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上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/memories/Part06 - (2010/03/07 (日) 14:38:10) のソース
---- #navi(上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/memories) 検査と言っても、身体能力の確認と脳の異常がないかぐらいの確認の検査であったため、行うことは複雑ではない。単純な作業をやっていくことだけだったので、むしろ学校の検査が長くなった程度に考えれば問題はない。 一時間程度で終わった検査結果は、異常なし。学園都市の医療とカエル顔の医師の腕によるものなんだと、上条はこの二つがとても凄いことを実感した。 「そういえば、一ヶ月以上も身体を動かさなかったのに、起きたら問題なく動いたじゃないですか。普通、一ヶ月も寝ていたら、リハビリをするんじゃないんですか?」 「そうでもないよ。この学園都市の設備ならね。それに、一月程度じゃ大げさな事にはならないのが、今の医療時代だよ」 医師は何事もなく、医師としてのの答えで答えた。 「それに君の身体は頑丈みたいだから、この程度では問題にならないよ。酷い時は本当に酷い時もあったから、今回のは可愛すぎて物足りないぐらいだよ。まぁ毎回あれだと僕としても勘弁して欲しいものだけどね」 上条は力なく笑うと、検査室を後にした。 そして、廊下で待っていた美琴に手を振ると、こちらに気づき駆け寄ってきた。 「アンタの今までを考えると、問題ないんじゃない?」 「……わかってたのかよ」 当然よと、呆れたため息をつき、上条を睨んだ。上条は無意識に責められているような感じがしたが、色々と言われそうだったので知らぬふりをして、話題を変えた。 「そ、そういえば、妹ってどこにいるんだ?」 「ああ。そこにいるわよ」 と美琴は親指で、廊下に佇んでいた御坂妹を指した。上条は指された方向を向き、初対面となる御坂妹を見た。 (あれ…? 御坂二号?) あまりにも似すぎていたため、ロボットなどに用いられる二号という古めかしい表現で、御坂妹と美琴を見比べてみた。同じ服装に同じ顔、同じスタイルはどう考えても美琴と瓜二つの存在だった。唯一違うのはゴーグルを装着しているかいないか。上条はそれで美琴と御坂妹を判別するしかなかった。 「お久しぶりですと、ミサカはあなたに挨拶します」 「あ………えっと……」 「あなたは初めましてで構いませんと、ミサカは困惑するあなたにアドバイスします」 「あ、悪ぃ。それじゃあ、初めまして…か。えっと……なんて呼べばいいんだ?」 「ミサカのシリアルナンバーは10032ですが、あなたはミサカを御坂妹と呼んでいましたと、ミサカはその呼び方で呼んで欲しいとあなたにお願いします」 「ああ。それじゃあ、御坂妹、初めまして」 はいと御坂妹は答えると、上条は無意識に力が抜けた気がした。そんな上条の変化に人一倍敏感だった美琴は、なんとなくだが何を思っていたのか予想できた。 「アンタ、そんなに意識しなくてもいいのよ? いくら私の妹だからって、元はアンタの知り合いでもあるのよ?」 「といわれましても、上条さんなりに自然に答えたつもりなんですが」 「お姉様の言うとおりですと、ミサカはあなたの緊張した態度を指摘します」 そこまで言われると、上条もそうなんだなと納得せざる終えない。やはり記憶を失って知り合いに会うのは、なかなか難しいものだと、無意識かの緊張に後ろ髪を掻いて悩んだ。美琴の時はそこまで違和感なしだったようだが、こうして情報もない他人と会うのはやはり難しいようだ。 上条はふぅと息を吐いて、身体の力を抜いた。少しだけ楽になったのを気に、上条は御坂妹の言葉に一つ疑問を抱いた。 「そういえば、シリアルナンバーとか言ってたけど、どういう意味だ?」 「その話は少々長くなると思うので、別室で話したほうがいいでしょうと、ミサカはお二人に提案します」 廊下での長話はあまりよくない。