とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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上条・美琴



ここは現在の学園都市。現在の学園都市と表現するのはこの世界にいるのがおかしい人物
がいるからだ。

「いや~、ここがあの時の学園都市か。青春してたな~。いや懐かしい・・・」

思い老けているが別に老人な訳でもない。普通の青年である。
Tシャツに長ズボン、大人の男性なら誰もが持っているバッグ、ズボンのお尻のポケット
には財布、もう片方にはカエルのストラップが飾ってある携帯があった。
知り合いなら誰でも気づくようなツンツン頭の青年だ。

「さて、この世界のアイツはどこにいるかな。俺と会っていませんように」

青年は懐かしむように学園都市を歩き出した。


青年は古びた自販機がある公園に着いて、地面をかみしめるように歩いた。
「ここはホントに懐かしいな。思い出が詰まった場所だよな~」

自販機に向かって歩いていると常盤台中学の制服を着た少女が自販機に向かって歩いて
いるのが見えた。少女は自販機の目の前に立ち強烈な蹴りを自販機に見舞い、その衝撃で
落ちてきたジュースを拾いベンチに座って美味しそうに飲んだ。

「この頃のアイツは超ツンツンしてたからな。俺は超が付くほど馬鹿だったけど」
遠くから様子を見ながら独り言を言っていると少女は青年に気づき、喧嘩を売るように声
をかけた。

「ちょっとそこのおじさん!何ジロジロ見てんのよ」

これはチャンス。青年は心の中でガッツポーズを取った。ツンツンした少女に話しかける
つもりだったが少し怖くてどうしようかと思っていた所だったのであちらから声をかけて
来た事は好都合だった。
それにしてもおじさんとは・・・まだお兄さんと言われる年なのにと思いながらあえて口
に出さなかった。

「いや、あなたに用がありまして」
頭を掻きながら少女に近づいた。
「は?私おじさんに用なんかないんだけど。さっさと消えて」

この野郎・・・年上のお兄さんに敬意を払えと突っ込みたかった。

「俺があるんだよ。ったく、旦那が話しかけてるのにさ」
「なんでおじさんが私の旦那なのよ!!」
しまった。牙を剥いて怒って来た。

「すまん、日本語を間違えた。未来の旦那がわざわざ未来からやってきたのによ。だ」
「・・・・・・?」
「わかんねえだろ?そうだ、俺の携帯見てくれよ」
青年はポケットから携帯を取り出して少女に渡した。

「これおじさんの携帯?」
「おう。数年後に発売するぞ」
「おじさん馬鹿?数年後って未来から来たって本当に言ってんの?」
「そうだって言ってんだろ?そうだ、そのストラップに見覚えないか?」
青年はカエルのストラップを指さした。

「うわ!きったないゲコ太ストラップじゃない!」
「それと同じストラップを携帯のペア契約で男の子にあげただろ?」
「!!何でおじさんがそれを??」
「教えてあげない。携帯の待ち受け画面見てみな」
言われるがままに青年の携帯電話を開いた。真っ先に写ったのは目の前の青年と綺麗な女性
が仲良く2ショットした写真だった。しかしこの女性、自分の母のようなどこか自分に
似ているような。


「これでわかった?美琴」
「え?どうして私の名前を・・・」
「やっぱり美琴でも理解できねえか。まあ未来から来たつってもこの世界ならまだ
信じられないだろうし」
「まさかアンタ・・・」
「おっ、アンタって言われたの久しぶりだな。俺は上条当麻。美琴に会うために未来から
やってきたぞ。今は美琴の夫だ」
「ふにゃ――!!」



少し離れた場所にもう一人未来からやってきた人物がいた。
茶色の髪は肩まで伸ばし、出る所はしっかり出ており、整った顔立ち、誰もが目を引く
女性が携帯電話を耳に当てていた。

「あれ?出ないじゃん。まあいっか。それよりアイツはどこかな~?」
女性は激安スーパーと言われる店の前に入り、食材を買うつもりはなく人探しのため
ウロウロしていた。

