とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part02

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-②退院までの日々-


数日前、とある事故に上条と美琴は巻き込まれ、美琴は記憶喪失になった
上条はある夢を見て目を覚ます
「………夢か」
事故で美琴が記憶を失ってから上条はほとんど眠れていない
それも今見ていた夢のせいだ

夢の内容は大抵こんな感じである
『上条当麻…あなたは約束を破るんですね?』
といつかのアステカの魔術師が言い放ち
『そんなあなたには御坂さんを任せるわけにはいきませんし、失望しましたよ…』
そう言って美琴を連れて行く
「ちょっと待ってくれ!」
そう叫ぼうとするが俺は声が出ず、身体は地面に溶けるように沈み始め…最後は連れられて行く美琴に
『あなた………だれ?』
と言われて目が覚める、これをここ数日毎晩見る

上条は病室のベッドで上半身を起こし時計を見る
時刻は午前3時、寝てからは結構な時間が経っているがそれでもまだ起きるには早い時間だ
それでも上条は寝ようとしない、またあの夢を見るのが怖い…
アステカの魔術師が怖いわけではない、美琴が連れて行かれるのが怖い…そして自分を忘れてしまっている事にも…
「なんで俺はこんなにこの夢が怖いんだろうな……やっぱり記憶になくなるのは嫌なもんだからか?」
そんな風に考えた上条だが本当のところは今の結論に納得はいってない、何か違う…そう思うのだ
しかし、結論は今出ないことが明らかなので上条は窓の外を見る、カーテンは最近閉めないことにした
カーテンを閉めると息苦しさを感じるようになったからだ、理由はわからない…とにかく苦しい事は確かだ
窓の外は少し建物や街灯、月で明るくなっているが暗い世界が広がっている
「ここ数日でも美琴は記憶が戻る気配はないよな…」
上条はそう呟き外の風景と同じように暗くなる、ここ数日上条は体調が許す限り美琴の病室を訪れて話をしている

数日間の会話を思い出す
「なあ御坂、お前って今は記憶喪失だけど電撃とか出せたりするのか?」
「………上条さん、私は電撃とかをだせるのですか?」
「ああ、いつも俺に向ってビリビリーってな」
そう上条はおどけて話すが
「あの……上条さん、えっとその…ごめんなさい、そんな危険な事をしている私なんかを心配させて」
美琴は表情を曇らせ、すごく悲しそうな顔をする
「おいおい、御坂…そんな顔すんな、お前と俺には普通みたいなもんだからな気にしなくていいぞ?」
上条がそう言って笑うと美琴は「…えっと、わかりました」と戸惑いながらもわかってくれたようだ

「なあ、御坂怪我が治ったらお前の事を心配してる奴に会わせたいんだが…いいか?」
上条はそう言うが
「えっと、上条さん…今は記憶がないのでその人と会ってもその人を傷つける事にならないでしょうか」
と美琴は人に会うのに消極的になっていた、いつもの美琴らしくない反応だ
いつもなら友人を心配させない為に無理にでも元気なフリをするはずだと思った上条だが
それでも人を気遣う部分は美琴らしいと思うとも上条はそう感じた
「そうか、じゃあ会う気になったら俺に言ってくれ、そいつに連絡入れるから」
上条はそう笑顔で美琴に答える
「わかりました、上条さん」

「ねえ、上条さん……私ってすごい人だったんですか? 看護婦さんがそう言ってくれたんですけど」
数日間の中でも美琴に質問を初めてされて驚く上条
「え? ああ、まあ学園都市に7人しかいないレベル5の第三位だもんな…そりゃまあすごい事だが……」
「そうなんですか」
そう言って美琴はその日はずっと窓の外を見ていた

