最終話「変わる日常」
0:00
上条と美琴はリビングで言い争っていた。
「だから、アンタがベッド使いなさいよっ!私は布団でいいから!」
「それは上条さんは認めませんっ!御坂はベッドで寝てなさい!」
「私が押し掛けてるんだから布団でいいじゃない!」
「別にそれは家主の俺がいいって言ったからだろ?だから、それとこれとは別問題だ!」
「じゃあ、せめて同じ部屋で寝なさいよ!お風呂場なんて暖房もないじゃない。」
「上条さんなら丈夫ですから大丈夫なんです。」
「だったら、私がお風呂場で寝るわよ!」
「ダメですっ!御坂はベッドを使いなさい!」
「だから――」
堂々巡りである。
美琴は上条がベッドで寝て、自分が同じ部屋で布団を借りて寝るつもりだったのだが、上条は美琴にベッドを使わせ、自分は風呂場に布団を敷いて寝るつもりだったのだ。
これを聞いて美琴が大反論。
自分が泊めてもらうのだからと上条にベッドで寝るように勧め、自分は布団で寝ると言ってきた。
上条は美琴と同じ部屋で寝ることに抵抗があったため、風呂場に布団を敷いて寝るスタイルは譲れない。
「だから、アンタがベッド使いなさいよっ!私は布団でいいから!」
「それは上条さんは認めませんっ!御坂はベッドで寝てなさい!」
「私が押し掛けてるんだから布団でいいじゃない!」
「別にそれは家主の俺がいいって言ったからだろ?だから、それとこれとは別問題だ!」
「じゃあ、せめて同じ部屋で寝なさいよ!お風呂場なんて暖房もないじゃない。」
「上条さんなら丈夫ですから大丈夫なんです。」
「だったら、私がお風呂場で寝るわよ!」
「ダメですっ!御坂はベッドを使いなさい!」
「だから――」
堂々巡りである。
美琴は上条がベッドで寝て、自分が同じ部屋で布団を借りて寝るつもりだったのだが、上条は美琴にベッドを使わせ、自分は風呂場に布団を敷いて寝るつもりだったのだ。
これを聞いて美琴が大反論。
自分が泊めてもらうのだからと上条にベッドで寝るように勧め、自分は布団で寝ると言ってきた。
上条は美琴と同じ部屋で寝ることに抵抗があったため、風呂場に布団を敷いて寝るスタイルは譲れない。
ちなみに美琴は今、上条のワイシャツと短パンを着ている。
これがワイシャツの丈が長いため、何も履いていないように見えるのだ。
風呂上がりの美琴の姿を見て、上条は通路上に美琴がいるにも関わらず、聖人もびっくりな速さで部屋着を掴み、脱衣所に飛び込むということをやってのけた。
その後、風呂の中でも湯船に浸かるか浸からないかで精神と理性をすり減らすことになったのだが。
これがワイシャツの丈が長いため、何も履いていないように見えるのだ。
風呂上がりの美琴の姿を見て、上条は通路上に美琴がいるにも関わらず、聖人もびっくりな速さで部屋着を掴み、脱衣所に飛び込むということをやってのけた。
その後、風呂の中でも湯船に浸かるか浸からないかで精神と理性をすり減らすことになったのだが。
話を戻そう。
その後も堂々巡りが続くと思われたが、
「分かった。ベッドで寝る。」
「そうか、なら俺は風呂場で――「…アンタと一緒に」―!」
「い、いいでしょ。それなら、アンタも私もベッドで眠れるんだし!」
(いいわけないだろ…)
それでは意味が無い。
上条にしてみれば今日の自分の理性は信用出来ない。
いつ本能のままに美琴に手を出すのか分からないのだ。
だからこそ美琴を守るためにも別の場所で寝ることを譲らなかったのだ。
「やっぱり風呂場で――「ダメッ!」――!」
後ろから暖かいものが抱きついてきた。
「今日くらい…ダメ…かな。今日だけでいいの。ほんとはまだ幻想(ゆめ)の中にいて、目が覚めたら私は常盤台の寮にいるような気になるの。だから今日だけは一緒に寝て?明日起きたときに一番最初に見るのはアンタであって欲しい…」
その後も堂々巡りが続くと思われたが、
「分かった。ベッドで寝る。」
「そうか、なら俺は風呂場で――「…アンタと一緒に」―!」
「い、いいでしょ。それなら、アンタも私もベッドで眠れるんだし!」
(いいわけないだろ…)
それでは意味が無い。
上条にしてみれば今日の自分の理性は信用出来ない。
いつ本能のままに美琴に手を出すのか分からないのだ。
