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上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/シークレットメッセージ/Part1 - (2010/01/17 (日) 09:43:41) のソース

 一端覧祭を数日後に控えたとある日。
 一端覧祭用の資材をホームセンターで購入し、教室に戻ろうとする上条を、美琴が呼び止めた。門の前にいたところを見ると、わざわざ上条を待っていたらしい。

「ねぇ、ちょっといい?」
「こっちも一端覧祭の準備で忙しいんだが……何だ?」

 この材木やら釘やらを急いで持って帰りたいんだがなぁと思う上条。しかし、どうも美琴の様子が変なので、一応話を聞いてみることにした。

「アンタにね、見てもらいたいものがあるのよ。忌憚なきご意見を承りたい、って奴?」
「……はぁ。忌憚なきご意見、ね。まぁいいけど、それってここでか? 電話じゃダメだったのか?」
「アンタ携帯切りっぱなしだったでしょ。全然つながらないんだもん」

 キタンナキゴイケンってなんだ、それって日本語か? とツッコミたくなるが、藪蛇になりそうなので上条はあえて口をつぐむ。所在なげに視線をさまよわせていた美琴が、意を決したように顔を上げた。

「えーと、ちょっと大がかりなんでここじゃ無理かな。……アンタの部屋を借りたいんだけど、いい?」
「俺の部屋? 何で」
「……つべこべ言わずに貸しなさい」

 上条を含む周囲の気温が、急に二度ほど下がった。

「何で頼まれてる俺がすごまれなくちゃならないんだよ……」
「急ぎの話なんで今日の夜アンタんち行くから、住所教えなさい」
「今夜? ……今日は完全下校時刻まで大道具の組み立てやってるから、その後だったらまあかまわないけど」

 それを聞いて、美琴がぱっと表情を明るくする。キタンナキゴイケンとやらは、そんなにも重要なものなのだろうか。

「ホント? じゃ、だいたいの様子見てアンタんち行くから、それじゃね」

 美琴は上条から寮の住所を聞き出すと、バイバイと手を振り駆けだしていった。

「はぁ、何か嫌な予感がするけど……もう約束しちまったしなぁ。とりあえず大道具作りに専念しますかねぇ」

#center(){◆         ◇         ◆         ◇         ◆}

 上条が寮に帰ると、入り口で美琴が待っていた。

「何だ、部屋の番号教えたんだから部屋の前で待ってりゃ良かったのに」
「そうしようかと思ったんだけどね」

 上条の言葉に、何故か苦笑いを浮かべる美琴。彼女は常盤台中学指定のドラムバッグを肩から提げていた。

「それが例のキタンナキゴイケンか?」
「あ、うん、そう」
「確かにずいぶん大がかりだな。俺の部屋で広げられんのか、それ?」
「着替えるスペースを貸してくれれば大丈夫。たまたまこのバッグに入れてきただけだから」
「は? 着替え?」
「い、いいからさっさと行く!」

 美琴は上条の手をつかみ、エレベータ前まで引っ張っていった。上条は『何だコイツ、照れてんのか?』と思い、即座にその考えを打ち消した。

(コイツに限ってそんなことあるわけねぇだろ)

「んじゃ上がれよ。ちらかってるけど」
「おじゃましまーす……」

 上条は玄関のドアを開け、美琴を迎える。上条の後に続いて部屋に入った美琴は、周囲をきょろきょろ見回した。美琴には、一人暮らしの部屋が物珍しいようだ。

「常盤台の寮より狭いだろ?」
「アンタは一人暮らしで、必要なものが全部部屋に詰まってるんでしょ? じゃあこんなものじゃない?」

 私の所は相部屋だし、キッチンはないしねと美琴が続ける。

「んで? ここで何すんだ?」
「えーとね……さっきも言ったと思うけど、着替えたいんだけど場所貸してくれない?」
「……ロボにでも変形すんのか? 大がかりって言ってたけど」
「んなわけないでしょ!」

