とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part4

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1月2日。朝9:00頃。
美琴は上条には見せられないようなニヤニヤ顔になっていた。
見ているのは昨日の初詣での2ショットが収まった携帯である。
罰ゲームの時と同じく、ぎこちない表情での取り直しを何度も行ったが、
ようやく満足できるものができた。
(黒子に見られたら間違いなく当麻を殺しに行くわねコレ)

その頃、白井黒子はジャッジメント詰所に今年初出動していたのだが、
とんでもない報告を受けていた。
昨日初詣に行ったという同僚が、着物を着た御坂美琴を見かけたというのだ。
みとれるほど可愛らしく、一瞬で分かったという。
そして隣に噂のツンツン頭がおり、手をつないで仲良く回っていたという。
「コロス、ずぇっったいコロス」
黒子の周りにはどす黒い瘴気が渦巻いていた……


上条家ではおせちをつつきながら、ひとまず最後の晩餐である。
「そうか、昼一の電車で帰るのか。ゆっくりしていければいいんだがな」
「まーな、インデックスの奴が帰ってくるから。ま、この距離だしいつでも」
「昨日も言ったが、叔父さんが上条家のルーツ調べてくれるらしいから……また連絡する」
「サンキュ。今日も悪いけど龍神家のほう頼むな」
「ああ、言われてみると『龍神』となると、何か意味を含んでそうではある」
「あらあら、親族みな普通のひとだけどねぇ。誰に聞けばいいかしらねえ」

「んじゃ今日は見送りにいけないが、美鈴さんによろしくな」
「ああ。ひょっとしたら美琴のおやじさん間に合うかもだとさ。今飛行機の中らしい」
「ほう、そうか。男親はこわいぞ~」
「オイオイ、別に結婚するわけじゃないし、挨拶すりゃいいだけだろ」
「フフン、甘いな……御坂家にとって大事な……ん?」
「何だよ」
「そのおやじさんの名前は?分かるか?」
「変わった名前だったな。たびかけさん、だったかな」
「……そうかそうかそうか。ふっふっふ」

上条刀夜は名刺を取り出し、なにやら書き込んでポイッと渡す。
「空気が悪くなったらそれを出してみろ。好転するかもしれん」
肩書きの左上に『ロンドンの企業戦士』と書かれただけだ。
「何だコレ?知り合いなのか?」
「まー世の中狭いね、ってことだな」
「わけわかんねえ」

◆         ◇         ◆         ◇         ◆

「準備できた美琴ちゃん?」
「うん。まー来た時と同じカッコだし。お父さん何だって?」
「アンタたちの乗る電車の1時間前ぐらいに着きそうだって」
「あー、ギリギリねえ」
「だから駅前のファミレス4人予約しといた」
「……御坂家3人に当麻1人?だ、大丈夫かしら」
「別に取って食うわけじゃないし」
「こ、恋人とか言わず、仲の良い友達紹介とか……で、いいんじゃ……ない?」

「だってもう言っちゃったわよ。美琴ちゃんが恋人連れてきたって」
「ちょっと待って!え、え、おと、おとさん動揺してなかった?」
「電話の最後で、『美琴と、その周りの世界を守る』なんていう恋人を連れてきたので紹介するね、て伝えると」
「つ、伝えると?」
「ほとんど無言で切っちゃった」
「……」
美琴は一気に青ざめた。
「ほとんど、って何かは言ったワケ?」震えながら問いかける。
「んー、『周りの世界だと?』とボソッと言ってたけど、意味わかんないよね」
「えー、えー、どうなっちゃうのよ」
美鈴も今回は展開が読めないようだった。


迎えに来た車に乗り、経緯を聞いた上条は、
「……先帰っちゃダメ?」
「……まあ気持ちは分かるけど。ここで逃げたら一生当麻は……」
「ですよねー……」
「まー大丈夫大丈夫。ウチのダンナはワイルドだけど頭悪くないから話せばきっと」
「美鈴さん、いつもはバックミラーからニヤニヤした顔見せてますが、今視線外してますよね?」
「まー大丈夫大丈夫……」

ファミレスの中は昼前ということもあり、予約は正解といった感じの混み方だった。
旅掛登場予定時間まであと10分ほどとなり、上条はトイレに逃げている。
「うーん、申し訳ないわねえ」
「そーよ、別に、け、結婚とかならまだしも」
「あの人はこういう事で怒る人じゃないはずなんだけどなあ。うーん」
「や、やっぱり複雑なのかしら」
上条が戻ってくる。結構サッパリとした表情になっている。
(ん?)美琴は上条の中に据わったモノを感じ取った。
「んと……大丈夫?」
「ああ、ここ最近根性出さなきゃやってられん事多かったし。大丈夫、切り替えた」
美鈴は首をすくめた。(これはもう天性の女たらしね。美琴ちゃん落ちちゃった)
美琴は撃沈されていた。

