第四章『水曜日 ~Le Messager~』
(……お姉さま、起きられましたわね…)
ホンのわずかな物音で、御坂美琴のルームメイトである白井黒子は目を覚ます。
その物音は、ホントにわずかなもので、いつもの白井であれば絶対に起きることはない。
しかしここ数日、まともに寝ていない彼女は、そんな物音でさえも眠りを中断させるには十分だった。
目が覚めたといっても、白井はベッドから起き上がったりなどしない。
布団に包まれたまま薄目を開けて、目の前で身支度を整えていく美琴の姿を追っていくだけだ。
その物音は、ホントにわずかなもので、いつもの白井であれば絶対に起きることはない。
しかしここ数日、まともに寝ていない彼女は、そんな物音でさえも眠りを中断させるには十分だった。
目が覚めたといっても、白井はベッドから起き上がったりなどしない。
布団に包まれたまま薄目を開けて、目の前で身支度を整えていく美琴の姿を追っていくだけだ。
(ホント楽しそうですわね……)
美琴は、まだ眠っていると思っている白井を起こさないように、細心の注意を払って着替えをしていた。
そのような姿を見て、普通の人間が楽しいだの疲れているだの判断できるはずがない。
しかし、半年以上寝食を共に過ごしてきた白井には、お姉さまの動き一つでその感情を推し量ることが可能になっていた。
そのような姿を見て、普通の人間が楽しいだの疲れているだの判断できるはずがない。
しかし、半年以上寝食を共に過ごしてきた白井には、お姉さまの動き一つでその感情を推し量ることが可能になっていた。
(お姉さまが、幸せならばそれでもよろしいのですが……)
見苦しくない程度に身支度を整えた美琴を、白井は見送りながら考える。
行先は共同キッチン。目的はお昼のお弁当作り。
行先は共同キッチン。目的はお昼のお弁当作り。
(…くやしいですが、あのお弁当は、あの殿方が食べられますのね)
あくまで白井の想像なのだが、彼女の中では確定事項のようになっている。
過去の白井なら、美琴のそのような行動を許せずにいただろう。今すぐにでも飛び起きて、美琴を止めていたに違いない。
過去の白井なら、美琴のそのような行動を許せずにいただろう。今すぐにでも飛び起きて、美琴を止めていたに違いない。
だが、美琴の幸せそうな姿を見るたびに、嫉妬に似た感情は薄らいでいた。
「お姉さまが幸せなら、あの殿方とお付き合いされてもよろしいのですが」と思えるほどになっている。
「お姉さまが幸せなら、あの殿方とお付き合いされてもよろしいのですが」と思えるほどになっている。
美琴が上条を好きなことは分かっている。すなわち、美琴が自分のことを恋愛対象としてみてくれないということだ。
もし、二人が付き合うようなことになったら、わずかな望みもすべて雲散霧消してしまうだろう。
当然、白井は美琴に手を貸そうなどとは思わなかった。わずかな望みの残る現状のまま過ごしていきたかった。
もし、二人が付き合うようなことになったら、わずかな望みもすべて雲散霧消してしまうだろう。
当然、白井は美琴に手を貸そうなどとは思わなかった。わずかな望みの残る現状のまま過ごしていきたかった。
だから、白井は動けずにいた。
しかし…
「そろそろ動き出さないといけませんかしら…」
白井は体を包んでいた布団を思いっきり投げ飛ばすと、決意したように立ち上がる。
いつの間にか、窓の外は朝日が昇っていた。暗闇に慣れた目には日の光は痛く感じた。
いつの間にか、窓の外は朝日が昇っていた。暗闇に慣れた目には日の光は痛く感じた。
「結果は吉と出ますか、凶と出ますか…」
体験入学三日目。
今まで動かなかった世界は、少しずつ動き始めていていた。
今まで動かなかった世界は、少しずつ動き始めていていた。
目が覚めると、いつものバスタブの中だった。
いつもは起きたときはまだ薄暗かったはず…今日はやけに明るいなあと寝ぼけた頭で思っていると、ハッとしたように勢いよく上体を起こす。
時計代わりにしている携帯電話を見ると、充電切れのようで液晶には何も表示されない。
慌ててユニットバスをでて、手近にある時計を見るとすでに起床予定時刻を三十分も過ぎていた。
いつもは起きたときはまだ薄暗かったはず…今日はやけに明るいなあと寝ぼけた頭で思っていると、ハッとしたように勢いよく上体を起こす。
時計代わりにしている携帯電話を見ると、充電切れのようで液晶には何も表示されない。
慌ててユニットバスをでて、手近にある時計を見るとすでに起床予定時刻を三十分も過ぎていた。
「ち、遅刻だーー!!」
上条の発した声が部屋中に響き渡る。
今週に入ってからの早朝補習だったが、特に問題なく起きられていたので油断してしまったようだ。
