とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

17-14

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匿名ユーザー

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「東原、大丈夫か? そろそろ休憩した方が」
「ゼェ、ゼェ、ダ、ダメだ! 一球でもと、止めねぇかぎりは休まねぇ! さ、さぁ来い!」
「分かった、東原の熱意に俺も応えないとな。いくぞ、せーのっ!!」

 東原のGK練習が始まって10分、東原は未だに真夜がペナルティエリア外から放つシュートを止められずにいた。
 今、東原が行ってる練習の課題は『威力の高いシュートをしっかりと受け止める』というものなのだが、悉く自分ごとゴールを決められているのだ。

「(待ちの姿勢じゃ取れやしねぇ、ボールに出来るだけ近づいてキャッチだ! これならっ!)ぐふっ! ぐ、ぐおおおおおおおおおっ! ……や、やっと一球、止められた……げふっ」
「ゴールに入るギリギリで止まったか、頑張ったな東原。とりあえず回復するまで休めよ、朝練終了までまだ時間あるんだからさ」
「お、おう、まだまだやるぜ、お、俺は……(くそぉ、あんまり嬉しくねぇ。井ノ原弟のシュート、助走無しでしかも井ノ原姉を背負っての状態でようやくって……。が、頑張ろう、モテる為に)」

 必死になって一球のシュートを止めた東原の頑張りに真夜もさらに頑張ろうと決意するが、東原の頑張る動機がやや不純なものだとは気付いていない。
 ちなみに真夜、土御門からの念押しでシュート練習の時は【瞬間超人】の強化は20で抑えているが、その状態でなら全力を出しても良いと許可を得ている。
 東原が小休止している間、真昼を未だおんぶしたまま走りこみをしようとしたが入学式の一件で親しくなった後輩に挨拶をされる。

「お早うございます井ノ原先輩」
「心理掌握さん、おはよう。そっちも朝練……なんだよね? いいの? 俺に挨拶なんかしてて」
「構いませんわ。私はGKで司令塔、他のメンバーに最適な指示を下すのが役目ですから。それよりも井ノ原先輩、先輩のお姉様」
(うん、知ってる。心理掌握さんが来る少し前から真昼さんが起きてるのは気付いてるよ)

 親しげにレベル5第六位の心理掌握と挨拶を交わしている真夜に嫉妬する男子は意外と少なかった、彼がおんぶしている真昼のおかげである。
 その真昼が起きていることを教えようとした心理掌握に真夜が心の声を聞かせることで待ったをかけるが、初めてにしては上手くいった。

「そうですか。ところでア、アク様は……? どうやらサッカーでは無いようですが」
「一方通行なら野球だよ。せっかくだから見に行ったら? ただし出来るだけ邪魔にならないようにね。一方通行を怒らせるのは心理掌握さんも望まないでしょ?」
「当然ですわ! 私はアク様をもっと知りたいのであって怒らせたいのではありませんから。ですがご忠告、感謝いたしますわ。では井ノ原先輩、お姉様とごゆっくり」

 大人しく、しかし楽しそうに一方通行の所へ向かう心理掌握の姿はとても入学式に非道な手段を取った人物とは思えないほどである。
 心理掌握が去った後で真夜は真昼を降ろそうとしたが、真昼がおんぶの態勢から動こうとしないことに困ってしまう。

「あの~、ま、真昼さん? 起きてるのは分かってるから降りてくれる? そろそろ真昼さんとのパスワークの練習したいから」
「本当ならまだ真夜の背中に甘えたかったけど仕方ねーな。俺も真夜とのコンビネーションをもっともっと強めたいと思ってたし(それに二人っきりで練習してーしな♪)」
「ありがとう真昼さん。あ、でもそうすると東原の練習はどうしよっか? 誰か他の人にでも」

 真夜が真昼とのパスワークの練習を始めるに当たって東原のGK特訓の相手に悩んでいた時、真昼がゴールの方向を指差した。
 そちらに視線をやると、東原を相手に雪の翼6枚でのシュート(?)を試している月夜の姿があった。

「どう? 東原くん。今までは井ノ原くんの威力の高いシュートだったけど私のような能力の付加されたシュートは」
「こ、こっちはこっちで、け、結構きついな……。けど、絶対負けねー! ガンガン来いやーーーっ!」
「東原の方は白雪さんに任せて大丈夫そうだね。じゃあ俺達は俺達の練習しよっか♪」
「おうっ♪」