その次の日に上条は看護婦と美琴の会話に頭の中が真っ白になるほど怒りを覚える
「ねえ、御坂さん…あなたってお見舞いに来るのが妹さんか男の子一人ってどんだけ寂しい人生なのよ」
キャハハハと笑っているのは若い看護婦、扉の前に立っている上条がかすかに聞き取れる会話
「さすがにレベル5ともなると友達も出来難いわよねー、それとも性格の問題だったのかしら?
 あら、そういえば今記憶喪失だったわね、ごめんなさいね? 今のあなたに性格の話してもわからないか」
と明らかに言葉の暴力を行使している 、上条は拳に力が入るのを感じて扉を力一杯開け放つ
バンッ、と扉が開き看護婦はビクッと身を跳ね上げ恐る恐るこちらを見て、冷静を装いながら話しかける
「病室の扉は静かに開けるものよ? 最近の子供はそんなことも知らないのかしら?」
そう注意するような言葉だが上条の拳にさらに力が入るのを見て慌ててこう言った
「な、なによ…その反抗的な目は、私があなたになにかした? してないでしょう」
そう言い残して逃げるように看護婦は走り去っていった
「………」
上条は少し看護婦が走っていった後を睨みながら見ていたが美琴に目をやり困った顔になる
美琴の目には大粒の涙の塊が溜まっていて今にも決壊しそうになっていたからだ
「はぁ、御坂…泣くなら泣いてスッキリしちまえ、落ち着くまでここにいてやるからよ」
そう言って上条は美琴のベッド横にパイプ椅子を持って行き腰掛けて頭を撫でてやる
美琴はそのまま泣き出してしまった、声を押し殺して震えながら
あの看護婦、御坂にこんなことしやがって…と上条は目の前の美琴を見ながらさらに怒りが込上げてくるのだった
それから美琴が泣きつかれてそのまま寝てしまったので上条は病室を後にした

それが昨日のことだった、上条はもう一度寝るのを諦めて朝日が昇るまで窓の外を見ていた
それからダラダラと昼過ぎまで検査などして今日は美琴の病室を訪れる前にナースセンターを訪れた
「あの…御坂さんの担当の看護婦さんはいますか?」
そう尋ねるとすぐに返事があった
「ああ、あの部屋の御坂さんね、いつもご苦労様、あなたの方の怪我も酷かったんだからしっかり休んでね?
 で……御坂さんの担当だったわね、それが…昨日解雇されちゃってね、何故かはよくわからないんだけど……」
と親切に答えた新人の看護婦さんが「あ、そうそう私が今日から君達の担当になるから宜しくね」と言っていたので
上条は一安心だった、しかし何故自分も担当が替わったのだろうか?とふと思ったが気にしないことにした
実は上条は色々とやらかしている前科があり(オーディオドラマなど参照)古株の看護婦さんには少し不評なのだ

それはさておき、上条は目的が果たせそうにない様なので早々にナースセンターを後にして美琴の病室に向った
ドアを開けて
「おっす、御坂元気かー?」ガンッ!
上条は最後に白い美琴と飛んできたテレビのリモコン見て意識を刈り取られた………

意識を取り戻すと顔が真赤になった美琴がベッドに座ってうつむいている、自分は対峙する椅子に身体を預けている
多分美琴が俺を引きずってここに座らせてくれたのだろう、その所為か少し服が汚れている
「えっと、御坂さん……私めの鼻が痛いのはさておき、なんで顔を赤くして敵意ある目で睨んでいるんでしょうか…」
と上条は困った顔になる、そんな顔でも何故か美琴のことを、あ…可愛いと思ってしまったからでもあり…
対応にも困っているからで……
「上条さん……着替え中に入ってきて、な・ん・でってことはないんじゃないですか?」
プルプル震えているのは変わらないが、睨みから涙目になる美琴
「ちょ、ちょっと待て、俺は何も見てないぞ! そして断じて見ようなんて考えてない…」
その言葉がいけないと言った後に気づく、上条としては見ようとすれば不幸に発展するのでそう言ったのだが……
「そうなんですね……上条さんは私には女の子の魅力がないって言うんですね…」
さらに涙目になる美琴
記憶喪失の美琴って今まで以上に扱い難いな……上条はそう思った
「いや、御坂は可愛いし、十分魅力がありますって……」
泣かせない為に言った上条であったがスラスラ出てきた言葉に上条は自分でも驚き
あれ? 俺って御坂のことこんな風に思ってたっけ? と思った
「それに、いつもはビリビリしてて怒りっぽいけど笑うとすげーこっちも癒されるというか…怒ってても可愛いし…」
ただ、思いつくままに喋っていた上条だが自分でももしかしてと思う、俺ってもしかして御坂のことが好き…なのか?
「……もういいです、恥ずかしいですから…」
その一言で上条は口を閉ざす、目の前の美琴が今まで以上に顔を赤くしているのが目に入る