超音速で制服に着替えると、鞄を手に取り玄関から駆け出そうとする。
今週に入ってからの早朝補習だったが、特に問題なく起きられていたので油断してしまったようだ。
超音速で制服に着替えると、鞄を手に取り玄関から駆け出そうとする。
が、遮るように白いものが目に入った。
眠い目を擦りながら、立ちはだかったそれは、
眠い目を擦りながら、立ちはだかったそれは、
「とうまーおはよう。お腹が減ったんだよ。」
白い修道服に身を包んだ、インデックスだった。上条の叫び声を聞いて目を覚ましたらしい。
上条は自分の迂闊さを呪った。あの時、叫ばなければ良かったと。
上条は自分の迂闊さを呪った。あの時、叫ばなければ良かったと。
「えーっと、インデックスさん。上条さんは、非常に急いでいるので朝ご飯なしということでは…」
というわけにはいくはずがない。
上条が言い終わるか否かというタイミングで、インデックスの噛みつき攻撃が炸裂する。
上条が言い終わるか否かというタイミングで、インデックスの噛みつき攻撃が炸裂する。
「インデックス!!やめて、マジ死ぬ!!」
「うぐぐぐががぐ(とうまは私を餓死させる気?)」
「うぐぐぐががぐ(とうまは私を餓死させる気?)」
結局、泣く子とインデックスには逆らえませんと、大急ぎで簡単な朝食を用意する。
もちろん、遅刻ギリギリの上条にはそれを食することはあたわず、
「不幸だー」と叫びながら、学生寮の廊下を走ることしかできなかった。
もちろん、遅刻ギリギリの上条にはそれを食することはあたわず、
「不幸だー」と叫びながら、学生寮の廊下を走ることしかできなかった。
上条の起床時間は、高校へ向かうバスの時間にあわせていた。つまり、寝坊をした時点で、そのバスには乗ることは出来ない。
登校時間のピークからずれている、早朝のこの時間にはバスの本数は非常に少ない。
結局、上条は朝食抜きの腹ぺこ状態で高校までの道のりを全力疾走することになる。
登校時間のピークからずれている、早朝のこの時間にはバスの本数は非常に少ない。
結局、上条は朝食抜きの腹ぺこ状態で高校までの道のりを全力疾走することになる。
普段は通学路に散らばる不幸トラップを避けながら行くのだが、
今日のようにギリギリの状態では、そんなことに力を裂いている余裕もなかった。
果たして、道に転がっているボールを踏みバランスを崩した上条は盛大に転倒する。
今日のようにギリギリの状態では、そんなことに力を裂いている余裕もなかった。
果たして、道に転がっているボールを踏みバランスを崩した上条は盛大に転倒する。
「痛っつーやっぱりこういうオチかよ!」
右足をくじいてしまったらしい。歩くたびに激痛が走った。
ただ、不幸中の幸いか、学校まであと少しのところだったので、痛い足を引きづりながら上条は道を急いだ。
ただ、不幸中の幸いか、学校まであと少しのところだったので、痛い足を引きづりながら上条は道を急いだ。
「上条ちゃん。遅いのですよーっ!」
満身創痍、ボロボロになった上条を出迎えてくれるのは、笑顔を湛えた白衣の天使などでは決してなく、
怒りに顔を引き攣らせた、身長一三五センチの化学教師、小萌先生だった。
怒りに顔を引き攣らせた、身長一三五センチの化学教師、小萌先生だった。
「先生。そんなこといわずに、がんばった俺をほめてくださいよ」
上条が学校に着いたのは、補習の開始時間から十分ほど過ぎた辺りだった。
十分程度ならば、終了時間を遅らせばいいだけなのだが、小萌先生としては遅刻してきたということが許せないらしい。
「そんなことでは、社会に出てから苦労するのですーっ」
と、ご高説を賜った。
十分程度ならば、終了時間を遅らせばいいだけなのだが、小萌先生としては遅刻してきたということが許せないらしい。
「そんなことでは、社会に出てから苦労するのですーっ」
と、ご高説を賜った。
時間を無駄に出来ないとばかりに、すぐに補習が始まりあっという間に一時間が過ぎていく。もちろん、十分延長されて。
補習が終わり、机に突っ伏していると小萌先生が、
補習が終わり、机に突っ伏していると小萌先生が、
「上条ちゃんは、今日は遅刻しちゃいましたが、一応がんばっているみたいなので、プレゼントをあげますよー」
「えっ!?まさか大量の宿題とかじゃないですよね?」
と、上条は少し身構えるが、
「違いますよーちゃんとしたものです!」
「あー学生時代にやられて嫌だったことはやらないとかってやつですか?」
「それも違うのです。上条ちゃんに宿題出してもやってこないからですよーっ!」
「それはごもっともで。それで、何なんですか?プレゼントって」
小萌先生は、上条の宿題なんてやる気ありません発言で、少しムッとして表情になるが、