 こうして井ノ原ツインズは仲良く、しかし手加減無しのパスワークの練習を始めるのだった。
 なお、東原は後に語る、井ノ原弟相手でも白雪相手でも地獄には変わりないと。

―――――――――

 場面は変わってバスケ組、青ピは黒子が見守る中、災誤相手に当たりの強化特訓に明け暮れていた。

「さあ来いゴリラぁ!!」
「オリャア!!」
「ビブルチッ!?」

 ドカッ!!と青ピが吹き飛び、ゴロゴロ転がる。

「こんなものか」
「……クッ、さすがゴリラや、うちのライフはもう0よ」

 青ピが諦めかけたその時、愛しの恋人からのエールが聞こえた。

「◯◯様!!ガンバってくださいまし!!」
「ライフ五千億チャージ!!さあ来いゴリラぁ!!」
「オリャア!!」
「ビブルチッ!?」

 ……さっきからコレの繰り返しである。
 そんな青ピを見ていた浜面達は、それを見てそれぞれ思ったことを口に出す。

「無限ループってこぇな……」
「これで何回目だ?五百から後は数えてねえや」
「私は七百六十五までしか……」
「あっ、また飛んだ」

 正直言って酷い集団である。
 だがそろそろ時間も時間、浜面達は助け船を出してやることにした。

「あ、あの~、さ、災誤先生? そ、そろそろ朝練、終わりそうなんで切り上げて欲しいんですけど~?」
「何を言うか浜面! あの青髪が何度も何度も立ち上がって俺にぶつかってきてるんだぞ、ならばギリギリまで付き合ってやるのが教師というものだろう!」

 ボロボロになりながらも自分に向かってくる青ピに災誤は感動していた、その大半が黒子のエールによる条件反射の繰り返しとは気付いていない。
 浜面の進言を聞かずに再び青ピの特訓を再開させようという時にバスケ組のキャプテン、姫神が動き出す。

「浜面くんは甘い。相手は人間寄りのゴリラ。もっとガツンと。ゴリラハートを挫くような。ガツンとした言葉を。言わないと」
「……姫神。何か災誤に対して辛辣すぎじゃねぇか?」
「それは気のせい。ただ動物と人間の。扱いを再認識しただけ。決して。闇咲先生が副担任だったのに。無理矢理割り込んだ。ゴリラが憎いとかじゃない」

 姫神の私怨丸出しの発言に浜面たちは『教え子と教師の禁断の愛』をイメージしたが、姫神自身はそんな感情は微塵も持っていない。
 なお、姫神が闇咲に対する思いがどのようなものか分かるのはまだ先の話である。

「じゃあ行って来る。災……ゴリラ先生を。1分もかからず沈めてくるから」
(沈めなくていいんだがな……)

 半蔵が心の中でツッコミを入れている間に姫神は災誤へと接近、浜面達には聞こえない声で会話を始める。
 すると災誤が顔を真っ赤にさせて怒り始めたと思ったらすぐさま顔を青くさせ、顔色を戻した後で笑顔で去って行った。
 足元で意識朦朧状態で床に突っ伏してる青ピの横で姫神がどや顔でVサインをしたのを受けて、浜面達は二人の元へと駆け寄った。

「凄いです姫神氏! あの災誤氏を帰してしまうなんて!」
「……確かに凄ぇと思う。堂々と災誤の前でゴリラって言ったからな、こいつ」
「服部くん。スキルアウトで能力無いのに。どうして分かったの?」
「分かるだろ普通。遠目からでも分かるくらいに災誤が顔を真っ赤にさせて怒ってたからな」

 ちなみに姫神が災誤に言ったことは要約すると『スパルタが過ぎると。生徒にも慕われないし。女性にもモテない。物分りがいい教師はモテる。黄泉川先生とか』というもの。
 そこでようやく青ピの安否を心配し出した浜面だが、その青ピの姿がいつの間にか居なくなっていることに驚いた。

「あれっ? 青髪のやつ、どこ行った?」
「心配いらない。○○はしらいが【空間移動】でどこかへ連れて行った」

 滝壺の思わぬ報告に浜面、姫神、半郭は揃って青ピの心配をするがしても無駄だと分かると朝練を一足早く切り上げた。

「そういえば郭、お前って何の種目に参加するんだ?」
「バスケですよ半蔵様♪ おかげでそれなりにそちらのチームの特色が分かりました♪」

 郭の発言に驚きを隠せないのは浜面と姫神、最初から知っていた滝壺、そして半蔵だけは平然としていた。
 半蔵が平然としていた理由、それは自分達のチームが色々と未知数なのでスパイとか無駄だと思っているからである。

――――――――――

 こちらは野球組、土御門による情報屋強化特別メニューが今もまだ行われている最中である。

「ほれほれ!!これを取らんで何を取るのかにゃー!?」
「ぬおぉ!?ちょ、ハヤッ!!」
「はいタイヤもう一個追加!!」
「鬼!!悪魔!!天邪鬼!!」
「そのまんまのこと言われてもにゃー」