「いない・・・もう寮に帰ったのかな」
女性は店を出て周りをウロウロしていたが角を曲がった所で悲鳴が聞こえた。

「ぎゃああああ!!」
「この声はまさしく!」

女性は声がした場所に走った。そこに蹲って肩を震わせているツンツン頭の少年がいた。

「貴重なタンパク源が・・・卵さん、どうしていつもあなたは潰れてすまうのですか・・」
と嘆いている。

「卵くらい別にいいじゃない」
女性の声に少年は振り返った。

「あれ?美鈴さん?」
「違うわよ」
「いや、美鈴さんでしょ」
「違うつってんでしょうがぁ!!」
女性は強烈な電撃を放ったが少年の不思議な右手で防がれた。

「うおぁ!!ついに美鈴さんもビリビリに!」
「だから違うって!アンタの知り合いに電撃使いいるでしょ?」
「あなたがこれで二人目になりますが・・・」
「その一人目が私よ」
「・・・・・・はい?」
「アンタ馬鹿だから率直に言うわ。私は御坂美琴。あっ、今は上条美琴になったけど」
「美鈴さん、そんなドッキリはもうやめましょうよ」
「ドッキリでも美鈴母さんでもない!信じられないだろうけど私は未来から来たの!」
「はい、信じられません・・・」
「じゃあ、信じてもらうために旦那にも会ってもらうわ」
「旦那って・・・・もしかして・・・」
「未来のアンタよ。上条美琴って自己紹介したでしょ?」
女性は携帯を取り出して通話ボタンを押した。
すぐ繋がったのだが会話が少年にまで聞こえた。

「もしもし当麻?こっちは合流できたわよ。昔の当麻相変わらず卵つぶしてたわよ」
『それは可哀相に俺。昔の美琴名乗った瞬間漏電しながら気を失ったぞ』
「ふうん、昔の私ってやっぱり当麻に弱いのね。どこにいる?やっぱり公園?」
『うん。来てもらえると助かる』
「わかった。気失ってるからと言って昔の私に変な事しないでよ?」
『しねえよ!』
「冗談だって・・・通話切れてるし」
いかにも女性らしく可愛くプンプンと怒った。

「さあアンタ、公園に行くわよ?卵潰れたならご飯くらい出してあげる」
「・・・・不幸だ」
「その言葉久しぶりに聞いた!なんか懐かしいわ!」
「久しぶりに聞いた?俺の専売特許のセリフになりかけてるのに未来の俺は言わないのか?」
「早く行動する!」
「無視かよ・・・・・」



「いたいた!当麻―!」
女性はベンチに座っている男性に声をかけ、男性は手をあげて応えた。男性の膝には気を
失ったらしい少女が頭を乗せて眠っていた。

「あれが未来の俺・・・」

ベンチに座っている男性を見て少年は驚きを隠せなかった。そして違和感を感じたのは
男性が少女に膝枕をしていること。何でお前が膝枕してんだよと少しイラっとした。
簡単に言えば嫉妬なのだが少年はその感情にまだ気づかなかった。

「おう、昔の俺」
「・・・どうも」
「年とった俺だとしても俺なんだから敬語なんかやめてくれよ」
「はあ・・・」
「それより美琴を起こしてくれ。俺は長時間膝枕して足が痺れちまって」
男性の膝の上で眠っている少女を指さした。少年は少女の顔を覗いた。スースーと寝息を
たて、髪は風によってふわふわと流れているその様子に少年はドキっとしたが男性の膝の
上に頭を乗せていることだけが許せない。

「おい御坂起きろ。もう遅いんだからここで寝ちまうと風邪ひくぞ?」
少年の言葉に少女はゆっくりと目を開いたのだがまだ寝ぼけているのか目はうつろだった。

(あれ?何でコイツが私の前に・・・あぁこれは夢なんだわ。夢なら覚める前に好きにしないと)

突然少女は少年に抱きついた。
「えへへ~。もう放さないんだから~。好き~」
「んな、ななな何寝ぼけてんだ御坂!」
甘々な言葉を吐かれた少年は明らかに動揺して顔を赤らめた。少女は声に反応してやがて
本当に目覚めたが、この状況に固まった。少年の胸の中で。

「え~と御坂、疑われないように言うがこれはお前が寝ぼけて抱きついたんだからな。
それとビリビリが来ないために俺は御坂の手を握ってる訳で・・・」
「・・・・・・・・」
「それと、そこの二人は未来の俺とお前で・・・・夫婦らしい」
「ふ・・・・・・・・」
漏電は少年が手を握っていたので防げたが無言のまま再び気を失った。



