とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part04

最終更新:

NwQ12Pw0Fw

- view
だれでも歓迎! 編集


シスターとして


「上条ちゃんがおかしい、ですか?」

インデックスは上条の担任である月詠小萌に相談していた。

「そうなんだよ、最近ぼーっとしてるし」
「確かに最近は上条ちゃんぼーっとしてますね」

数日前から上条はぼーっとしていたり、ぶつぶつ何か呟いていたりと
インデックスが今までとは別の意味で心配するほどだった。
いつもなら「不幸だ」という出来事が起きても溜息をつくだけで
騒がしくもなんともない。

一方小萌としても上条のことは気にしていた。
デルタフォースでいつもがやがやしているはずなのに、
騒いでいるのは土御門元春と青髪ピアスだけで上条はどこかを見つめているか机に伏せているかしかしていない。
シスターちゃんにまで心配させるなんて困った子ですね。
そう思った小萌はいい機会だと上条に電話をかけた。

「もしもし、上条ちゃんですか?」
『そうですけど、どうかしました?』
「今時間ありますか?」
『時間ならありますけど』

「それならこれから指定する場所に来てください」
『分かりました』

上条の呼び出しに成功した小萌は通話を切り、近くの喫茶店の地図を上条に送信した。

「とうま何だって?」
「とりあえず、暇なので来てくれるそうです。シスターちゃん待ち合わせ場所に向かいますよ」
「分かったんだよ」

小萌はインデックスを伴い、先ほど上条に指定した喫茶店へ向かった。



こちらはぼーっとしている上条当麻。
どうして御坂がキスしてきたのか。
どうして自分にしてきたのか。
あの時どうして御坂は自分を見て逃げたのか。
その時の痛みは何なのか。
鈍感男には何一つ疑問が解けずここ数日スパイラルに陥っていた。

そんなことを考えていると一本の電話が入った。

『もしもし、上条ちゃんですか?」
「そうですけど、どうかしました?」
『今時間ありますか?』
「時間ならありますけど」

せっかくの休日に補習とか言いませんようにと心の中で願った。

『それならこれから指定する場所にきてください」

課題を渡されるとかそのあたりだろうかと考えてしまい、やっぱり無理と言おうとも思ったが
それをしたら経験上余計にやっかいなことになることを知っている上条は、

「分かりました」

と承諾した。
電話を切った直後、地図が送られてくる。
上条はその地図を確認した後、寮を出て行った。

「上条さん、ごきげんよう」

待ち合わせ場所に向かう途中声をかけられた。
このどこかお嬢様チックな声はもしやと振り向くと案の定白井が立っている。

「ん、白井か」
「何ですかその反応は」
「わりぃ」

上条の反応に白井は若干不機嫌な顔をするが、すぐに真剣な顔になる。

「あなた、お姉さまのことどう思ってますの?」
「御坂のこと…か?」
「ええ」

自分でもそんなこと分からない。
分かっていればこんなに悩んでいない。

「自分でもよく分からねえんだ」
「なら質問を変えます。お姉さまからのキスは嫌でした?」
「そんなわけねえだろ!」

これには、自分でも驚いた。
今までは何でしてきたのか悩んでいたが、嫌だったかなんて考えていなかった。
それなのに口から勝手に出てきたのだ。

「それなら、お姉さまのこと嫌っていませんわよね?」
「嫌いになんかなるかよ」

嫌いだったら放っている。
嫌いだったらこんなに悩んだりしていない。
嫌いだったら、会いたいなんて思わない。

(ん?)

上条の中にまた一つ疑問が生まれた。

(俺は御坂に会いたいのか?)

新たなる疑問にまたもや悩みだそうとした時、

「そうですか、そのお言葉お忘れにならないように。それでは」

白井は去って行った。
何だったんだあいつ?と思いながらも担任に指定された場所へ向かった。

「上条ちゃーん」

喫茶店に入ると、そこには担任の小萌とインデックスが座っていた。
とりあえず、二人がいるテーブルに座り近くにいた店員さんにコーヒーを一つ頼む。

「それで、どうして俺を呼び出したんですか?」
「それはですね、最近の上条ちゃんの様子がおかしいからです」
「とうまは最近、ぼーっとし過ぎなんだよ」
「悩みがあるなら今ここで話しちゃってください」

うっと、上条は困った。
確かに小萌先生ならこの問題を解いてくれるかもしれない。
だがこの話をするとインデックスに噛みつかれかねない。
なんとも言えない状況になっていると、

