とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part03

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たった二文字


完全下校時刻はとうの昔に過ぎ、辺りは夜の闇に包まれている。
蹴られれば飲み物を貢ぐ、ドМ自販機の照明が一部分だけに明かりを落とす。
その光はこんな時間なのに二人の学生を照らしていた。

一人は中肉中背、高校生である。特徴的といえるのは、ウニのような頭部だろうか? 
そして、

(なんてことはない。名前を呼んで、たった二文字伝えるだけでいい)

かれこれ数十回同じことを考えている。つまりガチガチに緊張していた。

もう一人は、常盤台中学の制服、肩まで届くシャンパンゴールドの髪に花飾りのヘアピンをつけた少女である。
そして、

(私は、アイツと、あの話をするために、この公園に来たわけで、アイツは、私と、同じ、気持ちな、わけで、だから、ここに、来たわけで、……)

混乱していた。それはもう混乱していた。顔は驚きの赤さだった。
その混乱に背を押されてか、少女が口を開く。

「じ、実は、わ、わわ、私、まま、ま前から「待ってくれ!!」ふにゃ!!?」

「待ってくれ、男のオレから言わせてくれ!!」

「ふぁっ、ふにゃい!」

再び沈黙。少年の心臓は今にも爆発しそうである。

ちなみに分かっているとは思うが、
少女の名は御坂美琴。常盤台の超電磁砲(レールガン)とは彼女の事である。しかし、今の彼女にはAIМバースト戦などでの強気な態度はない。
少年の名は上条当麻。だんだん顔色が悪くなってきているが、これでもとある第一位から英雄視されている人物である。第一位が現状を見たら、失望して襲いかかりそうではあるが。

上条は深呼吸を繰り返す。別に天使と戦うわけではないというのに。いや、本人にとってはそうなのか?

「御坂!! 実は「美琴!!!」以z……はい?」

「こ、こんなときくらい、名前で呼びなしゃいよ」

「わ、わかったよ。そっちも『アンタ』じゃなくて『当麻』って、呼べよにゃ」

「も、もちりょんよ」

二人とも、すごく言えてない。


それからしばらくの間、両者ともにブツブツ言っていた。
無駄なイメトレであろう。そしてついに上条が動く。

「み、美琴サン!!」

「!!!フぁい!!」

しかし、

「じ、実は……」

皆さん忘れてはいないだろうか。

「……以前から!!」

上条当麻は、

「あなたの「prrrrr」ことが!!!」

不幸である。

「……」「……」

「あな「prrrrr」たの「prrrrr」ことが!!!」

「……出ていいわよ」

「……す、すまん。「ピッ」誰だよ一体!!!」

『やあ!!カミやん!!今週発売の「こんな魔法の目次欄」についてやけど!!』

「ピッ」「……コホン!」

「美「prrrrr」琴さん、あな「prrrrr」たの「prrrrr」こと……」

「……ハァ」

「ちっきしょー「ピッ」うるさいな!!また今度にしろよ!!」

『なるほどー、上条ちゃんは先生を怒らせるのが上手ですねー。明日は補修に課題と説教を追加しときますねコノヤロウ』

「げっ、先生、今のは必要悪の手違いでし「ガチャ」……不幸だ」

「なんか力抜けたわ」

「すみません。電源切っときます」



「よーし、もう一回!!」

「いや、私が言うわ、アンタだと別の理由でまたダメだろうし」

「『当麻』な。そして否定できぬ」

一息入れた後、美琴は正面を見据える。
腹をくくったようだ。

「上条当麻さん!!」

しかし、皆さんもご存じだろう。

「私は、以前から、あな「あ、御坂さんなの」たの……はい?」

彼女も結構不幸である。

「えーと、ここでなにしてるの春上さん?」

「絆理ちゃんと遊んだ帰りなの。思ったより遅くなったの」

上条と美琴には見えた。春上の頭上に「襲ってください」の文字が。

「「……家まで送るよ」」

「ありがとうなの!!」



「あれだ!!長いのがいけない!!」

「そうね!!」

公園に戻った二人は叫ぶ。さっきまでの雰囲気は無い。

「速攻で終わらせるぞ!!」

「バッチ、来いやー!!」

それでいいのか?

