とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part06

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第6話「決戦当日」


日付が変わって12月24日
天気は曇りで、天気予報ではホワイトクリスマスになるかもしれないと言っていた。

「中でも寒いな…」
上条は教室にいた。
いつもの補習のためではなく、単純に今日が終業式のためである。
といっても終業式は終わっている。
しかし、教室には上条含むデルタフォースと吹寄と姫神、クラスメイトが多数残っている。
理由は2つ。
1つは、青髪ピアスが企画したクリスマス忘年会という名の独り身残念会に参加するためである。
もう1つは…
「青髪、残ってる人たち全員が参加者なのか?」
思っていた以上に人数がいるため仕切り屋の血が騒いだのか吹寄が確認して来る。
「多分、そうやと思うで。…つっちーは違うけど。」
「カミやんの行く末を見守るためぜよ。俺は舞華と寮で過ごすんだにゃー。」
この空間でリア充な予定を公開すればどうなるか?結論は火を見るより明か。
たちまち土御門はクラスメイトに埋もれ、悲鳴だけが聞こえる。
「上条君も、参加するの?」
窓の外を見て、ぼーっとしていた上条に姫神が声をかけるが、返事が無い。
上条はこのあとの予定のことで頭がいっぱいなのだが、そんなことを知る由もない全員。
「カミやん、カミやんも参加でええんやんな?」
「ん?何の話でせうか?」
まったく話を聞いていなかった上条。
そのツケは上条の知らないところで溜まっていたようだ。

ボクッ!!

上条の後頭部に凄まじい衝撃が走る。
「ぷげっ!!」
「このバカみじょうがっ!!人の話はちゃんと聞けっ!!」
吹寄のおでこが衝撃の正体だったようで、多少赤くなっていたが上条にはたまったものではない。
「だから何の話だよっ!?」
本当に話が聞こえていなかったようだ。
「今日のパーティにカミやんも参加するんよな?」
参加することを前提としている問いをする青髪ピアス。
もちろんそれには理由があった。
上条は一級フラグ建築士の資格を持ちつつも、今まで1つも回収していない。
そのため、女の子に誘われることはあっても自分から誘うことはない。
そして得てして女の子は、意中の人からの誘いを待つことが多い。
このため、残念会に参加させてしまえば予定が空いているであろう上条が新たなフラグを立てることは出来ないので男達はハッピー。
また、フラグを立てられている女の子は上条とクリスマスを過ごせてハッピー。
ということで、クラスにとっては上条が残念会に参加することを期待した女の子が多数参加し、それを目当てに男どもが参加し、という循環があったのでほぼクラス全員が参加しているのだ。
ここで、上条が来ないようなら女の子の参加率が激減、男どもの参加率も激減となり、残念会自体がお流れとなってしまう。
そのため、上条の参加は絶対条件だった。

しかし、上条は
「あ~、悪いっ。今日は予定があるからパス。」
と言ってのけた。

「へ?」
予想もしていなかった答えに青髪ピアスが呆然となり、教室全体が静まりかえった。
「今日はどうしても外せない用事があるんだよ。だから、悪いけど参加出来ない。」
今日の用事はどんなことがあっても外すことは出来ない。
上条当麻にとって第3次世界大戦の最中よりも、根性を出さないといけないことをやろうとしているのだから。

そこまで言うと、鞄を持って教室を出ようとする上条。
しかし…
「カ~ミ~や~ん。昨日の女の子とデートなのかにゃー?」
復活した土御門が爆弾を投下する。
「なっ!!」
上条は教室を出ようとしていた足を止め、振り返った。
振り返ってしまった。
「「「確保(するんだ(にゃー))!!!!」」」
そこには、面白そうにニヤニヤしている土御門と、鬼の形相でこちらを見ているクラスメイト達がいる…はずだった。
上条が最後に見たのは、嫉妬に燃えたクラスメイト達の胴体だった。

