海に行こう☆
翌日、常盤台中学の授業が終わった美琴は番外個体に連絡を取り、10032号、19090号、10039号と順番に街へ連れ出す。
早く買い物に行きたかった三人はジャンケンで順番を決める事にし、
5分にも及ぶ死闘(ミサカネットワークで相手の出す手が分かり全部あいこ)の末、
賭け(ミサカネットワークから離脱)に出た10039号がいち早く負け、次いで19090号が負けてしまったのでこの順番となる。
そして現在、美琴と10032号は『セブンスミスト』の店内に来ていた。
早く買い物に行きたかった三人はジャンケンで順番を決める事にし、
5分にも及ぶ死闘(ミサカネットワークで相手の出す手が分かり全部あいこ)の末、
賭け(ミサカネットワークから離脱)に出た10039号がいち早く負け、次いで19090号が負けてしまったのでこの順番となる。
そして現在、美琴と10032号は『セブンスミスト』の店内に来ていた。
服店『セブンスミスト』
学生が多く、美琴も度々訪れるこの場所は、今まで妹達と行動した場所よりも知り合いに会う可能性が高い。
だが、品揃えという面から考えると他に良い店が思い浮かばなかった美琴はここを選ぶ。
昨晩あんな事を考えていた彼女だが『堂々としてりゃ問題なし!知り合いに見られても一人くらいなら適当に誤魔化しちゃえば良いのよ』と妹達に言い、
妹達の方は『そういう問題なのだろうか』と悩んでいたようだが、結局美琴と買い物という誘惑に負けた。
その結果、常盤台の制服を着た二人が堂々と服選びをするという状況となっている。
学生が多く、美琴も度々訪れるこの場所は、今まで妹達と行動した場所よりも知り合いに会う可能性が高い。
だが、品揃えという面から考えると他に良い店が思い浮かばなかった美琴はここを選ぶ。
昨晩あんな事を考えていた彼女だが『堂々としてりゃ問題なし!知り合いに見られても一人くらいなら適当に誤魔化しちゃえば良いのよ』と妹達に言い、
妹達の方は『そういう問題なのだろうか』と悩んでいたようだが、結局美琴と買い物という誘惑に負けた。
その結果、常盤台の制服を着た二人が堂々と服選びをするという状況となっている。
「ん~と、海に行くならこういうのなんかどうかな?」
と美琴が差し出したのは水玉模様のワンピースだった。
それを見た御坂妹は服を物色していた手をピタリと止めると、
それを見た御坂妹は服を物色していた手をピタリと止めると、
「いえ、そのようなお子様センス全開の服はお姉様が着るべきでしょう、とミサカは相変わらずのセンスに愕然とします」
「…なんでよぅ…こんなに可愛いのに…」
「…なんでよぅ…こんなに可愛いのに…」
バッサリと切り捨てられた美琴は少し落ち込む。しかし、持っていた服を戻すと、気を取り直して次の服を妹に勧める。
『じゃあこれは?』とニコニコしながら次々繰り出されるアレな服に本気で頭を痛める御坂妹だったが、結局美琴が選んだ物の中で一番まともだった服を買うことにした。
黒のロゴ入りタンクトップに花柄のプリーツスカート、そして、チェック柄のノースリーブシャツを羽織るという美琴が選んだにしては割と普通の服装だ。
御坂妹は『海に着ていくには勿体ないのでは?』と思っていたのだが、自分の為にあれこれ考えてくれた事もあり、満足げな表情を浮かべている。
他にも替えのTシャツやら海で羽織るパーカー等を纏めて買うことにしたのだが、レジに行く途中美琴に呼び止められた。
『じゃあこれは?』とニコニコしながら次々繰り出されるアレな服に本気で頭を痛める御坂妹だったが、結局美琴が選んだ物の中で一番まともだった服を買うことにした。
黒のロゴ入りタンクトップに花柄のプリーツスカート、そして、チェック柄のノースリーブシャツを羽織るという美琴が選んだにしては割と普通の服装だ。
御坂妹は『海に着ていくには勿体ないのでは?』と思っていたのだが、自分の為にあれこれ考えてくれた事もあり、満足げな表情を浮かべている。
他にも替えのTシャツやら海で羽織るパーカー等を纏めて買うことにしたのだが、レジに行く途中美琴に呼び止められた。
「待った待った、お金は私が出すわ。あんた達にはいつも世話になってるからね」
「いえ、ミサカの着る物ですからミサカが出すのは当たり前です、とミサカはお姉様の申し出を断ります」
「いいからいいから、これは私からのプレゼントって事で」
「いえ、ミサカの着る物ですからミサカが出すのは当たり前です、とミサカはお姉様の申し出を断ります」
「いいからいいから、これは私からのプレゼントって事で」
そう言うと御坂妹と共にレジに向かう。その途中も何度か断る御坂妹だったが、美琴の頑なな態度に折れ、その好意に甘えることにした。
そして『ありがとうございます』とお礼を述べた御坂妹は店を後にすると、外で19090号と入れ替わる。
19090号は真っ直ぐ美琴の元へ行き、今度は先程と違う店で服を見ることにした。
だが、美琴は知らない。この時、妹達の命を受けた10039号が別のフロアで作戦行動を取っていた事に。
そして『ありがとうございます』とお礼を述べた御坂妹は店を後にすると、外で19090号と入れ替わる。
19090号は真っ直ぐ美琴の元へ行き、今度は先程と違う店で服を見ることにした。
だが、美琴は知らない。この時、妹達の命を受けた10039号が別のフロアで作戦行動を取っていた事に。
「あんたはあんまり露出の多い服は駄目っぽいからこんなのはどう?」
美琴が差し出したのは、フリルの付いた薄いピンク色のワンピースだ。袖口と襟元は黒のラインが入り、丈の長さは膝まである。
19090号の性格を考慮した為か、10039号の服装に比べると、肌の露出度は低い。
早速試着をした19090号が試着室から出てくると、美琴の表情がパァァっと輝いた。
19090号の性格を考慮した為か、10039号の服装に比べると、肌の露出度は低い。
早速試着をした19090号が試着室から出てくると、美琴の表情がパァァっと輝いた。
「か、可愛い~!!ねえねえ!もうそれで良いわよね!」
顔の横で両手を組んだ美琴はあまりの可愛さ(美琴視点)に目を輝かせたまま19090号に近づく。
19090号は普段の態度からは想像もつかない姉の姿に若干顔を引きつらせながらも言葉を返す。
19090号は普段の態度からは想像もつかない姉の姿に若干顔を引きつらせながらも言葉を返す。
「で、ではお姉様がミサカに選んでくれた物ですのでこれにしましょう、とミサカは少々引きながらも即決して従順な姿勢をアピールしてみます」
「うんうん!そうよね!えっ~と、他にもあんたに似合いそうなのは~」
19090号の態度に気を良くした美琴は鼻歌混じりに次々と服を試着させ、19090号はもはや着せ替え人形状態になっている。
既に十数着試着した19090号はうんざりしていたが、笑顔で服を選ぶ美琴の為にせっせと着替える、着替える、また着替える。
美琴の方はというと、鏡を見ているかのような感覚に陥り、『ん~ちょっと色が強いかな』だの『流石に子供っぽすぎるか』
などと呟いている。その光景は19090号の服を選んでいると言うより自分が着る服を選んでいるように見えた。