それにここは病院だ。二人が御坂妹の提案を断る要素は何もなかった。 病院のとある個室。ここには入院患者はなく、ベットだけがぽつんと置かれていた。一応、医師の許可を得てこの個室を借りたので、二人は病人がいない安心感を感じながらこの個室に入ることが出来た。 そして、用意されていた二つのパイプ椅子に座ると、御坂妹は壁際に立って話の続きを話す。 「シリアルナンバーについてですが、お姉さま。ミサカはどこまで話せばいいのでしょうかと、ミサカはお姉様に問いかけます」 「絶対能力(レベル6)のことは少し話したわ。そのあたりの話なら、問題はないと思うわ」 「わかりました。それでは、ミサカが知っていることの始まりから話しましょうと、ミサカは過去に起きた出来事をあなたに話します」 そして御坂妹から語られた話は、上条当麻の知らない世界。言うなれば、『上条当麻』が体験した自己満足に解決した事件だ。いまいち話をうまく想像が出来ない上条であったが、それが現実の自分が行ったことだと理解することは出来た。そして、話を聞いている自分と話されている『自分』との考えは、同じだろうと確証のない確信を得た。 御坂妹はクローンであり、絶対能力進化(レベル6シフト)のための駒。一方通行(アクセラレーター)が20000人もの妹達を殺すことで達成される歪んだ計画。そして、実際に実行され、途中で解体された計画でもある。 だというのに、上条はその計画が許せなかった。歪んでいるこの計画が許せないのではなく、この計画が立てられたことが許せなかった。だがそれは過去の話。今更そんなことを思っても仕方ないと、上条は今はない計画にそんなことを思った。 それに、結果はどうあれ美琴と御坂妹は生きている。今はそれだけで十分だと、上条は心から思えた。 「―――――――以上がミサカが知りえる真実ですと、ミサカはあなたの質問にお答えしました」 「ああ。さんきゅーな。なんだか、自分が少しわかった気がした」 お構いなくと、御坂妹は一息ついた。話した時間は五分ちょっと。綺麗にまとめてくれて、要点だけは欠かさずに話されていたので、上条は話の全貌は御坂妹が話してくれた限りは理解できたつもりだ。そして、昨日美琴が話してくれたことと結び合わせれば、それなりの形の過去が出来上がった。 「この話を聞いてどう思った?」 「………少なくとも、歪んでいるとは思った。そんなくだらない事で、妹達が死ぬなんて間違ってるってな」 「……………」 「だけど、結果を聞けて安心した。結局俺は自己満足に働いたんだな…」 「………自己満足、ですか」 御坂妹は重い口で上条の言葉を繰り返した。 「誰かを救いたいって、勝手に思ったってことだよ。それで俺は勝手に巻き込まれて、勝手に解決しちまったんだよ」 「それでも、アンタはこの子たちも救ったのよ。そして、私もね」 「でもそれも、俺が助けたいって思ったからだろ? だからさ、そんな悲しそうな顔するなよ。笑えよ、御坂」 そういうと上条はもう一度、御坂妹と美琴を比べた。御坂美琴をモデルとしたクローン、妹達(シスターズ)。話を聞く限りは事実だと思い込んでいたが、真実を知って見比べてみると思い込みは確信へと変わった。と言っても、彼女たちは別人同士。生まれる過程などを抜きにしても、御坂妹と美琴は別人であることは確認するまでもない事実であった。 そして、上条が勝手に救った命。単純な話、"救えた"だけで彼は満足だったのだろう。 上条は、うんと小さく微笑む美琴を見てそんな想像をした。自分の救った存在は、確かに目の前にいた。 「本当に、何から何までアンタはアンタよ。こんな話を聞いても、同じようなことをさらっと言うんだから」 「……そうだな。御坂妹も記憶を失っても俺は俺のままだと思うか?」 美琴にはあまり変化はないと言われたが、やはり他から見てどう思っているかは聞いてみたいと思った。隣の美琴は少しだけ険しい表情をしたが、これは個人的な質問だったので目を瞑ることにした。 「まだ数分しか会っていませんが、特に変化は見られないと思いますと、ミサカは数分間の観察を報告します」 「そっか。