「上条さん……今まで聞いてなかったんですけど、上条さんって私のなんなんですか?」
美琴は今まで聞いていなかったのが不思議な質問をする、話を逸らしたいんだろうと上条は自分も同じなので乗る
「うーん、俺からすれば友達以上の様な気がするんだが…御坂からは一度も聞いてないしな、まあ親友かな…」
友達以上でなければロシアの件で来てくれることもなかっただろうと上条は思うのだが
「そういえば、御坂と一緒に事故に遭う前に話があるって言われてたっけ……」
上条は暗くなる、買い物の前に聞いておけば良かったな…と上条は思うわけで
「大丈夫ですよ、記憶が戻った時に私が話せば済むことですし、上条さんには毎日会いに来て貰ってますから
 すぐに記憶が戻りますよ」
そう言ってまだ赤い顔で上条に微笑む美琴
「ああ、悪いな……俺が元気付けないといけないのに逆に元気付けられちまった」
上条もそう言って微笑む

それから上条は今まで話していなかった大星覇祭での罰ゲームや恋人ごっこ等の話をした
さすがに一方通行や妹達の戦いの方は話さない事にした、ショックが強い以前にまたあの様な顔を見たくないからだ
「これで一応一通りは話したんだが…やっぱり日常の事までは俺にはわからないな、白井とかいれば助かるんだが」
と上条は美琴を一直線に慕う少女の名前を挙げる
「あの…上条さん、その白井さんと会うのも今は避けた方が良さそうな気がするのですけど…ショックもあるので」
確かに、あの白井が今の美琴を見れば泣くかもしれない、それ以前に俺の命はないなとも感じる上条
「そうだな、一先ず会うって意見は先延ばしかもな…お、そろそろ飯の時間か一旦病室に戻らねえと」
と上条は言ったが
「待ってください……一緒に食べちゃダメですか?」
フルフルと震え、上目遣いのウルウルした瞳で見られ上条は
「ダメじゃないです」
そう答えるしかなかったので上条はナースセンターまで行き、例の新人看護婦に話しかけ了承を貰う

こうして夕食は美琴の病室で食べる事になった
怪我としては上条が酷いのだが美琴は頭に衝撃を受けているとのことからここで食べる事になった
それに酷いと言っても上条はすでに人を超える回復力で退院間近であるのだから問題なしである
「そういえば御坂は退院の日って決まったか? 俺は2日後なんだが…」
「私は記憶が戻るまでここに居ていい、って言われましたのでそれに従おうかなって」
「そうか、そのまま寮に戻ってもダメだろうしな…」
他愛ない話をしていたが
「退院したら会う時間が短くなりますね…」
と夕食を食べ終え就寝時間が迫り、上条が席を立とうとした時に美琴がそう言った
「大丈夫だ、どんなに遅くなっても御坂に会いに来てやるよ、絶対にな」
そう言って上条はドアの前でニッっと笑って見せると「それじゃ、また明日な」と言って行ってしまった

病室に戻りながら上条は
「俺…御坂を好きになったかも…」
前々から可愛いとかは思ってはいたがまさか好きになるとは思ってもいなかった上条
「飯の時も目合わせる事出来なかったし…意識してるなあ…俺」
と上条は本気で好きになってしまった様子であった