だからこそ美琴を守るためにも別の場所で寝ることを譲らなかったのだ。
「やっぱり風呂場で――「ダメッ!」――!」
後ろから暖かいものが抱きついてきた。
「今日くらい…ダメ…かな。今日だけでいいの。ほんとはまだ幻想(ゆめ)の中にいて、目が覚めたら私は常盤台の寮にいるような気になるの。だから今日だけは一緒に寝て?明日起きたときに一番最初に見るのはアンタであって欲しい…」
上条は思った。
美琴は不安だったんだと。
それが例え神が作った幻想であれ、例外無く打ち消す右手『幻想殺し』――
その力を持ってしても少女の不安という『幻想』は打ち消せない。
しかし、その手段は上条自身が持っている。
だったらやることは1つしかない。
美琴は不安だったんだと。
それが例え神が作った幻想であれ、例外無く打ち消す右手『幻想殺し』――
その力を持ってしても少女の不安という『幻想』は打ち消せない。
しかし、その手段は上条自身が持っている。
だったらやることは1つしかない。
「分かったよ。美琴がそれで気が済むなら。」
「…ほんと?」
「ああ。ただ…」
「?」
(上条さんの理性は朝まで持つのか?…不幸だ。)
突然黙ってしまった上条に美琴は?マークを浮かべるだけだった。
「…ほんと?」
「ああ。ただ…」
「?」
(上条さんの理性は朝まで持つのか?…不幸だ。)
突然黙ってしまった上条に美琴は?マークを浮かべるだけだった。
0:20
(そういえば…)
リビングで1人漫画を読んでいた上条は立ち上がり、コートのポケットからケースを取り出す。
美琴は今、洗面所で歯磨き中だ。
「渡しそびれてたな。」
中身は公園で渡しそびれた指輪だった。
あの後美琴が気を失ってしまったので、それどころではなくなってしまいポケットに入れていたのだ。
「どうすっかな。」
むろん、渡すつもりなのだがどうにも照れくさい。
告白のときはその場の空気やテンションでなんとかなったのだが、一度醒めてしまうとどうしても一歩めが踏み出せないのだ。
どうしたものかと迷っている間に美琴が戻って来た。
「歯ブラシの場所分かったか?」
「うん、大丈夫。」
「そうか。」
「アンタ、何持ってんの?…それ――」
しまった。と思う。
初めてのクリスマスプレゼントなのだ、出来ればもうちょっとかっこよく渡したいと思うのは男子共通だろう。
(ま、これもいつもの不幸(こと)だしな。)
そう、いつもの不幸(こと)。
だから、いつも通りに振る舞うことにした。
「ああ、御坂へのクリスマスプレゼントだよ。」
「アンタねぇ、もうちょっと渡すときのこと考えなさいよ。」
美琴はあきれ顔で言ってくるが、喜びを隠しきれていない。
「ほんとは告白したときに渡すつもりだったんだけど、お前が気を失うから渡せなかったんだよ。」
「そ、それはっ!悪かったと思うけど…」
「ってことで御坂。左手出してくれ。」
「っ!」
顔を真っ赤にして、おずおずと左手を差し出す。
上条はケースから指輪を取り出し、左手の小指にはめる。
リビングで1人漫画を読んでいた上条は立ち上がり、コートのポケットからケースを取り出す。
美琴は今、洗面所で歯磨き中だ。
「渡しそびれてたな。」
中身は公園で渡しそびれた指輪だった。
あの後美琴が気を失ってしまったので、それどころではなくなってしまいポケットに入れていたのだ。
「どうすっかな。」
むろん、渡すつもりなのだがどうにも照れくさい。
告白のときはその場の空気やテンションでなんとかなったのだが、一度醒めてしまうとどうしても一歩めが踏み出せないのだ。
どうしたものかと迷っている間に美琴が戻って来た。
「歯ブラシの場所分かったか?」
「うん、大丈夫。」
「そうか。」
「アンタ、何持ってんの?…それ――」
しまった。と思う。
初めてのクリスマスプレゼントなのだ、出来ればもうちょっとかっこよく渡したいと思うのは男子共通だろう。
(ま、これもいつもの不幸(こと)だしな。)
そう、いつもの不幸(こと)。
だから、いつも通りに振る舞うことにした。
「ああ、御坂へのクリスマスプレゼントだよ。」
「アンタねぇ、もうちょっと渡すときのこと考えなさいよ。」
美琴はあきれ顔で言ってくるが、喜びを隠しきれていない。
