海に行こう☆☆
「ふうー、あいつ等のやる事はいつも過激だなぁ」
「まあね。もう少し仲良くやってくれると良いんだけど」
「まあね。もう少し仲良くやってくれると良いんだけど」
美琴は妹達の方に視線を送る。
少し離れた場所で、御坂妹と19090号が泳ぎの競争をしていているのが見える。
視線を本拠地に向けると、10039号が仰向けに寝ていて、番外個体がその横で手を振っているのが見えた。
そんな彼女に手を振り返した美琴と当麻が居る場所は、岸から20m程沖に行った所だ。
そこで美琴は浮き輪に乗り、足で海水を跳ねさせながらぷかぷかと浮いていて、その浮き輪の端には当麻が掴まっている。
少し離れた場所で、御坂妹と19090号が泳ぎの競争をしていているのが見える。
視線を本拠地に向けると、10039号が仰向けに寝ていて、番外個体がその横で手を振っているのが見えた。
そんな彼女に手を振り返した美琴と当麻が居る場所は、岸から20m程沖に行った所だ。
そこで美琴は浮き輪に乗り、足で海水を跳ねさせながらぷかぷかと浮いていて、その浮き輪の端には当麻が掴まっている。
「それにしてもあの子(10039号)大丈夫かな?」
「んー、まあ本人が大丈夫って言ってたし、番外個体が付いてるから大丈夫だろ」
「んー、まあ本人が大丈夫って言ってたし、番外個体が付いてるから大丈夫だろ」
10039号の事を心配する二人。
彼女がああなってしまった理由は妹達にお仕置きされた所為だ。
浮き輪を無理矢理かぶせられ、沖に連行された彼女は、三人の妹達によって酔うまで回転させられてしまったのだ。
その後、浮き輪の上でぐったりと動かなくなってしまった10039号を回収した妹達は彼女を本拠地に捨て、泳ぎに行ってしまう。
しかし、心配した当麻と美琴が彼女の側で看病を始めると、それに気が付いた番外個体が『ミサカが看てるから二人は行っておいでよ』と強引に海に送り出し、現在に至る。
彼女がああなってしまった理由は妹達にお仕置きされた所為だ。
浮き輪を無理矢理かぶせられ、沖に連行された彼女は、三人の妹達によって酔うまで回転させられてしまったのだ。
その後、浮き輪の上でぐったりと動かなくなってしまった10039号を回収した妹達は彼女を本拠地に捨て、泳ぎに行ってしまう。
しかし、心配した当麻と美琴が彼女の側で看病を始めると、それに気が付いた番外個体が『ミサカが看てるから二人は行っておいでよ』と強引に海に送り出し、現在に至る。
「所で上条さんは結構疲れたので交代しません?」
浮き輪の端を掴んでいるとはいえ、立ち泳ぎを続けている当麻としてはそろそろ休憩が欲しい。
だが、美琴は首を振ると、
だが、美琴は首を振ると、
「だーめ、これ結構気に入ってるし。当麻も浮き輪持ってきたら?」
「取りに行くの面倒くせぇ…、せめてもうちょいしっかり掴まって良いか?」
「だめだって!これ結構きわどいバランスなんだからひっくり返っちゃうでしょ!」
「取りに行くの面倒くせぇ…、せめてもうちょいしっかり掴まって良いか?」
「だめだって!これ結構きわどいバランスなんだからひっくり返っちゃうでしょ!」
追い払うようにパシャパシャと海水を当麻に掛ける。すると、
「…そう言われるとひっくり返してやりたくなるぜぇー」
美琴の態度に悪戯心を刺激された当麻は、グイグイと浮き輪の端を引っ張リ始める。
すると、浮き輪の上の美琴が慌てながら、
すると、浮き輪の上の美琴が慌てながら、
「わ、こら!何すんのよ!」
「ほれほれ~、早く交代しないと本当に転覆させちゃうぞー」
「危ないでしょ!やめてってば!」
「なら交代してくれるか?」
「ほれほれ~、早く交代しないと本当に転覆させちゃうぞー」
「危ないでしょ!やめてってば!」
「なら交代してくれるか?」
揺らす手を一旦止めた当麻はそう問いかけるが、揺れの収まった浮き輪の上で美琴がベーと舌を出し、
「いーや。誰がこんな酷い事する奴と交代なんか…わわ!」
そう返す美琴の言葉を最後まで聞かずに揺らすのを再開させた当麻はニヤニヤしながら、
「んじゃあ無理矢理交代させてもらうしかねーな」
「この…意地でも替わってやんないんだから!」
「この…意地でも替わってやんないんだから!」
がっしりと浮き輪を掴み、鉄壁の構えでバランスを取る美琴。
その様子を見ながら、転覆しない程度の揺れを与えていく当麻。
そのまま暫らくじゃれ合っていると、少し強い波が二人を襲い、当麻が浮き輪を強く引いてしまう。
突然の事に、浮き輪の上でバランスを崩した美琴は、
その様子を見ながら、転覆しない程度の揺れを与えていく当麻。
そのまま暫らくじゃれ合っていると、少し強い波が二人を襲い、当麻が浮き輪を強く引いてしまう。
突然の事に、浮き輪の上でバランスを崩した美琴は、
「わ、わ、きゃぁああ!」
悲鳴と共に彼女が当麻の頭目掛けて落下する。
そして…
そして…
――ふにっ。
美琴の柔らかい部分が当麻の頭に押し付けられる。
美琴の柔らかい部分が当麻の頭に押し付けられる。
(――!!)
