とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part5

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「ぶはぁ~、激動の3日間だった!」
帰りの電車もボックスシート仕様で、まだ昼間のせいか、
荷物も人間も隣同士に座ることができた。
「行く前はこんな展開考えもしなかったわねえ……」
顔を見合わせて苦笑する。

ファミレスでの滞在時間は短かったが、
御坂旅掛が当麻の父、上条刀夜とどう知り合ったかといった話で盛り上げ、
「ん?美琴のどこが一番気に入ってるんだ?ん?」と上条当麻の弱い点をつつきまくり、
ファミレスを出た途端に2人の首を両腕でホールドし、無理やりキスさせようとする始末で、
父親なりの娘とスキンシップをとろうとしていたようだった。
美琴も色々ムクれながらも最後には抱き合って別れを惜しんでいた。

(しかしまさかここでシスターズか……)
御坂妹たちは重篤状態はクリアし、現在は元気に動き回っている。
ということはもうメンテナンスは最小限でいいはずだ。
魔術との戦いがようやく落ち着きだしたのに、
今度は学園都市内部と何かあるかもしれない。
(やれやれだな。一度御坂妹と話してみっかな)

考え事からふと我に返ると、視線を感じ横を見ると、
美琴がじっと見つめている。
「ん、なんでもない」
目を逸らしたが、何だか寂しそうに見える。
「あー、そうだ言い忘れてた。筑前煮美味かったぞ。全部食っちまったぜ」
「えっホント。えへへ~、次作る機会あるかなあ~」
ぱっと表情が明るくなり、喜んでいる。
……きた、デジャヴ!なんだ、この数日間の既視感、違和感は!?


そうか。
『頭も良く顔も良く料理もでき、凄まじい潜在能力を秘めたスーパーお嬢様。
あれで、短気でわがままで自分勝手ですぐビリビリするのを直せば』

短気でもなく、素直でわがままいわず、自分勝手どころか気を使いまくり、
……3日間電撃一度も使ってないんじゃないかコイツ!?
さっきのだって、「フン、煽てたってムダよ」とか変な返しをせずに、素直に喜んでる!
これか、なんか調子狂ってたのは!

「あの、美琴さん?」
「あによ、改まって」
「今……例えば電撃出せないように封じられてる、とか、ないよね?」
「ん?別に」
親指と人差指の間にビチッと軽く電気を走らせる。
「ね?あ、でもなんか久々に使って新鮮な気分だわ」
美琴は連続して、ビビッビビッと試し撃ちしている。

(この状態は気持ち悪い!芽は潰しておこう!)
「あの、怒らないで聞いてくれます?」
「だから何よー。さっきから変」
「この3日間、全然電気使わなかったり、えーと、ええい言ってしまえ」
上条は一息に口に出す。
「短気でわがままで自分勝手ですぐビリビリしてた美琴さんはどこに行ってしまったのでせうか?」

(3日分、来るか?)上条は目を瞑る。
「ん~~~~」
反撃がこない。なにやら唸っている。
「ま、否定できませんけどね。でもね当麻」
「は、はい」
「それらの行為はね」
少し間があく。
「えっと、『アンタ』にしか見せない姿なのよ」
「はい?」
「その行為は他の人には出してないの。黒子にさえ」
「あー……」
「そりゃ黒子の変態的行為には怒ったりするわよ。でもそれは短気とは違うでしょ」
「まーな」

「だから、まあ、その」
「振り向いてくれない人へのアピールというか、何と言うか」
真っ赤になりながらも、言葉を紡ぐ。
「『アンタ』から『当麻』に呼び方が変わって」
「最初から振り向いてくれてるなら、短気でわがままで~なんてやる必要ないの。電撃もいらない」

流石の鈍感大王も、これは事実上の告白だと気づく。
というより、今更である。

「この3日間ね。ホントに楽しくて、幸せで」
「これがあと1時間で、いやもう今にも終わるかも、なんだなあって」
「でもまあ、たまにあるからいいんであって」
「ずっと続くと、ダメになっちゃうのかしらねえ」
夢見心地のように呟いている。
突然、ガバッと体勢を変え、上条をにらみつける。

「え?」
「電車つくまではこのままでいさせて!着いたら学園都市美琴ちゃんに変身するから!」
「あ、ああ……」
美琴は上条の左腕をガシッと取り、しがみつくような体勢に変わった。
……心なしか震えているような気がする。

「は~、なっさけねえなあ。傷つくのを恐れてるのは、俺のほうか」
上条はつぶやく。
「美琴、そのまま掴まっててくれ。きっちり話す」
「傷つくかもしれんが、生殺しよりは、な」
美琴は頷く。

「大きく3つの理由があり、1つは美琴が中学生だからだ」
「俺が幼稚園児・小学生に手を出したら、おかしいよな?変態だよ」
「じゃあ中学生は?これが俺の中ではアウトなんだ。セーフの奴もいるだろうが」
「だから単純に、恋愛対象として見れねえんだ」
「言い訳に過ぎないけど、お前の思いに気づかなかったのは、このフィルターのせいもあったと思う」

「でもな」
「ま、これはお互いさえ納得し、……なんなら2年待てばいいじゃんという程度には軟化してる」
「だからまあこっちの理由は、『今までの理由』とみなしてくれていい」

「問題はつぎの理由」
上条は唾を飲み込む。
「俺は……インデックスと一緒に住んでいる」

美琴が硬化した。

一気に話すしか無い。美琴の顔を正視できなかった。
「ちょうどお前なら話せるが、俺は知っての通り、記憶喪失だ」
「俺の記憶は7月28日からしかない。目覚めたとき、医者……ああ、美琴もおなじみの先生だ」
「その先生が去ったあと、次に現れたのが、インデックスだ」
「インデックスは『とうまは、わたしを助けてくれたんだよ』と言っていた」
「つまり、俺はインデックスを助け、何があったか分からないが記憶を失った」
「先生曰く、脳細胞が破壊されているらしい。復旧するにも焼き切れたような状態、だと」
美琴が腕を強く握りなおしているのが感じ取れた。