「ほんとは告白したときに渡すつもりだったんだけど、お前が気を失うから渡せなかったんだよ。」
「そ、それはっ!悪かったと思うけど…」
「ってことで御坂。左手出してくれ。」
「っ!」
顔を真っ赤にして、おずおずと左手を差し出す。
上条はケースから指輪を取り出し、左手の小指にはめる。
「…ちょっと。」
「……なんですか、御坂さん。」
「おっきいんだけど。」
「………なんででしょう?」
「……なんですか、御坂さん。」
「おっきいんだけど。」
「………なんででしょう?」
サイズが合ってなかった。
美琴の小指にはまった指輪はぐるぐるまわるだけの余裕のあるサイズだった。
手を下に向けようものなら確実に落ちる。
「アンターー!妹に協力までさせておきながらプレゼントがこれって何!?どういうことなのよーーー!!!」
「ちょっ!御坂、声でかいって!近所迷惑だから!あとビリビリもしまえっ!!上条さん家の電化製品が天国に旅立っちゃう!!だからやめてーーー!!!!」
美琴の小指にはまった指輪はぐるぐるまわるだけの余裕のあるサイズだった。
手を下に向けようものなら確実に落ちる。
「アンターー!妹に協力までさせておきながらプレゼントがこれって何!?どういうことなのよーーー!!!」
「ちょっ!御坂、声でかいって!近所迷惑だから!あとビリビリもしまえっ!!上条さん家の電化製品が天国に旅立っちゃう!!だからやめてーーー!!!!」
怒り狂う美琴を止めようとするとケースの裏にメモが貼られているのを見つけた。
電撃を右手で防ぎつつ、メモを読んでみる。
そこには可愛らしい丸文字でこう綴られていた。
電撃を右手で防ぎつつ、メモを読んでみる。
そこには可愛らしい丸文字でこう綴られていた。
『あなたの煮え切らない態度を情けなく思ったので指輪のサイズを小指から薬指に変更して注文し直しました、とミサカは忠告しておきます。あと、お姉様を泣かせたら世界中のミサカが敵にまわりますから、とミサカは宣言します。お姉様を幸せにして下さい。10032号』
(アイツ…)
言葉はひどいが自分の背中を押してくれ、さらに美琴のことを気遣ってくれた妹に感謝する上条。
そんな上条の顔を見て、不思議に思ったのか美琴は電撃をしまっている。
言葉はひどいが自分の背中を押してくれ、さらに美琴のことを気遣ってくれた妹に感謝する上条。
そんな上条の顔を見て、不思議に思ったのか美琴は電撃をしまっている。
「御坂、もう一度左手を出してくれないか?」
「う、うん」
上条の真剣な顔に驚きつつも、左手を差し出す。
小指にはまった指輪を抜き、薬指にはめる。
サイズはぴったりだった。
「メリークリスマス、御坂。」
「う、うん」
上条の真剣な顔に驚きつつも、左手を差し出す。
小指にはまった指輪を抜き、薬指にはめる。
サイズはぴったりだった。
「メリークリスマス、御坂。」
今日はなんという日だろう。
これでは本当に泣き虫ではないか。
告白の前も、告白のときも、今も。
全部コイツが悪いんだ。
悲しませるから、喜ばせるから、幸せをくれるから。
でも、もう飾る必要も無い。
超電磁砲でも、常盤台のエースでもない。
ただの『御坂美琴』として見てくれる人を見つけたから。
そう思ったら、涙が溢れた。
これでは本当に泣き虫ではないか。
告白の前も、告白のときも、今も。
全部コイツが悪いんだ。
悲しませるから、喜ばせるから、幸せをくれるから。
でも、もう飾る必要も無い。
超電磁砲でも、常盤台のエースでもない。
ただの『御坂美琴』として見てくれる人を見つけたから。
そう思ったら、涙が溢れた。
「ほんとに泣き虫だな、御坂は。」
頭の上に右手が置かれ、優しくなでられる。
「な、なによ。わ、悪い?だ、誰にも、迷惑、かけてないじゃない。」
「別に悪いなんて言ってねーよ。ただ可愛いなぁって思っただけだ。」
「かわっ!?」
「あーあ、ぐしゃぐしゃになっちまって。」
タオルで目の周りをぬぐってやる。
まだ、目は真っ赤だが泣き止んだようだ。
頭の上に右手が置かれ、優しくなでられる。
「な、なによ。わ、悪い?だ、誰にも、迷惑、かけてないじゃない。」
「別に悪いなんて言ってねーよ。ただ可愛いなぁって思っただけだ。」
「かわっ!?」