――柔らかい。
そう思った時には当麻は美琴を抱きしめていた。
そう思った時には当麻は美琴を抱きしめていた。
(こ、これはあくまで溺れるといけないからであって決してやましい気持ちがある訳では――!!)
そう言い聞かせながら体勢を整え、水面に顔を出す。
そして、腕の中の彼女を見るが、俯いてしまっている為、その表情は見えない。
そして、腕の中の彼女を見るが、俯いてしまっている為、その表情は見えない。
(怒らせちまったかな?)
確かに悪戯が過ぎたかもしれないと判断した当麻は、
「悪ぃ、少し調子に乗りすぎちまった。大丈夫か?」
機嫌を伺うようにそう聞くと、彼の腕の中ですっかり大人しくなってしまった美琴が、蚊の鳴くような声で、
「……ばか」
と言いながら少しだけ当麻の方に身を寄せる。
すると、当麻が慌てた様子で、
すると、当麻が慌てた様子で、
「み、美琴!?そんなにくっ付かれると――」
「待って!今離れられたら…多分…漏電するから…」
「待って!今離れられたら…多分…漏電するから…」
逃げようとした当麻に腕を回してがっちりと掴む美琴。
海に落とされた事はさておき、しっかりと抱き止めてくれた事が嬉しかった彼女は、既にショート寸前。
…ではなく、単純にもう少し、いや、出来るならずっとこの安心感を味わっていたいといった所だ。
一方そんな彼女の心理など知らない当麻は『漏電』という単語を聞いて、その顔からサーっと血の気が引いていく。
海に落とされた事はさておき、しっかりと抱き止めてくれた事が嬉しかった彼女は、既にショート寸前。
…ではなく、単純にもう少し、いや、出来るならずっとこの安心感を味わっていたいといった所だ。
一方そんな彼女の心理など知らない当麻は『漏電』という単語を聞いて、その顔からサーっと血の気が引いていく。
「…マジ?」
確認を取るようにそう聞くと、彼女がコクリと頷く。
こんな場所で漏電などされてしまっては自分達だけでなく、泳いでいる二人の妹達や周囲の魚は全滅となる。
今、彼女に触れている右手が命綱だという事を知ってしまった当麻は、
こんな場所で漏電などされてしまっては自分達だけでなく、泳いでいる二人の妹達や周囲の魚は全滅となる。
今、彼女に触れている右手が命綱だという事を知ってしまった当麻は、
(と、とりあえず一旦戻ろう)
そう考え、先程美琴が使っていた浮き輪を探し始めるのだが、中々見つからない。
(ん?浮き輪は何処に行ったんだ…?)