まぁ、あんまり気にしちゃいないが気になったからな。つーことだから、美琴は特に気にするな」 美琴は小さく頷く。そしてさりげなく名前を呼ばれたことが少しだけ嬉しかった。これは上条なりに意識した結果であるが、本人はそこまで気が回らなかったのは気がついていない。もっとも、意識して言う分はまだ言えないが。 「それよりも、お前たちは今何やってるんだ? 実験が終わったからっていても、妹達が日常で生活したら御坂もお前たちも困るだろうし」 「現在、妹達は自分たちの命を延ばす実験を繰り返していますと、ミサカは答えます。そして、それを利用して他の機関でもこの実験が他の何かに利用できないかと、誰かを救うための実験であると、ミサカは補足として答えます」 「……そっか。なら、私も安心できるわね」 意外にも最初に安心した反応を示したのは美琴だった。上条のこれには驚きを隠せなかった。 「お前、知らなかったのか?」 「妹達は集団で活動しているけど、よく知らないのよ。細かいことはこの子たちの自由にしたかったから、何をしているか知らなかったのよ。でもあの時のようなことをしてないってあの子の口から聞けたから、安心はしたかな」 そういう美琴の表情は、姉としての愛情が満ちていた。妹を心配しながらも、信頼する表情は上条が今まで見たことのないほど綺麗な表情だった。 「……どうしたの?」 いや、と視線を逸らした。言えるはずはない。その表情に見惚れたなど。 (こいつ……こんな顔も出来るんだ) 上条は美琴の中にある一カケラを見たような気がした。そしてこれが、上条が美琴のことを知りたいと思う加速装置になったことを、上条はまだ知らない。 それからの話は本当に他愛のない話だった。 女の子らしい外見ではあるが、御坂妹は美琴のような女の子らしい会話はあまりしなかった。むしろ、難しい話ばかりをされて上条は混乱した。時折、ついていける話もあったりしたが、半分は専門的、科学的な話だった。 「なあ、御坂妹ってこんな話ばかりするのか?」 病院の出口の前、御坂妹はこれから実験があるため、今回は一時間程度の会話で終わった。そして今は、病院まで上条と美琴を送る為に、出口まで同伴している。 その別れ際、上条は気になったことを御坂妹に聞いてみると、無表情に答えてくれた。 「普段もしますが、今回はあなたの記憶がないということでしたので、ミサカなりにまとめて話してみました、とミサカは正確に答えます」 「っていっても、アンタはほとんどわかってなさそうな顔してたけど」 上条は苦笑いして、すいませんと御坂妹に謝った。御坂妹はため息をついて呆れながらも、気にしてませんと答えたが、少々怒っているように見えた。 「細かいことはお姉様に教えてもらってくださいと、ミサカはあなたの学習能力の低さに怒りを隠せません」 「あはは…怒っておりましたか」 訂正、結構怒っておりました。 「そんなダメ男のことは置いておいて」 「……上条さん、会って一時間ほどの女の子に『ダメ男』と言われて泣きそうです」 「では泣きなさいと、ミサカはずばりと言います」 御坂妹、容赦ないなと思いながら涙を流した。ここで抵抗しようと思ったが機嫌を損ねた原因は上条にあるので、何も言い訳できなかった。 そんなダメ男と言われた上条を置いておき、御坂妹はお姉様と声をかけた。 「昨日、ミサカネットワークを通じて、お姉様とそこの物体は恋人同士になったという情報が流れたのですが、その真意をお聞かせくださいと、ミサカはお姉様の腕を掴んで逃げないようにしながら質問します」 「へ……ふえぇぇーーー!!!???」 美琴は、なんでそれが知れているかに驚きを隠せなかった。そんなことも知らないどんどん名前から遠ざかっていく『物体』こと上条は、美琴の代わりに驚くことか? とさりげない言葉で答えた。 「今のあなたの発言は、お姉様を彼女と認めるのですねと、ミサカはあなたに問いかけます」 「ああ。こいつは俺の彼女で俺はこいつの彼氏。別に隠すことじゃないだろう?」 「あああああああんあんたは、なななななにを」 「いや、お前が告白してきたんだろう。