とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

813

最終更新:

NwQ12Pw0Fw

- view
だれでも歓迎! 編集

スキンシップの理由は



第11学区。学園都市の外へとつながるバスターミナルにて上条当麻は客人を待っていた。

「まったく…いきなりすぎるんだよ」
そう呟きつつも来るであろう客人を迎えるべく来るであろうと予想されるバス停で待っていると。

「おにーちゃーん。会いたかったよー」
そう叫んでボディアタックをかける少女
不意打ちに近い攻撃を受け、その衝撃とともに
「うげっ」なのか「うごっ」なのかわからない声を出しつつ後ろに倒れこんだ上条にさらに

「おにーちゃーんおにーさんおにーさまあんちゃんあにじゃあにきあにうえあいうえお!!」
そう言って顔をすりつけ甘えてくる少女に
「乙姫!!お前なんでこの時間に来るのは次の便じゃ。ってスリスリするな」
「おにーちゃん。今回は私ってわかってくれたんだーよしよし」

夏休みのとき「誰だお前っ」と言われたこともあり、自分のことを認識してくれたことに喜んで
必要以上にスキンシップをはかる乙姫に、上条は
これが本当の乙姫か。あの時は御坂になっていたからそれどころじゃなかったな。と感慨深くなっていたところに
ふと常日頃感じているプレッシャーを感じ取り恐る恐る後ろを振り向くと
学園都市に7人しかいない超能力者でもある御坂美琴が腕を組みながら睨んでいた。

上条はふーっとため息をつきつつ体を起こし乙姫に向かって。
「さて。ここで話してもしょうがないから早速行きますか。どこに行きたい?」
「ちょっとアンタ!さっきしっかり私を見たでしょう。あからさまにスルーしてんじゃないよ」
「いやっ。いつものパターンならこんなものかと…」
「アンタ!大覇星祭の時といいアンタの中でパターン化してんの私のスルーっぷりは。
それよりなんでお母さんが連れてきたこの娘を知っているの」
上条も、なぜ美琴の母でもある美鈴が自分の従兄妹の乙姫を連れてきたのか。と思っているところに
更なる衝撃に襲われた。

「上条くーん!会いたかったよー」
そう叫び美琴の母美鈴もボディアタックをかましてきたのであった。
「んふふふ。この日頃努力を惜しまないお姉さんの肉体攻撃にメロメロかー。上条君ってあれ?」
不意打ちな上に大人の女性でもある美鈴にボディアタックをくらい声も出せず悶絶し、それに心配した乙姫が
「おにーちゃん?おにーちゃーん目を開けてー、美鈴さん駄目だよ、兄にプロレス技をかけるのは妹の標準装備なのに」
「あはは。ごめんね。乙姫ちゃんを見ていて私もって思ったんだけど」

二人の衝撃からやっと現実に戻り上条は突如現れた美鈴に
「あのう。何故に御坂さんは乙姫と知り合いなんでせうか?」


「そうよ。急にこっちに来るって連絡があるから来てみたら知らない女の子が横にいて。しかもその娘がこいつの従兄妹なんて」

二人は「何故知り合いなの?」と共通の話題で美鈴に問い詰めると、美鈴は
「だってー。上条さんの家に遊びに行ったら、乙姫ちゃんがいて、今度学校見学で学園都市に行くって聞いたから私も一緒に来ただけよ」

美鈴の言葉に二人は「上条さんち?」「遊びに?」と呟き、お互い顔をあわせたところに
「あれ?うちと上条さんの家近所なのよー」
美鈴の衝撃の一言に上条と美琴は揃って『なんだってーっ!』と叫び固まった。
一人置いてけぼり状態でいた乙姫が
「ねえねえ、美鈴さん。お兄ちゃんと美琴ちゃんお友達なの?」
乙姫の質問に美鈴はにやーっと笑みを浮かべながら
「うーん。お友達らしいけど……」
一呼吸をおいて
「でも美琴ちゃんはそれ以上になりたいんじゃないのかなぁ?」

そんな言葉を聞き半ば止まった思考の中でも美琴はしっかりと美鈴の頭をスパンと叩き込んだ。
「また娘に叩かれたー。ねえねえ?上条君こんな娘どう思う」
そう言って目に涙をためながら上条の腕に絡みつき、そんな美鈴の行動を見て負けじと乙姫も上条の腕に絡みついた。