「先生の友人に農家の人がいまして、野菜を送ってくれたんですよーだから上条ちゃんにお裾分けです。
今日、レシピ研究やるらしいじゃないですか?姫神ちゃんから聞きましたよー」
「えーっ!?!?マジですか?」
「えっ!?まさか大量の宿題とかじゃないですよね?」
と、上条は少し身構えるが、
「違いますよーちゃんとしたものです!」
「あー学生時代にやられて嫌だったことはやらないとかってやつですか?」
「それも違うのです。上条ちゃんに宿題出してもやってこないからですよーっ!」
「それはごもっともで。それで、何なんですか?プレゼントって」
小萌先生は、上条の宿題なんてやる気ありません発言で、少しムッとして表情になるが、
「先生の友人に農家の人がいまして、野菜を送ってくれたんですよーだから上条ちゃんにお裾分けです。
今日、レシピ研究やるらしいじゃないですか?姫神ちゃんから聞きましたよー」
「えーっ!?!?マジですか?」
と、上条は小萌先生の意外なオファーに素直に喜んだ。
たかだか野菜という事なかれ。
学園都市は『戦争』が始まって以来、物価上昇が続いている。それは闘いが収束した今も変わらない。
流通に問題があるのか、それとも誰かが値上がりを見越して買い占めているのかわからないが、
物価の上昇は市民生活に、いまだ暗い影を落とし続けていた。
それは学生にしたって例外でなく、いやむしろ仕事をもたず仕送りや奨学金という決まった枠で生活からこそ、
日常生活に与えるダメージは相当大きかった。
たかだか野菜という事なかれ。
学園都市は『戦争』が始まって以来、物価上昇が続いている。それは闘いが収束した今も変わらない。
流通に問題があるのか、それとも誰かが値上がりを見越して買い占めているのかわからないが、
物価の上昇は市民生活に、いまだ暗い影を落とし続けていた。
それは学生にしたって例外でなく、いやむしろ仕事をもたず仕送りや奨学金という決まった枠で生活からこそ、
日常生活に与えるダメージは相当大きかった。
現在あれだけガラガラな学食も、戦争が始まるまでは皆が先を争うほど繁盛していた。
しかし、戦争による物価上昇は自炊派に転向させるほどになっている。
しかし、戦争による物価上昇は自炊派に転向させるほどになっている。
だから、小萌先生のプレゼントは、ただでさえインデックスのおかげでエンゲル係数を押し上げている上条家にとっては、
天からの恵みに相当するほどありがたいものであった。
天からの恵みに相当するほどありがたいものであった。
「先生、本当にありがとうございます。俺には先生が天使のように見えますよ。もう!先生大好き!!」
「そんなに感謝しなくてもいいのですよー。職員室で預かっておくんで、放課後取りに来てくださいねー!」
「そんなに感謝しなくてもいいのですよー。職員室で預かっておくんで、放課後取りに来てくださいねー!」
と、小萌先生はなぜか頬を赤らめながら職員室の方へ消えていった。
あれやこれやで4限目が終了し、お昼休みとなった。
上条にとって、午前中の授業は空腹との闘いであった。特に4限目の体育は地獄と言っても過言ではない。
なにせ、お昼前のもっともおなかが減っているときに、冬の体育の定番とばかりにマラソンをさせられたのだ。
朝、登校のときにくじいてしまった右足は、4限前までには痛みも引いていたのだが、
マラソンを走っている途中に、再度痛み出してしまった。
「先生もう限界です」と足の痛みを訴えたのだが、「限界を超えることが重要じゃん」と言われ走り続けることになった。
上条は足が痛いということを伝えなかったので、単にへばったと誤解されたのだが、そのことにも気付かないほど彼は地獄にいた。
緑色のジャージを着ている女体育教師へ、多くの男子生徒を惑わせるほどのプロポーションの持ち主にもかかわらず、
上条は軽く殺意を覚えるほどだったのだから、そのつらさといったら推して知るべしであろう。
上条にとって、午前中の授業は空腹との闘いであった。特に4限目の体育は地獄と言っても過言ではない。
なにせ、お昼前のもっともおなかが減っているときに、冬の体育の定番とばかりにマラソンをさせられたのだ。
朝、登校のときにくじいてしまった右足は、4限前までには痛みも引いていたのだが、
マラソンを走っている途中に、再度痛み出してしまった。
「先生もう限界です」と足の痛みを訴えたのだが、「限界を超えることが重要じゃん」と言われ走り続けることになった。
上条は足が痛いということを伝えなかったので、単にへばったと誤解されたのだが、そのことにも気付かないほど彼は地獄にいた。
緑色のジャージを着ている女体育教師へ、多くの男子生徒を惑わせるほどのプロポーションの持ち主にもかかわらず、