病室で美琴はベッドに潜りながら
「上条さん、明日も来てくれるかな…それなら早く明日にならないかな…」
本人が気付かない呟き、美琴はそのまま深い眠りに落ちる


次の日
上条はあの悪夢から開放されていた、考える事が変わったからかもしれないが正直わからないので気にしない
しかし、ここ数日ぶりの快眠を味わった上条だが心中は昨日の美琴の事で起きた途端にいっぱいになっていた
「あー…早く御坂に会いてーな…」
自分で漏らした一言に上条は驚いた
「って俺は何言ってんだー!!」くすくす
叫んだ後に思い出したのだが上条は現在あの新人看護婦に血液検査をしてもらっている最中だった
顔を赤くする上条をよそにくすくす笑う看護婦
「あ、あの…御坂にはこのことは内緒に…」
「わかってますよ、ふふふ」
そう笑って看護婦は行ってしまった
その後、看護婦さんの姿を見送り上条はベッドでゴロゴロと恥ずかしさのあまり転げまわるのだった

一方、美琴の病室で
「はぁ…上条さん早く来ないかな…」
バンッ「はーい、御坂さーん注射の時間ですよー」
いきなりドアを開けて入って来た看護婦さんに驚き、ビクッと身が跳ねる美琴
「ってそんなに驚かなくてもいいじゃないですか……まあ、それはさておき注射しますね」
「あ、はい…」
注射をしている間、看護婦さんは美琴を見てニヤニヤしている
「そういえば上条さん、今日の検査終ったみたいですよ」
そう言ってまたニヤニヤし始める
「あ、そ、そうですか…」
美琴はそれに気付かず、少し嬉しそうにする
そんな姿を見て看護婦は思う、この娘可愛い! こういう子供欲しいわーと
まあ、それは置いておく事にして
「そういえば看護婦さん、上条さんの担当もしてるんですよね? なんか私ってどうとか聞いてませんか?」
看護婦としては何故私に聞くのだろう? と思ったが、ああと気付く…この娘は面会してるの上条さんだけだっけと
そしてもうこの際言っちゃえ、とちょっと前に口止めされたことを言う
「あー、早く御坂に会いてーなーですって、さっき上条さんの血液検査の時にそう言ってましたよ?」
とかなり口の軽い看護婦さんでした……そして美琴はそれを聞いて顔を赤くし
「え、そ……そんな、ふ…ふにゃー」バリバリバリバリッ
無意識で漏電は行われるようです、そして記憶喪失でも「ふにゃー」は健在のようです
「キャーーーーー!」
病院内に看護婦さんの悲鳴が響く…

担当の看護婦さんは軽症でそれほど酷くないそうです

それからしばらくして……窓から差し込む夕日の眩しさで目を覚ます美琴
美琴は目を覚ますとおでこにひんやりとした物があるのを感じた
「あれ? 私っていつの間に寝ちゃったのかな…」
「お、御坂、起きたか?」
おでこにひんやりとした物があったのは上条が濡れたタオルをのせてくれていたかららしい
「なんかここの部屋の空調ぶっ壊れたらしくてメッチャくちゃ熱くてさ、お前は顔赤くして寝てるし……
 熱にでもやられて寝込んでるかと思って濡れタオルをのせてたんだが…冷えちまったか?」
「あ、その…心配してくれてありがとう、上条さん…」
美琴は上条の行為が嬉しく、自然と笑顔になる
「気にすんな、その笑顔が見れただけで上条さんは幸せいっぱい……って俺は何言ってんだー!!」
上条は自分が言ってしまった恥ずかしいこと気付き絶叫する