俺はそれを素直に答えただけだぜ? ん、問題でもあったか?」 ペラペラと暴露する上条に、美琴と御坂妹はプルプルと震えていた。そして、ここで上条の不幸センサーが不幸をキャッチしたが、もう遅い。 「アンタは…」 「あなたは…」 「えっと……あれ? なんでお二人とも怒っておるのですか? 上条さんは何か悪いことでも」 「「そんなことをあっさりと話すな(と、ミサカは拍子抜けした怒りをあなたにぶつけます)!!!」」 「うおおぉぉぉ!!!なんでいつも俺だけーーー!!!」 乙女の心は複雑である、それを知らない上条は、出会いでも再会でも最後まで不幸だった。 散々(不幸)な目にあったと上条は心身ともに疲れ切っていた。まさか不幸体質がここまで厄介だとは、と思ったが美琴曰くまだ序の口だという。これ以上にまだ上があるのかと思うと、また泣きそうになったので考えないことにした。 「不幸だー。なんでいつもいつも、締まりが不幸なんだ」 「それはアンタの責任よ。いい加減に自覚しなさい」 何に自覚すればいいんだよと思いながら、上条は美琴の横を歩いていた。しかし、疲労の影響で朝ほどの元気はない。 「まったく。その程度でへばってどうするのよ。アンタの体力はその程度じゃないでしょう?」 「……どういう意味でせうか?」 「アンタは一晩中、私から逃げたりしてたのよ?」 記憶のない上条がこの言葉から連想されるものは、危ういものであった。 (一晩中……わたくし、上条当麻は一体この子に何をしてしまったのですか?! まさか?! 中学生が言えなかったようなことをしてしまい、それが原因で逃げたとか?!) 「みみみみみみみさかさん!!! スイマセンでした!!!!」 とりあえず、いつも通り謝ることにした。どこに非があろうと、美琴の言葉からは上条が全面的に悪いとしか思えなかったことしか、想像できなかった。 「まったくよ、素直に電撃を喰らっておけばいいものを……なんならここで」 「いいえそれだけは勘弁してください今の上条さんはボロボロです」 何がどうなっているかはわからなかったが、電撃だけはやめてほしいと土下座した。今この場で電撃を浴びせられたら、命がいくつあっても足らないような気がした。 「んー………だったら」 というと、一瞬だけ視線を逸らし、もう一度上条の顔を見た。なんだかどこかで見たことあるなこの展開、とのん気に思いながら、上条は何を言われるか(命の危機に)ドキドキと緊張しながら美琴の言葉を待った。 「えっと……ね」 (やばい! 電撃よりも酷いことか?! うぅー素直に喰らっておいた方が良かったか?!) 「名前………で」 「? 名前…がどうかしたんですか?」 「さっきみたいに……名前で……呼んで…欲しいな…と」 それを言われた瞬間、上条の顔は一気に赤くなり、さきほどの光景が頭の中で再生され始めた。 (あれかっ!!?? いやいやいや! 無理です! 上条さんには恥ずかしすぎて無理すぎます!!!) 少なくとも恋人同士になってしまった時点で、この程度のことは乗り越えなければならない道なのはわかるが、それでも今の上条には無理難題、試験で百点満点を取れと言われる並みに不可能なことだった。 今思い出しても、あれは上条の中では確定の黒歴史だ。あんなことをもう一度言う力など、今の上条にはなかったのだが……そうもいかないみたいだ。 「その……やっぱり、ダメ?」 とても真っ赤になって不安そうな表情は、まさに『上条殺し』(カミジョウブレイカー)とでも名づけたいほどの、破壊力があった。そして、今すぐに抱きしめなければならない使命を、男の欲望から理性へと言い渡されたような気がした。 (待て待て待て待て待て!!!! 誰ですか??!! あなたはそんな表情や可愛い仕草をする小動物でしたか!!!??? 知らない! こんな御坂、俺は知らない!!!) ちなみに美琴は無意識で行っている。そのため、上条がどうなっているのかまったく理解できていない。 逆に上条はたちの悪い悪戯であって欲しいとさえ思うほど、この表情に底知れぬものを感じている。一言で完結するのであれば、理性が危ない。 (もうだめです。