「あーあ、ぐしゃぐしゃになっちまって。」
タオルで目の周りをぬぐってやる。
まだ、目は真っ赤だが泣き止んだようだ。
「何で最初小指にはめたの?」
美琴にしてみれば、最初から薬指にはめてくれればあんなに怒ることもなかったのだ。
これで上条が焦らしただけなのだったら、乙女の純情を弄んだ罪で超電磁砲でのキャッチボールをしなくてはならない。
「それに関してはこれを読んでくれ。」
上条から渡されたメモを読む。
美琴にしてみれば、最初から薬指にはめてくれればあんなに怒ることもなかったのだ。
これで上条が焦らしただけなのだったら、乙女の純情を弄んだ罪で超電磁砲でのキャッチボールをしなくてはならない。
「それに関してはこれを読んでくれ。」
上条から渡されたメモを読む。
(―――あの子…)
また涙が浮かぶ。
「あの子に感謝しなきゃね。」
「そうだな、今度ケーキでも買って持って行くか?」
「そうね、そうしましょ。」
泣き笑いながら頷いた。
「あの子に感謝しなきゃね。」
「そうだな、今度ケーキでも買って持って行くか?」
「そうね、そうしましょ。」
泣き笑いながら頷いた。
「御坂、そろそろ寝るか?」
確かにもう1:00になろうとしている。
さすがに寝ないと明日がつらくなってくる。
「そうね。…ねぇ?」
「どうした?」
ちょっと間が空いてから美琴が呟く。
「お願いがあるんだけど、聞いてくれない?」
「なんでせうか?」
「『美琴』って呼んで欲しいんだけど…ダメ?」
不安そうに見上げてくる美琴。
(こんな目でお願いされたら断れるわけねーだろっ!!)
また理性の壁に亀裂が走るのを自覚する。
(さっき指輪渡したときもヤバかったしなぁ。これ以上何か起こる前に寝よう!寝てしまえば何とかなる!!)
ずっと自分の世界にいた上条。
その間も美琴はずっと待っていたわけで…
「やっぱりダメ…なの?」
「ダメじゃない。」
理性の壁にさらに深く亀裂が走った。
確かにもう1:00になろうとしている。
さすがに寝ないと明日がつらくなってくる。
「そうね。…ねぇ?」
「どうした?」
ちょっと間が空いてから美琴が呟く。
「お願いがあるんだけど、聞いてくれない?」
「なんでせうか?」
「『美琴』って呼んで欲しいんだけど…ダメ?」
不安そうに見上げてくる美琴。
(こんな目でお願いされたら断れるわけねーだろっ!!)
また理性の壁に亀裂が走るのを自覚する。
(さっき指輪渡したときもヤバかったしなぁ。これ以上何か起こる前に寝よう!寝てしまえば何とかなる!!)
ずっと自分の世界にいた上条。
その間も美琴はずっと待っていたわけで…
「やっぱりダメ…なの?」
「ダメじゃない。」
理性の壁にさらに深く亀裂が走った。
電気を消し、2人でベッドに潜り込む。
美琴のいい香りがして、内心緊張している上条だがさっさと寝た方が精神上いいと判断していたので目を閉じる。
「ねぇ。」
「何だよ。」
「私さ、アンタに、クリスマスプレゼント渡してないのよね。」
唐突に美琴が切り出す。
「あー、別にいつでもいいぞ。」
「じゃあ、さ。今でも、いいのよね?」
「?」
上条は目を開けてみるが、美琴は特に何も持っていない。
何を言ってるのだろう?と考える上条。
その答えは目の前にあった。
「…たし」
蚊の鳴くような声で美琴が呟く。
よく見れば顔は真っ赤である。
「?」
「目、閉じて。」
言われるがままに目を閉じる上条。
美琴のいい香りがして、内心緊張している上条だがさっさと寝た方が精神上いいと判断していたので目を閉じる。
「ねぇ。」
「何だよ。」
「私さ、アンタに、クリスマスプレゼント渡してないのよね。」
唐突に美琴が切り出す。
「あー、別にいつでもいいぞ。」
「じゃあ、さ。今でも、いいのよね?」
「?」
上条は目を開けてみるが、美琴は特に何も持っていない。
何を言ってるのだろう?と考える上条。
その答えは目の前にあった。
「…たし」
蚊の鳴くような声で美琴が呟く。
よく見れば顔は真っ赤である。
「?」
「目、閉じて。」
言われるがままに目を閉じる上条。
――チュ
唇にやわらかいものが触れて離れていく。
驚いて目を開けると、焦点が合わないくらいの距離に美琴がいた。