その後、更に数着試着させられた19090号は既に疲れ果てている。
そして、着せ替えを終え、終始ご機嫌だった美琴に服を買ってもらった彼女は、ミッションを終えて店の外で待機していた10039号と交代する。
「うんうん!そうよね!えっ~と、他にもあんたに似合いそうなのは~」
19090号の態度に気を良くした美琴は鼻歌混じりに次々と服を試着させ、19090号はもはや着せ替え人形状態になっている。
既に十数着試着した19090号はうんざりしていたが、笑顔で服を選ぶ美琴の為にせっせと着替える、着替える、また着替える。
美琴の方はというと、鏡を見ているかのような感覚に陥り、『ん~ちょっと色が強いかな』だの『流石に子供っぽすぎるか』
などと呟いている。その光景は19090号の服を選んでいると言うより自分が着る服を選んでいるように見えた。
その後、更に数着試着させられた19090号は既に疲れ果てている。
そして、着せ替えを終え、終始ご機嫌だった美琴に服を買ってもらった彼女は、ミッションを終えて店の外で待機していた10039号と交代する。
「お待たせいたしました、お姉様お待ちかねのミサカです、とミサカは偉そうに登場してみます」
「…最後がよりにもよってあんたとはね…不幸だわ」
「…最後がよりにもよってあんたとはね…不幸だわ」
うわ、厄介なのが来た!と言わんばかりの顔をした美琴は当麻の口癖を真似する。
それを聞いた10039号のふんぞり返ったような顔は一瞬でしょぼくれたものとなる。
それを聞いた10039号のふんぞり返ったような顔は一瞬でしょぼくれたものとなる。
「何気に酷いですね、とミサカはお姉様の対応に愕然とします」
「冗談よ。あんたにもちゃんと買ってあげるから早速選びに行こ!」
「冗談よ。あんたにもちゃんと買ってあげるから早速選びに行こ!」
ケラケラと笑いながら10039号の手を取った美琴は、まだ少しだけしょんぼりしている彼女と共に店内を物色する。
少し歩いていると、ふとその足が止まる。美琴が何か見つけたようだ。
少し歩いていると、ふとその足が止まる。美琴が何か見つけたようだ。
「ねぇ、あんたにはああいうのが似合いそうなんだけど」
美琴が指を差した先にはライトブルーのTシャツにショートパンツを身に付けたマネキンが立っていた。
「ふむふむ、確かにあの格好は動きやすそうですね、とミサカはマネキンの服装を冷静に分析します。
何故アレが良いと思ったのですか?とミサカは意外な結果に驚きつつも問いかけます」
何故アレが良いと思ったのですか?とミサカは意外な結果に驚きつつも問いかけます」
10039号は先の二人とのやり取りを知っていた為、きっと自分にも子供っぽいものを勧めてくると思っていた。
その予想に反してごく普通の服装を勧めてきた美琴に疑問を抱いた10039号は首を傾げながらあの服装を勧めてきた理由を尋ねる。
すると、美琴は10039号とマネキンを交互に見ながら、
その予想に反してごく普通の服装を勧めてきた美琴に疑問を抱いた10039号は首を傾げながらあの服装を勧めてきた理由を尋ねる。
すると、美琴は10039号とマネキンを交互に見ながら、
「ん~、なんとなく…かな?」
「そうですか。ではアレにします、とミサカは間髪いれずに即決します」
「そうですか。ではアレにします、とミサカは間髪いれずに即決します」
どうしてこれが良いと思ったのか自分でも分からないといった表情をする美琴。
それに対し10039号は即決すると、颯爽とマネキンから服を脱がそうと試みるが、結局諦めて店員を呼ぶ事にした。
それに対し10039号は即決すると、颯爽とマネキンから服を脱がそうと試みるが、結局諦めて店員を呼ぶ事にした。
「ちょ!そんなに簡単に決めちゃっていいの!?」
まだ一着目、しかも試着すらしない内から購入決定という暴挙をやらかした10039号に驚きを隠せない美琴。
だが、10039号は何か問題があるのかといった様子で美琴に言葉を返す。
だが、10039号は何か問題があるのかといった様子で美琴に言葉を返す。
「はい、お姉様がミサカに似合うだろうと直感的に感じたようなのでこれがいいです、とミサカは返答します」
「で、でも他にも服はあるしもっと良く見てからでも…」
「いいえ、これがいいです。これの他にどんなものを見ようと今日はこれ以上のものは見つかりません、とミサカはもう買うと決めた事を伝えます」
「ん~…あんたがそれで良いならいいけど…でも折角だしもう少し見て回らない?」
「で、でも他にも服はあるしもっと良く見てからでも…」
「いいえ、これがいいです。これの他にどんなものを見ようと今日はこれ以上のものは見つかりません、とミサカはもう買うと決めた事を伝えます」
「ん~…あんたがそれで良いならいいけど…でも折角だしもう少し見て回らない?」
こんなに早く買い物が終わってしまうのは美琴としては面白くない。
なので、先程の服は買うのだが、買い物を続けるべく10039号に提案する。
10039号も美琴の提案を受け入れ、彼女に買ってもらった服の入った紙袋を肩に掛けると、再び店内を並んで歩き出す。
…その後、10039号が美琴センスの服を『また』着せられる事になったのは言うまでもない。
なので、先程の服は買うのだが、買い物を続けるべく10039号に提案する。
10039号も美琴の提案を受け入れ、彼女に買ってもらった服の入った紙袋を肩に掛けると、再び店内を並んで歩き出す。
…その後、10039号が美琴センスの服を『また』着せられる事になったのは言うまでもない。
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計画の前夜。
当麻と美琴の授業が終わり、公園で待ち合わせをした3人は明日必要な物の買い物を済ませ、当麻の部屋に来ていた。
そして、夕飯を済ませると、早速海に行く為の準備を始める。
当麻と美琴の授業が終わり、公園で待ち合わせをした3人は明日必要な物の買い物を済ませ、当麻の部屋に来ていた。
そして、夕飯を済ませると、早速海に行く為の準備を始める。
「へぇ、あんたは意外とまともね」
「当然です。あのミサカ(10039号)とは基礎スペックが段違いなのです、とミサカは己の性能の高さをアピールします」
「当然です。あのミサカ(10039号)とは基礎スペックが段違いなのです、とミサカは己の性能の高さをアピールします」
バーベキューの食材を切っていた美琴は『トントントントン』っと隣で軽快な包丁捌きを見せる御坂妹に驚く。
以前10039号の惨劇を見てしまったとしては御坂妹の動きは意外だったようだ。
実際には『男性的に料理できた方が良い』という何処からか仕入れた知識に基づき、陰の努力があったりするのだが、
その事については全く触れずに淡々と作業を続ける御坂妹。そして、
以前10039号の惨劇を見てしまったとしては御坂妹の動きは意外だったようだ。
実際には『男性的に料理できた方が良い』という何処からか仕入れた知識に基づき、陰の努力があったりするのだが、
その事については全く触れずに淡々と作業を続ける御坂妹。そして、