そんな二人の行動に上条は動きもとれず固まり、そんな上条の腕に幸せそうな顔をしている二人(美鈴は別の意味で)を見て
美琴はふと頭の中に、御坂妹の純粋なる行動を思い浮かべた。そしていつもなら
「さっさとこいつから離れなさいっ!」
御坂妹や母親ならそんな文句のひとつも言って引き離すこともできたが、上条のもう片方の腕に絡まる乙姫を見て
上条を兄として好きなのか。恋愛対象として好きなのか。どちらなのかわからず次の行動を取れないでいると

「あれー?美琴ちゃん。もしかして私たちと同じように腕に絡みたいの?」
「なっ何を言ってんの!!このバカ母」
「えー違うの?あっ。わかった腕じゃなくて上条君の胸に飛び込みたいんでしょ」
「っな………」
美琴は、この母親は私をからかうために来たのか?と思いつつ、もう一発突っ込みでも入れようと、美鈴に近づこうとしたとき

「ダメーっ!!」
そんな声とともに腕につかまっていた乙姫が上条の正面から抱きついた。

「がっ!」「おわっ!」「あら…」乙姫の突然の行動に上条と美琴は動きが固まってしまった
そんな三人を見て美鈴は楽しげに
「乙姫ちゃん大丈夫よ。美琴ちゃんはさっきみたいに私を叩こうと近づいただけだから」
「そうなの?」

美鈴の言葉に納得したのか乙姫は上条の胴体から離れまた腕にしがみついたのであった。
場の空気がある程度落ち着いたかな?と感じた美鈴は
「さてと、そこの固まっているお二人さん。こんな所にいてもなんだからどこかいきましょ」
そう言って美鈴はこれからの予定を話し始めた。


少し時間が経ってここは第七学区
上条は乙姫に乙姫に腕を引っ張られあちらこちらの店に引っ張りまわされている状態であった。
そんな二人を後ろで見ていた二人は

「本当に仲の良い従兄妹ね。美琴ちゃんいいの?彼そのままつれてかれちゃうよ」
「何言ってんの。私はそんなんじゃない…でも従兄妹にしては仲が良すぎるよね」
「そうね乙姫ちゃん。優しいからね」
「えっどういうこと?」
「あっ…上条君一人っ子だから本物の妹になってあげているんじゃないのかな?」

いつもの美鈴とは歯切れが悪いセリフを残したが美琴はあえて追求せずに
「ふーん。それより聞きたいんだけど…」
「何?美琴ちゃん。バストアップの秘訣?」
「違うっつうの。何で教えてくれなかったのあいつと実家が近所だなんて」
「だって知っていると思っていたから、普通に会話していれば実家の話が出るものじゃないの、
それが近所だとわかってさらに親密になっていくもんじゃない?」

美鈴の当たり前の話に美琴は
しまったー!その手があったのか。と軽くショックを受けていた。
そんなショックを受けている美琴を見て
「娘が自分の気持ちも伝えられない薄幸少女に育っているなんて、お母さん涙が出ちゃう」
「だから私はそんなんじゃないって言ってんでしょ。それとそこ嘘泣きなんかするんじゃない」

そんなこんなで口論している親子を見て上条も
「仲の良い親子だな」
そう感じるのであった。

そんなこんなで数時間ではあるが上条は、乙姫に町中に引っ張りまわされ疲れきったところ。
美鈴から「お昼にしましょう」の一言は天からの助けであった。
そして四人が向かったのは近くのファミレス、上条は四人がけのテーブルで隣に乙姫、前に美琴という
身体は休めても精神は休めない状態でいた。
各々メニューを決めようと、ウェイトレスのお姉さんが水とメニューを持ってきた矢先
ガシャーン。
ウェイトレスのお姉さんは上条の前で転びグラスに入った水をなぜか上条だけにぶっ掛けてしまったのであった。

誠心誠意誤るウェイトレスに、いつもの事ですから。と軽く流し、持っていたハンカチで濡れた所を拭いているところに
「しょうがないわね。アンタちょっとこっち向きなさい」
そう言って美琴は上条の顔や服についた水をハンカチでぬぐってやるのであった。
「あーん。美琴ちゃんそのかいがいしさ、お母さんうれしくて涙が出ちゃう」
「ってそこ。何でもかんでも泣けばいいって思うんじゃない。」
茶化す母親に突っ込みを入れつつも濡れた所を拭いてあげ
「うん、これで大丈夫かな?」
「おっ。わるいな」