「それではこれより上条裁判を開廷します。裁判長は私吹寄制理が担当します。」
教室内部に簡易の裁判所が出来上がっていた。
教卓には裁判長である吹寄が座り、教室の中央に上条が座っている。
弁護人側には誰も座っておらず、検察側に土御門と青髪ピアスが座っている。
他のクラスメイトは、上条の後ろに座っているのだが、上条に向けて殺気だった嫉妬や呪詛の声を向けている。
「不幸だ…」
これから一世一代の大勝負だというのに何故こんな目にあっているのか不思議でしかたがなかった。
「それでは、検察の方は冒頭陳述を。」
「はい。被告人上条当麻は常日頃から、女性に対しフラグを立てています。このこと事態も大変問題であるのですが、本日は昨日のカミやん病の被害者との関係にしぼり、裁判を進行させて頂きたいのですがよろしいでしょうか、裁判長?」
「構わない。」
「では…。被告人は昨日、セブンスミスト前で裁判長ならびに私ども検察の人間と鉢合わせをしました。その際に、確認されたカミやん病の患者は常盤台2年生の御坂美琴。超電磁砲や常盤台のエースと呼ばれている方でした。」
この事実に、教室内は蜂の巣をつついたような大騒ぎである。
「デルタフォースは全員ロリコン?」
「御坂美琴だと…!?上条テメー!!!」
「やっぱり高Lvのほうがいいのねっ!!?」
などなど
そろそろ収集がつかなくなってきそうになったところで、裁判長が「静粛に」と一言で静まらせる。
「では、被告人に質問する。異論はあるか?」
特に異論は上がらない。
「では、被告人。御坂美琴とはどのように知り合った?」
「…御坂が不良に絡まれているのを助けました。」
「なるほど。では、御坂美琴との関係は?」
「宿敵?…くされ縁?」
「…なるほど。では、最後の質問だ。今日の約束は御坂美琴との約束か?」
「っ!何でそんなことまで言わねえといけねえんだ!!」
「…なるほど。」
「カミやん、図星だったにゃー?顔が赤いぜよ。」
自覚していなかったが、上条の顔は誰がどう見ても真っ赤になっていた。
「っ!?」
土御門に指摘されてさらに顔を赤くする。
普段の上条には考えられないくらい赤くなった顔を見ていた裁判長こと吹寄。
「毒気が抜けたわ。上条、さっさと帰りなさい。」
鬼の霍乱としか言いようの無いことを言った。
誰もが耳を疑った。
しかし、あまりの事態に誰も頭が回っていないようだ。
「早く帰らないと続きを」ガタッ!!
言い切る前に上条は教室を飛び出して行った。
「吹寄はん、何で帰してもうたんや?」
当然の疑問をぶつける青髪ピアス。
「青髪、土御門、あんな上条当麻を見たことがある?」
「ないよ。あんなカミやん初めて見たわ。」
「俺も見たこと無かったにゃー。」
クラスメイトにも目線を飛ばすが全員首を横に振る。
「つまり、あんな顔をさせられるのは御坂美琴だけなのよ。」
教室内いた女子が俯く。
皆分かってしまったのだ。
上条の心の中にいる特別な女の子が誰なのか、今日この後で上条が何をしようとして美琴を誘ったのか。
「だから、帰らしたのよ。これ以上引き止めても無駄だと思ったから。」
「せやな。なら、残念会でパーッとやろか?」
「店の予約だけは任せるにゃー。予算が安くて、食い放題の店予約しとくぜよ。」
デルタフォースの2人は連れ立って廊下に出て行く。
その後を追うように男子も出て行った。
残された吹寄は、次に青髪ピアスを先頭に男子が帰って来るまで女子の面倒を見続けた。


