とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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Road~One year ago~



 ちょうど一年前に、この道を通った夜の事を昨日の事のように、今でもはっきりと覚えている。
季節はずれの大雪が降ったせいで、車は渋滞。
どこまでも続く赤いテールランプが綺麗だった。
隣で君は、まるで昔のように、幸せそうに笑みを浮かべたまま、眠っていた。
ゆすって起こした俺を、不満そうににらんで俺の手を握り返し「おはよう…」と言った。

 子供が出来たと君は、不安そうに話して、うつむき口を閉じた。
わざと深くため息を吐き、
春が来るのを待って、二人で一緒に暮らそうかと微笑む。
そんな俺に泣きつき、いつまでも抱き合ってた。

 冬も終わりに近づき、新しく借りた部屋の中、突然闇におとした。
悪夢のような電話。
病室のベットの上で、まるで子供のように微笑みを浮かべたまま、眠っている。


 何でもないような事が、幸せだった
 何でもない日々の事、でも二度とは戻れない

あの日、あの時、君と出逢っていなければこんなに悲しむ事もなかったと思う。
でも、逢わなけりゃ、もっと不幸だった……。

どんなに歳をとっても手をつないでいる、そんな二人でいようと誓った事も、
今は昔の、思い出の物語……。
この道も、この車、この情景だって
あの夜と同じまま
ただ俺の横で、眠っていたはずの君だけが隣にいない…………。

「一緒に幸せになる」と言って実家を出たはずなのに、
今の君はベットの上で、独りぼっちで周りを花に囲まれていた。
まるでフランス人形のように。
そして、壁には
まだ一度も袖を通していない純白のドレス
俺の白のタキシード
約束していた揃いのリングが、寂しそうに置いてあった。

 もう、何日になるか解らない。
君がいない日々が、辛く、
毎日、この道を通う時だけは、希望と絶望が入り交じった瞬間だった。

昔からお世話になった病院では、彼専用となっていた部屋があった。
でも違うのは、お世話になっているのが彼ではなく、彼女である点だけ。
そんな、彼女は、今も深い眠りについている。
まるで、眠れる森の少女のように。

「美琴…………」
手を握りしめ、愛しい人の名前を静に囁く。
「いいかげん、眼を覚ましてくれ」
何回も繰り返した言葉も、返ってくる言葉は、未だない。

どんな幻想も打ち消せる右手も、今だけは役に立たない。
自分が何も出来ない無能さに嫌気がさした。
でも、諦めたくない、希望を捨てたくない。
未来を切り開くためにも!!
だから、
(お前と、これから先も一緒に行きたい!!
頼む、お前との物語は始まったばかりなんだ。お前がいないと物語の続きができないんだよ
だから、美琴
戻ってきてくれ、物語の続きを、最高のハッピーエンドを!!)

この思い、奇跡を信じ、頬にそっとキスをした。
不幸を終わらすために、物語の続きを作るために!!

固く閉じた瞳から、そっと目を開き、少女は、
「…………とうま?」
愛しい人の名前を、囁いた。

長い眠りから、少女は覚めた。
愛しき人の思いで

当麻は、溢れ出る涙を抑え、
「おはよう」
と笑って当麻は、強く美琴を抱きしめた。

美琴は、今の現状をよく理解していない。
でも、今何をするべきなのかわかった。
今できる力で、抱きしめた。

     「うん、おはよう」

最高の笑顔で答えた。




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