上条は軽く殺意を覚えるほどだったのだから、そのつらさといったら推して知るべしであろう。
その地獄の体育から解放され、上条は教室に向かう。
教室で着替えを済ませれば、即ち昼休み。空腹を満たす時間となるわけだ。
いつもだったら、超高速で教室に戻って速攻で着替えているのだが、今日は右足に痛みがある。
そんなわけで、無情にもおいてけぼりにした男子クラスメイトを恨みながら、上条は一人教室に向かうのだった。
教室で着替えを済ませれば、即ち昼休み。空腹を満たす時間となるわけだ。
いつもだったら、超高速で教室に戻って速攻で着替えているのだが、今日は右足に痛みがある。
そんなわけで、無情にもおいてけぼりにした男子クラスメイトを恨みながら、上条は一人教室に向かうのだった。
永遠と続く廊下を歩いていると、一人の男子学生が走ってくるのが目に入った。
ぶつからないようにと横に避けるのだが、彼もなぜか上条と同じ方向に避けてくる。「危ない!」と思った瞬間、二人は見事に衝突していた。
このような場合、得てしてぶつけられたほうがダメージが大きい。
上条は右足の怪我も手伝ってバランスを崩すと、目の前にあるドアに飛び込みそうになる。
思わず目をつぶって、ドア激突というさらなる痛みに身構えるのだが、「幸運」にもそのドアが開け放たれた。
衝突は避けられたものの、もちろんバランスを崩した姿勢なので、そのまま中へと突き進む。
そして、保健室にあるような布製のカーテンが張られた衝立に、
ちょうどサッカーボールがゴールネットに絡まるように顔から突っ込み、衝立とともに上条は床に倒れることになった。
ぶつからないようにと横に避けるのだが、彼もなぜか上条と同じ方向に避けてくる。「危ない!」と思った瞬間、二人は見事に衝突していた。
このような場合、得てしてぶつけられたほうがダメージが大きい。
上条は右足の怪我も手伝ってバランスを崩すと、目の前にあるドアに飛び込みそうになる。
思わず目をつぶって、ドア激突というさらなる痛みに身構えるのだが、「幸運」にもそのドアが開け放たれた。
衝突は避けられたものの、もちろんバランスを崩した姿勢なので、そのまま中へと突き進む。
そして、保健室にあるような布製のカーテンが張られた衝立に、
ちょうどサッカーボールがゴールネットに絡まるように顔から突っ込み、衝立とともに上条は床に倒れることになった。
上条は、とりあえず誰かに怪我を負わすことも、自らが負うこともなさそうなので、安心していたのだが、
次の瞬間、鼓膜が破れるかと思えるくらいの悲鳴が、あたりに響き渡った。
次の瞬間、鼓膜が破れるかと思えるくらいの悲鳴が、あたりに響き渡った。
何が起きたのか一瞬分からなかったが、布製のカーテンを押しのけて周りを見ると、上条は自分の目を疑った。
そこには、楽園……もとい、下着姿の女子たちが多数いたのだ。
上条が侵入してしまった場所は、まぎれもなく女子更衣室だ。しかも、現在使っているのは上条のクラスの女子…
次の瞬間彼は悟る。
そこには、楽園……もとい、下着姿の女子たちが多数いたのだ。
上条が侵入してしまった場所は、まぎれもなく女子更衣室だ。しかも、現在使っているのは上条のクラスの女子…
次の瞬間彼は悟る。
(………殺される!!)
悲鳴は鳴りやんだが、今度は物理的排除に攻撃が移行した。つまり、手当たり次第に物を投げられる。
彼女たちのかばんの中から小出しに投げてくればまだいいほう。かばんごと飛んでくることもある。
なぜか更衣室にあった、野球の硬球など様々なものが飛び交っていた。
上条は必死にそれらを弾いて自分に当たらないようにするが、数が数だけに避けきれずに直撃することのほうが多い。
当然のようにこのまま更衣室にとどまっているのは危険と判断し、この場から立ち去ろうとする。
しかし、手当たり次第に投げられた体操服や制服が上条の視界を遮った。
視覚情報を奪われ、さらに衝立の布に足を取られてしまい、上条はバランスを崩してしまった。
彼女たちのかばんの中から小出しに投げてくればまだいいほう。かばんごと飛んでくることもある。
なぜか更衣室にあった、野球の硬球など様々なものが飛び交っていた。
上条は必死にそれらを弾いて自分に当たらないようにするが、数が数だけに避けきれずに直撃することのほうが多い。
当然のようにこのまま更衣室にとどまっているのは危険と判断し、この場から立ち去ろうとする。
しかし、手当たり次第に投げられた体操服や制服が上条の視界を遮った。
視覚情報を奪われ、さらに衝立の布に足を取られてしまい、上条はバランスを崩してしまった。
再度、床との激突を覚悟した上条だったが、いつまでたってもその衝撃は来ない。
その代わり、顔のあたりに妙に柔らかい感触のものが当たった。上条は、それに支えられながら倒れこむ。
