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上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/バイト生活/Part06 - (2010/02/28 (日) 17:45:47) のソース

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#navi(上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/バイト生活)

御坂美琴は寮のベッドでゴロゴロしていた。
それは、昨日の遊園地のせいである。

(け、結局仲が進展したのかはわかんないし、あれから黒子はしつこいし、変態ぶりに磨きがかかったような気もするし、なんというか、結局何しに遊園地に行ったんだろ………)

なんだか、今日は上条の所に行く気になれなかった。
白井が警戒心をバリバリに出しているというのも理由の一つだ。
とりあえず今日は黒子をどうにかしよう。
美琴は大雑把な今日の目的を決めて、動きはじめた。





上条はバイトをしていた。
出入口の方を時折気にしながらも、なんとか仕事を続けていく。
インデックスと小萌先生と姫神と、白井とは違うツインテールの少女が入ってきたりもしたが、インデックスに適当に食べ物(えさ)を与えることでいろいろな危機を回避する。
ツインテールの少女はインデックスの食べっぷりに驚いていたが、こっちとしては日常茶飯事なので放置しておく。
むしろ小萌先生の財布が心配だ。

「いらっしゃいませー」

しばらくして、初春と佐天が入ってきた。
2人は少し店内を見回すと、上条に尋ねてきた。

「御坂さんはいないんですか?」
「ん? ああ。今日は来てないぞ」
「そうですかー」

初春達はそれだけ聞くと席の方へと向かっていった。
ちなみに初春達は後日遊園地に行くらしい。
どうやら昨日の分は取れなかったようだ。
初春達は美琴に昨日のことを聞こうと思っていたのか、いないことがわかって少し落ち込んでいた。
上条はオーダーでも持って初春達のもとへ行こうと思ったら、ファミレスの外から声が聞こえてきた。

「お姉様、お姉様が最近このファミレスに通っていることはわたくし既に知っておりますのよ。ここにあの類人猿がいるということもっ!! 今日という今日こそはあの類人猿をさらし首にしあいだだだっ!!!!」
「やめなさいっ!! っていうか一体どうやってそんな情報を仕入れてくるのよアンタはっ!!」

なんだろう、客がくるのは嬉しいはずなのに、不穏で不幸な予感がしすぎて全然嬉しくない。
美琴としても、今日は来る気はなかったのに白井が上条を血祭りにあげようとするのでそれを止める必要が出てきてしまい結局来ることになったので、不幸といえば不幸かもしれない。
だから、2人は諦めた。

「いらっしゃいませー」
「死ねぇぇぇぇぇぁいだぁっ!!」
「やめなさいっつってんでしょうが!!」
「……御坂、席はあの人達と一緒でいい?」
「へ? あぁ、初春さんに佐天さんね。いいわよ」

美琴と白井は多少格闘戦を繰り広げつつ、初春と佐天のいる場所へと向かっていく。それを見た初春と佐天の眼はなんだか輝いていた。美琴は嫌な予感がしつつも、席につく。
美琴も白井も、席の位置関係からか、インデックス達の存在には気づかなかった。
美琴が席につくと同時に、初春達の質問が始まった。既に初春達は黒子の存在が見えていない。

「御坂さんっ! どうだったんですかっ!?」
「どどどどうって、べ、別に何もないわよ」
「じゃあっ、何をやったんです?」
「な、何をって………ぇと、その」
「お姉様、わたくしも気になりますわね。あの殿方と遊園地に何をしに行ってたのか」
「あれ? 白井さんいたんですか?」

初春は今白井の存在に気がついたらしい。さすがにそれよりも前に気づいていた佐天の頬がわずかに引き攣っている。当然、白井は額に青筋を浮かべて手をわきわきさせながら。

「初春。あなたの衣服を今ここでテレポートしてさしあげましょうか~?」
「わあっ、ごめんなさいごめんなさい」
「というか白井さん、遊園地にいたんですか?」
「ええ。ジャッジメントの巡回で。そしたらお姉様とあの類人猿が一緒に歩いているのを見かけてああ思い出しただけでムカムカしてきますわーっ!!」

