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上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/19スレ目ログ/19-019 - (2011/10/30 (日) 15:28:09) の編集履歴(バックアップ)


とある10人のハロウィンパーティ 2 The_secret_meeting



 10月も2週目となった、とある放課後。
 柵川中学校の近くにあるファーストフード店に、珍しいメンバーが集っていた。

「本日はこんな所までわざわざお集まりいただき、ありがとうございます!」
 集まった面々に、佐天がにっこり笑い掛ける。
「気にすることないぜい」
 初めに答えたのは今日集まったメンバー唯一の男子、土御門。
「礼には及びませんわ」
 続いて答えるのは、相変わらず豪奢な扇子を手放さない婚后。その両脇では、湾内と泡浮が微笑んでいる。
「いやーそう言ってもらえると嬉しいです。ターゲットと絶対に鉢合わせない店を考えたら、ここしか思いつかなくて」
 と、ここで佐天がキョロキョロと辺りを見回す。
 周りの客は皆、佐天と同じ柵川中の制服か、他の平凡な学生服に身を包んでいる。
 常盤台やとある高校の制服を身に付けた学生は、婚后たちや土御門の他に誰も見当たらない。
「一応“見張り”もいるので、鉢合わせの心配はないはずなんですけどね」
「カミやんなら青ピと一緒に小萌先生の補習を受けてるんだにゃー」
「御坂さんもいつものファミレスで、初春と白井さんと一緒にいるはずです。
 私は補習ってことになってますし、怪しまれることもないと思います」
「手回しも完璧なのですね」
「素晴らしいチームワークですわ」
「もちろんです。やる限りは徹底的にやりますよ! それでは」
 コホン、とわざとらしい咳払いを一つして、佐天は高らかに宣言する。
「ここに第一回、『御坂さん応援隊による秘密会議』を始めたいと思いますっ!」


 話は先週、セブンスミストでハロウィンパーティを開くことを決めた日まで遡る。


 あれから数分後に、美琴は目覚めた。
 目覚めた瞬間、上条に膝枕されていることに気付いた美琴が再び漏電したのは無理もないだろう。(幸いにも気絶はせずに済んだ。)
 茹でダコのような美琴に合同でのパーティが決まったと告げ、各々の連絡先を交換してから、その日はそれで解散ということになった。

 そして、それはみんなでセブンスミストを出た直後に起こった。

「カミやん」
 寮に向かって歩き出そうとした上条を、土御門が呼び止めた。
「ん? なんだよ?」
「御坂さんを常盤台の寮まで送って欲しいんだにゃー」
「……はい?」
「だーかーらー。御坂さんを送って来いって言ってるんだにゃー」

 流れる一瞬の沈黙。そして、
(ふぇ!? 何!? 何が起こってるの!?)
(GJ! GJですよ土御門さんっッッ!!)
(まぁなんと素晴らしい提案をなさるのかしらこの殿方は!)
 各々が心の中で思い思いのことを叫ぶ。

「いや、だから何でそうなんだよ?」
「よく見てみるんだにゃーカミやん。御坂さんはまだ顔が赤いぜい。熱があるのかもしれない子を一人で帰らしていいと思うのかにゃー?」
「まぁ、言われてみれば……てかお前も一緒に行くだろ? どうせ一緒に帰るんだし」
「いや、俺はちょっと寄る所があるから行けないぜい」
 にやりと笑う土御門。サングラスのせいで、その真意を読み取るのは難しい。
「そうなのか?」
「そうなんだにゃー」
土御門の言葉に何も疑問を抱かぬまま、上条は美琴の方へと顔を向ける。
「そういうことで御坂、2人で帰るぞー」
「ふふふ2人!?」
「ほら、持ってる鞄を寄こしなさい。それでは皆様、上条さんたちはお先に失礼します」
「ええっ!? ちょ、ちょっと待ちなさいってば!」
美琴の学生鞄を取り上げて、さっさと歩き出す上条。
真っ赤になって固まっていた美琴だが、鞄を取られてしまったので慌てて追いかける。