先ほどまで、どんな無理ゲーなどと思うほどだった弾幕がピタリと止まる。ついでに空気までもが凍りついたようになった。
上条は顔にまとわりついた体操服やら制服やらをはぎ取ると、恐る恐る顔を上げる。
その代わり、顔のあたりに妙に柔らかい感触のものが当たった。上条は、それに支えられながら倒れこむ。
先ほどまで、どんな無理ゲーなどと思うほどだった弾幕がピタリと止まる。ついでに空気までもが凍りついたようになった。
上条は顔にまとわりついた体操服やら制服やらをはぎ取ると、恐る恐る顔を上げる。
そして見えるのは、
怒りに満ちた表情の姫神の顔だった。
怒りに満ちた表情の姫神の顔だった。
いつもは表情に乏しい姫神だが、月に一度あるかないかの頻度で、誰からも感情がわかる表情をする時がある。
まさに今がそれだった。
そしてその感情は、百パーセント怒りだ。
姫神の表情が、刻一刻とゆがんでいくのが手に取るように分かる。
そしてその感情は、百パーセント怒りだ。
姫神の表情が、刻一刻とゆがんでいくのが手に取るように分かる。
上条は現在の状態を再確認した。
彼は姫神の上に圧し掛かり、顔は彼女の胸に埋める形になっている。
しかも、姫神は着替えの途中。つまりは下着姿である。
彼は姫神の上に圧し掛かり、顔は彼女の胸に埋める形になっている。
しかも、姫神は着替えの途中。つまりは下着姿である。
これは相当な制裁が来るだろうな、などと覚悟を決めていると、思わぬ方向から攻撃がやってきた。
「ア、アンタ、なにやってんのよ!!」
その聞きなれた声の主は御坂美琴だった。上条は思わず声のする方向に振り向く。
彼女は着替える前であったのだろう、つまり体操服姿のまま更衣室のドアのところに、怒りに満ちた表情で立っていた。
彼女の周りには青白い光がまとわりついている。
思わず上条は叫ぶ。
彼女は着替える前であったのだろう、つまり体操服姿のまま更衣室のドアのところに、怒りに満ちた表情で立っていた。
彼女の周りには青白い光がまとわりついている。
思わず上条は叫ぶ。
「御坂!今ここでビリビリはマズイ!!」
この更衣室には、上条のクラスの女子がいる。しかも、狙われるはずの上条の下には姫神がいた。
もし、上条に向けて電撃を放ったとしたら、間違えなく姫神も巻き添えを喰らう。
上条はとっさに左腕に力を込めて、なるべく人のいない方向へ床を転げまわる。
そして、右手を突き出した。
刹那、電撃の槍が上条目がけて放たれる。その槍は上条の右手に触れた瞬間に打ち消された。
もし、上条に向けて電撃を放ったとしたら、間違えなく姫神も巻き添えを喰らう。
上条はとっさに左腕に力を込めて、なるべく人のいない方向へ床を転げまわる。
そして、右手を突き出した。
刹那、電撃の槍が上条目がけて放たれる。その槍は上条の右手に触れた瞬間に打ち消された。
上条は周りを見渡す。
クラスメイト達は何が起こったの分からないといった風にポカンとした表情をしていたが、誰も怪我などをすることなく無事だったようだ。
「ふぅ~」っと上条は安堵のため息をつくが……
とっても重要なことを思い出してしまう。それは、周りのクラスメイトも同じだったようで、
「出てけーーーー!」
と一斉に怒りに満ちた声を上条に投げかけるのだった。
クラスメイト達は何が起こったの分からないといった風にポカンとした表情をしていたが、誰も怪我などをすることなく無事だったようだ。
「ふぅ~」っと上条は安堵のため息をつくが……
とっても重要なことを思い出してしまう。それは、周りのクラスメイトも同じだったようで、
「出てけーーーー!」
と一斉に怒りに満ちた声を上条に投げかけるのだった。
上条は可及的速やかに、怪我をしている右足をかばいながら、四つん這いの状態でその場から立ち去ろうとする。
更衣室から出て立ち上がると、
「不幸だーー!!」
と叫びながら、片足ケンケンで教室へ去っていった。
更衣室から出て立ち上がると、
「不幸だーー!!」
と叫びながら、片足ケンケンで教室へ去っていった。
御坂美琴は肩を落としながら、廊下をトボトボと教室に向かって歩いていた。
北側に面した廊下は、日の光が入ることもなく昼間だというのに薄暗い。
それが美琴のここに追い打ちを掛けるように、彼女の心をさらにネガティブなものに変えていく。
北側に面した廊下は、日の光が入ることもなく昼間だというのに薄暗い。
それが美琴のここに追い打ちを掛けるように、彼女の心をさらにネガティブなものに変えていく。
体育のマラソンで喉がカラカラだった美琴は、クラスメイト達から抜けて一人水飲み場で乾きを潤してから着替えに向かった。
女子更衣室に近づくと、なにやら騒がしい。どうしたものかと中にに入ってみると、そこにいるはずのない人物を見つけてしまった。