流されたのだろうかと思いながら、再度周辺を見回す。
すると、何故か空気が抜け、ペラペラになった浮き輪が、波に揺られながら漂っていた。
すると、何故か空気が抜け、ペラペラになった浮き輪が、波に揺られながら漂っていた。
(マジかよ…)
空気が抜けてしまった経緯はともかく、浮き輪が無くなったという事は泳いで岸まで戻るしかない。
そう考えた当麻は、抱きついたままの美琴に声を掛ける。
そう考えた当麻は、抱きついたままの美琴に声を掛ける。
「泳げそうか?」
「…無理。体動かない」
「分かった、じゃあ岸まで泳ぐから、少し力緩めてくれません?」
「…や」
「…無理。体動かない」
「分かった、じゃあ岸まで泳ぐから、少し力緩めてくれません?」
「…や」
少し膨れたような顔で、ぎゅっと、更に強く抱きつく美琴に対し、激しく仰け反った当麻は、
「ぬぅぁぁあああ!!!あんまりしがみ付かれると身動き取れないから!つかそれ以前にこれ以上密着されるとやばいー!!」
布越しに伝わる女の子の部分が一層強く感じられ、普段なら気絶してもおかしくない彼女の積極的な行動に激しく混乱するが、
「と、ととととにかく一旦戻るぞ。程よく掴まってろよ?いいか?程よくだぞ?」
このままでは理性が危ないと判断した当麻は、しがみ付く美琴に念押して泳ぎ始めるのだが、
「…うん」
ぎゅーっと、当麻の言葉をガン無視してこれ以上ないくらいに密着する美琴。
もう駄目だ、と諦めた当麻は、美琴の事を気にしないように左手だけで泳いでいく。
だが、流石に彼女に抱き付かれた状態で泳ぎ続けるのは辛く、20mという距離が異様に長く感じる。
もう駄目だ、と諦めた当麻は、美琴の事を気にしないように左手だけで泳いでいく。
だが、流石に彼女に抱き付かれた状態で泳ぎ続けるのは辛く、20mという距離が異様に長く感じる。
「はぁ…はぁ…、平気か?美琴?」
「…うん、大丈夫」
「…うん、大丈夫」
そう返す美琴の顔はふにゃふにゃになっていて、どちらかというと岸に付かない方が良いのではないかという位の状態だ。
だが、そんな気恥ずかしくも幸せな時間は終わりを告げ、二人は岸へ到着する。
すると、番外個体が近づいてきた。
だが、そんな気恥ずかしくも幸せな時間は終わりを告げ、二人は岸へ到着する。
すると、番外個体が近づいてきた。
「お疲れ様、ミサカの予想を超えた良いもん見せてもらったよ」
「…番外個体、見てたのか?」
「うん。浮き輪の空気抜いたのミサカだし」
「…番外個体、見てたのか?」
「うん。浮き輪の空気抜いたのミサカだし」
じゃらじゃらと右手に持った鉄釘を鳴らす番外個体。
彼女は二人が水中に沈んでいる間に能力を使って鉄釘を飛ばし、浮き輪を撃沈していたのだ。
彼女は二人が水中に沈んでいる間に能力を使って鉄釘を飛ばし、浮き輪を撃沈していたのだ。
「またお前は余計な事を…お陰で…」
「お陰で何?もしかして当麻は私とああしてたのが嫌だったって言うの…?」
「お陰で何?もしかして当麻は私とああしてたのが嫌だったって言うの…?」
少し悲しそうな声でそう呟くと、当麻が慌てて取り繕う。
「い、いや!どちらかというと嬉しいんですが、やや刺激が強すぎるというか、理性が持たないというか…」
「なら、ミサカの支援を持って、お義兄様の鉄壁守備を崩壊させようかな?」
「なら、ミサカの支援を持って、お義兄様の鉄壁守備を崩壊させようかな?」
指の間に鉄釘を挟み、腕を伸ばした番外個体は、まるで挑戦状を叩きつけるかのように当麻の方を指す。
すると、
すると、
「番外個体、気持ちは嬉しいけど程々にしてね…私が持たないから…」
あまり行き過ぎた事をされると本当に漏電して全滅確定。
そのことが分かっている美琴は番外個体にそう伝える。
そのことが分かっている美琴は番外個体にそう伝える。
(はぁ…早く漏電癖直さないと…)
この調子じゃ海水浴場や学園都市のプールなど行く事は出来ない。
うっかり漏電などしようものなら即退場。下手をすれば一般人を感電させてしまう。
うっかり漏電などしようものなら即退場。下手をすれば一般人を感電させてしまう。
(ん?それなら…当麻に…)
手を握っててもらえば良いんじゃないだろうか?