「さて、これで食材の準備は終わりですね、とミサカはミッション終了を宣言します」
「おお…上条さん家の冷蔵庫がいっぱいになる日が来るなんて…夢にも思わなかった…」
「おお…上条さん家の冷蔵庫がいっぱいになる日が来るなんて…夢にも思わなかった…」
冷蔵庫に食材を入れ終えた御坂妹は両手を腰に当てて一息つく。
それを横から見た当麻はその光景に思わずそう声を漏らしてしまう。すると、
それを横から見た当麻はその光景に思わずそう声を漏らしてしまう。すると、
「アンタ…どう考えても感動するポイントがおかしいわよ…」
「ふむ、ではお義兄様に冷蔵庫をいっぱいにする方法を教えましょう、とミサカはちょっと面白い事を思いついたので口にします」
「ふむ、ではお義兄様に冷蔵庫をいっぱいにする方法を教えましょう、とミサカはちょっと面白い事を思いついたので口にします」
呆れ顔で当麻に突っ込む美琴だが、御坂妹の発言を聞いて彼女を見ると、その顔がニヤついている事に気づく。
(…コイツ…何か嫌な予感がする…)
妹達がこの顔をする時は大抵自分達絡みだ。
このまま放っておくと危険だと思うが、少し気になった美琴は黙って言葉を待つ。すると…
このまま放っておくと危険だと思うが、少し気になった美琴は黙って言葉を待つ。すると…
「お義兄様とお姉様が結こモゴモゴ…」「ストーップ!!何言う気だアンタは―――!!」
御坂妹の言葉を最後まで聞かずともその先を理解してしまった美琴は瞬時に彼女の後ろからその口を手で塞ぐ。
その顔は既に真っ赤になっている。
その顔は既に真っ赤になっている。
「ア、アンタねぇ!からかうにしても限度って物があんでしょうが!」
「モゴモゴ…モゴ…」
「けっ?何だそりゃ?」
「モゴモゴ…モゴ…」
「けっ?何だそりゃ?」
途中で美琴に遮られてしまった為、当麻には何がなんだか分からず、後に続く言葉を考えている。
そんな彼の方に真っ赤な顔を向けた美琴は、
そんな彼の方に真っ赤な顔を向けた美琴は、
「何でもない!当麻は今の忘れなさい!!」
その剣幕に当麻が思わずたじろぐ。
「な、何真っ赤になって怒ってんだよ?」
「う、うっさい!ちょっと当麻は黙ってて!」
「…んむ……ぅ…」
「う、うっさい!ちょっと当麻は黙ってて!」
「…んむ……ぅ…」
そう、悪いのは全て馬鹿妹だ、コイツが当麻と結婚すればなんて言おうとするから…。
しかも二人程度で冷蔵庫がいっぱいになる筈がない。とすればその後に続く言葉は…
しかも二人程度で冷蔵庫がいっぱいになる筈がない。とすればその後に続く言葉は…
(うぁぁああ!!ダメダメ!考えちゃダメ!それこそコイツの思う壺じゃない!)
ぶんぶんと顔を左右に振る美琴。
と、そこに当麻の焦った声が美琴に掛けられる。
と、そこに当麻の焦った声が美琴に掛けられる。
「み、美琴!早く御坂妹を放してやれ!真っ青になってんぞ!」
「へ?…あっ!わわ!」
「へ?…あっ!わわ!」
美琴が自分だけの妄想に旅立っている間も口(実は鼻も)を塞がれていた御坂妹は既にぐったりしている。
御坂妹は必死にタップをしていたのだが彼女には伝わらずにそのまま意識を刈り取られてしまったようだ。
御坂妹は必死にタップをしていたのだが彼女には伝わらずにそのまま意識を刈り取られてしまったようだ。
「だ、大丈夫か御坂妹!?」
「ど、どどどどうしよう!?ねぇ!ちょっとしっかりしてよ!」
「だ、大丈夫だ美琴!気絶してるだけだ!少ししたら目を覚ますって!」
「ど、どどどどうしよう!?ねぇ!ちょっとしっかりしてよ!」
「だ、大丈夫だ美琴!気絶してるだけだ!少ししたら目を覚ますって!」
真っ青になり御坂妹の頬をぺチペチと叩く美琴。
そんな彼女をフォローしつつ御坂妹をベッドまで運んでいく当麻。
そして5分後…
そんな彼女をフォローしつつ御坂妹をベッドまで運んでいく当麻。
そして5分後…
「う…ここは…、とミサカは見慣れない天井に自分が何処にいるのか混乱します」
「妹!?大丈夫!?」
「やっと目が覚めたか…ふ~、ヒヤヒヤしたぜ…」
「妹!?大丈夫!?」
「やっと目が覚めたか…ふ~、ヒヤヒヤしたぜ…」
目を覚ました御坂妹に気が付いた美琴は身を乗り出して話しかける。
その横で当麻が大きく息を付いているが、ぼんやりとした目で二人の慌てた様子を見た御坂妹は(?)マークを浮かべる。
その横で当麻が大きく息を付いているが、ぼんやりとした目で二人の慌てた様子を見た御坂妹は(?)マークを浮かべる。
「…?お二人共どうしたのですか?とミサカは二人の様子に疑問を抱きます」
「覚えてないのか?お前は今まで気絶してたんだよ」
「…私があんたの口と鼻を塞いだ所為で…ね…」
「…?」
「覚えてないのか?お前は今まで気絶してたんだよ」
「…私があんたの口と鼻を塞いだ所為で…ね…」
「…?」
気絶前の記憶がぶっ飛び、事態の飲み込めていない御坂妹は首を傾げながらミサカネットワークに再接続して情報を共有し、
ようやく何故こんな事になっているのかを理解する。
そして、調子に乗りすぎた事を反省した彼女は美琴を見ると、
ようやく何故こんな事になっているのかを理解する。
そして、調子に乗りすぎた事を反省した彼女は美琴を見ると、
「まあ今回の事はミサカの自業自得なので気にしないでください、とミサカはお姉様を気遣います」
「ご、ごめんね…まさかこんな事になるなんて…」
「ご、ごめんね…まさかこんな事になるなんて…」
下手をすればそのまま妹の命を奪いかねない状況だっただけに、美琴は小さくなってひたすら謝る。
だが、御坂妹はそれらの言葉をまるで聞いてないかのようにその体を動かしながら、
だが、御坂妹はそれらの言葉をまるで聞いてないかのようにその体を動かしながら、
「そんな事より時間もそんなにありませんので準備の続きをしましょう、とミサカはベッドから起き上がります」
「お、おいおい、まだ起きたばっかなんだからもう少し寝てた方がいいぞ?」
「そ、そうよ!後の準備は私達がやるから!」
「お、おいおい、まだ起きたばっかなんだからもう少し寝てた方がいいぞ?」
「そ、そうよ!後の準備は私達がやるから!」
体調を心配した二人は起き上がろうとした御坂妹の肩を掴んでベッドに押し込もうとする。
ところが、途中で彼女が抵抗を始め、グググ…と強引に起き上がりつつ二人に向かって、
ところが、途中で彼女が抵抗を始め、グググ…と強引に起き上がりつつ二人に向かって、
「むむ、そうやってミサカを除け者にする気ですね!?とミサカは憤慨します。
この程度、明日の事を考えればどうって事ありません、とミサカは渾身の力で抵抗します」
「だーかーらー!あんたはもうちょっと自分を大切にしなさいっての!」
この程度、明日の事を考えればどうって事ありません、とミサカは渾身の力で抵抗します」
「だーかーらー!あんたはもうちょっと自分を大切にしなさいっての!」
結局二人を押し切った御坂妹は吼える美琴を無視して荷物の整理を始める。
(…御坂妹は言い出したら聞かないからなぁ…まぁこっちが様子を見てやればいいか)
(この子は…こっちがこれだけ心配してるのになんで聞いてくれないのかしら?)