なんだか白井はハンカチを噛みちぎりはじめそうな勢いだ。
と、そんな時、オーダーを持った上条が現れた。

「ご注文はお決まりになりま」
「ここで会ったが百年目ェ!! 死にさらせええええええいだぁ!!!!」
「やめんかって言ってんでしょうが!!」

いきなり白井に命をとられそうになり、上条は来るんじゃなかったと後悔した。
なんとか全員の注文を聞いて戻ろうとしたとき、また初春に呼び止められた。

「上条さん………昨日はお楽しみでしたね」
『ぶぅっ!!??』

その場にいた全員が一斉に噴いた。
その後の反応はそれぞれで、佐天は初春に詳しく聞こうとして、白井は「あの類人猿めあの類人猿め」と呪いの言葉のように呟きはじめた。美琴と上条は顔を真っ赤にして否定。

「お、おおおお楽しみって何よ!? わっ、私はこの馬鹿とそんなことしてないわよ!?」
「ってかなんだその不穏な言葉はーっ!! そんな言葉を使うといろいろと周りに誤解が出るでしょうが!!」
「………単純に遊園地のことを言ったつもりなんですけど。お2人は一体何を想像したんですかねー?」

初春の言葉で2人は言葉に詰まる。あっさりと掌の上で転がされている2人だった。
なんだか初春が怖くなった上条は、

「さ、さーてバイトバイトっと」

逃げることを選択した。
美琴は唯一の味方(?)が消え去り、後々くるであろう質問責めに恐怖した。
上条は逃げるようにレジの方にいくと、インデックス達が帰るところだった。インデックスは上条を見つけると、

「とうまはやっぱりとうまで、いつも通りとうまはとうまなんだね」
「いきなり何言ってるかさっぱりわかんねーよ!?」
「後で覚えておくといいかもっ」

歯をギラリと光らせて、ファミレスを出て行った。それを見て上条は理解した。

(ああ……死んだな、俺。始業式の前の日くらいに『頭を砕かれた変死体発見!』みたいな見出しの新聞でも配られるんだろうな……)

無能力者なのになんだか未来が見えた気がして、上条は落ち込む。その場には怯えて震える哀れな子羊の上条が立っているだけだった。
だが、絶望に浸っていた上条に容赦ない追い討ちがやってくる。

「上条」
「は、はい」
「運んでこい」

そういって渡されたのは、美琴たちが頼んだもの。あまりの早さに驚いたが、顔にだすと死ぬ気がしたのでそそくさと持って行く。
美琴たちのいる席に着く前に、4人が見えてくる。その内の一人、美琴をみて上条は戦慄する。

(美琴に生気がないっ!? い、一体何をされたんだーっ!!??)

美琴は力無く机に突っ伏していた。気のせいか真っ白な気がする。
凄まじく行きたくなくなったが、行かなくてはならない。

(インデックスに殺られる前に、こっちに殺られるっ!!??)

なんだか、未来(さき)は短そうな気がして、さらに行きたくなくなる。だが、それでも行かねばならない。
神風特攻隊って、こんな気持ちだったんだろうかなどと現実逃避しながら、美琴たちの席に到着した。

「ご、ご注文の品をお持ちしましたー」
「あ、あんなことやそんなことを……!?」

何だか佐天が驚いた顔で止まっている。初春が頼んだ料理を受け取っているが、その顔はにやけていた。白井は相変わらず呪詛を呟いていた。怖い。
矛先は来なさそうなので一安心してこのまま立ち去ろうと一歩下がった時、初春にまたまた呼び止められた。

「上条さん。また聞きますが、御坂さんのことどう思ってるんですか?」

その言葉で美琴以外の全員の時が止まった。
美琴はその言葉を聞いた瞬間ガバッと上体を起こし、そんなことに興味なんてありませんよというような態度を装っている。上条以外にはバレバレだったが。
佐天と初春にさらには白井の視線が上条に突き刺さる。なんだろう、返答次第では白井に殺されるような気がする。

「ぇ、ぇっと………」

どう答えればいいんだろう?
白井がどうとかではなく、ただ自分の意思を正直に言えばいいのだが。
少し迷った後、やはり前と同じ友達と答えるのが適当か。と思って。

「とも……………ノ、ノーコメントでっ!!」

上条はそう言うと走って逃げ出した。
何故かはわからないが言えなかった。いや、言いたくなかったのかもしれない。
ただ、次の瞬間そんなことなど考えていられなくなったが。