「上条さん…あの! えっと…当麻さんって呼んでもいいですか?」
美琴は少しでも上条の近しい人物になりたく思い、聞いてみる
記憶喪失前の美琴でもなしえなかった、名前で呼ぶという事を達成しようとしていた
「あ、ああ、いいですとも、なら俺も美琴って呼ぶな」
上条があっさりとオーケーを出してくれたので美琴は名前で呼ぶという項目を達成した…が
「で…美琴、なんで急に名前で呼ぼうと思ったんだ?」
それでも追撃は残っていた様でそう質問された美琴
「え、えーとですね…呼びたいと思ったから、じゃダメですか?」
「いや、別にいいけどさ」
上条はちょっとふて腐れている様だ…何故かはわからないが美琴はそう感じた
「あーそうだ美琴、今日もこっちで飯食ってっていいか? やっぱり一人で飯は寂しくてさ」
とふて腐れている様な感じがなくなり、今度は少し恥ずかしそうにする上条を見て
「ふふふ、当麻さんって子供っぽいですね」
美琴はそう言って笑う
「いや、昨日は美琴が一緒に食べようって言い出しただろ!」
「私はまだ中学生だからいいんですー」
上条が反論してきたが美琴は舌を出して自分を正論化させる
「くそ…高校生は言っちゃダメなのか…」
何故かすぐに負けた気になる上条
「でも、当麻さんからのお誘いは嬉しいです」
と今日一番の笑顔の美琴を見ると上条は『ああ…なんかもうどうでもいいや』と思うのだった

その後も昨日と同じく他愛ない話をしながら夕食を食べ、今日は消灯までいたいと思う上条
「なあ美琴、消灯までここにいて良いか?」
「急にどうしたんですか? まさか…一人が怖いとかは言いませんよね?」
と少し意地悪な笑みを浮かべる美琴
「あー、違う違う…もう少し美琴と一緒にいたいなーと思っただけだ」
上条は少しやけになって言う
それを聞いて美琴は顔を真っ赤にして黙り込む
「……………」
「…って美琴さん? これには少し反応を示してもらえないと上条さんはもの悲しいのですが…」
上条は反応の薄い美琴(上条視点)に『もしかして帰れとか言われるか?』と思ったが
「私も……当麻さんと一緒にいたい…かな」
美琴は顔を上げそう言う、上条はそこで美琴の顔が赤いことに気付き…『ああ、恥ずかしかったのか』と理解する
鈍感というレッテルが少し緩和されてきた上条だった

それからしばらく美琴と一緒にいて話していたが見回りの看護婦さんにバレ、上条は連行されていった

美琴の病室は静かになる
今まで話していた上条は自分の病室に連れて行かれたのでこの一人では十分すぎる病室の広さに寂しさすら感じる
「今までの私と違う私なのに多分当麻さんはきっと接し方を変えてないんだろうな……」
消灯され月明かりが差し込む窓を見ながら美琴は呟く
「それでも今は卑怯かもしれないけど当麻さんは私だけを見てくれる時間がある…当麻さん彼女いるのかな…」
とこの短期間で記憶を失った美琴は記憶を失う前と同じくらい…いや、それ以上に上条のことを好きになっていた
「今日はもう当麻さんに会えないし、寝ようかな」
そう言って美琴は目を閉じ、夢の世界に落ちて行く

連れてこられた病室はしんと静まり返っていて寂しさを感じる
上条は看護婦さんにこっぴどく怒られ病室に連行されてきたわけだが…
「美琴ともう少しいたかったな…」と反省はしていない様だった
それにしても、と上条は考えた
記憶を失う前は元気いっぱい突風の様な少女だった美琴は今は落ち着いたそよ風の様な少女になっている
「俺のこの気持ちってどっちの美琴への気持ちなんだ?」
上条はそう悩んでいる、記憶が戻る前に告白は考えていない…美琴も大変な時だから……
でも、もし今の美琴の方が好きだとしたら…どうなのだろうか…上条らしくもない思案をするが
「結局はよくわからないんだろうな」と結論付け寝ることにした
外の月明かりで照らされた病室は少しの寂しさと少しの落ち着きをもたらし、上条を夢の世界に誘う

