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0-2/17-28 - (2011/05/08 (日) 20:27:08) の編集履歴(バックアップ)


 そのころ、体育館では復活した吹寄と美琴による修羅場が始まろうとしていた。

「さて、ようやく疲れも取れたことだし練習再開……って神裂コーチは?」
「こ、コーチなら連れの女の子と一緒に、で、出て行ったきり戻ってね、ねぇけど……。それよりふ、吹寄、もう少し」
「だらしないわよ野原。貴様は他の皆とまだ休んでていいわ、仕方ないけど。その間、あたしは茜川さんと……何? あの組み合わせ」

 体力が完全回復した吹寄は、まだ体力が回復していない野原達を休ませて神裂が居ない間も元気な赤音と自主練習をしようとしていた。
 そんな吹寄だが赤音が美琴と楽しそうに話してるのを見て、割って入るのも憚られる雰囲気ということもあって少し待つことに。

「それでねそれでね、うちの学校って酷いんだよ~。球技大会で鼓膜破るの禁止とか衝撃波を直接相手に撃つなとか、とどめはマッチポイントでの能力使用禁止。厳しいと思わない?」
「バ、バレーならそ、それが普通だと思いますよ……。でも学校からそうゆう禁止事項が提示されるのって赤音さんが凄いって表れだと私は思いますけど」
「そう? 美琴ちゃんにそう言われると照れるな~。……ところで美琴ちゃん、どうして私の胸をじっと見てるの?

 赤音の禁止事項はやらないのが当たり前なのが殆どだが、マッチポイントでの能力使用禁止は結標にも適応されているものだ。
 愚痴っぽくなって反省していた赤音だが美琴から思わず褒められて照れていると、ようやく自分の胸に美琴の視線が注がれていることに気付く。

「えっ、そ、そんなこと無いですよ!」
「美琴ちゃん、嘘はダメだよ~。大丈夫、そんなことで私は怒ったりしないから♪ 理由、話してくれる?」
「じゃ、じゃあ……ど、どうしたら赤音さんみたいにむ、胸がおっきくなるんですかっ!」

 予想通りの美琴の質問に目の前の少女がレベル5第三位ではなく年相応の女の子に感じられた赤音は、美琴の質問に自分なりにきちんと答えた。

「健康的な生活と栄養満点な食事、そんな所だよ。でも美琴ちゃんの年齢で胸の大きい小さいは気にしなくてもいいんじゃないかな~。上条君は気にするタイプじゃ無さそうだし」
「そ、それはそうなんですけどと、当麻の知り合いには胸のおっきい人が多くて分かってはいても不安になって……当麻を誘惑する女を電撃で」
「ストップストーップ! そんな物騒な考えはダメーッ! そんな考えしてるといつか大きいしっぺ返しが来ちゃうよ。上条君のことは信じてるんだよね?」
「勿論です! でも未だに当麻を狙ってる女どもだけはどうしても信用できなく痛っ! あ、赤音さん?」

 物騒な思考をしている美琴を見かねた赤音は意を決して美琴の思考を少しでも改善しようと試みる、微妙に自分のことは棚上げにして。

「今のデコピンはちょっとした戒め。それから美琴ちゃんに胸が大きくなる一番のアドバイス。力技は極力控えてすぐに怒らないようにすること♪」
「怒らないように、ですか?」
「そっ♪ お淑やかにしろとは言わない、何があっても怒るなとも言わない。要はね、冷静に穏やかに明るく元気良くってこと♪」

 全然要約していないと思った美琴だが赤音という女性と接して一理あるかもと考える。
 怒らないようにというのは当然嘘だが全部が全部嘘ではなく、怒りっぽく生活してると生活リズムが狂い、健康的な生活を送れないと考えてのこと。
 考えに考えぬいた結果、美琴は1つの誓いを赤音の前で立てることに。

「分かりました! 赤音さん、私これからは出来るかぎりすぐに怒ることは止めて、雷撃もよく考えてから撃ちます!」
「(美琴ちゃんならこれが限界かな……)うん、そうすれば美琴ちゃんはもっと素敵になれるよ。というわけで早速実践スタート♪」
「じっ、実践?」

 赤音の言葉の意味が分からなかった美琴、気付けば吹寄が自分の後ろに立っていることに気付く。
 ちなみに吹寄は美琴と赤音の和やかな雰囲気が解けたと思い、赤音を呼びに来た所だった。
 吹寄と目を合わせた美琴、赤音に誓ったことを胸に話し合いだけで吹寄とぶつかり合おうを決意するのだった。



 その頃、まだ気分が悪い当麻と月夜は二人とも食堂に向かい、建宮に水を貰おうとしていた(エツァリは保健室)。
 そこで当麻は未だに食堂で寛いでいる神裂と佐天から美琴がすでに学校に来ていて、吹寄に会いに来たことを知らされる。