このままでは上条さんは犯罪に手を染めてしまいそうです!! お願いです! 幸せなんですが不幸になりつつある状況を、誰でもいいので助けてください!!!) 「うううううううううぅぅぅぅぅぅぅぅぅーーーーーーーーーーーー」 「……………はぁーわかったわよ。そんなに言いたくないなら、言わなくてもいいわよ」 その願いはなんと美琴によってかなえられた。残念そうな表情でため息をついたのと同時に、上条も身体の力と破壊された理性が再生されていくのがわかった。 「アンタ、そんなに名前を言いたくないの?」 「そういうわけじゃないんだが……上条さんとしても、困難な願いというものがあります」 「はぁー、まあいいわ。………さっき言ってもらったし」 ボソリと言ったのは、さきほど御坂妹と話した時に言った時のことだ。今思いだして、顔が緩くなりそうなほど嬉しかったことなのだが、上条はそんなことも知らず、回避できたことに安堵の息を吐いた。 (でも言える様にしないと。また今度言われたら……不幸だ) 「そういえばさ、ホテルはどこにする?」 「………………………………御坂さん。覚えていらっしゃったんですね」 一難去ってまた一難、朝の悩みがここで復活した。あの時、強引かつ無理やりに話を変えたので、特には気にしなかったが美琴はどうやら綺麗に覚えていたようだ。 「だから! 俺とお前がホテルになんか言ったら、色々と問題があるだろうが!」 「問題って何よ! 朝も言ったけど、部屋は別々なのよ?」 さきほどの雰囲気ははるか彼方へと飛び去り、ケンカムードに変わっていく。大声で騒ぐ二人は、仲がよさそうなカップルに見えるが、二人はそんなことにもいっさい気づかず、わーわーと言いたいことをマシンガンのようにバンバン言っていく。 「部屋の問題じゃねぇ! まず俺とお前が一緒にホテルの泊まるってこと自体、おかしいんだよ! それぐらい分かれ、中学生!」 「わかんないわよ! 大体、ホテルの泊まることがおかしいって何がおかしいのよ!」 「お前は本当に常盤台のお嬢様か! 高校生と中学生がホテルに泊まるってことは、世間からどんな目で見られるか想像できるだろうが!!」 「何、そんなくだらないことを気にしてるのよ! だったら、昨日私が泊まったことをアンタはどう説明するのよ!」 「………………」 マシンガンは早々と弾切れになり、美琴にそれを言われては……上条は言い返せなかった。 上条の心配は、高校生と中学生の身分の差による世間からの目を気にしていたのだが、考えてみれば何も言わずに自分の部屋に美琴を泊めたこと昨日の時点で、それらを気にする理由はもうない。 それでも上条は考えた。前回はともかく、今回は自分の部屋ではなく世間の目が光るホテル。この差は自分たちが想像するよりもとても大きなもののはずだ。 「それでもだ! 俺の部屋とホテルとじゃ、世間の目の違いが大きすぎるだろう! それに、お前は常盤台のお嬢様だろ。そんなことで評判を落したら、どうするんだよ!」 「そんなことは関係ないでしょ! 今私が聞いてるのは、なんで私とホテルに泊まるのが嫌なのかって聞いてるのよ! 学校とか年齢とかじゃなくて、私個人と泊まりたくない理由を言いなさい」 「…………………」 その理由は…なかった。むしろ、美琴と泊まることは記憶がない上条からすれば、安心できる要素の一つだ。それに、美琴と一緒にいる時間はとても有意義で楽しい。まだ恋愛感情はもてないが、それを忘れても美琴と一緒にいたくない理由を考える方が困難だった。 そして、知らずに美琴ともう少しいてもいいんじゃないか、と思う自分がいる。すでに出会って二十四時間が経って、そこまで思っているのか自分にも良くわからなかったが、それが確かに存在していることは上条も薄々だが気づいていた。 「どうしたの? 何もないの?」 急かす美琴に上条は舌打ちをして、美琴の前を歩いた。その事実を認めてしまうのが何故か悔しくて、勝手にしろとぞんざいに答えるのが、上条の精一杯の抵抗だった。 ---- #navi(上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/memories)