 土御門による情報屋強化特別メニューと言うのは、某野球マンガビックリのモノだった。
 打った球を取れなかったらタイヤを一個づつ増やすという地獄の特訓であった。
 最初は二個でスタートし、球が十回連続取れるまで千本ノックをするというものである。
 ちなみに提案者土御門、実行したのも土御門である。(鬼、悪魔、天邪鬼、まさにその通りである)
 そして他のメンバーの守備特訓も似たようなものであり、タイヤ三個での千本ノックだった(タイヤは増えないが)。

「おっ、時間も時間だし着替えの時間だにゃー」
「「「「「「「「やっと終わった」」」」」」」」
「吹寄の話じゃ午後もやるらしいけどにゃー……」
「「「「「「「「うぎゃーッ!!」」」」」」」」

 少年たちの地獄はこれからなのであった……。

――――――――――――――――――――

一方、サッカー組はそろそろ切り上げようとしていた

「大丈夫か?東原?」
「大丈夫じゃねぇ!もうちょっとで手が凍傷になるところだったぞ!」

そう東原はあれから白雪の能力シュート(?)を受け止め続けていた

「ごめんねー。手加減ができなくって♪」

白雪はテヘッという効果音が付きそうな顔で謝った

「何だよその顔は!?全然、悪く思ってないだろ!?こっちは凍傷になりそうになったうえ手がジンジン痺れてんだぞ!」
「まぁまぁ。そろそろ着替えて教室に行こうぜ」

こうしてバスケに続きサッカーが練習を終了した

――――――――――――

「む、もう時間ね。よし、これで朝練は終了よ! 各自、速やかに着替えて炊き出しを食べるのなら急ぎなさい! 遅刻は私が許さないわよ!」

 吹寄の委員長らしさ全開の朝練終了の宣言が体育館中に響き渡った。
 それを聞いた野原は地獄のリベロ特訓が一先ず終わったことに安堵すると、フラフラしながらも着替えに行った。

「頑張ってるね~野原君。まさか吹寄さんのスパイク、八割の確率で拾えるようになるなんて大したもんだよ」
「でも私もまだまだ本気じゃないわよ。私の全力を拾えるくらいにならないとこっちが困るわ。けど、少しは認める所はあるわね」
「あれれ~、吹寄さんったら紫木君じゃなくて野原君に興味出てきちゃったのかな~? 紫木君のこともちゃんと見てあげないとダメだよ♪」
「じょ、情報屋のことは関係ないわよ! と、とにかく早く着替えに行くわよ茜川さん! ……茜川さん?」

 赤音にからかわれて気を取られている間に吹寄は彼女を一瞬見失うが、すぐに発見した。
 どうやら男子、というか真夜の所へ行こうとしていたが残念そうな表情を浮かべる真昼に止められていた。

「やっぱり俺と同じ考えしてたみてぇだけど諦めろ、赤音。ついさっき俺も真夜と一緒に着替えようって誘ったらちょっと怒られた……」
「そっか、ちょっと怒られたんだ~。じゃあ仕方ない、諦めよう。その代わり、放課後の練習の後のシャワーはゲットしようね♪」

 真昼と赤音が不真面目(?)な発言をしているのを見て、吹寄は恋愛における変化を不思議に思わざるを得なかった。
 赤音はともかく真昼があのような発言をするようになったのは明らかに真夜と付き合い出してからだが、その変化を少し好ましく思っている吹寄。
 なぜなら真昼は時折女性らしい笑顔や仕草をするようになり、その変化をいい成長だと受け止めていたからである。

(私もああゆう風に変われるのかしら……。まあ、それは情報屋の頑張り次第だけど……って何を私はあいつに期待してるのよ! ああもうっ!)

 『自分らしくない』ことを考えた吹寄はかぶりを振って、さっき思っていたことをすぐさま振り払うと真昼と赤音を連れて汗を流す為にシャワー室へと向かうのだった。

――――――――――

 朝練が終わって汗だくでグラウンドに転がってるのは何だかんだでトータルで一番きつい練習をしていた野球組。
 しごく側の土御門はさっさと着替えに行ったが、当麻達は一歩も動きたくないとばかりに体を休めていた。

「ゼェ、ゼェ、つ、土御門の野郎……何で俺までコイツらと同じメニューをやらせやがンだァ! ゲホッゲホッ! く、くそォ、か、体が上手く動かねェ……」
「あ、あの、スポーツドリンクとタオルです、も、もしよろしければ……」
「アァ? わ、悪ィな、どこのどいつか知ンねェけど……っ!」

 友愛高校男子で一番体力の無い一方通行に救いの手を差し伸べたのは今の今まで彼らの練習、というか一方通行を見守っていた心理掌握だった。
 一方通行が自分が用意したものを受け取ってくれたことに顔を真っ赤にさせながらも嬉しそうにしてる様子は普段の心理掌握とは全くの別人のようだと当麻達は思う。
 相手が心理掌握だと気付かずにスポーツドリンクとタオルを手にしてしまった一方通行、彼の頭の中ではこの先どうすべきかという脳内会議が行われていた。
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