「上条ちゃんが話さないなら、一か月補習ですよ」

流石にそれは困る。
悩みを抱えながら補習なんて出来るわけないし、そもそも悩みがなくても嫌だ。
そう考えた上条は渋々話を始める。

「数日前のことなんですけど、ある女の子にいきなりキスされまして」
「やっぱりとうまはとうまなんだね!」
「シスターちゃんダメです!」

インデックスがギラギラした歯を出し襲いかかろうとするも、小萌はギリギリで止めてくれる。

「その後はどうしたんですか?」
「5分ほど沈黙したあと去って行って…」
「キスしてきたのって誰なのかな?」

未だに噛みつきそうなインデックスの質問を誤魔化すことに身の危険を感じた上条は正直に話した。

「御坂だよ」
「御坂さん?」
「短髪なの!?」
「ああ」

「うちの学校に御坂さんっていましたっけ?」
「うちの学校じゃなくて、常盤台の御坂ですよ」
「えぇえええええ!」

常盤台の御坂と言えば、学園都市第三位の超電磁砲。
驚くのも無理はない。

「それで、とうまは何に悩んでいるのかな?」

インデックスの質問に、それはだなと言い、

「なんで俺にしてきたのか分かんないんだよ」

普通それは好きだからでは?(かも)と思った二人は若干上条の悩みが読めた気がした。

「ここで上条ちゃんに質問です。上条ちゃんはどんな人とキスしたいですか?」
「それは好きな人と…」
「答えが出たではないですか」
「え?」

キョトンとしている上条に呆れたインデックスが

「とうまがそうであるように、短髪はとうまのことが好きだからしたってことなんだよ!」

と捲くし立てるように言った。
しかし、そこに小萌は違和感を覚え、ちょっと失礼しますねとインデックスをトイレに連れて行った。

「シスターちゃんはそれでいいんですか?」
「いいわけないんだよ」
「それなら、これからの話は辛いですよ?」
「それは分かってるかも」

でも、とインデックスは一度呼吸をして

「迷える子羊を救うのがシスターとしての仕事なんだよ!」

と言い切った。
小萌はその目に強い決意を感じ取り、

「分かりました」

と告げ、インデックスを連れて上条のところへ戻って行った。


「さて、一つ悩みが解決したわけですが他には?」
「この前のことなんですけど、御坂が俺とあった瞬間去ってしまいまして」
「それで?」
「それが何だか辛くて」

「上条ちゃん…」

「次会ったらまた逃げられるんじゃないかと思うと、こう胸が痛くて」

珍しいと小萌もインデックスも感じた。
上条がこんなに弱音を吐くなんて。

「上条ちゃんは、御坂さんのことが好きですか?」
「こもえ、とうまにその質問はきかないかも」

インデックスの予想は当たることになる。

「いやいやいや、中学生を好きになるわけないじゃないですか」
「そのようですね」

小萌は苦笑いした後、上条にこんなことを聞いた。

「想像してください。そうですね…吹寄ちゃんが他の男性と仲良く歩いているところを」

それはないなと上条は思ったが、ここは素直に想像してみた。

「どうですか?」
「別にどうでもないですけど…」
「なら姫神ちゃんでは?」

うーんと唸りながら想像してみるも

「仲良くしろよとしか」
「そうですか。では御坂さんでは?」

今度は御坂で想像してみる。
御坂が仲良く男と…男と…
と、上条は自分の中に黒い感情があふれ出てくるのを感じた。

「嫌です」
「え?」
「嫌ですそんなの!もしそんなところ見たら相手の男を殴ってしまいそうです」

(やっぱり御坂さんのこと好きなんじゃないですか)

「上条ちゃ「とうま」

小萌がそのまま喋ろうとしたが、少し黙っていたインデックスが口を挟んできた。

「その感情はね、嫉妬って言うんだよ」
「嫉妬?」
「嫉妬するってことは好きの証拠なんだよ」
「だから俺があいつを好きになるわけ」
「じゃあ聞くけど、本当はとうま、今からでも短髪に会いたいんじゃないの?
 お話して、一緒に笑っていたいんじゃないの?
 短髪にずっと隣にいて欲しい、違う?
 一つでも否定できるなら反論していいよ!」

何一つ否定できなかった。
白井の質問の後に生じた疑問のせいで、実は会いたくて仕方がなくなった。

何一つ反論してこない上条にインデックスはこう言った。

「とうまは自分のことまで鈍感なんだね。少しは素直なったほうがいいかも」

今までのインデックスの言葉で上条の感情がはっきりとした。

「俺は御坂のことが好きなんだ」

ようやく素直になった上条に、小萌が「これは私の推測ですけど」と前置きして話をしだす。

「恐らく御坂さんは、上条ちゃんに嫌われたと考えたのではないでしょうか」
「俺に嫌われた?」
「はい、普通いきなりキスされたら怒るでしょう?」
「そうですか?」
「そうです。まあ今回は上条ちゃんが無意識下で御坂さんのことを想っていたから例外ですが」

小萌の言葉で最後の疑問「なぜ急に去って行ったのか」が分かったような気がした。

「嫌われていないか聞いてみたい、でも嫌われてたらどうしよう。こんな葛藤が御坂さんの中であったのだと思います」

ここで、白井にされた質問の意図が分かった。

「嫌うわけないだろバカが…」

上条の一言にそろそろ潮時かと思った小萌は一言だけ告げる。

「上条ちゃん、ここから先は自分で行動してください。先生たちは応援してますから」

上条はこの言葉に決心がつき席を立った。

「代金は払っておきますから、さっさと行けーなのですよ」

ありがとうございましたと、小萌に言って上条は喫茶店を出て行った。

「さて、シスターちゃん、今日は思いっきり泣いていいんですよ?」
「うわぁあああん」

上条と御坂の恋を応援するということは、インデックスが失恋するということである。
インデックスはこの日、思いっきり泣いた。

「まったく、上条ちゃんも困ったものですね」


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

目安箱バナー