確かにそれなら漏電しそうになっても能力が発動する事は無いし、自分も嬉しい。
なんだ、簡単な事じゃないか。
確かにそれなら漏電しそうになっても能力が発動する事は無いし、自分も嬉しい。
なんだ、簡単な事じゃないか。
(えへへ…)
いつでも何処でも当麻と一緒。そう考えるだけで自然と顔が綻びるのを感じる。
そんな事を考えていると、目の前で何かが左右に動いている事に気付く。
そんな事を考えていると、目の前で何かが左右に動いている事に気付く。
「えへへ…はっ!?」
「お姉様、大丈夫?つーか涎出てるよ?」
「ッ!?」
「お姉様、大丈夫?つーか涎出てるよ?」
「ッ!?」
番外個体の言葉に慌てて口元を拭う美琴。
すると、番外個体がきゃははは!と笑いながら
すると、番外個体がきゃははは!と笑いながら
「うそうそ!涎なんか出てないよ!」
その言葉に一瞬固まった美琴は、
「がっ…、こっ…、…番外個体ぉ――!!」
「わー、お姉様が怒ったー!」
「わー、お姉様が怒ったー!」
言いながらその場を離脱する番外個体は、笑いながら言葉を続ける。
「つーかあれだよねー、お姉様は漏電癖より先に妄想癖を直した方がいーんじゃない?」
「う、うっさい!余計なお世話よ!!」
「う、うっさい!余計なお世話よ!!」
騙された事を知り、恥ずかしさで真っ赤になった美琴は、砂浜を駆けていく番外個体を追い回し始めた。
その姿を見送った当麻は、
その姿を見送った当麻は、
「元気だなぁ」
と呟く。そんな彼の元に接近するミサカが一人。
先程まで撃沈していた10039号だ。
先程まで撃沈していた10039号だ。
「お義兄様、そんな所で立ってないで本拠地で少し休みませんか?とミサカはさり気無く誘ってみます」
「御坂妹?もう体は大丈夫なのか?」
「はい、お陰さまで完全回復です、とミサカは自己の体調について報告しました」
「そっか、なら安心だな」
「御坂妹?もう体は大丈夫なのか?」
「はい、お陰さまで完全回復です、とミサカは自己の体調について報告しました」
「そっか、なら安心だな」
彼女の復活に一安心した当麻は走っていった美琴の方を見る。
すると、波打ち際で彼女が逃げんなこらー!!と叫びながらバチバチと放電しながら番外個体を追い回しているのが目に入る。
すると、波打ち際で彼女が逃げんなこらー!!と叫びながらバチバチと放電しながら番外個体を追い回しているのが目に入る。
(…あの様子じゃ暫らく戻って来そうにないか)
そう判断した当麻は10039号の方を見ると、
「じゃ、あいつ等が帰ってくるまで少し休憩しますか」
「はい、とミサカは頷きます」
「はい、とミサカは頷きます」
そして、少し歩いて本拠地に戻ってくると、
「だぁ~疲れたぁ~」
そう言いながらビーチパラソルの影に座り込む。
10039号はクーラーボックスからスポーツ飲料水を取り出すと、タオルと一緒に差し出す。
10039号はクーラーボックスからスポーツ飲料水を取り出すと、タオルと一緒に差し出す。
「どうぞ、とミサカはお義兄様のケアを開始します」
「お、さんきゅー御坂妹」
「お、さんきゅー御坂妹」
当麻がそれを受け取ると、10039号は彼の隣に少し間を空けて座る。
暫らく無言で遊びまわる4人を眺めていたが、当麻が『そういや』っと思い出したように10039号の方を見て話しかける。
暫らく無言で遊びまわる4人を眺めていたが、当麻が『そういや』っと思い出したように10039号の方を見て話しかける。
「その水着、まぁ何と言うか…上手く言えねぇけど…、似合ってるぞ?」
「…お世辞にしては下手くそですね、とミサカは嘆息します」
「うぐ…だってなぁ…」
「冗談です。お義兄様がミサカの水着に評価をくれた事は嬉しく思います、とミサカはお義兄様に及第点を与える事にしました」
「…お世辞にしては下手くそですね、とミサカは嘆息します」
「うぐ…だってなぁ…」
「冗談です。お義兄様がミサカの水着に評価をくれた事は嬉しく思います、とミサカはお義兄様に及第点を与える事にしました」
自分へのコメントはあいつ等(妹達)の所為で有耶無耶になってしまったと思っていた。