上条退院の日
上条は私服(と言っても学校の制服なのだが)を着て美琴の病室に来ていた
「おっす美琴、今日で俺退院なんだけどよ…なんかあったらこれで連絡入れろよ?」
と上条は美琴に薄い黄色のラッピングがされている小さい箱を渡す
「これ…なに?」
「まあ、開ければわかるって」
「そう」と言って美琴は丁寧にラッピングをはがし開ける
「これって…携帯電話?」
「そう、お前の携帯電話だ…事故の時に壊れてデータが吹っ飛んで壊れてたのを修理に出しといてもらったんだ
あ、また俺の電話番号入れといたから困ったことがあったらいつでも連絡くれよ」
上条はそう説明してくれた、最後の部分はここ数日での上条とのやりとりで「当麻さんらしいな」と思う美琴
「でも、病院で携帯ってつかえるんですか?」
「ああ、ここの病院はなんか使えるみたいだったぞ、ほれ」
と美琴の質問に素早く答え上条は自分の携帯を取り出し電話をかけてみる
ケロケロ、ケロと美琴の携帯が鳴り出ると上条の声が聞こえる
「な? まあ、面会時間中ならずっと居てもいいんだけどよ…迷惑じゃなきゃな」
そう言って頬を掻く上条は少し赤くなっていた
「なら、当麻さん…面会時間中一緒に居てくれませんか?」
美琴も赤くなって上条に再度確認で問う
「ああ、美琴が嫌だって言うまでいてやるよ」
そう言って上条と美琴は互いに笑いあう

そして面会時間も過ぎようとしていた頃
「それじゃ、そろそろ俺行くわ」
「うん、また明日も来て下さいね?」
「ああ」
と短い会話を交わし今日は帰ることにする上条
「当麻さん、気をつけて帰ってくださいね」
「おう、なんかあったらメールでな」
そうして上条は病室から出て行った

「ふう…なんとか目は合わせられるようになったか……」
と今日の反省をあげる上条は病院から出て例の公園のベンチで一人呟く
「やっぱり告白した方がいいかな…でもなあ……」
はたから見れば完全に独り言を言う危ない人のようにごちゃごちゃと呟き続ける上条
「で、誰に告白するのかにゃーカミやん」
「おわっ、って土御門! お前なんでこんなところに…」
いつの間にか上条の座っているベンチの前には土御門がいた
「なんでって補習の帰りだぜい、ここ数日カミやん休んでたのはそれを悩んでだったのかにゃー?」
と下品な笑みを浮かべる土御門に対して上条は
「違う違う! 断じてそんな悩みで休んでいたわけじゃ…って何してるんだ? 土御門」
否定していた上条だったがそもそも話を聞かず携帯を取り出した土御門に疑問をぶつける
「ん? チェーンメールを回してるだけだぜいカミやん、内容は聞かない方がいいにゃー」
そう言って「じゃ、またにゃーカミやーん」と去って行ってしまった
「なんだったんだあいつ…」
といぶかしんでいた上条だがその後、たくさんのからかいメールが携帯に届くのを上条はまだ知らない

帰宅してしばらく経ちました
メールの始末を終らせた上条に美琴から電話がかかってきた
~♪~~~♪~~♪かちゃ
「もしもし、美琴か? あーそういえばもうすぐ就寝時間だったな」
時計を見てかけてきた理由を言って見る
「うん、だからね…声が聞きたくなっちゃって電話しました」
とこれって友達のする電話の会話じゃないよな? と思う上条だがそれは言わないことにした
「ま、俺も美琴の声が聞けるんでよかったですよ」
そう言ってもらえた事に自分の本音を漏らす上条
「ねえ、当麻さん…明日来てくれるよね?」
心配そうな声で聞く美琴
「ああ、もちろん会いに行きますとも…それが美琴の頼みならな」
そう言って上条は電話越しに微笑みかける
「うん、その言葉聞いたら落ち着いた…ありがとう、おやすみなさい当麻さん」
「ああ、おやすみ」
そう言って電話を切る、それから少しして上条が呟いた
「俺は落ち着かなくなっちまったんだが…」

こうして美琴のことを意識しだした上条は眠れぬ退院初夜を迎えるのであった


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