そんな二人のやり取りを見ていた乙姫は納得しないような顔をしながら
「おにーちゃん。ここでもこんなことがよくおきるの?」
「んっ?さっきみたいのは日常の一部だな。なあ美琴?」
(し…下の名前で呼んでくれた……)
急に美琴と呼んでくれたことにすこしふにゃー状態になるところだったが美琴は
「まあ。アンタが水をかぶってくれたおかげで私たちには水がかからなかったから感謝すべきことだね」
少し乙姫の空気が悪いと思い茶化すように美琴はそう話したら、乙姫は急に明るい顔になり
そして今まではあまり眼中に入れていなかった美琴を観察するようになった。

少しはハプニングがあったものの楽しく食事を終え午後も乙姫に引っ張りまわされながらも学園都市を見て回り
目的でもある学校見学を終え四人は再び
第11学区の学園都市の外へとつながるバスターミナルに向かうことになった。

「うーん。ちょっと早く着きすぎちゃったね」
「遅れるよりいいんじゃないの」
「楽しかったー」
「………疲れていて声も出ない」

出発時刻より早く着いてしまったためどうしようかと考えているところに
「あっ。中で飲むジュース買ってくるのを忘れていた」
「おっじゃあ、買ってきてやるよ」
そう言って上条は座っていたいすから腰を上げようとしたとき
「おにーちゃんは疲れていそうだからいいよ、美琴ちゃんと買ってくる」
「えっ私?」
「行こっ、美琴ちゃん」
そう言って乙姫は美琴を連れて自販機のあるほうへ行ってしまった。

声が聞こえないくらいの距離に離れると乙姫は美琴に
「ありがとう。美琴ちゃん」
「えっ?なんでお礼を言われるようなことはしていないんだけど」
「おにーちゃんのことでお礼なんだ」

そう言って乙姫は上条が実家のほうで周りからなんと呼ばれていたのかそしてどんな仕打ちを受けていたのかを話した。
そんな話を聞き絶句していた美琴に乙姫は
「美琴ちゃんがさっきおにーちゃんが水をかぶってくれたから私たちには水がかからなかったの言葉」
乙姫はゆっくりとそして感謝をこめて
「私たちには思いもつかない発想だったんだよ。お兄ちゃんをそうやって見てくれている人がいたなんて凄く嬉しかった」
美琴は数時間前に母が「乙姫ちゃん優しいから」の言葉を思い出し
「でも。あいつの実家の方では乙姫ちゃんがアイツの事を私と同じように見ていたんじゃないの」
そう話したてみたが
乙姫から出た言葉は
「私にはその発想はなかった。私はおにーちゃんにくっついて、みんなに大丈夫よ不幸にならないよってやっていただけだもん」
美琴は乙姫の過剰なスキンシップの理由を知った。そしてこの娘が本当に優しく従兄妹思いなのかも知った。
そしてこの上条のおせっかいの元は血筋にあったのかと知ってすこし笑ってしまった。

「どうしたの?美琴ちゃん」
「いやっ乙姫ちゃんを見ているとアイツと似ている所があって面白くて」
「ふーん。そうなんだ似ているんだ」

そう言って二人はジュースを買い上条の元へ戻っていった。
二人が戻るとあわせたかのようにバスが到着し二人が搭乗口に乗りこもうとした時にふと乙姫が後ろを振り返り美琴を呼び寄せ耳元に小さな声で
「美琴ちゃん。私負けないからねおにーちゃんの事」
その言葉に美琴は顔を赤くしながらも、
「望むところよ。私も負ける気持ちはないからね」
そう言って二人は合わせたかのようにハイタッチを交わし離れていった。

二人が乗るバスを見ながら上条は
「なあ。さっき乙姫と何か話していたんだけど何話していたんだ?」
「っが……アンタには関係ないんだからいいの」
そう言って逃げるかのようにスタスタと歩いていってしまった。
そんな後姿を見て上条はよくわからんの一言で片付けて後を追うように歩いていった。

バスの中
「ねえさっき美琴ちゃんと何か話していたけど何を話していたの?」
「うふふ。美鈴さん、実は……」

その日から美琴は母の電話に出るのを避けるようになったのは言うまでもない。


ウィキ募集バナー