「ちょっと待ってやカミやん! ボクも……」
 慌てて後を追おうとする青髪ピアス。
 しかし、その肩を土御門がガッシリと掴んだ。
「何すんのつっちー! ボクも途中まで同じ方向って知ってるやろ!」
「まぁまぁ落ち着くんだにゃー」
 そして、青ピの肩を掴んだまま振り返る。
「そちらのお嬢さんが俺たちに話あるみたいだぜい?」
「へ?」
 土御門の言葉につられて、青髪ピアスも一緒に振り向いた。
 その視界に飛び込んできたのは、

「ほほう。よくお分かりで♪」

 ニヤニヤと笑う少女、佐天涙子の姿であった。


 上条と美琴の姿が見えなくなるまで見送った6人は、解散はせずにセブンスミスト近くのファーストフード店に入った。

「それでは、みなさん。いきなりですが本題に入りますね」
 話を切り出したのは、もちろん佐天である。
「まぁ、すでに土御門さんはお気付きのようですけど」
 左隣に座る土御門に向かって問いかければ、ニヤリとした笑みが返ってきた。
 それを肯定と捉え、佐天は話を進める。
「私が言いたいこと、それは、御坂さんと上条さんについてです。
 もう誰が見たって明らかですが、御坂さんは間違いなく上条さんに恋してます。なのに!」
 佐天はクワっと目を見開いて、言葉に力を込める。
「に、も、か、か、わ、ら、ず! 上条さんは全くそのことに気付いてないと思われます! これは大問題です!!」
 そこまで言い切った佐天は、ぐっと握った拳を顔の前に持ってくる。
「だから私、佐天涙子は御坂さんの友達として、御坂さんの恋を全力で応援したいと思いますっ!」
「素敵ですわ佐天さん」
「さすがですわ」
 小さな歓声と共に、湾内と泡浮が拍手する。
「もちろん私も同じ気持ちですわよ」
 佐天の対面に座る婚后も負けてはいない。
「私、婚后光子も悩める友の為に一肌脱がせていただきますわ!」
 そして拳の代わりに、豪奢な扇子を勢いよく開いた。
 その様子に満足げな笑みを浮かべた佐天は、土御門と青髪ピアスの方を見据える。
「ということで、お二人にも是非協力していただきたいんです。どうかお願いしますっ!!」
 その言葉と同時、強い思いを乗せた女子全員の熱い視線が、2人の男子高校生に注がれた。

 しばしの沈黙を挟んだ後、青髪ピアスは降参とでも言うように、手のひらを上に向けて肩をすくめた。
「こんな可愛いコたちに頼まれて断れるわけないやんね」
 そして右隣に座る土御門を見る。
「そうやろ、つっちー?」
「そうなんだにゃー。男土御門、喜んで協力させてもらうぜよ」
 青髪ピアスと土御門が即答出来なかったのには理由がある。
 青髪は姫神、土御門はインデックスやその他大勢といった、美琴同様に上条当麻に想いを寄せる少女たちを知っているからだ。
 それでも2人はこの恋を応援することに決めた。なぜなら、
「カミやんに彼女できたら、失恋した女のコがボクのとこ来てくれるかもやしねー」
「そうだにゃー。まぁ俺は舞夏がいてくれればそれでいいんだぜい」
……とは表面上の答えで。
 ステイルの想いを知り、美琴が上条のために戦地へ赴くような少女であることを知る土御門としては、
 この2人が結ばれるのが一番いいように思ったのだ。偽海原の想いも知ってはいるが、あれにはあれの「妹」がいるらしいから問題ないだろう。
 ちなみに、青髪ピアスは割と本気でそう答えているようだ。

