?いや、これは罠に違いない。違い……ない?)
美琴「ま、細かいことは気にしない!アンタはせいぜい美琴センセーを喜ばせるためにプレゼントを準備しておけば良いのよ!」
上条「ん?プレゼントならもう用意したけどな」
美琴「ッ!!??」
上条「お前多分、嬉しくて卒倒します。はい」

 実はその事実だけで嬉しくて卒倒しそうだったりする。

上条「むしろその言葉、そっくりそのまま返してやろうじゃねえの」
美琴「………あ!」
上条「ん?どした?」

 美琴は今更ながら、上条に渡すプレゼントをどうするか相談している途中だったことに気がついた。

美琴「ど、どうすりゃいいのよ………」
上条「だから何がだ?」




 ―――聖夜まで、あと3日。


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