少女が意識を取り戻して未来から来たという二人は学生二人の有無を問わず付いてこいと
どこかへ歩いて行った。仕方ないのでついて行ったがここで少女は大人の女性に攻撃を
喰らった。

「ねえ昔の私、まだ当麻とくっついてないんだよね?」
「ん・・・すぐくっつくから!」
「強気な発言しちゃって。私はアンタそのものだったからわかるのよ?勇気なし、意気地なし~」
「未来の私だからって冷やかさないでよ!」
「うふふ、でさ、どっちが告白したとか知りたいでしょ」
「・・・・少し」
「教えてあげなーい!」
「くっ・・・・これが本当に未来の私?」

少女は怒りよりも何だコイツ?と思うほうが強かった。ほとんど今の自分とキャラが違う。
しかも楽しそうに冷やかしてくる性格が美鈴に似ているのが一番許せなかった。

一方の少年も同じような気分だった。
「昔の俺、美琴とは最近会ってんのか?」
「時々会うけど・・そもそも俺と御坂が結婚するって何かの間違いだろ?」
「間違いじゃねえよ。俺と美琴はそういう運命だって事だよ」
「なんか今の俺では考えられないくらいポジティブシンキングだな・・・」
「そうか?お前海原と約束しただろ?美琴とその周りの・・・・」
「うるさい!御坂に聞こえたらどうすんだよ!」
「まあ、美琴と一緒にいたらわかるさ」

この大人の男性は少年と違って・・・・明るい。いつもニコニコして女性の話には必ず
しっかり聞いて相づちを打ち、笑顔を絶やさない。
これぞ理想の大人の男性像のような人だった。
変わって少年は口癖のように「不幸だ」と呟くし、やる気がないように猫背で歩く。

「ねえ当麻」
女性が男性に声をかけた。
「昔の私が当麻とどんなデートしていたのか知りたいって♪」
「ちょっ!待ちなさい!私何も言ってないじゃない!」
「あん?それなら美琴から話してやればいいじゃないか」
「旦那からお許しが出たから特別に教えてあげるわ。まず初めてのデートは手を繋いだ
だけで私は気を失ったのよ」
「・・・・・・・」
「うふふ、照れてるわね。初めての○○○の時は緊張のあまりその時も気を失ったんだけど
当麻ったら私が気づいた時にはもう勝手に終わっていたのよ。ひどい話よね」
「・・・・・ふにゅ・・・」
「未来の俺・・・・最低だ」
「違う、俺も緊張して美琴が気失ってる事に気づかなかったんだよ。まあ夢中になっていた
という言い訳もあるけど」
「ほんっとに最低だな!!」



そんなこんなで連れて来られた場所は学園都市で3本の指に入る高級レストラン。もちろん
大人の美琴チョイスなので少年は相変わらずの金銭感覚にげんなりし、未来の俺の預金は
大丈夫なのかと不安になった。

元々大人の二人は学生の二人を誘うつもりだったので席はちょうど4人テーブルだった。
そしてなんとも豪華な食事が出てきて少年はがっつき、少女も初めて食べた料理だったので少し感動した。
しかし食事中は未来の甘~い生活を散々教えられたので二人は泣きそうになった。
食事が一通り終わった時に女性が二人に声をかけた。

「んで、あなたたち何か私達に質問ある?」
「最初から思ってたんだけど、今の俺達とあまりにもキャラが違いすぎねえか?」
少年の隣で少女はうんうんと大きく首を縦に振った。

「なんだそんなことかよ」
「長く一緒にいるからかもしれないけど簡単な理由よ」
簡単な理由?一体どんな理由だろうと思っていたが本当に簡単な理由を答えてきた。


「「だって愛してるから」」
「「ブフぉー!!」」

盛大に飲んでいた水を吹き出した。

「てめえらそんな惚気話を聞かされるために俺と御坂は連れられたのかよ!?」
「違う、実は二人にお願いがあって」
「「お願い?」」
「今美琴のお腹に子供がいてさ、その子の名前を二人に決めてもらいたいんだ」
「俺と御坂の・・・子供?」
「もう死にそう・・・・・・・・・ふにゅ」