「ありがとうございます! すごく頼りにしますね」
 土御門と青髪ピアスの返答に満足した佐天が笑う。
「お2人の協力も得られるとわかりましたし、初春は間違いなく乗ってくれるだろうし。
 あとは白井さんを説得するのみですけど、まぁこれは初春と私で何とかします。だから」
 佐天はテーブル中央に向かって右手を出す。それを見た5人が、次々と佐天の上に手を重ねていく。

「みなさん! ハロウィンパーティ、張り切っていきましょう!!」

 直後、3種類の制服に身を包んだ6人の男女が、一斉に声を上げて団結した。


 そういう経緯で先週、佐天涙子率いる『御坂さん応援隊』なるものが発足されたのである。
 そして今日は、その記念すべき1回目の秘密会議なのだ。

「それにしても、あの白井さんが協力するとは思いませんでしたわ。佐天さん、あなた一体どのようにして説得なさったの?」
 婚后が扇子をパタパタと扇ぎながら佐天に問う。
 佐天は白井を説得した時のことを思い起こし、苦笑しながら一言だけ告げた。
「あれは初春の功績です」
「あら、初春さんの?」

 そう、白井を説得出来たのは初春のおかげである。
『白井さん。隠し集めていた秘蔵画像集やパソコン部品がありますよね。
 御坂さんにバラされた上にデリートされたくなければ、私たちに快く協力して下さい』
『な、何のことかさっぱりわかりませんの』
『ネタは上がってます。もしも協力して下さるなら秘密は守ります。
 でも協力して下さらないならパーティには招待しませんから、仮装した御坂さんに会えなくなりますよ?
 きっと可愛いのに見れないなんて残念ですねー』
『くっ!? 卑怯な!!』
 訂正。
 活躍したのは、初春改め、黒春である。

「まぁ、それは置いといて! 話を進めましょう」
 記憶の中で微笑む黒春の姿を頭の隅に追いやって、佐天は言葉を続ける。
「問題は上条さんが全く御坂さんを意識していないってことだと思うんです。どうやって上条さんに御坂さんを意識させるか、そこがポイントです」
「そうですわね。意識してさえいただければ何か変わるはずですわ」
「照れ隠しでついつい攻撃的になってしまう御坂さんの性格をどうにか出来ればいいんですけどねー」
「けれど性格を変えることが最も難しいのではなくて?」
「私たちが普段目にするような御坂様のお優しい一面を、上条さんにも知っていただければ……」

 自らの考えを口にしては黙り込んでしまう少女たち。
 早速手詰まりかと思われた矢先、ただ一人黙っていた少年が口を開いた。
「だったらまずは見た目で勝負なんだにゃー」
 にやりと笑った土御門は、軽い調子で言葉を続ける。
「お嬢さん方。俺たちが開くのが何のパーティか、そこがヒントだぜい?」
「何の、と申しますと、ハロウィン……ああ!」
「ハロウィン“仮装”パーティですわ!」
「まぁ! つまり、御坂さんのコスプレ姿で上条さんを攻め落とす作戦ですのねっ!!」
 目を輝かせて土御門の名案に賛同する少女たちに、土御門は肩を少しだけすくめた。
「攻め落とせるかは別として、少なくとも意識させることは出来ると思うぜい」

「そうと決まれば早速行動です! 初春たちにも連絡を」
 携帯電話を取り出した佐天は、指先を忙しく動かし始めた。
「衣装買いに行くの、今週土曜でいいですよね?」
 しかし、そんな佐天の携帯電話を、土御門がヒョイと取り上げる。
「いや、連絡するのは御坂さんだけだぜい」
「え? どうしてですか?」
「こうするんだにゃー」
 少女たちが見守る中、土御門は何食わぬ顔で文面を打ち直した。
 そして、その文面を見た佐天は言う。
「……ほほう。お主もなかなかの策士ですのぉ」
「いやいや、佐天さんほどじゃないぜい」
「では、キューピッドメール送信っ♪」

 それは、御坂さん応援隊の作戦1号が実行に移された瞬間であった。




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