「ではお姉様、くれぐれも殿方と一緒に出歩いたりしないでくださいまし。黒子がいないんですから野蛮な変態がいつ襲って来るかも分からないんですから。」
「バカ言ってないでさっさと行きなさいよ。ジャッジメントの仕事でしょ?」
美琴は寮の部屋にいた。
常盤台も今日が終業式だったため、黒子は午後からジャッジメントの仕事になる。
朝から仕事についている他のジャッジメントに比べ、午後から仕事になっている人は大抵が恋人がいないのが理由である。
クリスマスイヴのため、アホな人がうじゃうじゃ出て来る夜の時間帯は本体、アンチスキルの当番になるのだが、人があまりに足らないためジャッジメントからも応援を出す必要がある。
しかし、ジャッジメントもアンチスキルも人の子。
クリスマスイヴは恋人と過ごしたい。
そのため、専用のシフトが組まれるのだが、こうなると一番忙しく、一番デートにむいている夜の時間のシフトが埋まらない。
そこでジャッジメントでは、朝の時間や午後の早い時間帯に恋人がいる人を入れ、そうでない人に夜の時間を担当してもらう形をとることになった。
このような組み方だと不平不満が出そうなものだが、実際にはあまり出ていない。
これは、ここで不平不満を言えば来年や再来年、自分に恋人がいるときにシフトに入れられても文句を言えないことが大きく関わっているのだが、嫌なことには変わりない。
ということで必然的に、経験の浅いものに経験を積ませるためにという名目上、ジャッジメント1年生たちが主に夜の時間を担当する。
黒子のパートナーである初春もそんな貧乏くじを引いた1人であり、彼女が応援に出るのであれば黒子も参加しないといけない。
しかたのないことだと分かりつつも、愛しのお姉様とイヴの夜を過ごせないのは涙が出るほど悲しい。
実際、決まったときには悔し涙を流しながら、当のお姉様に謝った。
むろん相手にはされなかったが…

「お姉様…制服のまま寝転がると皺になりますわよ。」
「大丈夫よ、すぐに着替えるし。でも、ジャッジメントも大変ね~、イヴにまで仕事なんて。」
美琴はベッドの上でケータイをいじりながら話す。
「そう思うならお姉様っ!黒子に黒子に熱いベーゼを下さいましっ!!そうすれば黒子は今日という日を乗り切れるような気がってベフっ!」
とある変態中学生の顔面にクッションが直撃した。
「くだらないこと言ってないで、早く行かないと遅れるわよ?」
「そうでしたの。では、お姉様言って参りますの。」
黒子が瞬間移動し、部屋には美琴1人になった。
ふと時計を見ると、午後3時になったところだった。
「さって、あのバカとの約束まではあと3時間…か。」
そう言って美琴はまたケータイをいじる。
画面には上条からのメールが表示されていた。

タイトル:明日
本文
明日、暇か?
もし、暇なら18:00に
いつもの公園に来てくれ。

そっけない、でもアイツらしいと感じるとメールの内容。
メールが来たときは、本当に嬉しかった。
ケータイの画面を見ながら、自分の顔がにやけてくるのが分かる。

(でも)
ケータイを閉じ、目をつぶる。
思い出すのは、昨日の出来事。
指輪をした妹に抱きつかれ、自分の質問に対してしどろもどろになったアイツの顔。
そして、妹の幸せそうな顔。
(妹さんを僕に下さい!とか?まぁ、アイツなら多分大丈夫よね…。)
上条なら妹を絶対幸せにしてくれる。
それについては確信出来る。
アイツの横にいる限り妹は笑顔でいることが出来る。
では、自分は?
あの2人の横に立って、笑顔で祝福出来るのか?
まだ、こんなにも未練でいっぱいな心で、笑顔でいられるのか?
そんな自問自答をしている間に美琴は眠ってしまった。

「あれ?私…眠って……っ!?」
時計を見ると、19:00を過ぎていた。
ケータイには上条からの着信が10件も来ている。
美琴は慌てて、コートとマフラーを手に取ると待ち合わせ場所まで走り出した。

「はぁ、はぁ、アイツは…?」

19:10になり、美琴は待ち合わせの公園に来ていた。
普段の美琴ならありえないほど遅刻してしまったため、まだ上条が待っているのかがかなり不安でしかたがない。
公園内に入り、周りを見渡してみるが誰もいない。
イヴの公園などカップルの巣窟となっていそうなものだが、ここには1組もいないようだ。
しかし、目的の人物もいない。
(1時間も待ってるわけないよね…)
寝坊で最後のチャンスを逃していれば、世話はない。
美琴は自分で自分を殴りたかった。
アイツから誘ってくれたデート?の誘い、もしかしたら本当に妹と付き合っているなら、これから先アイツと手をつないで歩いたり、腕を組んだり、自分が夢見ていたことが全部出来なくなるかもしれない。
(それなのに寝坊して、アイツは帰っちゃってて、もうダメだ…今日は素直になろうって決めてたのに……)
美琴は膝を抱え、その場に座り込んだ。