確かに取って付けたような言い方だったが、こうしてちゃんと評価をくれた事、自分の事も見てくれているという事がとても嬉しい。
薄く笑みを浮べ、目を細めて気持ち良さそうな顔をする10039号。
そんな彼女の表情を横で見ていた当麻は、彼女の頭にその右手をぽんっと置く。
すると、一瞬ピクリと反応した10039号が当麻の方を見ると、
確かに取って付けたような言い方だったが、こうしてちゃんと評価をくれた事、自分の事も見てくれているという事がとても嬉しい。
薄く笑みを浮べ、目を細めて気持ち良さそうな顔をする10039号。
そんな彼女の表情を横で見ていた当麻は、彼女の頭にその右手をぽんっと置く。
すると、一瞬ピクリと反応した10039号が当麻の方を見ると、
「…そんな事をして良いのですか?とミサカは頭をナデナデされて心地よさを感じつつも問いかけます」
「ん?何がだ?」
「お姉様の事です。こんな場面を見られた場合、嫉妬の雷で消し炭なのでは?とミサカは予想します。
そもそも何故このような行為をしたのか理解できません、とミサカは疑問を口にしますが気持が良いのでもう何でもいいやと適当に投げとく事にします」
「ん?何がだ?」
「お姉様の事です。こんな場面を見られた場合、嫉妬の雷で消し炭なのでは?とミサカは予想します。
そもそも何故このような行為をしたのか理解できません、とミサカは疑問を口にしますが気持が良いのでもう何でもいいやと適当に投げとく事にします」
スッと目を閉じ、その右手に頭を委ねる10039号は幸せそうに微笑む。
そんな彼女を見ながら、頭を撫で続ける当麻は苦笑いを浮かべると、
そんな彼女を見ながら、頭を撫で続ける当麻は苦笑いを浮かべると、
「美琴の方は…まあ大丈夫だろ…死なない程度にはしてくれる。…と思う」
――確証は無いが。
手を出してしまったのは、彼女の横顔を見た時、美琴とダブって見えたという理由なのだが、その幸せそうな顔を見てしまった以上、今更手を引っ込めるわけにもいかない。
それに、自分自身、彼女の笑顔をもっと見てみたいという気持ちもある。
手を出してしまったのは、彼女の横顔を見た時、美琴とダブって見えたという理由なのだが、その幸せそうな顔を見てしまった以上、今更手を引っ込めるわけにもいかない。
それに、自分自身、彼女の笑顔をもっと見てみたいという気持ちもある。
(今日くらいならいいか…)
そう考え、彼女が満足するまでこのままにしておく事にした当麻。
そういえば『今日くらい』というのは妹達の口癖だったなーと思い出し笑いをしていると、不意に自分の体に影が差した事に気付く。
なんだろう?と思いながら、その方向に視線を向けると…
そういえば『今日くらい』というのは妹達の口癖だったなーと思い出し笑いをしていると、不意に自分の体に影が差した事に気付く。
なんだろう?と思いながら、その方向に視線を向けると…
「…あんた達、随分と楽しそうねぇー」
腕を組み、空気をバチバチと鳴らす美琴が突き刺すような視線で当麻を睨みつけていた。
その迫力に圧倒された当麻は、
その迫力に圧倒された当麻は、
「あ…いやその…これはですね」
いい訳をしようと思考を巡らせるが、美琴と間違えてーなどと言えるわけもない。
蛇に睨まれた蛙のように固まっていると、10039号が甘えたような声で、
蛇に睨まれた蛙のように固まっていると、10039号が甘えたような声で、
「みゅ、手を止めたらだめです、とミサカはナデナデの再開を要求します」
至福の時を感じていた彼女は彼の手が止まった事に不満を漏らす。
すると、美琴が10039号に歩み寄り、
すると、美琴が10039号に歩み寄り、
「コラ!調子に乗るんじゃない!アンタもいつまで手ぇ乗せてんのよ!」
10039号の頭から当麻の手を払うように除けた美琴はそのまま彼女の頭にチョップを浴びせる。
「はっ!?お姉様!?いつの間にミサカの前に!?とミサカはお姉様のステルス性能の高さに驚愕します」
「さっきから居たっつーの!」
「さっきから居たっつーの!」
たった今正気を取り戻しましたー!といった感じの10039号に思わずツッコミを入れる美琴は小さく溜め息を付くと、
「ちょっと目を離すとこれなんだから…まあいいわ、今回は許してあげる。それより番外個体を追いかけて疲れたわ」