 美琴の額から青白い火花が飛ぶ。

「待て! ここで電撃を使うな! また家電が総取っ替えだなんて冗談じゃない!」

 着替えならそっちのユニットバスを使え、と上条が指さす。

「ん、ありがと。……のぞくんじゃないわよ」
「死んでものぞかねぇよ!」

 美琴の睨みを、上条は手を振っていなす。何で部屋に押しかけられてこんな目に遭うんだよと上条は思う。……世の中理不尽だ、と。

「……よし」

 上条がのぞいていないことを確認して、美琴はドラムバッグの口を開けた。

「見てなさい。びっくりさせてやるんだから」

 美琴は中に入っていた服を取り出し、広げてにんまりと笑う。

「……でも似合わないって言われたらどうしよう……」

 直後、がっくりと肩を落とす。浮いたり沈んだり、美琴は美琴で忙しい。

「お待たせ。見てもらいたいのは……これなんだけど」
「あー、着替えとやらが終わったか…………って、ええええええええええ?」

 ドアが開いて着替え終わった美琴が出てきたのを見て、上条は硬直した。

「……これ、どうかな。一端覧祭で着るんだけど」
「ど、ど、ど、どうって…………」

 美琴が身にまとっているのは

「ミニスカエプロンドレスにヘッドドレスにオーバーニーソックス……?」
「あー、えっと、うちのクラスで喫茶室やるって話はしたわよね? その時にこれを着るんだけど……どう? 似合う?」

 上条は、床にへたり込んだ体勢のままベランダのガラス付近まで後ずさる。

「ちょっと……何よその態度は。人が恥ずかしい思いしてこの格好してるんだから、何とか言いなさいよ」
「に、似合う。とても似合うすごく似合う。可愛いかもしんない」

 上条は首を縦に何度も振る。

「本当に?」
「本当に」
「お世辞じゃないわよね?」
「心からそう思ってる。……お前がこう言う服を着るとは思わなかったんで、最初びっくりしたけどな」

 その言葉に、美琴がほっとした表情を浮かべる。次いで、上条の前でくるりと回ってみせた。

「これ自分で縫ったんだけど、どうかな。変じゃない?」
「手縫いかよ。気合い入ってるな。けどよ、似合う似合わないなら、それこそクラスの連中と見せ合えば良かったんじゃねーの?」
「女の子同士だと、わーわーきゃーきゃーであまり指摘してくれないからね。どっちかって言うと自分重視?」
「白井は? アイツ結構シビアな意見くれそうだけど」
「黒子は『お姉様でしたら何を着ても似合いますもの』で参考にならないの。……まぁ、そういうことで、男性の目から見た意見が欲しかったのよ。アンタなら遠慮なく言ってくれそうだしね」

 衣装のせいか、美琴がもじもじしている。多少は気恥ずかしいところがあるのかもしれない。

「……これ着てお前が接客すんのか?」
「そう、喫茶室だしね。といっても、七日間ずっと出ずっぱりってワケじゃないけど」
「ふーん。…………他の男に見せるのは惜しいな」
「え?」
「いや何でもない気にするな俺の脳が電波を受信しただけだから聞かなかったことにしてくれごめんなさい!」

 美琴のパンチが飛ぶ前に、上条は素早く土下座にシフトチェンジした。そのまま平身低頭して嵐が過ぎるのをまだかまだかと身構えていたが、待てど暮らせど雷が落ちる様子はない。上条がおそるおそる頭を上げると、美琴は心ここにあらずといった調子で、そわそわと落ち着きなく自分の指を絡み合わせていた。

「あのー、御坂さん?」
「な、何?」
「怒らないのでせうか?」
「何が?」

 珍しいことに、上条の失言について美琴は腹を立ててはいないらしい。何だか知らないけどラッキーと喜んだ上条は、気になった点を指摘することにした。

「ああそうだ。お前気づいてないと思うけど」
「?」
「その服装であんまりくるくるしない方が良いぞ?」
「何で?」
「……気づいてないのか?」
「何が?」
「お前短パン履いてないだろ。スカートの奥の白いものが丸見えぐぼあぎゃぁっ!?」

 直後、羞恥で頬を真っ赤に染めた美琴のローキックが、過たず上条の側頭部に叩き込まれた。

 美琴は寮への帰路を急いでいた。
 先ほどの上条の一言を思い出すたびに、上条に見られたという恥ずかしさが美琴の頬を怒りとそれ以外の何かを混ぜ合わせ、赤く染め上げていく。

「でも……」

 美琴の足が止まった。

「『似合う』かぁ……」

 美琴の頬が知らず緩む。あの衣装を着るのは少し恥ずかしかったが、どのみち一端覧祭になれば、上条はおろか来客全員に見せるのだ。今日はその予行演習と思えばいい。

「『他の男に見せたくない』とか言ってたわよね、アイツ。……これって期待して良いのかなぁ」

 美琴の歩調がスキップに変わる。気品爆発の常盤台の制服姿でスキップというのも、傍目から見ると少し怖い。

「後はあの馬鹿の予定を押さえて、それからどこへ行こうかな……」

 寮まではまだ遠く、あれこれ作戦を練る時間はたっぷりある。
 思い出し笑いを繰り返す中学生は、数日後に開催される一端覧祭に思いを馳せた。

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