とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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ポーカーフェイス



「いやぁー、本当に助かった!!これでまたしばらく生きていけるぜ」
両手に買い物袋を下げて満面の笑みで上条は言った。
「別に卵ぐらいで大袈裟な・・・」
微笑みにドキドキとしながらも溜息混じりに美琴は答える。
「貧乏学生にとっては卵は必需品なんですよ(大食らいも居るしな・・・)」
「?ふ~ん。アンタも大変そうね」

二人はしばらく他愛もない話を続けていると
「ねぇ」
「ん?」
「その・・・卵これからも買う時に手伝ってあげようか?」
「んー、そんな上手い具合に会うか?」
「じゃあ会った時は手伝ってあげる」
別に偶然じゃなくても呼んでくれれば行くんだけど・・・ボソボソと小さく続ける。
「嬉しいけど・・・ごめん。最後の方何て言った?小さくて聞こえなかった」
「別にー。何にも言ってないわよ」
「?」

公園の入り口に差し掛かった所で
「手伝って貰ってばかりじゃなんだから、何か恩返ししたいな」
ふと思いついたかのように上条は言った。
「別に良いわよ。その・・・す、す、好きでやってるわけだし・・・」
「でもなぁ・・・」
「・・・分かったわよ。じゃあジュースで良いわ。もうすぐ自販機あるし」
「金銭的にはありがたいですが・・・卵様とジュースじゃどう考えても割に合わないぞ?」
「何変な所で強調してんのよ。私が良いって言ってるんだから良いのよ」



「で、どれにするんだ?」
「どれって・・・アンタ蹴らないの?それともまた2000円札飲まれたいの?」
「蹴らないし、2000円札入れないし飲まれたくもない!!」
「冗談よ冗談。・・・たまには違うのも良いかもね。じゃあ納豆アロエサイダーで」
「・・・お前本当にそれで良いのか?地雷だとしか思えねぇぞ・・・」
「前に友達が凄い味だって言ってたのよ。ちょっと試してみたい」
「良いけど後悔すんなよな」
そう言って上条はピッとボタンを押し、出てきたジュースを美琴に渡す。
「ほらよ。お姫様ご希望の納豆アロエサイダーでございます」
「うっ・・・あ、ありがと・・・」
思わぬ姫様発言にドキッとする。(ジュースはあれだが)
「せっかくだ。ベンチ座ろうぜ」
「う、うん」
(何だ、もうお姫様は終わりか・・・)
ちょっと残念だけど、まぁコイツの事だから深い意味は無いのよね・・・と溜息をついた。

「うわ・・・凄い味・・・てか飲み物じゃないわよコレ・・・」
一口飲んでガックリと肩を落とす。
「だから言っただろうが。何で変な所でチャレンジ精神溢れてるんだよ・・・」
これはなかなか・・・と言いつつ美琴は二口目を飲む。
「うー・・・これ全部飲むとかなかなかの偉業ね・・・」
「そんなに凄いのか?名前に負けず劣らずって感じだな」
「凄いわよ。二口目にして口の中が納豆とアロエだらけだわ」
「ふーん・・・」
そう言いながら上条は美琴の飲み物を見続ける。
美琴は少し考えると
「何?アンタも飲む?」
イタズラを思いついたような顔で上条に尋ねた。
「え?」
「気になるんでしょ?」
美琴はニヤリと笑うと、
「今なr「良いのか?じゃあ一口くれ」」
美琴が次の言葉を言う前に上条はいつもの笑顔で答えた。


『今なら美琴センセーと間接キスできるわよ』
そう言って美琴は上条が焦る所を見ようと思った。
いつも自分ばかり恥ずかしさから暴走しているので、偶には反撃として上条を照れさせようと思って。
いくら上条が鈍感だからといってもストレートに言えば分かるはずと考えてだ。
しかし鈍感男に分からせる為の一番重要な部分を言う前に見事に計画は粉砕された。


「な、な、な・・・・」
「どうした?一口で良いんだけど」
「あ・・・ぅ・・・にゅ・・・・」
日本語とはほど遠い言語を発しながらも美琴の頭はフル回転。
このまま渡してしまえば上条との(計画外だが)間接キス。
だがそれとは逆に乙女の唇は(間接キスとはいえ)安くないという問題があった。
色々と夢(主に自分と上条との将来設計)見ている美琴にとって
キスと唇の2つは非常に重要な問題だった。

「別に渡したく無いならそれで良いんだけどな・・・」
上条の声が心なしか小さく聞こえる(特に美琴には残念そうに聞こえた)
「っ~~~~~!!!!」
その台詞と表情がトドメとなり前者の勝利。ズバッともの凄い勢いで上条にジュースを突き出す。
「お、おぉ、ありがとう!」
美琴からジュースを受け取ると美琴を一瞥し、グイッと飲んだ。
「ど、どうなのよ。あ、味は・・・」
(見た!確かに見た!コイツが缶に口つけて・・・!!か、か、間接だけどコイツとキ、キスを!!)
「・・・・・・」
上条は缶を見たまま答えない。
「どうしたの?」
(まさかコイツも気づいて・・・?そ、そうよね。いくらコイツが鈍感でも流石に・・・)
「え?あぁ・・・えっとすげぇ味だな、これを全部飲むのか・・・」
何だやっぱり気づいてないか・・・と少しガッカリしつつ美琴の頭の中では先程の光景が繰り返される。
再生されるたびに、自分の顔が更に赤く熱くなっていくのが分かる。
(う、嬉しいけど出来れば間接じゃなくて・・・って何考えてるのよ私!!??)
と美琴が1人脳内で悶えてる間、上条は顔を伏せてずっと缶を見ていた。

美琴は数回深呼吸をし、
「こ、これで味分かったでしょ?か、返しなさいよ」
「・・・これお前飲めるのか?無理すんなよ」
「飲めるわよ」
照れ隠しでぶっきらぼうに言いつつも視線は自然と上条の口元にいく。
そうするとまた先程の光景が蘇ってくる。
(もっと一緒に居たいけどこれ以上意識を保つのはもう無理!!)
自分の限界を感じ美琴は立ち上がる。
「お、お礼も貰ったし門限ももうすぐだから行くわ」
「あぁ。本当に今日はありがとな」上条も立ち上がりながら言う。
「良いわよ。それじゃ、またね!」
また赤くなってきた顔を見られないよう視線を逸らして早口でそう言って、美琴は公園から走り去った。


ポツンと1人残された上条は口元を抑えながら
「・・・味なんて分かるわけ無いだろ・・・」
とても小さな声で呟いた。


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