「ん?あ、御坂!やっと来やがった!」
「え?」

美琴が顔を上げると、上条が缶コーヒー片手にこちらを見下ろしていた。
「何でアンタがいるの?帰ったんじゃ…」
美琴は目の前に上条がいる状況についていけていない。
「何で俺が帰んねえといけねぇんだよ。誰かさんが電話にもでず、いつまでたっても来ないんでコンビニまであったかいものを買いに行ってたんだよ。」
左手に持った缶コーヒーを見せる。
「…自販機あるじゃない。」
美琴の言うことももっともだった。
ここから一番近いコンビニまで歩いて5分ほどかかる。
それなら、後ろにある自販機で買ってしまえばすむ問題なのだ。
「…本当は何かあったのかって心配になって、ちょっと探しに行ってたんだ。そのついでにコンビニによったんだよ。情報収集も兼ねて。そだ、後でカエル先生にもお礼言っとかないと。」
美琴の性格から考えて、遅刻するとは考え難い。
それなら、遅刻してしまうような何かに巻き込まれて連絡も出来ないんじゃないか?
と上条は考え、自分の足で探しながら、病院に電話し事件や事後が起きていないか調べていたのだ。
「っ!」
美琴は泣き出してしまった。
自分のことをいろいろ気遣ってくれた上条の優しさが嬉しかった。
が、同時に自分が情けなかった。
いろいろな感情がごちゃ混ぜになってしまい、結果泣き出したのだが上条にはたまったものではない。
「みっ御坂さん。どうして泣いているのでせうか?」
「な…なんでもない…わよ。ただ…」
「ただ…。何でせうか?」
「…多分……嬉しかっただけ。」
美琴は目元を拭い、笑顔で上条を見る。
泣いたためか頬は赤くなっていて、目はうるうるしている。
健全な高校生である上条にとっては、こんな表情は凶器でしかない。
それが好きな人であればなおさらである。

「っ!」
自分の顔が赤くなっているのを自覚する。
とっさに顔を背けるが、美琴は不審に思ったようだ。
「どうしたの?」
「何でもねぇよ…」
さすがに今の状況を口にするのは恥ずかしすぎる。
「何?アンタもしかして照れてるの??」
美琴が二マニマ笑いながら聞いて来る。
「っ!バカ言うんじゃありません!紳士上条さんが中学生の笑顔で照れるわけなんかあるわけないじゃないですか!?」
「顔背けて言ってても説得力ないわよ。いいからこっち向きなさいよ。」
「…」
「…」
「…」
「…はぁ、分かったわよ。別に向きたくないなら無理に向かなくてもいいから。」
諦めて残念そうに俯いてしまう美琴。
こんなことを好きな女の子にされると、たまったものではないわけで、
「いや、向きたくないのは本音なんですがね、もっと見ていたいのも本音でして、だから、ちょっと時間をくれると嬉しいというか、落ち着く時間が欲しいわけで、けして美琴のことを見たくないわけではないので出来れば顔を上げて欲しいんですが、ダメですか?ダメですよね?すいませんでしたーーー!!」
すばやく土下座に移行するが、自分の中の本音を口にしてしまった上条。
自分で言ったことに対して、さらに顔を赤くしてしまう。
そんな上条の言葉を聞いて俯いたままの美琴は耳まで赤くなっているのを自覚する。
(今『美琴』って…!)
2人の空気がむず痒いものに変化する。
周りから見れば初々しいカップル以外の何者でもないのだが、2人は気づいていない。
土下座している彼氏とされている彼女というなんとも言えない状況ではあるが…
「とりあえず、立って。」
「…おう。」
「…」
「…」
「とっ、とりあえず、飯でも食いに行かないか?」
「そっ、そうね!行きましょっ!!」
つかず離れずの距離と微妙な空気のまま2人は大通りへと向かう。


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