言いながら当麻と10039号の間に割って入り、腰を下ろす美琴。
すると、10039号がクーラーボックスからスポーツドリンクを取り出し、彼女に差し出しながら、
すると、10039号がクーラーボックスからスポーツドリンクを取り出し、彼女に差し出しながら、
「正直殺されると思っていました、とミサカは意外な反応に肩透かしを食らったような気分になります」
「何よ、お望みなら消し炭にしてあげてもいいのよ?」
「何よ、お望みなら消し炭にしてあげてもいいのよ?」
差し出された飲み物を受け取りながら、不機嫌そうに言葉を返す美琴。
その言葉を聞いた10039号は、
その言葉を聞いた10039号は、
「どういう理由でミサカを許してくれたのかは分かりませんが、許してくれるならそれでいいです、とミサカは余計な事を言うと命の危険があるので、素直に許される事を選びました。
では、お姉様も戻ってきましたし、ミサカは少し用がありますので一旦席を外します、とミサカはそそくさと退散します」
では、お姉様も戻ってきましたし、ミサカは少し用がありますので一旦席を外します、とミサカはそそくさと退散します」
立ち上がった10039号は、波打ち際でニヤニヤしながら様子を窺っていた番外個体の方へ歩いていくと、そのまま彼女と共に車の方へ歩いて行った。
その様子を見送った二人はなんだろう?と思いながら顔を見合わせていたが、当麻が美琴に話しかける。
その様子を見送った二人はなんだろう?と思いながら顔を見合わせていたが、当麻が美琴に話しかける。
「その、さ、…悪かった。反省してる」
「ううん、いいの」
「でもどうしたんだ?いつもなら電撃の一つや二つ飛ばしてくるのに…」
「…あんた達が普段私をどういう目で見てるかよーく分かったわ」
「ううん、いいの」
「でもどうしたんだ?いつもなら電撃の一つや二つ飛ばしてくるのに…」
「…あんた達が普段私をどういう目で見てるかよーく分かったわ」
はぁ…と溜め息を付いた美琴は、言葉を続ける。
「ま、今日は折角海に来たんだし、サービスってやつよ。それに…」
言葉を一旦切った美琴は、頭を撫でられていた時の10039号の表情を思い出し、目を細める。
(あんな幸せそうな顔されたら怒るに怒れないしね…)
目の前で自分の彼氏といちゃいちゃされてしまっては、穏やかではいられない。
だが、彼女達が笑っていてくれるなら少しくらい大目に見てやってもいいかなとも思ってしまう。
本当に妹には甘くなってしまったなーと思いつつ、 大きく一伸びした美琴は上目遣いに当麻の方を見ると、
だが、彼女達が笑っていてくれるなら少しくらい大目に見てやってもいいかなとも思ってしまう。
本当に妹には甘くなってしまったなーと思いつつ、 大きく一伸びした美琴は上目遣いに当麻の方を見ると、
「それよりさ、私の頭は撫でてくれないの?さっきからずっと待ってたんだけど」
「へ?あ、ああ」
「へ?あ、ああ」
美琴の言葉に今日は一体どうしてしまったのだろうか?と戸惑いながらもその頭を撫で始める当麻。
すると、彼女が更に近付き、当麻に体を預けるようにもたれかかると、気持ち良さそうに目を瞑る。
すると、彼女が更に近付き、当麻に体を預けるようにもたれかかると、気持ち良さそうに目を瞑る。
「えへへー」
「満足していただけましたでしょうか?」
「満足していただけましたでしょうか?」
彼女の緩んだ表情を見ながらそう問いかける当麻。すると…
「はい、とても良いものを見させていただき非常に満足です、とミサカ10032号は目の前の光景にニヤニヤしつつ回答します」
「夏は女性を大胆にさせるという事でしょうか?とミサカ19090号はお姉様の豹変ぶりを冷静に分析してみます」
「夏は女性を大胆にさせるという事でしょうか?とミサカ19090号はお姉様の豹変ぶりを冷静に分析してみます」
突然聞こえてきたその声にハッとした当麻は慌てて声のした方を見ると、二人の妹達が立っている事に気付く。
「御坂妹達!?いつからそこに!?」
「少し前から居ましたが?とミサカ10032号は回答します。