上条当麻。美琴の想いの人が更衣室の中で下着姿の女子と抱き合っている。その女子生徒は姫神秋沙だった。
その光景を目の当たりにして美琴は我を忘れて、上条に向けて電撃を放っていた。
女子更衣室に近づくと、なにやら騒がしい。どうしたものかと中にに入ってみると、そこにいるはずのない人物を見つけてしまった。
上条当麻。美琴の想いの人が更衣室の中で下着姿の女子と抱き合っている。その女子生徒は姫神秋沙だった。
その光景を目の当たりにして美琴は我を忘れて、上条に向けて電撃を放っていた。
正気に戻った美琴は後悔していた。なぜ電撃を放ってしまったのかと。
もし、その場に上条しかいなければ問題はない。彼は美琴の電撃を打ち消せるから。
しかし、姫神やその他のクラスメイトがいる中で放てば別問題だ。
狙いがはずれてクラスメイトに直撃していたら、大惨事になっていた。
上条が打ち消したとしても、彼が抱きついていた姫神に被害がいかないとは限らない。
もし、その場に上条しかいなければ問題はない。彼は美琴の電撃を打ち消せるから。
しかし、姫神やその他のクラスメイトがいる中で放てば別問題だ。
狙いがはずれてクラスメイトに直撃していたら、大惨事になっていた。
上条が打ち消したとしても、彼が抱きついていた姫神に被害がいかないとは限らない。
普段の美琴だったら、電撃を放つことはしなかったはずだ。
ならば、なぜ電撃を放ったのか?美琴は考える。
ならば、なぜ電撃を放ったのか?美琴は考える。
上条が他の女子の下着姿を見ていたから?誰かと抱きついていたから?
いや、違う。
大覇星祭のとき銀髪碧眼のシスターに抱きついていたのを見たときでも、きちんと手加減していた。
それを証拠に、電撃を食らった彼は多少痙攣をしただけだった。
いや、違う。
大覇星祭のとき銀髪碧眼のシスターに抱きついていたのを見たときでも、きちんと手加減していた。
それを証拠に、電撃を食らった彼は多少痙攣をしただけだった。
抱きついていた相手が姫神だったから?
美琴にとって彼女は目下のところ最大のライバルだ。
ならば、美琴が怒りにまかせて電撃を放ったとしても不思議ではない。
美琴にとって彼女は目下のところ最大のライバルだ。
ならば、美琴が怒りにまかせて電撃を放ったとしても不思議ではない。
でも……
そこまで考えて美琴の頭に、一つの理由が思い浮かぶ。
それはあまりにも唐突に、まるで天から何かが舞い降りたようだった。
そこまで考えて美琴の頭に、一つの理由が思い浮かぶ。
それはあまりにも唐突に、まるで天から何かが舞い降りたようだった。
(……私、アイツに抱かれたかった?)
美琴は顔を真っ赤にしながら、首をブンブンと横に振る。それでも、その考えは捨て去ることが叶わない。
(ち、違う。そんなことない)
頭の上から湯気でも立ち上りそうな美琴は、必死になって否定する。
なのに、彼に優しく抱きしめられる想像が消えることはなかった。
(ち、違う。そんなことない)
頭の上から湯気でも立ち上りそうな美琴は、必死になって否定する。
なのに、彼に優しく抱きしめられる想像が消えることはなかった。
「そ、そう。あれは、単なる嫉妬。それだけよ…」
ついには声に出してまで否定していた。
教室に入ると、空気はすでにランチタイムのものとなっていた。
上条と姫神が二人で話をしていたので、「レシピ研究」に参加している美琴はそこに向かう。
美琴の姿を認めた上条が声を掛けた。
上条と姫神が二人で話をしていたので、「レシピ研究」に参加している美琴はそこに向かう。
美琴の姿を認めた上条が声を掛けた。
「おう、御坂。学食行くか?って、お前、顔が真っ赤だぞ。大丈夫か?」
美琴は先ほどまでの想像の所為で、上条の事を正視できずにいた。
それでも、恥ずかしくて恥ずかしくて、顔を真っ赤にしてしまう。
「…………」
言葉すら発することも出来なかった。
それでも、恥ずかしくて恥ずかしくて、顔を真っ赤にしてしまう。
「…………」
言葉すら発することも出来なかった。
「御坂、大丈夫か?保健室いった方が…」
「だ、大丈夫よ!!マラソンの所為で血行が良くなったんでしょ」
「だ、大丈夫よ!!マラソンの所為で血行が良くなったんでしょ」
上条の心配そうな声を遮るように、美琴は何とか言葉を発することが出来た。
「それならいいけど…
で、レシピ研究どうする?って言っても、今日は寝坊して俺、学食しか選択しないんけどな」
「上条君。私のお弁当食べる?今日は多めに作ってきたから。」
で、レシピ研究どうする?って言っても、今日は寝坊して俺、学食しか選択しないんけどな」
「上条君。私のお弁当食べる?今日は多めに作ってきたから。」