(この子は…こっちがこれだけ心配してるのになんで聞いてくれないのかしら?)
全く話を聞こうとしない彼女の姿に、どうにもならないと判断した二人もやれやれといった様子で荷物の整理を始める事にする。
その二人の様子を横目で一度見た御坂妹がレジャーシートに手を伸ばそうとしたその時、
その二人の様子を横目で一度見た御坂妹がレジャーシートに手を伸ばそうとしたその時、
(――――!!?)
ビクン!とその体が突然大きく跳ねた。
御坂妹の事を気に掛けていた二人はその異変に気付き、彼女に近寄りながら、
御坂妹の事を気に掛けていた二人はその異変に気付き、彼女に近寄りながら、
「どうかしたの!?」
「大丈夫か?辛いなら寝てていいんだぞ?」
「…お姉様、13577号からSOSが送られてきているのですが、とミサカはお姉様に13577号及び妹達の危機を知らせます」
「大丈夫か?辛いなら寝てていいんだぞ?」
「…お姉様、13577号からSOSが送られてきているのですが、とミサカはお姉様に13577号及び妹達の危機を知らせます」
ガクガクと震えながら美琴の方を見る御坂妹。
その尋常ではない様子と、彼女から放たれた『妹達の危機』という言葉に美琴は一気に焦った顔をすると、
その尋常ではない様子と、彼女から放たれた『妹達の危機』という言葉に美琴は一気に焦った顔をすると、
「な、何!?何があったの!?」
御坂妹の両肩を掴み、早く教えろと言った視線を向ける。
現在13577号は美琴の身代わりとして常盤台女子寮で生活している。
普通に考えて危険などあるはずも無いのだが…
現在13577号は美琴の身代わりとして常盤台女子寮で生活している。
普通に考えて危険などあるはずも無いのだが…
「『お姉様ぁぁああん!!』と同室の黒子様より執拗に迫られているとの事です、とミサカは貞操の危機を感じつつお姉様に詳細を説明しました」
「………」
「………」
バチ!御坂妹の言葉を聞いた美琴の額から電気が発生し、空気を鳴らす。
恐らく逃げ回る妹を追い回し、その体に触れようとしているのだろう。
いや、この震え方からすると、もしかしたら色々されてしまっている可能性もあり得る。
そしてそれがミサカネットワークで妹達全員に伝わるという事は…
恐らく逃げ回る妹を追い回し、その体に触れようとしているのだろう。
いや、この震え方からすると、もしかしたら色々されてしまっている可能性もあり得る。
そしてそれがミサカネットワークで妹達全員に伝わるという事は…
(黒子め…)
1万人近い自分の大切な妹達が黒子によって汚される。
そう考える美琴は青筋を立て、こめかみをヒクヒクさせると、バッチンバッチン空気を鳴らしながら、
そう考える美琴は青筋を立て、こめかみをヒクヒクさせると、バッチンバッチン空気を鳴らしながら、
「…遠慮なくぶん殴っていいわよ。なんなら電撃で真っ黒焦げにしてくれても構わないわ」
(帰ったら覚えてなさい…)
(帰ったら覚えてなさい…)
入れ替わっている事を知らないとはいえ、妹に変な事したら殺す!と言わんばかりの殺気を放つ美琴。
そこには自分をここまで不安にさせた原因はお前か!という私怨もあったりする。
そこには自分をここまで不安にさせた原因はお前か!という私怨もあったりする。
「で、ではそのように伝えます、とミサカはお姉様の豹変ぶりに震え上がります」
「…(こ、怖ぇ~)」
「…(こ、怖ぇ~)」
美琴のどす黒いオーラが見えた(ような気がする)二人は揃ってビクビクと震え出す。
同時に『本気で怒らすのだけはやめよう』と心に誓うのだった。
同時に『本気で怒らすのだけはやめよう』と心に誓うのだった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
そして、時刻は午後8時を回り、細かい準備を終えた三人は風呂に入る事にするのだが、
『家族っぽく一緒に入ってみませんか?』
『そんなに嫌なのですか?』
『そんなに嫌なのですか?』
という御坂妹の言葉とその捨て犬のような視線に押し切られた美琴は彼女と共に入浴を済ませる事になる。
だが、ブツブツ言いながらも一緒に入ってしまう辺りは『妹に甘い姉』の悲しい性なのだろう。
そして二人が風呂場に入ってから約二十分後…
入浴を済ませた美琴と御坂妹は洗面所で寝巻きに着替えていた。
だが、ブツブツ言いながらも一緒に入ってしまう辺りは『妹に甘い姉』の悲しい性なのだろう。
そして二人が風呂場に入ってから約二十分後…
入浴を済ませた美琴と御坂妹は洗面所で寝巻きに着替えていた。
「はい、あんたはこれ着て寝なさい」
そう言って美琴が差し出したのは全身にカエルのマークがプリントされているピンクのパジャマだ。
女子寮で使っているものとは色違いで、当麻の部屋に泊まる時に使っているものだ。
そのいかにも少女趣味というか美琴趣味なパジャマに圧倒された御坂妹は美琴が着る予定の当麻のシャツに手を伸ばしながら、
女子寮で使っているものとは色違いで、当麻の部屋に泊まる時に使っているものだ。
そのいかにも少女趣味というか美琴趣味なパジャマに圧倒された御坂妹は美琴が着る予定の当麻のシャツに手を伸ばしながら、
「いえ、ミサカはお義兄様のシャツでも着ますので、それはお姉様が着てください、とミサカは断りつつお義兄様のシャツを手に取ります」
「だ~め、これは私が着るんだからあんたは大人しくこれを着てなさい」
「だ~め、これは私が着るんだからあんたは大人しくこれを着てなさい」
御坂妹からシャツを奪い返した美琴はどこか嬉しそうにシャツを抱きしめる。
その様子を見た御坂妹は呆れた様子でパジャマを着ながら、
その様子を見た御坂妹は呆れた様子でパジャマを着ながら、
「ふむ…、そんなに嬉しそうな顔を見るとミサカも着てみたくなりますね、とミサカは自らの欲求を口にします」
「こ、これは私のなんだからあんたには渡さないわよ!」
「こ、これは私のなんだからあんたには渡さないわよ!」
着替え終わった御坂妹は美琴が未だに抱きしめているシャツをじーっと見つめる。
その視線を感じた美琴がそのシャツを鉄壁の構えで守るのだが、御坂妹が驚きの行動に出る。
その視線を感じた美琴がそのシャツを鉄壁の構えで守るのだが、御坂妹が驚きの行動に出る。
「そうですか、ならミサカにも考えがあります、とミサカは早速行動に出ます」
そう言うと御坂妹はまだ着替えていない美琴を放ったらかしにして脱衣所を飛び出す。
(な、何なのあの子…?)