ただ単に混ざるタイミングが無かっただけです、とミサカ10032号は甘々な二人に頬を赤らめつつ説明します」
「少し前から居ましたが?とミサカ10032号は回答します。
ただ単に混ざるタイミングが無かっただけです、とミサカ10032号は甘々な二人に頬を赤らめつつ説明します」
その右手に空気の抜けた浮き輪をぶら下げ、淡々と説明する御坂妹。
彼女達は競争を終えた後、浮き輪を回収して戻ってきた所で、二人が良い雰囲気になっている場面に出くわしたようだった。
彼女達は競争を終えた後、浮き輪を回収して戻ってきた所で、二人が良い雰囲気になっている場面に出くわしたようだった。
「ちょっとー、手が止まってるわよー…って!?あんた達いつの間に戻ってきたの!?」
当麻の手が止まってしまった事に不満げな表情を浮べた彼女は彼の方を見て文句を言うのだが、その途中で妹達の存在に気付いたようだ。
その慌てたような反応を見た二人の妹達は『人の話を聞いてたのか』という顔で溜め息を付きながら、
その慌てたような反応を見た二人の妹達は『人の話を聞いてたのか』という顔で溜め息を付きながら、
「……さすがお姉様です、とミサカ19090号は完全に旅立っていたお姉様に返す言葉もありません」
「な、何よ!?言いたいことがあるならはっきり言いなさいよね!?」
「ではお言葉に甘えて。ミサカ達の前だからと遠慮せずに思う存分いちゃついてください、とミサカ10032号はハッキリ物を言ってみます」
「ふ、ふーん。じゃあ当て付けのようにベタベタしてもいいって事ね?」
「ミサカは一向に構いませんよ?寧ろドンと来いと言ったところです、とミサカ19090号は内心わくわくしながら回答しました」
「まあ、ミサカ達が居るとやり辛いのは分かりますので、ミサカは日陰で昼食の準備でもしてきます、とミサカ10032号は空気の読める出来た妹である事を猛アピールします」
「ではミサカはビニールプールを膨らませます、とミサカ19090号はガサゴソとバックを漁ります」
「おいおい、そんな物まで持ってきてたのか?つか何に使うんだそんなもん」
「それは後のお楽しみです、とミサカ19090号は回答しますが、エアーポンプが無いことに今更気付きます。…自力で膨らませるしかないのでしょうか…?」
「な、何よ!?言いたいことがあるならはっきり言いなさいよね!?」
「ではお言葉に甘えて。ミサカ達の前だからと遠慮せずに思う存分いちゃついてください、とミサカ10032号はハッキリ物を言ってみます」
「ふ、ふーん。じゃあ当て付けのようにベタベタしてもいいって事ね?」
「ミサカは一向に構いませんよ?寧ろドンと来いと言ったところです、とミサカ19090号は内心わくわくしながら回答しました」
「まあ、ミサカ達が居るとやり辛いのは分かりますので、ミサカは日陰で昼食の準備でもしてきます、とミサカ10032号は空気の読める出来た妹である事を猛アピールします」
「ではミサカはビニールプールを膨らませます、とミサカ19090号はガサゴソとバックを漁ります」
「おいおい、そんな物まで持ってきてたのか?つか何に使うんだそんなもん」
「それは後のお楽しみです、とミサカ19090号は回答しますが、エアーポンプが無いことに今更気付きます。…自力で膨らませるしかないのでしょうか…?」
呆然とする19090号。そんな彼女の肩をぽんっと叩いた御坂妹は親指を立てて、ウインクをすると、そのままバーベキューの準備を始める。
暫らく震えていた19090号だが、意を決したようにビニールプールに空気を送り、膨らまし始めた。
暫らく震えていた19090号だが、意を決したようにビニールプールに空気を送り、膨らまし始めた。
「えっと、じゃあ私達も手伝おっか」
「そうだな。っても何をすれば良いかわかんねぇな」
「ビニールプールはどうしようもないから、昼食の準備を手伝えば良いんじゃない?」
「そうだな。っても何をすれば良いかわかんねぇな」
「ビニールプールはどうしようもないから、昼食の準備を手伝えば良いんじゃない?」
ふー、ふーっと一心不乱に空気を送り続けている19090号を横目で見た当麻は、
「…そうすっか」
と言って美琴と共に御坂妹の手伝いに動き始める。
