小ネタ 少年時代
御坂美琴は浴衣姿で足を崩して床に座り、夏の空を見ていた。
入道雲が広がる空は深い青と白い雲のコントラストが美しい。
浴衣など滅多に着るものではないが、綿の肌触りは嫌いではない。
洋服に慣れた体だと、風通しの良い布地が新鮮に感じられる。
いつもはうっとうしく感じる蝉時雨も今日はあまり気にならない。
窓辺につるした風鈴が美琴に頷くようにチリン、と涼しげな音を立てる。
美琴は左手で自分の体を支え、右手に持った団扇で自分を扇ぎながら、
「夏ねぇ……」
誰に聞かせる訳でもなく呟く。
美琴は視線を自分の膝元付近へ移動する。
ツンツン頭の少年だった。
彼は美琴の膝枕で昼寝をしていた。
暑いのか、時折「ううん……」と言う寝苦しそうな声が彼の口元から漏れる。
美琴が微笑みながら軽く団扇で風を送ってやると、彼の顰めていた眉が緩み、穏やかな寝息に変わる。
美琴はもう一度外を見て、
「夏よねぇ……」
窓辺につるした風鈴が美琴に頷くようにチリン、と涼しげな音を立てた。