とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part05

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第5話「決戦前夜」


気づけば、美琴は寮のベッドの上にいた。
頭の中がぐちゃぐちゃでどこをどうやって帰って来たのかも覚えていない。
頭の中で再生されるのは、妹の左手の薬指にあった指輪とそのときの妹の幸せそうな顔。
(なんで、私じゃないの…)
何度目になるのかも分からない疑問が胸を締め付ける。
なんで、私じゃないのか―――
なんで、妹なのか―――
なんで、なんで、なんで―――!!!
なんで―――なんて…
「…決まっているじゃない。会えばいつもビリビリして、怒鳴って、怒って、追いかけ回して…。そんな子のことをアイツが好きになってくれるわけないよね…。」
涙が溢れそうだった。
でも、泣くわけにはいかない。
(せっかく妹が、幸せを掴んだんだから、私が祝福してあげないと…私はあの子の「姉」なんだから!
明日からは今までの『御坂美琴』に戻ろう。『学園都市第3位』で『常盤台中学校のエース』としての『御坂美琴』に。)
そう誓ったのに、まだ涙は消えない。
まるで、美琴自身の未練や嫉妬が消えないように。
私、明日から笑えるよね。と不安に思いつつ失笑し、気を失うように美琴は眠り込んだ。


そのころ上条はファミレスで女子3人に囲まれていた。
青髪ピアスあたりであれば絶叫して喜びそうな状況だが、上条の顔色は悪い。
というか、病人の顔色に近い。真っ青になり今にも気絶しそうだ。
今までいくつもの戦場を渡り歩き(本人の意思とは関係無く)、首謀者の企みを右手1本で打ち消して来た人とは思えない。
しかし、そのような状況になってもしかたがないというか男なら同情するだろう。
なぜなら、同席している他の3人が鬼も逃げ出さんばかりの表情をしているからだ。
正面左側では佐天は普段の活発な印象が消え、獲物を前にした肉食動物のような表情をしているし、正面右側では初春は笑顔のままでこそあるが、あたりに放つ威圧感が半端無い。
そして、正面にいる黒子はというとすでに指の間に銀の針を構えた状態で、気炎を吐きながら座っている。
(不幸だ…)
上条はそう思った。
「さて、上条さん」
口火を切ったのは初春だった。
ここから上条の本当の地獄が始まる。
「…なんでせうか?」
「はっきり聞きます。御坂さんに何かしましたか?」
いきなり核心をつかれ、上条は焦る。
説明するのは簡単だが、そうなると妹のことも説明しないといけなくなる。
美琴の友達とはいえ、あんな血なまぐさいことを説明するのは気が引けるうえに、美琴の思いとも反することになる。
そう思い、どう説明するかと上条が考えていると
「上条さん、何で御坂さんは走って、しかも泣きそうになりながらお店を飛び出していったんですか?」
佐天の表情からは純粋に美琴を心配していることが伝わって来る。
他の2人の表情からもそのことが伝わって来る。

上条は店内であったことを全て話した。
しかし、妹の事を伏せて。
「なるほど、御坂さんの勘違いですか…」
「まぁ、結論としてはそうなるけど…」
「…」
3人とも分かってくれたみたいで上条はホッとした。
しかし、『理解』と『納得』は異なる。
「でも…」
佐天が言葉を続けようとしたとき―――
「お姉様を泣かせた罪は万死に値しますのーーー!!!」
今まで黙って話を聞いていた黒子が突然叫んだ。
「この類人猿がっ!!お姉様を泣かせるなんて例え地球が反対に回転しだしたとしても行ってはならない行為!!しかも、その理由が他の女性とイチャイチャしていたからとは!!類人猿ではなくただの猿でしたのねっ!!!まったく最低ですわっ!!!」
言うだけ言ったあと、黒子は席を立ち
「寮に戻ってお姉様の様子を見てきますのっ。」
とテレポートをして消えた。

上条は寮のベッドの上で寝転びながら、今日の出来事を振り返っていた。
あの後すぐ、残された佐天と初春はこれ以上話すことはないと感じたのか、席を立った。
初春は去り際に
「御坂さんに連絡してみたらどうでしょうか?」
と言っていたが、どの面して連絡なんかするんだ。と思い、上条は連絡していなかった。

気づけば、21:30になろうとしていた。
「はぁ…」
ため息をつく。誰かが『ため息1つで幸せが1つ逃げていく』と言っていたが、ため息もつきたくなる心境もあるだろうと1人思う。
(アイツとはなんもねぇんだって!!俺が好きなのはお前だよ!!なんて言えたら、美琴の奴なんて思うかな?)
怒られるかもしれない、フラれるかもしれない。
だが、今までの関係が今日の出来事で崩れてしまうのは嫌だった。
(でも…)
ネガティブな考えが頭をよぎる。
思考のループに入りそうになったときだった。

『アイツは関係ない!!俺が好きなのはお前だけなんだ!!』
誰もいないはずの部屋から自分の考えていたことが声になって聞こえた。
焦った上条が発生源を探すとテレビがついていて、普段なら見ないドラマが映し出されていた。

『そんなの信用出来ないっ!鋼手の周りには女の子いっぱいいるし。』
『明日、21:00に駅前のイルミネーションの前まで来て欲しい。俺はずっと美琴のこと待ってるから。』

何故か目が離せなくなった。
そして思いついた。
美琴に謝る方法を、自分の気持ちを伝える方法を。
ケータイを取り、上条はメールを打つ。
アドレスはもちろん『御坂美琴』宛て。


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