そこに、御坂旅掛が現れた。


まっすぐテーブルに向かってきた旅掛は、上条を一瞥し、
「ただいま、そして初めまして」と落ち着いた声で挨拶した。
「おかえりなさい」
「お父さん、おかえり」
上条は立ち上がり、
「初めまして。上条当麻と申します」
「旅掛だ。よろしく」
美鈴が荷物をどかし、旅掛のスペースを作ろうとするが、旅掛はそれを制し、
「上条くん。悪いが外で話をさせてもらっていいかな。ちょっとここでは」
「……はい、分かりました」
この展開に美琴が青ざめる。
「え、お、お父さん……」
美鈴も流石に腰を浮かすが、深呼吸して、「じゃあ待ってるわね」と答える。

2人は駐車場の奥へ向かっていくようだ。
「ど、どうしよう、どうしよう」
美琴は泣きそうな顔で美鈴に訴えるが、美鈴もどうしようもない。
「とりあえずドリンクのんで落ち着きましょう。きっと大丈夫」

上条は腹は据わっていた。
最悪殴られても、こっちは殴られ慣れているし、一人娘を思う気持ちには逆らえない。
「上条くん」
「はい」
「私にウソをつかないと誓えるかね」
上条は即答した。
「はい」

「君の言う『美琴とその周辺の世界』だが。その『周辺』とは」
あまりに想定外の切り出しに上条は戸惑う。
「世界50ヵ所以上で目撃された美琴そっくりな少女達、を含んでいるとみなして良いか?」
「!」(なぜシスターズを知っている!)
「答えろ!上条くん!みなして良いかと聞いているんだ!イエスorノーしか求めていない!」
(くっ……)
「無言か、なるほど。つまりは存在を知っているわけだな」
(くそっ、どう答えれば良いんだ。父親にあんなこと全部説明するのか?)

「ちなみに今、私が君をどう思ってるかわかるか?」
「……」
「美琴を色恋に溺れさせ、妻をも騙し、思いの通りにする学園都市の犬、さ」
「違う!絶対に違う!」
「まあ普通はそう言うだろうなあ。潔白を示したいなら全て話せ!」
「分かった!……分かったがそんな脅しによって話すのは気に入らねえ」
「ほう。じゃあ教えてくれと土下座する父親でもやろうか?」

ある程度話す覚悟はできたが、やり方が気に入らない。
次の一手を思案し……そうか、これが空気を変える一手かと、名刺を差し出す。
旅掛は訝しげな表情でそれを受け取る。


御坂旅掛は名刺を見た瞬間、
「参った。俺が悪かった。バカな父親が血迷ったと思って許してくれ」
「えっ!」
あまりの変わり様に流石に上条も引き気味である。
「あの男の息子か。今のところ、俺に『コイツには勝てんかもしれん』と思わせたのはお前の父親だけだ」
「はあ?」
「まあそちらの話は今はいい。それよりも頼む。知ってることを教えてくれ」

話しやすい空気にはなったが、それでも上条はためらう。
「頼む。学園都市はその少女達を使って何か企んでいる。間違いない」
「なに……」
「50ヵ所以上と先刻言ったろう。俺が知っている情報はな、軍事利用されたという情報なんだよ!美琴の顔でな!」
「なんだって!あいつらはメンテナンスのために散らばったと……」
「知ってるんだな。頼む」

「それは……『シスターズ』と呼ばれる御坂美琴のDNAマップを採取して作られたクローンです」
「やはり……そうか……」旅掛は唸る。
「俺が知る限り、作られた数は20000体。うち、10031体はある実験のため、殺されました……」
「10032回目の実験を俺が邪魔をし、実験は中断……終了したとは聞いています」
「残った9000体以上のシスターズは、各地に散らばってメンテナンスを行い、寿命を調整するらしいです」
「つまり何か、50ヵ所どころではないのか!」
上条も気づいた。最悪の想像をすれば、学園都市は各地に軍事拠点を作ったことになる。
「くそっ、呪われた奴らめ!……それで……美琴本人はクローンの事を……?」

「はい、知っています。彼女の苦悩は凄まじいものでしたが、今は克服している……はずです」
「なんという試練をあの子に……それなのにああやって真っ直ぐ……くそっ!」
「……」
「……これ以上は心配させてしまうな。分かった。俺は君を全面的に信用する。戻ろう」
「いいんですか?俺はスパイかもしれませんよ?」
「これでも人を見る目はあるんでな。そういう仕事してるんでね。美鈴を通せば君と連絡取れるか?」
「ええ、大丈夫です」

2人は無言で戻り、席につく。
とりあえず殴り合ったとかではないようだが、じゃあなんで無言なのかと美鈴は眉をひそめる。
美琴は不安そうに2人を見比べる。
上条は(まあ旅掛さんが何か言うだろう)とお冷をぐいっと飲む。
「……そうだな」
旅掛は目を瞑ってつぶやいた。美琴は悪い想像ばかりしているような顔をしている。
「お前たち、直ちにキスしなさい。そうしたら認めてやる」

上条は思いっきり水を吹き出した。


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