姫神が無表情のまま、顔を赤らめて上条に言う。
さっき抱きつかれたからなのか、お弁当のことでなのか分からなかったが、どちらにしても美琴には気にくわなかった。
しかし、それよりも美琴は今の心理状態で上条と一緒にご飯を食べること避けたかった。
さっき抱きつかれたからなのか、お弁当のことでなのか分からなかったが、どちらにしても美琴には気にくわなかった。
しかし、それよりも美琴は今の心理状態で上条と一緒にご飯を食べること避けたかった。
「アンタと一緒にいると何されるか分かったモンじゃないわ。
今日は、私は姫神さんと二人で食べるから。アンタは、一人で学食へ行ってきなさい!」
今日は、私は姫神さんと二人で食べるから。アンタは、一人で学食へ行ってきなさい!」
その言葉を受けて、姫神は美琴の方を見る。おそらく睨んでいるのだろう。
「お前が一人で食べろ」とでも言いたそうに感じた。
それでも、美琴はこの二人を一緒に行かせたくはなかった。最低限、自分が体験入学としてここに通っている間だけは。
「お前が一人で食べろ」とでも言いたそうに感じた。
それでも、美琴はこの二人を一緒に行かせたくはなかった。最低限、自分が体験入学としてここに通っている間だけは。
「あーわかったよ。上条さんは一人寂しくお昼食べてきますよっと」
と、不服そうに立ち上がる。美琴はすばやく財布から一枚のカードを取り出すと、
「ち、ちょっと待って。これアンタにあげる」
と、それを手渡した。
そのカードはマネーカードだ。残高はあまり残っていないが、学食程度なら食べられるはず。
姫神のお弁当を、自分のせいで諦めさせたのだ。少しばかりの罪滅ぼしのつもりだった。
そのカードはマネーカードだ。残高はあまり残っていないが、学食程度なら食べられるはず。
姫神のお弁当を、自分のせいで諦めさせたのだ。少しばかりの罪滅ぼしのつもりだった。
「おぉ~マジですか?マジ感謝ですよ」
上条は美琴の手を取り、感謝の意を表すがごとく大げさに上下に振った。
「べ、別に余ってたからあげるだけだから!そんな端数、学舎の園じゃ何も買えないし」
手を握られたことでさらに顔を赤らめた美琴は、恥ずかしさを紛らわすためにいつものように素直じゃない言葉を吐いていた。
「ごめんなさい!!」
お弁当を食べる前に、美琴は姫神に謝る。
美琴は謝るべき事がたくさんある。
電撃を放ってしまったこと、上条とのご飯の時間を奪ってしまったこと……
いくら我を忘れていたとはいえ、相手がライバルだとはいえ、許されることではないと思った。
しかし、
お弁当を食べる前に、美琴は姫神に謝る。
美琴は謝るべき事がたくさんある。
電撃を放ってしまったこと、上条とのご飯の時間を奪ってしまったこと……
いくら我を忘れていたとはいえ、相手がライバルだとはいえ、許されることではないと思った。
しかし、
「別に。構わない。電撃は怖かったけれど。
それに。上条君抜きで。あなたと話してみたかったところだったし。」
それに。上条君抜きで。あなたと話してみたかったところだったし。」
姫神は特に責めるようなこともなく、いつもと変わらなく口調だった。
「あと。今日は上条君の家に行くんでしょ?
あんな真っ赤な顔で恥ずかしがっていて。大丈夫?」
「それは……」
あんな真っ赤な顔で恥ずかしがっていて。大丈夫?」
「それは……」
姫神の続けた言葉に、美琴は驚いた表情のまま固まってしまう。なぜなら、姫神が自分の心の中を読んでいたからだ。
あのシチュエーションならば、女子更衣室に侵入した上条に怒っていると考えるのが普通だ。
そういえば、美琴は彼女の能力を知らない。もしかしたら読心能力者なのかと思ったのだが、
「私は読心能力者じゃない。あなたは。表情がわかりやすすぎるよ」
と、またしても、心を読まれてしまった。そして、
「あなたが上条君の事好きなの。すぐに分かるくらいに。」
姫神に、今一番触れられたくないところを、それも直球で指摘され、
美琴は少しは引いていたはずの顔の熱さが、また戻ってきたのを感じる。
あのシチュエーションならば、女子更衣室に侵入した上条に怒っていると考えるのが普通だ。
そういえば、美琴は彼女の能力を知らない。もしかしたら読心能力者なのかと思ったのだが、
「私は読心能力者じゃない。あなたは。表情がわかりやすすぎるよ」
と、またしても、心を読まれてしまった。そして、
「あなたが上条君の事好きなの。すぐに分かるくらいに。」
姫神に、今一番触れられたくないところを、それも直球で指摘され、
美琴は少しは引いていたはずの顔の熱さが、また戻ってきたのを感じる。
いよいよ、言葉を次の言葉を発することが出来ずに沈黙していたら、後ろから声を掛けられた。
「あ!姫神さん。珍しい!お昼に教室にいるなんて」