上条は右手でペットボトルから水を補給した。
「インデックスを助けるために、一緒に手伝った奴が、先生に倒れた経緯や背景を教えていたので」
「俺はその知識だけ頭に入れ、初期設定とし、学生寮に戻った」
「記憶が無いんだから、何がどこにあるかがわからず悪戦苦闘してるところにインデックスが来たが」
「うまく話をあわせながら、記憶喪失がばれないようにしていたがどう見てもインデックスは帰ろうとしない」
「というか、泊まって当然の気配が濃厚で、ひょっとして同棲してたのか?と俺は思い始めた」

「ところが、ベッドはあたし使うけどとうまはどこで寝るの?というおかしな状況になってだな」
「過程はともかく、現在、俺は毎日バスルームで鍵をかけて眠り、インデックスはベッドで普通に寝てる」
「つまり家の主人である俺がバスルーム・居候のインデックスがベッドという、同棲というよりただの同居」
「これを半年続けている。もし……記憶喪失前の俺とインデックスがそれなりの関係だったら」
「もうちょっとインデックスはアプローチしてくると思うが、今のところ皆無。つまり何も無かったんでないかと」

「さて、関係の話は一旦横におき、問題は俺の記憶喪失をインデックスだけには知られちゃいけないってことだ」
「もし自分のせいで記憶を失ったと知ったら?アイツは一生自分を許さず、俺に尽くそうとするだろう」
「それは絶対にだめだ。俺がなぜ記憶を失ったかわからないが、そんな代償のために助けたんじゃ意味がない」
「そして、どうやらインデックスを助けるために俺の右手が破壊したもの、それはインデックスを保護すると同時に」
「悪意のプログラムが仕込まれたモノだったらしく、悪意は消えたが保護も消えた」
「そのため、俺はイギリス清教から保護者を命じられ、壊した保護の代わりを務めている」
「だからインデックスが海外に呼ばれると、俺も付いていかざるをえない。これが俺の海外行きの理由だ」

「ふう」
「一気に説明したがついてきてるか?」

「次」
「へ?」
「3つめの理由は?」

「これは相当可能性低いけど、記憶喪失前にもし恋人がいt」
「却下。いないでしょそんなの」
美琴がむくりと体を起こした。

「あーもう何て言うか」
「あの、美琴さん?」
「ンな事ならもっと前から教えてよド馬鹿!」
電車の中だというのに上条は思いっきり怒鳴られる。
「ほんとやきもきしてた、この数カ月を返せって感じよねホント……」
「……ううう」

「うん、あのシスターのことはモヤモヤしてたけど、分かった。同居は気にくわないけど」
そういって、美琴は居住まいを正し、両手を膝の上におき、礼をした。
「これにて恋人ごっこ終了!」
「え?」
……寂しい気がするのは、俺はやはりあの状態を気に入ってたということか。

「で、、、」
美琴が上条の胸に飛び込んできた!
「ちょちょちょ、美琴さん、ななな?」
「じゃああと1年ちょい、名前で呼び合う友達モードでいかが?腕組みも有り」
顔は見えないが首筋は真っ赤だ。
「御坂美琴の正式なお願いです。断るなら突き放して。OKなら抱きしめて」
「ちょーっと待ってー」
「待たないわよ。あたしが高校生になるまで限定。さあどうするの?と・う・ま?」

この3日間で事実上骨抜きにされ、まずは友達からと敷居を下げられ……

上条当麻はしっかりと御坂美琴を抱きしめた。

◆         ◇         ◆         ◇         ◆

もうすぐ到着と、アナウンスが告げる。
「ああ、インデックスに齧られるのが気が重い」
「あたしも黒子がしばらくしつこいだろうなあ……」
といいつつ、表情は柔らかい。
「学園都市内ではどうする?」
「当麻ってそんなベタベタ好きじゃないでしょ?中学生と噂立てられたくないでしょうし」
「名前で呼び合ってちゃ誤魔化せん」
「あはは」
他愛もない話をしている間に、電車は到着し、学園都市に改めて踏み入れる。

ウイルスチェックなどを行い、上条は20分ほどで改札を出られたが、
美琴は30分ほどかかり、ゲンナリして出てきた。
「あーもう、いつもこれだけは憂鬱」
といいつつ、上条の左腕に腕を絡める。
「お、おい。もう中だぜ」
「ちょっとだけちょっとだけ♪」


「お ね え さ ま」

「く、黒子?」
美琴が言うと同時に、上条はまわりをみわたす。
2人組の制服の違う女生徒がいたと思った瞬間、片方が消えた。
「そう、何度も」
上条は腕を抜き、右斜め後ろにバックステップする。
そこへドロップキック体勢の黒子が現れたが、上条はすでにいない。
「へ?」
「食らうか~!」
空を切って落ちてきた黒子の胴を腕で捕らえる。
「くっ!なにしますのこの類人猿!」
右腕で捕らえられたため、再テレポートもできず、暴れている。

「んじゃ、美琴、パース。んじゃな!」
黒子を押し付けると上条は走り去る。
いい面の皮にされた黒子が猛り狂う横で、
「当麻~、まったね~」
手を振る御坂美琴は、夕日に映えて美しく輝いていた。


そして、初春飾利は今のわずか1分の出来事を、佐天涙子宛にせっせとメールを打ち込んでいるのであった……



fin.


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