「上条」
「はっ、はいぃ!!」
「店内で走るとは何事だ」
「なっ、なんでもありませんっ!!」
「そうか。ちょっとついて来い」
「………はい」

上条は店長の後を囚人のごとくついていく。既に気分は処刑台に上る死刑囚だった。

(グッバイ。俺の人生………)

その後、上条はボロボロの状態でバイトを頑張ることになる。










上条の言葉を聞いた初春達は白井と美琴以外大喜びしていた。
初春と佐天はハイタッチをするぐらいにテンションが上がっている。白井は特に動じずに、再び呪詛を唱え始めていた。やっぱり怖い。
美琴はというと、「とも」と聞こえた瞬間に両耳を手で塞いでしまったため聞こえていなかった。さらに興味ないフリをしていて上条の方を向いてなかったので、上条が走って逃げたことも知らない。
だから、美琴には何故初春と佐天が喜んでいるのかわからない。

「よかったですね御坂さんっ!!」
「可能性が上がりましたよっ!!」
「ぇ? ど、どういうこと………??」
「え? 聞いてなかったんですか?」

初春と佐天はお互いの顔を見合わせてから言う。

「『ノーコメント』って言ったんですよ!」
「これだけじゃあわからないかもですけど、『友達』とは言わずに『ノーコメント』になったんですよ!! 可能性があがったと見るべきじゃないですか!!」
「あ、アイツそんなこと言ったの? へ、へ~」

美琴は可能性が上がったかもしれないという事実を知って、内心はすごく喜んでいた。思わず走ったりしたいくらいには。
だけど、表情に出すのはなんだか恥ずかしいので、そこまで興味を引かれなかったことにした。
………つもりだった。

「お姉様、顔がにやけてますわよ」
「ぅぇ!!?? に、にやけてなんかないわよ! にやけてなんか!!」
「ふふふ。あの若造がお姉様を好きだと仮定するならわたくしも本気でいかなくてはいかないようですわね。ふふふふふ。」
「し、白井さん? 怖いですよ」

佐天は白井の様子を見て怯えている。
白井からなにやらドス黒いオーラが出ているのが見える気がした。

「で、でもノーコメントでしょ? それならマイナスかもしれないじゃない」

美琴は思い付いた可能性をあげてみる。この可能性が本当であったなら最悪なのだが、その不安を払拭するためでもある。
それに反論したのは初春だった。

「いやいや。上条さんは『ノーコメント』って言ったあと走って逃げ出したんですよ? これはもう、恥ずかしかったとしか思えないですよー」
「そうですよ。『友達』といいかけたのをやめたくらいですから、マイナスとは思えませんって」
「やはりあの若造はお姉様を………? わたくしの敵確定ですわね。うふふふふ、ふふふふふ」
「そ、そっか………」

美琴は悪い可能性が低いことにとても安堵した。
だけど、上条が自分に好意を持っている可能性を、いまいち信じることが出来ない。
今まで散々スルーされてきたからだろうか?自分に好意を持った上条をいまいち想像することができなかった。妄想や夢ならばあるのだが。
その様子を不思議に思った初春は、励ますことにした。
ちなみに白井のことは見なかったことにされている。

「御坂さん、自信を持っても大丈夫ですよっ」
「そうですっ! もう一押しだと思いますよっ」
「あのヤロウを金属矢で串刺しにしてそれから………」

佐天も初春にならって美琴を励ます。
白井は恐ろしいことをブツブツと呟いていた。恐らく脳内では百回以上上条は殺されていることだろう。
3人は見なかったことにした。

「そう……かな」

いつになく自信のない美琴をみて、初春と佐天は少し驚いた。今までこれほど自信のない美琴は見たことがなかったからだ。
友人の新しい一面を見れて初春達は少しよかったと思うものの、やはり自信は取り戻して欲しいとも思う。
佐天は何かを思い付いたのか初春に小声で喋りはじめる。

