とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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小ネタ 充電器の使い方



――ハァ…

 同居人がまだ帰ってこない寮の自室で御坂美琴は溜息をつく。
一体何度目だろう、考えながら美琴は机に体を預ける。
頭に浮かぶのは今日の午後、いつもの自販機のところで出会ったツンツン頭の彼、上条当麻だ。
「なんでアイツはあんなに平然と…。それにどうして私――」
 彼に会えばもっと気まずくなると思っていた。少なくとも美琴は。
しかし実際に会ってみるとそんなことはなく、彼のほうはいつも通りであり
美琴の方も多少頭が混乱していたものの、そんな彼の傍にいることに心地よさを感じていた。
 どうしてあんなにも心地よかったのか。
未だ美琴にはその理由の全ては理解できなかったが、あの時の満たされた感覚は今でも美琴のココロを揺さぶり続けている。
 もっと上条当麻のことを知りたい、もっと上条当麻のそばに居たいと。
「一端覧祭……」
 美琴の口から十一月に控えた超巨大文化祭の名前がこぼれる。
二週間ほど前から上条を誘って一緒に周るつもりではいたのだが、様々な理由で誘えないまま今に至る。
「いい加減そろそろ誘わないと。準備だって始まってるし」
 なんなら準備期間の合間のわずかな時間でだっていい。とにかくアイツと一緒にいたい。美琴は机から体を上げながら思う。
(でもどうやって誘えばいい?) 
 偽デートの時のような理由も無い。罰ゲームの時のような権利も今の美琴には無い。せっかく上げた顔が再び俯いてしまう。
(そういえばどっちの時もアイツいい顔してなかったな。私と居る時いつもそうだけど、そんなに嫌なのかな……)
俯いたままマイナス方向に思考をめぐらせていると、机に付けられた引き出しの一つに目が留まる。フッと美琴の表情が軽くなる。
 引き出しを開けて中にあった物を取り出して机の上に置く。それは二人の男女のツーショットが取り付けられた携帯の充電器。
9月の末に上条とペア契約をした際にもらったものだったが、これを出しておくと同居人がいい顔をしないので変更した機種にも対応した以前の充電器をそのまま使いこちらはずっとしまっていたのだった。
(そうよ、なにうじうじしてんのよ私。全っ然らしくない!私が一緒にいたいんだから……理由なんてそれでいいじゃない!)
 そう考えながら美琴は写真の方へと向き直る。写真の中の少々引きつった笑顔の彼と目があって気圧されそうになるが、練習すれば大丈夫と自分に言い聞かせて美琴は口を開く。
「ア、アンタってさ、一端覧祭の当日って暇なの? 暇なんだったら、別に私が一緒に回ってあげても………………」
 しばらくの間部屋を沈黙が支配するが、美琴自身の叫び声によって打ち消される。
「こんなのダメに決まってるじゃない!な、なんで回ってあげるとか上から目線なのよ!」
 ぶんぶんと頭を振る美琴。大体こんなのじゃ前と一緒でまた嫌な顔されるだけだ、と思い直す。
その後もこれじゃダメだ! 今度は下手すぎる! などと一人で騒ぎながら試行錯誤を繰り返す美琴であったがようやく一つの妥協点に辿りつく。
「あのさ、これから『一端覧祭』の準備期間で午前中授業が増える訳じゃない? だから時間を調節すれば色々遊べる時間も取れるし……アンタがよければ一緒にどこかに行かない?」
 写真を見据えたまま最後まで言い終える美琴。一呼吸置いて一つ頷き
「こんなもん、かしらね。……うん、いける。今日みたいに不意打ちされなければきっと言える!」
 問題は片付いた。練習も終わりだ、と充電器を引き出しに戻そうとしたところで手が止まる。
しばらく無言で何かを考えた後、誰かに言い訳するように一人呟く。
「別に何使うかは私の勝手だし……せっかく貰ったんだから使わないと損よね」
 充電器を手にしたまま、再び体を起こす美琴。

――しばらく後、机の上にあったのは少々引きつった二人の笑顔


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