「もしかして、さっきので上条君とケンカした?ってなわけないか」
「もしかして、さっきので上条君とケンカした?ってなわけないか」
振り返るとそこにいたのは、昨日話しかけてきた発電能力者とその友達だった。
美琴には分からなかったが、さっきのは冗談だったのだろう。二人はクスクスと笑っていた。
美琴には分からなかったが、さっきのは冗談だったのだろう。二人はクスクスと笑っていた。
「なんで、ケンカしてないって分かるの?」
話の軌道が変わったことで、呪縛から解き放たれた美琴は、疑問を投げかけてみた。
「そりゃねー」
「ねー。あんなの日常茶飯事だから」
「そういうこと。いちいち目くじらたててたら。上条君のクラスメイトなんてやってられないわよ」
「ま、見られるのは嫌だから、制裁は加えるけどね~」
「ねー。あんなの日常茶飯事だから」
「そういうこと。いちいち目くじらたててたら。上条君のクラスメイトなんてやってられないわよ」
「ま、見られるのは嫌だから、制裁は加えるけどね~」
美琴は、驚きのあまりまたしても言葉を失ってしまった。
さっきの更衣室のようなことを日常茶飯事で片付けられるほどの頻度で行っているのだ。故意以外考えられない。
自分の好きな人は、単なる変態なのかと思っていると、
さっきの更衣室のようなことを日常茶飯事で片付けられるほどの頻度で行っているのだ。故意以外考えられない。
自分の好きな人は、単なる変態なのかと思っていると、
「上条君のあれは。全部偶然。単なる事故よ」
「そうそう。今日のも誰かにぶつかったみたいだし」
「上条君、足怪我してたらしいしね」
「そうそう。今日のも誰かにぶつかったみたいだし」
「上条君、足怪我してたらしいしね」
と、三人がフォローを入れてきた。
事故だと分かっているから、許せるのかもしれない。ただし、過失分の制裁は加えるようだが。
事故だと分かっているから、許せるのかもしれない。ただし、過失分の制裁は加えるようだが。
「御坂さんは、抱きつかれたり、下着見られたりしたことないの?」
考えてみれば、美琴にはそういう出来事の記憶がない。
(えーっと膝枕は…あれは、私がしたんだよね…)
クラスメイトほど近しい距離にいないのが原因なのかと思ってしまう。
(そもそも、アイツの前で着替えることないし…)
クラスメイト以外なら一番近い距離にいると思っていたが、勘違いだったのかと考えてしまう。
ああいうイベントがあるというのが上条との距離を表しているのではないはずなのだが、美琴は多少盲目気味になっているのかもしれない。
必死に考えていると、一つだけ思いついた。それは、大覇星祭の玉入れのときのことだった。
(えーっと膝枕は…あれは、私がしたんだよね…)
クラスメイトほど近しい距離にいないのが原因なのかと思ってしまう。
(そもそも、アイツの前で着替えることないし…)
クラスメイト以外なら一番近い距離にいると思っていたが、勘違いだったのかと考えてしまう。
ああいうイベントがあるというのが上条との距離を表しているのではないはずなのだが、美琴は多少盲目気味になっているのかもしれない。
必死に考えていると、一つだけ思いついた。それは、大覇星祭の玉入れのときのことだった。
「アイツに押し倒されたことがあるわ。『黙ってろ。ちょっと動くな』って言われて」
それを口にした瞬間、まるで、この空間だけ時間の流れが止まったように、三人の表情が固まる。
予想外のことに、美琴は慌てて、
予想外のことに、美琴は慌てて、
「え?え?どうしたの三人とも」
その言葉を聞いて、発電能力者の子が思い出したように口を開いた。
「み、御坂さん。そ、それって、偶然じゃないことない?」
「わ、私たちのは完璧な『偶然』よ。着替えてたら入ってこられたり、つまずいて抱きつかれたり…」
「…………」
「わ、私たちのは完璧な『偶然』よ。着替えてたら入ってこられたり、つまずいて抱きつかれたり…」
「…………」
二人は口々に言い合っている。一方、姫神は言葉を失ったまま固まっていた。
そして、姫神は思い出したようにボソリと、
「……私。上条君にブラのホック外された。」
と、小さな声でつぶやいた。
そして、姫神は思い出したようにボソリと、
「……私。上条君にブラのホック外された。」
と、小さな声でつぶやいた。
それを聞いた二人は、詳しく教えろと姫神に詰め寄るが、「内緒」の一言で躱される。
最後に、
「あー私たちには望みなしか…」
「上条争奪戦は、姫神さんと御坂さんで決まりかな…」
と言って、自分たちの席に戻っていった。
最後に、
「あー私たちには望みなしか…」
「上条争奪戦は、姫神さんと御坂さんで決まりかな…」
と言って、自分たちの席に戻っていった。