「(初春! またチケットとかないの!?)」
「(ないに決まってるじゃないですか! また同じとこ行っても意味はないでしょうし)」
「(……初春の役立たず)」
「(さ、佐天さん酷すぎますっ! それに今日は昨日のことを聞くつもりでしかなかったので本当に何もないんですってば!!)」
「(……やっぱり役立たず)」
「(う~っ!! な、なら佐天さんが考えてくださいよ!!)」
「(え? わ、わたし!? ………あ、あはは~。さっきはゴメンね初春~)」
「(変わり身が早すぎですっ!!)」

元々人の良い初春は完全に怒ることもできずにそのまま会話を終わらせる。
結局、美琴の自信を復活させられるような策など思い浮かばなかった。










「うっだー。や、やっと開放されたー」

上条は心底疲れた様子でファミレスから出る。その時間はいつもよりも遅めだ。
ファミレスから出てすぐに目が喫茶店の方へと向く。しかしそこに御坂美琴の姿はなかった。

(いねえ、のか。そりゃそうか。何も言われてないしな)

残念だと思う気持ちに疑問も抱かず、表情に出ているのを隠しもせずに、上条は寮がある方へと足を向ける。
何故そこまで御坂のことが気になるのか。そんな疑問を抱くが、考えないことにした。
自分の中にもやもやとした、不定形でしっかりとした形を持たない何かがあるのはわかっている。それは日を追うごとに、尚且つ特定の人物に会えば会うほど膨らんでいくことも。それがなんなのか、そこまではわからない。わからないから、考えないでおくことにした。いずれわかるだろうと思うことにして。

「で、なんで俺はここに来たんだ?」

答える者がいないことはわかっているが、聞かずにはいられなかった。
その場所は、美琴に記憶喪失のことで問い詰められた河原だった。
寮に向かっていたはずなのにここに来ていた自分に驚きを隠せない。なんだか、頭と体が分離しているような気分だった。

(……少しだけのんびりしてくか)

そう思って、土手の中腹で座る。
もしかしたら、何かあるかもしれない。なんて幻想を抱いて。
5分程座って川を見ていたら、不意に寂しいと思った。隣に人がいないことが。
ほぼ毎日のように顔を会わせていたからか、それとも別の理由からか。上条にはわからなかった。
その代わりに、一つの事実に気づく。

「そっか、いつの間にか当たり前になってたんだな……。隣に御坂がいることが」

心の中で思うだけにしておけばいいのに、上条は呟いていた。寂しさを紛らわすためかもしれない。
不意に、花飾りの少女の声が頭の中でリピートされる。

『御坂さんのことどう思ってるんですか?』

「……俺にとって御坂って、なんなんだろう?」

そんなこと、考えたこともなかった。
初めて会った時なんて、適当に返したらいきなり電撃を放ってきたくらいだった。そしたら、白井や御坂妹が出てきて、実験のことを知って、寮に入ってレポートを見つけた。鉄橋では腐るほど雷撃の槍を浴びせられた。それでも、あの時見た、絶望に染まった顔だけは二度とさせないと思った。見たくないと思った。笑ってほしいと思った。
その後は、いきなりタックルされて、恋人役をやらされた。『御坂美琴とその周りの世界を守る』という約束もした。
大覇星祭後の罰ゲームではツーショットを撮った。そういえば、あの後もなんだかんだで怒っていた気がする。
第22学区では記憶喪失のことで問い詰められた。そういえばその時他にも何か言っていたような気がするが、思い出せない。
その後は、一端覧祭、クリスマスなどなど。結構な回数で遭遇していて、必ずしも電撃を浴びせられたというわけでもなかった、気がする。
休みに入ってバイトをしてからは、初日にやってきてからはほぼ毎日顔を出している。来ない日の方が珍しいほどだ。
そういえば、ここで記憶喪失のことでまた問い詰められたっけ。その後はゲーセンに行って、負けて、UFOキャッチャーをやって、ストラップを買ってもらった。
なんとなくポケットから携帯を取り出して件のストラップをみる。同時に、美琴が抱いていたぬいぐるみの方も思い出して、少し顔が赤くなる。
顔をブンブンと横に振って一度落ち着かせて、そういえばその後は遊園地に行ったんだったなと思い出す。
そこまで思い出してみるが、答えなんて出てこなかった。だけど、自分の中にあるもやもやとした『ソレ』がまた大きくなっただけだった。