その行動を全く理解できない美琴はとにかく着替える為にシャツを着て、上からシャツのボタンを留めていくのだが、
二つ目のボタンを留めていた時、
二つ目のボタンを留めていた時、
「きゃー!やめてー!!」
「ええい!大人しくするのです!とミサカは――――!!」
「ええい!大人しくするのです!とミサカは――――!!」
ドアの向こうから当麻の悲鳴と御坂妹の叫び声が聞こえた。
(…?何して……あ!!)
思考をめぐらした美琴は御坂妹が洗面所を飛び出した理由に気付くと、すぐに洗面所を飛び出す。
すると、御坂妹が当麻を仰向けに倒してその上に乗り、喚き散らしながら彼の着ていたシャツを強引に脱がしている衝撃のシーンを目撃した。
一瞬固まった美琴だが、すぐに我に返り、御坂妹を引き剥がしにかかる。
すると、御坂妹が当麻を仰向けに倒してその上に乗り、喚き散らしながら彼の着ていたシャツを強引に脱がしている衝撃のシーンを目撃した。
一瞬固まった美琴だが、すぐに我に返り、御坂妹を引き剥がしにかかる。
「こ、こらー!!何やってんだあんたは――!!」
「た、助けてくれ――!」
「フフフ…、良いではないかー、良いではないかー、とミサカは悪代官風口調で雰囲気を醸し出します」
「た、助けてくれ――!」
「フフフ…、良いではないかー、良いではないかー、とミサカは悪代官風口調で雰囲気を醸し出します」
遊びなのか本気でやっているのか最早判断できない状態の御坂妹。
怪しげな笑みを浮かべながら、当麻の服を引っ張る。
当麻は首を左右に振りながら、
怪しげな笑みを浮かべながら、当麻の服を引っ張る。
当麻は首を左右に振りながら、
「それ立場逆だから!!う、やば…とにかく降りてくれ!!」
必死に助けを懇願する彼は既に抵抗できない状態に追い込まれている。
風呂上りの御坂妹の髪からはシャンプーの香りが漂い、そしてその柔らかな体が乗っかっている為、
鉄壁の当麻を持ってしてもその理性は既にいっぱいいっぱいなのだ。
風呂上りの御坂妹の髪からはシャンプーの香りが漂い、そしてその柔らかな体が乗っかっている為、
鉄壁の当麻を持ってしてもその理性は既にいっぱいいっぱいなのだ。
「いいからやめんか馬鹿妹!」
埒が明かないと判断した美琴は御坂妹の脳天にビシッ!っとチョップを浴びせ、当麻から無理矢理引き剥がす。
「痛いです、とミサカは頭を撫でながら涙目になります」
「ったく!何考えてんのよあんたは!」
「ったく!何考えてんのよあんたは!」
腰に手を当てて御坂妹を怒鳴りつける美琴。
彼氏である当麻にのしかかっただけでなく、服を奪って裸にしようとした事に怒り心頭だ。
しかし、御坂妹はそんな様子を見ても顔色一つ変えずに、
彼氏である当麻にのしかかっただけでなく、服を奪って裸にしようとした事に怒り心頭だ。
しかし、御坂妹はそんな様子を見ても顔色一つ変えずに、
「シャツが欲しかっただけですが?とミサカはお姉様に言葉を返します」
「あ、アンタって奴は…」
「あ、アンタって奴は…」
しれっと返された言葉にワナワナと震えだす美琴だが、
声を出そうとした所でそれまで黙っていた当麻が慌てた様子で、
声を出そうとした所でそれまで黙っていた当麻が慌てた様子で、
「お、俺!風呂入ってくるわ!!」
当麻は見てはいけないものを見てしまった。
ボタンが一つしか留まっていない彼女の姿を。
彼女が動く度、ちらちらと覗く白い肌を。
そして、先程の御坂妹の感触を思い出し、限界を感じた当麻は鼻を押さえ、バスルームへ逃げるように走っていくのだった。
ボタンが一つしか留まっていない彼女の姿を。
彼女が動く度、ちらちらと覗く白い肌を。
そして、先程の御坂妹の感触を思い出し、限界を感じた当麻は鼻を押さえ、バスルームへ逃げるように走っていくのだった。
(当麻?どうしたのかな?)
