とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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手編みのマフラー



「あー、さみぃ……」

両手をポッケに突っ込みながら、いつもの帰り道。乾いた冷たい風が吹くなか、
上条は金食い自販機のある公園の中を歩いているところだった。
自販機の前を通り掛かったとき、自販機の影から美琴が出てきた。

「げ、」

「げ、とは何よ!」

「だってお前に会うといつも……」

「ナニカナ?」

「ナンデモナイヨ!!」

青白いものがパチッとした瞬間に口をつぐむ。

「全く…………はい、これ」

「ん……?なんだっけ、それ?」

美琴の差出した見覚えのない布に首をかしげる。

「えっと……この前貸してくれたマフラー、返すわ」

「あ~?……ああ、あれか」

あれからしばらく経っていたのにくわえ、その日は学校でいつもの
デルタフォースの戯れ(殴り合い)をしていたから、
その日のうちにすっかり忘れていた。

「ってあれ……?」

「な……何よ……」

「これ、俺が貸したマフラーと、なんか違くないか?」

「それは……」

美琴はちょっとためらってから、言った。

「あの、あんたに貸してもらったマフラーをね、
 ……その、ちょろっと……いろいろあって、ね」

「?」

美琴にしては歯切れが悪いように見える。

「(いったい俺のマフラーはどうなっちゃったんだ……?)」

上条のマフラーがないのなら、今美琴の手にあるマフラーは何なのだろう?

「じゃあ、それは?」

「こ、これは……その、代わりっていうか……
 とにかく、アンタのが駄目になっちゃったっていうか……」

歯切れの悪いまま、ごめん、と言う美琴に上条はあわてて

「いや、気にしてねえよ。どうせ安もんだったしな」

そして美琴の持つマフラーを見る。
美琴がこの前つけていたものとは違うように見えるし、
現に美琴はそのマフラーを今首にかけている。
手に持っている方は、新しく買ってくれたのだろうか?

「もし、ほかのがよかったら、―――」

「それ、俺がもらっていいんだろ?」

美琴の声をさえぎって上条が言った。

「えっ……?う、うん……」

少し驚いたようにうなずく美琴からマフラーを受け取ろうとするが、

「や、やっぱちょっとまって……!」

「あ、ああ?」

渡そうとしたマフラーを抱え込む美琴、何やら思案しているように見える。
なんとなく顔も赤いような……

「ほ……ほんとにこれでいいの?」

「え?ああ、うん」

見ため、特別使いにくそうな色の、女の子の好むまっピンクのやつとかでもなく、
普通の誰が使ってもいいようなもので、割と上条的には好みの方だった。
しかも前に貸したものよりも、ちゃんとしたマフラーっぽく、暖かそうだった。

「……ほんとに?」

「ああ」

「えっと、じゃあ……」

やっとマフラーを差し出した美琴からマフラーを受け取る。
上条の使っていたものよりも縫い目も細かく、手で触ってみると、糸も質がいいように思う。
……なんか高そうだなと思った。

「悪いな、なんか、高そうなのもらっちゃって……」

「え?あ……えーと、そんなにしてないわよ」

「そうか?まあ、ありがとな」

「う、ううん……」

試しに首に巻いてみる。うん、暖かい。しっかりと縫われているマフラーは、
すると何を思ったのか美琴は急に顔を赤く染めると、

「じゃあ、わ、私はこれで……!!」

全速力で走って行ってしまった。

「あ、おい!って早っ!!」

あまりの速さに呆然としているうちに、美琴の姿は見えなくなった。

「落ち着きのない奴だな……。あれ、このマフラー、
 端にゲコ太が縫ってあるな……。ま、いっか」

美琴の好きなゲコ太マークを特に気にする風もなく、そういって上条も公園を後にして寮へ帰る。

上条は気付かなかったが、彼のつけているマフラーの端っこのゲコ太マーク、の裏。
もうひとつ、


ハートのマークが、小さく縫われていた。








「あら、お姉さま、最近のマイブームは終わったんですの?」
「え?ま、まあね」
「そのマフラーは?お姉さまが作った物には見えないものですけど……」
「こ、これ?これは……まあ、いろいろ?」
「むむむ……なんだか怪しいですの……」
「まあまあ、ほら、あんたにも作ったから、よかったら」
「お姉さま!!?く、黒子感激ですの!!」
「だああ!ひっつくな抱きつくな頬擦りするなー!!」


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