「あ~、気持ち悪ぃ」
「建宮さん~お水~」

 頭を押さえながら食堂に入ってきた当麻と白雪はヤシの実サイダーを飲んでいる佐天と神裂を発見した。

「あれ?神裂に涙子、何でここに?」
「昨日、バレーボールのコーチを頼まれたので。」
「あ~、吹寄ちゃんなら頼みそうだね。」
「それで美琴姉さんが吹寄さん目当てで体育館にやって来たので食堂に避難しつつ建宮にやしの実サイダーを奢って貰ってました。」
「え?み、美琴がも、もう来てるって?」

 もう美琴が来ており、吹寄に会っていることに驚いている当麻。
 当麻が思い浮かべるのは美琴が吹寄に雷撃を浴びせている状態しか…

「お、俺、美琴止めてくる!」

 そう言うと当麻は建宮が用意した水も飲まずにそのまま体育館へと向かって行ってしまった。

「…行ってしまったのよ。」
「あ、建宮さん。
 私もヤシの実サイダー欲しいな~」
「建宮、おかわりを」
「女教皇様も白雪もぉぉぉ!!!」
「あ、建宮、あたしにも」
「佐天までひどいのよぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」



 その頃、体育館では美琴と吹寄による穏便な話し合いが始まろうとしていた。

「「……………………」」

 目を合わせてからというもの、お互いに見つめ合って黙り込んでしまった美琴と吹寄。

(い、いざとなったらどんな感じで話せばいいのか分からない……。今までのように問答無用で雷撃は赤音さんの前でするわけにはいかないし……)
(どうして御坂さんがここに? あたしを見たまま黙ってるけど明らかにあたしに話があって内容は十中八九上条絡み。さっさと終わらせるに越したことは無いけど……)
(あっ! 確かこの女の弱みを土御門さんが握ってるって話だけど聞くの忘れたーっ! ……仕方ない、ここは私から!)
(どんな風に話せがいいのか分からないわ。穏便に済ませたいけどあたし、というかあたし達が今までに上条にしたこと、されたことを考えると……でもっ!)
「「あ、あのっ!!」」

 時間にして3秒程度だが本人達にとっては長い長い葛藤の末、口火を切ろうとした美琴と吹寄だがタイミングが同じで失敗。
 ここで今までは自分達を見ていたのは赤音だけだったがすこしづづ体育館に居る人間も自分達のことを見始めてることに気づいた美琴が単刀直入に、

「と、当麻をいじめるのを止めて下さいっ! 意味も無く当麻を傷付けられるのは嫌なんです!」
「(意味も無く、ですって? 子の子、何も知らないで都合のいいことを……!)ごめんなさい、無理よ」

 用件を伝えるが、あっさり且つバッサリと却下されてしまう。
 吹寄の態度に我慢の限界をあっさり突破した美琴、怒り心頭状態で帯電し始め、吹寄に雷撃を喰らわせようとする。
 するとそこに澄き通った歌声のような音が体育館中に響き渡り、それによって美琴の怒りが静まるどころか穏やかな気持ちへと変化した。

「……あれ? 私どうしてあんなに怒ってたんだろ? それにさっき聞こえてきた音って」
「ゲホッゲホッ!」
「あ、赤音さん! もしかしてさっきの音」
「茜川さん!」

 落ち着きを取り戻した美琴と吹寄、冷静になって気付いたのは喉を押さえて咳き込んでいる赤音の姿だった。
 咳き込んでる赤音を心配する美琴と吹寄に心配されている本人は少し辛そうにしながらも笑顔を見せると、美琴と吹寄を無理矢理握手させた。

「ぶ、ぶだりども、な、ながよぐ……ね? みごどぢゃんも、ぶ、ぶぎよぜざんもばなじあいでわがりあっでぼじいな……」
「茜川さん、分かったから無理して話さないで。あなたの気持ち、確かに受け取ったわ。ちゃんと話し合いするから少し休んでて」
「仲良くは難しいですけど私もちゃんと話し合いで解決してみせます。ありがとうございます赤音さん、もう少しで取り返しがつかなくなる所でした」

 美琴と吹寄が互いに少し歩み寄ったのを感じ取った赤音、喉の痛みを感じつつも二人に再度、笑顔を見せた。
 ちなみに美琴と吹寄の怒りを静めたのは赤音の【鼓膜破砕】のバージョンの1つで、周囲の人間の気持ちを穏やかにするもの。
 赤音が喉を痛めてるのは攻撃系じゃない場合の能力使用による負荷で、約半日は能力使用はおろかまともに話せなくなってしまう。

「ごめんなさい御坂さん。あの言い方はあたしが悪かったわ。きちんとこちらの言い分を伝えるべきだったわね」
「わ、私の方こそつい雷撃を吹寄さんに喰らわせようとして……ごめんなさい。でも私、やっぱり当麻のことが大切だから傷つくのは……」
「分かったわ、そこまで思い詰めた表情されたら断るわけにはいかないし。でもね御坂さん、あたし達が悪い時もあるけどそうじゃない場合もあることは分かって欲しいの」

 お互いに和解の意思を示している美琴と吹寄を見て、赤音は自分の喉を犠牲にした甲斐があったと喜んでいた。
 そして美琴は聞かされる、吹寄から当麻が攻撃されても仕方が無い件について。
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