一方自分の格好に全く気付いていない美琴は当麻の行動を少し心配したのだが、
そっちは放っておいて、妹を説教する事にした彼女は、たっぷりと『立場』というものを叩き込む。
その説教は当麻が風呂から上がり、彼が御坂妹を救出するまで続くのだが、救出した御坂妹の瞳が怯えきっていたのは言うまでもない。
そっちは放っておいて、妹を説教する事にした彼女は、たっぷりと『立場』というものを叩き込む。
その説教は当麻が風呂から上がり、彼が御坂妹を救出するまで続くのだが、救出した御坂妹の瞳が怯えきっていたのは言うまでもない。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
時刻は進み、午後10時半。
明かりの消えた部屋の中で、もぞもぞと動く人影があった。
明かりの消えた部屋の中で、もぞもぞと動く人影があった。
(う~ん、眠れない…)
部屋の床に掛け布団を敷き、その上で横になる当麻は心の中でそう呟く。
そしてベッドの上から『すぅ…すぅ…』微かに聞こえる二つの寝息。
更に二人の方から漂ってくる甘いシャンプーの香りに鼻腔をくすぐられ、ドキドキしている当麻は眠る事が出来ないでいた。
そう、彼は美琴と御坂妹と同じ部屋で寝ているのである。
そしてベッドの上から『すぅ…すぅ…』微かに聞こえる二つの寝息。
更に二人の方から漂ってくる甘いシャンプーの香りに鼻腔をくすぐられ、ドキドキしている当麻は眠る事が出来ないでいた。
そう、彼は美琴と御坂妹と同じ部屋で寝ているのである。
(はぁ…、今夜は寝れそうにないかな…)
半ば諦め気味の当麻は天井を見つめる。
何故こんな事になったのか、時間は1時間ほど前に遡る。
何故こんな事になったのか、時間は1時間ほど前に遡る。
――――
――
「む?お義兄様、何処に行くのですか?とミサカは問いかけます」
「何処って、風呂場だけど?」
「何処って、風呂場だけど?」
タオルケットを持って風呂場に向かっていた当麻は御坂妹の言葉に振り返りそう告げる。
すると、ベッドの上で寝そべって足をパタパタさせていた美琴が御坂妹に背を向けたまま、
すると、ベッドの上で寝そべって足をパタパタさせていた美琴が御坂妹に背を向けたまま、
「あ~、あんたは知らないのよね、当麻は私が泊まる時はいつも風呂場で寝てるのよ」
「何故ですか?とミサカはお姉様に問いかけます」
「知らな~い。なんかいっつも『理性がー』とか『中学生がー』とか適当な事言って籠もるのよ」
「何故ですか?とミサカはお姉様に問いかけます」
「知らな~い。なんかいっつも『理性がー』とか『中学生がー』とか適当な事言って籠もるのよ」
少し怒ったような口調でそう答える美琴。
この部屋にちょくちょく泊まる美琴としてみれば、一緒に寝てくれないのが相当ご不満らしい。
この部屋にちょくちょく泊まる美琴としてみれば、一緒に寝てくれないのが相当ご不満らしい。
(ふむふむ、お姉様はお義兄様と一緒に寝たい、とミサカは予想します)
美琴の態度からそう判断した御坂妹はまたしても余計な事を考え出す。そして、
「お義兄様、折角なので一緒に寝ませんか?とミサカは唐突に申し出てみます」
「は?何言ってんだ?」
「は?何言ってんだ?」
キョトンとした顔で御坂妹を見る当麻に、
「ですからお姉様とミサカと三人で寝ませんかと言っているのです、とミサカは少し詳しく言いました」
「いやいや!あり得ないから!」
「何故ですか?とミサカはお義兄様に問いかけます」
「いやいや!あり得ないから!」
「何故ですか?とミサカはお義兄様に問いかけます」
首を傾げて質問をする御坂妹。
当麻は少し困ったような顔で頬をぽりぽりと掻きながら、
当麻は少し困ったような顔で頬をぽりぽりと掻きながら、
「だってな、女の子と同じ部屋で寝るってのは色々とその…なんかあったら困るし」
「そんなのはお義兄様がきちんと責任を持って対応すれば良いだけの話です、とミサカは解決策を述べました。
それに、お義兄様をバスルームで寝かせてしまう事をお姉様やミサカがどう思っているか分かりますか?とミサカは問いかけます」
「う…でも美琴はその辺は理解してくれてるぞ?な、美琴?」
「そんなのはお義兄様がきちんと責任を持って対応すれば良いだけの話です、とミサカは解決策を述べました。
それに、お義兄様をバスルームで寝かせてしまう事をお姉様やミサカがどう思っているか分かりますか?とミサカは問いかけます」
「う…でも美琴はその辺は理解してくれてるぞ?な、美琴?」
御坂妹の攻めにやや押され気味の当麻は助けを求めるかように美琴に同意を求める。すると、
「私は…」
はっきりしない美琴の態度。
一緒に寝たいのは山々だが、その瞳には少しだけ迷いと不安が浮んでいる。
そんな彼女の様子に御坂妹は、
一緒に寝たいのは山々だが、その瞳には少しだけ迷いと不安が浮んでいる。
そんな彼女の様子に御坂妹は、
(はぁ…お姉様がこれでは進展などする筈もありませんね、とミサカは嘆息します)
と、心の中でもう一歩が踏み出せない姉の姿に溜め息を付く。
だが、姉はともかく、ここで引くのは自分が納得いかない御坂妹は、
だが、姉はともかく、ここで引くのは自分が納得いかない御坂妹は、
「お姉様の事はこの際捨て置いて、ミサカはお義兄様をバスルームで寝かせる事に反対です。
この時期は暑いですし、湿気の多いあの場所で寝れば風邪を引いてしまいます、とミサカは反対の理由を述べました」
「ん~、まあ寝慣れてるからその辺は大丈夫だぞ?」
「では万が一お義兄様が風邪を引いた場合ミサカがどんな気持ちになるか分かりますか?とミサカはお義兄様に問いかけます」
この時期は暑いですし、湿気の多いあの場所で寝れば風邪を引いてしまいます、とミサカは反対の理由を述べました」
「ん~、まあ寝慣れてるからその辺は大丈夫だぞ?」
「では万が一お義兄様が風邪を引いた場合ミサカがどんな気持ちになるか分かりますか?とミサカはお義兄様に問いかけます」
何が何でもバスルームで寝る事を阻止したい御坂妹はガンガン攻める。
その勢いに押される当麻はたじたじになりながら、
その勢いに押される当麻はたじたじになりながら、
「う、う~ん、でもな…」
「一緒のベッドでとは言いません。ミサカを安心して寝かせたいと思うならせめてここで寝てください、とミサカは懇願します」
「一緒のベッドでとは言いません。ミサカを安心して寝かせたいと思うならせめてここで寝てください、とミサカは懇願します」
トントン、と床を叩く御坂妹。
当麻はもはや陥落寸前といった様子で、
当麻はもはや陥落寸前といった様子で、
「うう…、ううー」
「ミサカはお義兄様の事を信頼しています、なのでそんなに悩む必要はありません。
明日に備えてただ同じ部屋で寝るだけです、とミサカはトドメをさします」
「……あー、もう!わーったよ!」
「ミサカはお義兄様の事を信頼しています、なのでそんなに悩む必要はありません。
明日に備えてただ同じ部屋で寝るだけです、とミサカはトドメをさします」
「……あー、もう!わーったよ!」
信頼している――
御坂妹の言葉に当麻は遂に折れる。
御坂妹の言葉に当麻は遂に折れる。
「では、床は固いので掛け布団はお義兄様が使ってください、とミサカはベッドの上から掛け布団を取ります」
掛け布団を当麻に渡した御坂妹は彼からタオルケットを受け取り、ベッドで一部始終を黙って見ていた美琴にかける。
そして、ベッドで横になっている美琴の奥側に移動し同じく横になる。
そして、ベッドで横になっている美琴の奥側に移動し同じく横になる。
「さ、時間も遅いのでもう寝ましょう、とミサカはお姉様の隣に陣取ります」
パチっと電気を飛ばして部屋の明かりを落とした御坂妹に美琴が小さな声で彼女に喋りかける。
「…ありがと、一応礼を言っておくわ」
「?ミサカはお礼を言われる事はしてませんが、とミサカは返答します」
「…あんたにそのつもりがなかったとしても、結果的に私の為になってるのよ」
「?ミサカはお礼を言われる事はしてませんが、とミサカは返答します」
「…あんたにそのつもりがなかったとしても、結果的に私の為になってるのよ」
そう、当麻の壁を壊してくれた。
今まで勇気を出して一緒に寝るように頼んだ事はあった。
だが、その都度断られてしまい、それ以上踏み込む事が出来ないでいた。
今まで勇気を出して一緒に寝るように頼んだ事はあった。
だが、その都度断られてしまい、それ以上踏み込む事が出来ないでいた。
(でも、この子はその壁をあっさり突き破った)
到底真似できないと思う。
しかし、妹が自分の代わりに最初の一回という壁を破った事で、次回からは抵抗が弱まるはずだ。
自分としてもこの一回を乗り越える事で、不安や迷いを払拭できると思う。
しかし、妹が自分の代わりに最初の一回という壁を破った事で、次回からは抵抗が弱まるはずだ。
自分としてもこの一回を乗り越える事で、不安や迷いを払拭できると思う。
(次からはもっと頑張らないとね)
一方で妹に先を越された事に悔しさも感じた美琴は心の中でそう呟く。
そう考えていた時、目の前で半目になっていた妹が眠たそうな声で、
そう考えていた時、目の前で半目になっていた妹が眠たそうな声で、
「おやすみなさい、お姉様、お義兄様、とミサカは就寝の挨拶を済ませ…まし…た…」
そのまま目を閉じ、寝息を立て始めた御坂妹に、
((早っ!もう寝たんかい!))