「どんな名前にするか話し合ったんだけど全く決まらないでいてな。そこでわざわざ未来
からお前達に決めてもらおうと飛んできたわけだ!」
「とんだ自己中な行動だな・・それに突然来たんだしいきなり名前つけてくれと言われても
すぐ思いつかねえよ」
「アンタはそうかもしれないわね。でも昔の私なら候補があるはずよ」
「御坂が?どうして二人の子供の名前を?」
「気付け鈍感男!私達が夫婦となって未来から来て、小さい私が名前の候補があるという事
はどういう意味かわかれ!!」
「御坂が・・・・・俺を・・・・?」
「そんなことは本人から聞きなさい馬鹿!」

少年は隣にいる少女を見た。少女は恥ずかしくてテーブルに顔を伏せており、少年の見える
範囲全てが赤くなっていた。

「・・・・・御坂」
「・・・・・・・・・・」
「お前、俺の事・・・・」

「いい名前、思いついたわ」
「へ?」
質問に全く違う意見に戸惑う少年。しかし夫婦の頼み事を必死で考えていたのか、話を
逸らしたかったのかは少女ですらわからなかった。

「じゃあ教えてくれないか?どんな変な名前でもお前達が決めた名前なら即決定だ」
「画数とか関係なく私に子供ができたらこの名前にしようと思ってて・・・妄想の世界では
コイツとその子供の三人でいたから・・・・」
「はいはいもったいぶらないで昔の私!早く言いなさい!!」
「名前は上条・・・」
少女は名前をポツリと告げた。

「よし!お腹の子の名前はそれに決まり!きっと美琴は元気な子を産んでくれるぞ!」
わっはっはと大笑いしながら男性は少年に目をやった。

「どうだ昔の俺。いいお嫁さんをもらっただろ?」



未来の二人と別れた少年と少女は夜の学園都市を歩いて帰っている。少年が寮まで送って
やると言って二人で夜道を歩いているのだが二人の間には気まずい雰囲気が漂っていた。
少年はこのいや~な空気をどうにかしようと必死で考えなんとか会話をしようとした。

「いや~、大変だったな御坂」
「・・・・・・・・」
「未来の御坂、未来の俺に一発も電撃飛ばさなかったな。俺には飛ばしてきたけど」
「・・・・・・・・」
「それにしてもあの二人、今の俺たちとキャラ違いすぎだよな?」
「・・・・・・・・」
「あの二人、本当に夫婦なんだよな」
「・・・・・・・・うん」

(御坂、頼むもっと相づち打ってくれえ~!早くこの場から消えたい!!)
少年が冷や汗を掻きながら必死に会話をつなげたが少女は最後に小さくうんと言っただけ
でまだ顔を赤くしたまま下を俯いて歩いていた。


「・・・・・あのさ」
「ん?」

しばらくの沈黙の後に少女がふと声をかけた。

「あの二人凄い仲良しだったよね」
「あぁ」
「私達もあんな風になれるかな」
「・・・・・・・・なれる・・・と思う」
「今からだったら早いかな?」
「・・・・・何が?」
「私達があの二人みたいに仲良くする事・・・」
「・・・・俺は・・・未来の俺みたいにできる自信ないけど」
「嫌なの?」
「嫌じゃないに決まってるだろ」
「・・・・・・ホント?」
「あの二人みたいに御坂となれるなら俺はすげえ嬉しい」

未来の二人に追いつくため。少女は勇気を振り絞って小さな声で二人が当たり前のように
やっていた事を行った。
「・・・・・・・と・・・・・・・とう・・・・とうま」
「み・・・・みこと」

突然名前を呼ばれて驚いた少年はつい名前で呼び返したが、返事した瞬間少女が何を
考えていたのかわかった。

「ダメ、恥ずかしくて死にそう・・・」
「俺もだ。まだあの二人には敵わないな。ハハハ・・・」

少年は少女にニコっと笑った。
「あっ!今のと・・・・当麻の顔!」
少女は驚いたような顔をして告げた。


「今の笑った顔、未来の当麻に似てた」
「そうか?少しでも近づけたかな」
「うん。私だって負けないからね!」

別にどちらから告白をした訳ではないが今の二人の気持ちは一緒だった。
あの二人に負けないくらい仲良くなりたい。それが愛の形として生まれただけであり
その気持ちに嘘はなかった。


未来の二人に追いつくための最初のステップ。それはお互い名前で呼ぶ事から始まった。


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