そして、一人でやるからゆっくりしてなさいと言い張る御坂妹をねじ伏せ、三人で準備を進める。
準備といっても、前日にほぼ済ませてあるので、やる事は炭に火をつける程度なのだが…
そして、一人でやるからゆっくりしてなさいと言い張る御坂妹をねじ伏せ、三人で準備を進める。
準備といっても、前日にほぼ済ませてあるので、やる事は炭に火をつける程度なのだが…
「この『じぇる』をたっぷり塗ると火が付き易いらしいです、とミサカは恐る恐るじぇるを炭に近づけます」
「何ビビッてんのよ?つかジェルじゃなくて着火剤と言いなさい」
「何ビビッてんのよ?つかジェルじゃなくて着火剤と言いなさい」
プルプルと手を震わせながら容器を近付ける御坂妹の姿に、美琴が呆れたように突っ込む。
すると、御坂妹が視線だけ美琴の方に送り、言葉を返す。
すると、御坂妹が視線だけ美琴の方に送り、言葉を返す。
「注意書きに飛び散ると書いてありましたので、とミサカはじぇるの危険性について述べます」
「それは火が付いてる時に継ぎ足しするからだぞ?まだ火は付けてないから大丈夫だって」
「そうではなくて、ミサカは発電能力者ですから、出した瞬間飛び散る可能性があるのでは?とミサカは予想を立て、恐れおののきます」
「あぁ…そういう事ね。能力を使わなければ問題ないわよ。そんなに心配なら当麻にやってもらったら?」
「それは火が付いてる時に継ぎ足しするからだぞ?まだ火は付けてないから大丈夫だって」
「そうではなくて、ミサカは発電能力者ですから、出した瞬間飛び散る可能性があるのでは?とミサカは予想を立て、恐れおののきます」
「あぁ…そういう事ね。能力を使わなければ問題ないわよ。そんなに心配なら当麻にやってもらったら?」
美琴の提案を聞いた御坂妹は当麻の方と、着火剤を交互に見る。
そして、小首を傾げて少し考える仕草を見せると、ハッとしたように言葉を発する。
そして、小首を傾げて少し考える仕草を見せると、ハッとしたように言葉を発する。
「お義兄様に渡した場合、お姉様かミサカの水着は焼けて無くなるかもしれませんが良いのですか?とミサカはお義兄様の不幸体質を指摘しつつ確認を取ります」
「いやいや、流石にそれは無いと思うぞ?」
「それ以前に散々危険な事しといてこの程度でビビるのって変な話よね」
「いやいや、流石にそれは無いと思うぞ?」
「それ以前に散々危険な事しといてこの程度でビビるのって変な話よね」
結局、御坂妹から着火剤を奪った美琴が炭に塗る事になり、そのまま火を点ける所まで行った。
そして、当麻が炭に風を送り、炎を全体に回す作業をしている時、ポリタンクを両手にぶら下げた番外個体と10039号が帰って来た。
そして、当麻が炭に風を送り、炎を全体に回す作業をしている時、ポリタンクを両手にぶら下げた番外個体と10039号が帰って来た。
「ただいまー。…お?19090号頑張ってるねぇ…」
「自力で膨らませているのですか…?とミサカ10039号は8割ほど空気の入ったビニールプールを見て戦慄します」
「フ、フフ…この程度どうということはありません…、とミサカは若干酸欠になりそうな事を隠し…あ、ふわふわしてきました…」
「自力で膨らませているのですか…?とミサカ10039号は8割ほど空気の入ったビニールプールを見て戦慄します」
「フ、フフ…この程度どうということはありません…、とミサカは若干酸欠になりそうな事を隠し…あ、ふわふわしてきました…」
そのまま倒れこむ19090号。それを見た番外個体と10039号は慌てて駆け寄ると、彼女の容態を確認する。
意識はあるようだが、その息は上がり、話しかけるとうわ言のように『大丈夫です』と返事が返ってくる。
意識はあるようだが、その息は上がり、話しかけるとうわ言のように『大丈夫です』と返事が返ってくる。
「…これちょっとやばいんじゃない?少し横にしといた方が良さそうだね」
「…全くもって役に立たない野郎です、とミサカ10039号は毒付きますが、内心焦りつつ19090号を本拠地に運ぶ事にします」
「…全くもって役に立たない野郎です、とミサカ10039号は毒付きますが、内心焦りつつ19090号を本拠地に運ぶ事にします」