と渾身のツッコミを入れる美琴と当麻だが、
「そんじゃ俺たちも寝ますか。おやすみ、美琴、御坂妹」
「そうね、おやすみ、当麻、妹。明日は思いっきり楽しもうね」
「そうね、おやすみ、当麻、妹。明日は思いっきり楽しもうね」
と挨拶を済ませてそれぞれ眠りにつくのだった。
――――
――
――
という流れが発生し、現在に至る。
未だに寝付けず、ゴロゴロと寝返りをうつ当麻はふとその動きを止める。
未だに寝付けず、ゴロゴロと寝返りをうつ当麻はふとその動きを止める。
(…なんか飲もう)
そう考えた当麻はおもむろに立ち上がり、冷蔵庫からお茶を取り出しコップに注ぐ。
そして、お茶を飲み終わり、布団に戻る途中で二人に視線を送る。すると、
そして、お茶を飲み終わり、布団に戻る途中で二人に視線を送る。すると、
(ぶっ!な、なんつー目の毒!!)
当麻の目に入ったのは二人の天使。
片方の天使…御坂妹はピンクのパジャマを身に纏い、その安らかな寝顔を見せているが、
仰向けに眠る彼女のパジャマは少しめくれていて、ヘソが見えてしまっている。
そして、彼女が息をする度、その小さな胸が上下し、当麻は思わず視線を逸らしてしまう。
片方の天使…御坂妹はピンクのパジャマを身に纏い、その安らかな寝顔を見せているが、
仰向けに眠る彼女のパジャマは少しめくれていて、ヘソが見えてしまっている。
そして、彼女が息をする度、その小さな胸が上下し、当麻は思わず視線を逸らしてしまう。
しかし、そこにはもう片方の天使…美琴がいた。
彼女は男物のシャツを羽織り、その顔は御坂妹の方を向いている。
長袖のシャツの袖口からは可愛らしい指がちらりと見え、御坂妹の胸の辺りに乗っかっている。
そして、そのまま視線を下に持っていくと…
彼女は男物のシャツを羽織り、その顔は御坂妹の方を向いている。
長袖のシャツの袖口からは可愛らしい指がちらりと見え、御坂妹の胸の辺りに乗っかっている。
そして、そのまま視線を下に持っていくと…
(がはッ!)
シャツは大きくめくれ、腰の辺りが露になっている。
そして視線を更に下げると…
そして視線を更に下げると…
(…短パン…。いやこれはこれで…じゃなくてぇぇえええ!!!)
短パンの破壊力に思わず仰け反る当麻。
だが、姿勢を戻すと再び無防備に眠る二人に視線を送る。
細く、しなやかな体のラインに、各部分から覗く白い肌。
美琴に至っては太ももの辺りからは下は全て見えてしまっている。
だが、姿勢を戻すと再び無防備に眠る二人に視線を送る。
細く、しなやかな体のラインに、各部分から覗く白い肌。
美琴に至っては太ももの辺りからは下は全て見えてしまっている。
(……)
触ってみたい。
それが率直な彼の感想。
だが、理性がそれを押し込める。
それが率直な彼の感想。
だが、理性がそれを押し込める。
(ダメだ!こいつらの信頼を裏切る事だけは…)
そう言い聞かせて二人の足元に追いやられていたタオルケットを手に取るとそのまま二人に掛けようとする。
っとその時、
っとその時、
「う、う~ん」
美琴がもぞもぞと動き出す。そして、
「とぉま~、逃げんなぁ~」
(…いつの夢を見てるんだよ)
(…いつの夢を見てるんだよ)
きっと美琴は今、夢の中で自分に電撃を放ちながら追いかけてるのだろうと予想し、思わずツッコミを入れる。
すると、眠れる天使は微笑みながら、
すると、眠れる天使は微笑みながら、
「えへへぇ~捕まえたぁ~。もぅ離さないんだからぁ~」
御坂妹に抱き付きそのまま頬ずりを始める。すると、
「う、う~…苦しい…です、とミサカ…は…」
美琴に抱きつかれた御坂妹は苦悶の表情を浮かべ出した。
その光景を見た当麻は思わず笑みを浮かべる。
その光景を見た当麻は思わず笑みを浮かべる。
(ったく、こいつらは…風邪引くなよ)
優しくタオルケットを被せた当麻は自分の寝床へ入る。
その心は不思議と落ち着き、先程のやましい考えが吹き飛んだ彼は、ようやく眠りに付く事となった。
その心は不思議と落ち着き、先程のやましい考えが吹き飛んだ彼は、ようやく眠りに付く事となった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
そして日付は変わり計画実行の日。
午前三時という暗闇の中、6人は集結していた。
そしてミニバンに荷物を積み終え、さあ出発という所で、赤のキャミソールワンピースを着た美琴が不満そうな声で妹達に向かって、
午前三時という暗闇の中、6人は集結していた。
そしてミニバンに荷物を積み終え、さあ出発という所で、赤のキャミソールワンピースを着た美琴が不満そうな声で妹達に向かって、
「つか、アンタ達なんでそんな格好なの?」
「何か問題でも?とミサカ10032号は首を傾げます」
「あるに決まってんでしょ!なんで常盤台の制服なのよ!?」
「何か問題でも?とミサカ10032号は首を傾げます」
「あるに決まってんでしょ!なんで常盤台の制服なのよ!?」
キョトンとした顔をする妹達に腕を組んで詰め寄る美琴。
どうやら彼女達がいつもの服装をしている事が気に入らないようだ。すると、
どうやら彼女達がいつもの服装をしている事が気に入らないようだ。すると、
「ふむ、それは諸事情という奴です、とミサカ10039号は簡単に説明しました」
「説明になってない!なんで折角買ってあげたのに誰も着てくれてないのよぅ…」
「あれは大事な物ですので後ほど着させていただきます、とミサカ19090号はお姉様のフォローに回ります」
「説明になってない!なんで折角買ってあげたのに誰も着てくれてないのよぅ…」
「あれは大事な物ですので後ほど着させていただきます、とミサカ19090号はお姉様のフォローに回ります」
心底残念そうに肩を落とした美琴に慌てて声を掛ける19090号。
それを横目で眺めていた番外個体がやれやれといった様子で頭を掻くと、
それを横目で眺めていた番外個体がやれやれといった様子で頭を掻くと、