「あー! こんな時まで頭使うもんじゃねえな!」

頭をわしゃわしゃーっ!と掻きまくって、上条は立ち上がる。
考えてもわからないことをいつまでも考えているのは性に合わない。
一度頬を勢いよく叩くと、上条は歩き始める。行き先は、決めていない。

「なんでまたここに来たんだか」

上条は自販機前にきていた。そこは、初めて美琴に会った場所で、お金を呑み込まれた場所。
本当に初めて会ったのはどこだったのだろう?
ふと、そんな疑問が沸きあがった。
無性に、知りたいと感じた。何故だか、腹が立った。美琴との思い出を忘れている自分に。思い出せない自分に。
同時に、さらに疑問が沸きあがる。何故、腹が立つのだろう?
答えは、出ない。いや、もしかしたら考えたくないのかもしれない。それが何故なのかはわからないが。

(……わからないことだらけだな)

上条は自分にため息をついて、自販機を蹴ってみた。
ズドォン!という音とともに、自販機が僅かに揺れる。

(あ、ヤバ……警報鳴るか!?)

上条は今更後悔が沸き起こるが、警報は運良く鳴らなかった。上条は不幸な人間なのに、珍しい。
ゴトンッという音とともにジュースが出てくる。『ガラナ青汁』だった。
どうやら不幸の矛先が僅かに違っただけらしい。

「……不幸だ」

いつもの口癖を呟いて、上条は一応取り出しておく。だけど、言った後でどこか寂しさが沸いた。
飲もうかどうか迷ったが、さすがにやめて捨てておくことにした。放っておけばいずれ清掃ロボが回収するだろう。

「……帰るか」

上条はどこか寂しいと思いながら帰路についた。










美琴はあれから初春達と一緒に行動していた。
理由は黒子の存在である。「上条さんを待ったらどうですか?」と初春や佐天が言ったが、黒子がそこで「そんなこと許しませんわ!」と、今すぐにでも上条に向かっていきそうな形相でいうので諦めたのだ。
そこで佐天が「うーん。それなら今日は4人で遊んじゃいましょうよ!」と言ったので、3人は了承してゲーセンやセブンスミストに行ったのだった。
今は初春と佐天と別れて、黒子と一緒に帰っている道中である。
黒子はおふざけではない真剣な表情で、突然切り出してきた。

「お姉様。お姉様はあの殿方のどこが気に入ったんですの?」
「え? な、何でいきなりそんなこと聞くのよ?」
「い・い・か・ら。答えてくださいまし」

黒子に強く言われて、美琴は一度考えてみる。
アイツのいいところ、気に入ったところ、好きなところ。
何故だか思い浮かばなかった。

「…………わかんない」
「嘘ですわね」
「ほ、ホントよ! ホントのホントに思い浮かばなかったんだから!!」

即返されて少しだけうろたえながらも美琴は反論する。
ただ、黒子はその反応を見て肩を落とした。心底がっくりしている様子だった。

「…………はあ。そこまでとは思いもしませんでしたわ」
「どっ、どういう意味よ!?」

馬鹿にされたと思って美琴はくってかかる。
だが、黒子の反応は予想の斜め上だった。

「お姉様がそこまであの殿方を好きでいらっしゃるなんて。黒子の勝ち目は薄そうですわね」
「…………え? ど、どういう意味?」

言っている意味がわからない美琴はキョトンとした顔になって訊ねる。
黒子はその様子に可愛らしいですわお姉様ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!と心の中で叫びつつ、わざとらしく大きなため息を吐いて応えた。

「……ご自分で考えたらどうですの?」
「お、教えなさいよ! 気になるじゃない!!」
「いーやでーすわー」

黒子はそう言うと前方20m程先にテレポートした。

「あっ! 待ちなさいよ!!」

美琴はそういうと走って黒子を追いかけた。
黒子は10mくらいまで2人差が縮まると美琴に背を向けて走り出す。美琴には決して見えないように、大きな大きなため息を吐いて。

(お姉様はあの殿方のことが全て好きなんですのね。はあー、お姉様を奪い取るのは難しそうですわー)

珍しい組み合わせの追いかけっこが始まって、それは寮に着くまで行われた。

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