「よし。美琴!! おま「やぁ、カミやん、何してるのかにゃー」え、が……」

しかし、

「当麻!! アン「おや、君は御坂美琴。ツン、ツンデロ? は治ったのかい?」タ、の」

不幸は、

「美琴お前が「見つけたで!! カミやん!! 急に電話切るから心配に……」す、クソッ」

終わらない。

「当麻アンタが「あらあら、御坂さんじゃない!! こんな時間に逢引き? 不良力たっか~い」すっ……ええぃ!!」

二文字が遠い。



「はぁ、はぁ、名前も省きます」

「はぁ、はぁ、了解」

そして、

「お前が「とうま!!」すっ……はっ、この声は!!」

「……晩御飯の時間になっても帰ってこないし、ケイタイデンワーをビクビク使っても出ないし、心配して出てきたら、相変わらず、当麻は当麻だったんだよ!!!」

さらにその二文字が絶望的に遠くなる。


「えっ? もうそんな時間?? ん? 電話?? ……ぬわ!!着信がすごいことに!!」

「覚悟はできたかな?」

「あー、すまん!! もう少し待ってくれないか? ちょっと大事な……」

「――――空腹に伴い、身体中にある生命力(マナ)が消失しつつあります」

「『自動書記』!? っつーか一食抜くだけででるなよ!!」

ステイルやカエル医者から聞いた情報と合致している。本気と書いてマジである。
こんなのに美琴は巻きこめない。

「美琴!! 待っててくれ!! ちゃんと戻ってくるから!!」

「え!? ちょっと!!」

「――目標の逃走を確認。その行動を制することが最善の手だと判断します。目標を追尾する手段を発見。豊穣神の剣を再現、即時実行します」

(なんじゃありゃ!?)

美琴が驚いている間に、二人はどこかに消えていた。
一人残される美琴。
肌寒い風が通り過ぎる。
しかし、

「……『待っててくれ』か……」

戻ってくると、彼は言った。
今まで追うことしかできなかった自分に、ようやく振り向いてくれた。

「……/////」

それが、無性にうれしかった。



そこに一つの影が近づく。

「……お姉さま」

とんでもない冷気に包まれた言葉を受け、美琴は恐る恐る顔をそちらへ向ける。

「初春や佐天さんから聞きましたわ。……どういうことですの?」

あ、やばい、ツインテール(触手)がありえない動きをしている。

「く、黒子!! ……何の話かなぁ?? 私全然わかんない」

「お姉さまがそのつもりなら、それで構いませんの。類人猿の体にお尋ねしますので」

あ、目に光が無い。本気と書いてガチである。

(黒子まで追いかけたら、当麻は間違いなく死ぬ!!)

よって、上条とは別の方向に走る。

「お待ちください!! お姉さま!!」

(……考えてみればそうよね)

走りながら、美琴は笑っていた。

(私に『待つ』なんてのは、性に合わないじゃない!!)



『はい、もしもし、こちら上条の携帯です。ただいま生死の境をさまよっていますので、用事はまた今度にしてくださ「私よ」……美琴?』

美琴は走りながら上条に電話を掛けていた。

「当麻の方はどんな感じ?」

『いや、先ほど「チュドーン」生死の境をさまよっていると「ズバーン」言いましたが、比喩で「ドゴーン」はありません……不幸だ』

「いや、こっちも黒子に見つかってさー『不幸ですね』まったくです」

向こうもため息を吐いただろうか?

「どれくらいかかる??」

『あー五分後くら「本音は?」……今日の夜は寝られるか疑問です』

とはいえ、そうはいかないのだ。今日の流れを無視するわけにはいかない。
上条は腕を組んで考える。逃げながら。

「私も同じようなもんなのよね~」

美琴は、今の黒子がlevel5だと言われても驚かない。

「だからさ!!」

『?』



鉄橋。とある不幸な少年と、とある不幸な少女との物語を語る上で外せない場所である。
月明かりがほのかに照らすこの場所で、物語はまた一歩進む。

「不幸だーっ!!」

一方から走ってくるのは上条当麻。後方の住宅地が平穏なのを見るに、自動書記も周りを配慮しているのかもしれない。

(来た!!)

もう一方に現れたのは御坂美琴。後方には顔も髪もすごいことになっている黒子がいた。

両者は全力で走っているため、距離はどんどん狭くなる。
しかし、二人に止まる気配は無い。さながら何もなく素通りするかのように。



ついに、二人の距離はなくなり、立ち止まることなくすれ違って行った。



「――だ」「――よ」


たった一言を残して。

二文字は、全く同じだった。

黒子は上条を、インデックスは美琴を一瞥したが、あの距離の一言を聞くことはできなかったようで、再びもとの標的に視線を戻す。

二人は背中しか見えないために気付かない。

その標的は今までにないくらいニヤニヤしていた。








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