「どうでもいいけど明るくなる前にさっさと行こうよ」
と、完全に流れをぶった切って5人を促す。
「ではミサカが助手を勤めます、とミサカ10032号は助手席に乗り込みます」
「ミサカは一番後ろで良いです、とミサカ19090号は号は3列目に乗り込みます」
「ではミサカはお義兄様と2列目に乗りますねとミサカ10039号はKYな事を言ってみます」
「ミサカは一番後ろで良いです、とミサカ19090号は号は3列目に乗り込みます」
「ではミサカはお義兄様と2列目に乗りますねとミサカ10039号はKYな事を言ってみます」
次々と乗り込む妹達。
10039号はさあさあいらっしゃいと言わんばかりに隣の座席をポンポンと叩いている。
するとそこに美琴が乗り込み…
10039号はさあさあいらっしゃいと言わんばかりに隣の座席をポンポンと叩いている。
するとそこに美琴が乗り込み…
「はいはい、当麻の隣は私だからアンタは一番後ろね」
10039号を引き摺り下ろして3列目に押し込む。
押し込むといってもツッコミ待ちだったらしい彼女は抵抗しなかったのだが。
そして全員が車に乗り込み、さあ出発!といった所で当麻が不安そうに『運転席』を見る。
押し込むといってもツッコミ待ちだったらしい彼女は抵抗しなかったのだが。
そして全員が車に乗り込み、さあ出発!といった所で当麻が不安そうに『運転席』を見る。
「…お前の運転って聞いてなかったんだけど、免許持ってるのか?」
「持ってるよ?余裕で正規の物じゃないけど」
「持ってるよ?余裕で正規の物じゃないけど」
さっと免許証(らしい紙)を当麻に見せる番外個体。
それを見た当麻は目に見えて慌て出し、
それを見た当麻は目に見えて慌て出し、
「は?いやいや!駄目だろそれ!?」
「そもそも妹達に正規の物は取れませんので仕方ありません。それに番外個体は基本スペックが高い上、
そういった技術もインプットされていますので、ベテランドライバー並と考えてもらって差し支えありません、とミサカ10039号は番外個体の安全性を訴えます」
「ま、今更そんな事言っても仕方ないしね。一応偽造って訳じゃないみたいだから私と当麻が番外個体の技術を信じるかどうかってだけよ」
「そもそも妹達に正規の物は取れませんので仕方ありません。それに番外個体は基本スペックが高い上、
そういった技術もインプットされていますので、ベテランドライバー並と考えてもらって差し支えありません、とミサカ10039号は番外個体の安全性を訴えます」
「ま、今更そんな事言っても仕方ないしね。一応偽造って訳じゃないみたいだから私と当麻が番外個体の技術を信じるかどうかってだけよ」
当麻同様、免許の事が気になっていた美琴は昨日、妹達からの情報を元に端末で調べていた。
すると、統括理事長の印が押された許可書の画像に辿り着き、偽造でない事を知ったので一安心していた。
美琴の落ち着いた様子に当麻は、
すると、統括理事長の印が押された許可書の画像に辿り着き、偽造でない事を知ったので一安心していた。
美琴の落ち着いた様子に当麻は、
「美琴は番外個体の運転って知ってたのか?」
「うん」
「なんで俺に説明してくれなかったんだ?」
「うん」
「なんで俺に説明してくれなかったんだ?」
その言葉に、そういえば言ってなかったなーという顔をした美琴は、
「ん~と、サプライズ?」
「そんなサプライズいらねぇぇえええ!!!」
「あ~もう!うっさい!この子達が私達を危険な目に遭わせるわけないでしょうが!ちょっとは信用しなさい!!」
「そんなサプライズいらねぇぇえええ!!!」
「あ~もう!うっさい!この子達が私達を危険な目に遭わせるわけないでしょうが!ちょっとは信用しなさい!!」
真横で叫ばれて耳が痛かった美琴は当麻を叱り付けると、目下一番気になっている事を口にする。
「つか私が心配してるのはあんた等がどんな裏技を使って統括理事長の許可を貰ったのかって事よ」
「それは教えられません、とミサカ10032号は秘守義務があるので黙秘します」
「それは教えられません、とミサカ10032号は秘守義務があるので黙秘します」
妹達の使った裏技。
それは、後日打ち止めと一方通行を海に連れて行くという一方通行との取引であった。
今回の計画を知った打ち止めは一緒に行きたがっていたのだが、
『打ち止めと二人きりの方がいいだろ?』と一方通行をそそのかした妹達は彼と協力して打ち止めを説得。
その代わり、番外個体の運転免許証をゴリ押ししてでも取って来いというのがその内容だ。
それは、後日打ち止めと一方通行を海に連れて行くという一方通行との取引であった。
今回の計画を知った打ち止めは一緒に行きたがっていたのだが、
『打ち止めと二人きりの方がいいだろ?』と一方通行をそそのかした妹達は彼と協力して打ち止めを説得。
その代わり、番外個体の運転免許証をゴリ押ししてでも取って来いというのがその内容だ。
「ま、そんな事どうでも良いじゃん、ミサカが安全運転で行けば良いんだからさ!」
「そういう事です。では参りましょう、とミサカ10039号はシートベルトを締めます」
「レッツゴー、とミサカ19090号はわざとらしい演出で気分を盛り上げます」
「そういう事です。では参りましょう、とミサカ10039号はシートベルトを締めます」
「レッツゴー、とミサカ19090号はわざとらしい演出で気分を盛り上げます」
19090号の合図と共に『ブォォオオンン!!!』とけたたましいエンジン音が響き、6人の乗る車は華麗なロケットスタートを決める。
「ちょ!こら番外個体!?あんた何やってんのよ――!?」
「きゃははは!!テンション上がってきた!!」
「不幸だぁぁああああ――――!!!」
「きゃははは!!テンション上がってきた!!」
「不幸だぁぁああああ――――!!!」
かくして海に行くべく移動が始まる。
先程の信頼はどこかに吹き飛んだ二人の叫び声と共に。
先程の信頼はどこかに吹き飛んだ二人の叫び声と共に。