美琴は一度目を閉じ、意を決したように言う。
驚いて目を開けると、焦点が合わないくらいの距離に美琴がいた。
美琴は一度目を閉じ、意を決したように言う。
「私をもらって。当麻…」
―――鉄壁の理性が崩壊した瞬間だった。
12月25日
6:30
6:30
「ん…」
美琴が目を覚ますと上条の顔が目の前にあった。
(なっ!?…そうだ、私――――)
昨日の出来事を思い出す。
「…ちゃんと叶えてくれたね。」
上条の腕が自分にまわっていることに気づき微笑む。
子供じみた自分のわがままに答えてくれた彼氏に感謝しつつ、自分の腕を上条の胴体にまわして美琴は夢の世界に戻って行った。
美琴が目を覚ますと上条の顔が目の前にあった。
(なっ!?…そうだ、私――――)
昨日の出来事を思い出す。
「…ちゃんと叶えてくれたね。」
上条の腕が自分にまわっていることに気づき微笑む。
子供じみた自分のわがままに答えてくれた彼氏に感謝しつつ、自分の腕を上条の胴体にまわして美琴は夢の世界に戻って行った。
9:30
「ん…」
上条は違和感を感じ、目を覚ました。
自分の胸のあたりにさらさらとしたものがあたっている。
覗き込むと美琴が眠っていた。
(…可愛いな。)
猫のように丸くなりつつ、腕はしっかり上条の胴の部分にまわされている。
「守ってやらないとな。」
本人が聞いていたら、「私だって戦える」と怒っていただろうが今は寝ている。
「っと、今日も上条さんは補習です…よ……」
時間は9:30。
上条達の高校ではちょうど1現目が終わる時間だ。
つまり…
「ヤバい!!おい、美琴起きろ!起きてくれ!!」
「何よ、朝からうるさいわね…」
美琴は無理矢理起こされてむくれている。
しかし、上条はそれどころではない。
「上条さんは補習に行かないといけないので、そろそろ動きたいんです。ですから、まわしてる腕を放してもらってもいいですか?」
「わかったわよ。」
腕が放れてベッドから飛び起きる。
朝飯は抜かないと間に合わないどころか、すでに大遅刻だ。弁当を用意している暇もない。
「当麻、今日補習何時まであるの?」
制服に着替えている上条に問いかける。
「今日は16:00までの予定だったけど多分遅くなる。」
「昼ご飯は?」
「…ない。」
いつもなら弁当を用意しているのだが、昨日はそんな時間もなかった。
コンビニ弁当とかは上条の経済状況では無理だ。
昼飯抜きで頑張るしかない。
「ん…」
上条は違和感を感じ、目を覚ました。
自分の胸のあたりにさらさらとしたものがあたっている。
覗き込むと美琴が眠っていた。
(…可愛いな。)
猫のように丸くなりつつ、腕はしっかり上条の胴の部分にまわされている。
「守ってやらないとな。」
本人が聞いていたら、「私だって戦える」と怒っていただろうが今は寝ている。
「っと、今日も上条さんは補習です…よ……」
時間は9:30。
上条達の高校ではちょうど1現目が終わる時間だ。
つまり…
「ヤバい!!おい、美琴起きろ!起きてくれ!!」
「何よ、朝からうるさいわね…」
美琴は無理矢理起こされてむくれている。
しかし、上条はそれどころではない。
「上条さんは補習に行かないといけないので、そろそろ動きたいんです。ですから、まわしてる腕を放してもらってもいいですか?」
「わかったわよ。」
腕が放れてベッドから飛び起きる。
朝飯は抜かないと間に合わないどころか、すでに大遅刻だ。弁当を用意している暇もない。
「当麻、今日補習何時まであるの?」
制服に着替えている上条に問いかける。
「今日は16:00までの予定だったけど多分遅くなる。」
「昼ご飯は?」
「…ない。」
いつもなら弁当を用意しているのだが、昨日はそんな時間もなかった。
コンビニ弁当とかは上条の経済状況では無理だ。
昼飯抜きで頑張るしかない。
「お弁当持って行ってあげようか?」
救世主がいた。
「御坂さん、哀れな上条さんのためにお昼ご飯を持って来てくれると、そうおっしゃいましたか?」
救世主がいた。
「御坂さん、哀れな上条さんのためにお昼ご飯を持って来てくれると、そうおっしゃいましたか?」
「…やっぱりやめた。」
希望は崩れさった。
「なんででせうか?」
「名前――」
「えっ?」
「美琴って呼ぶって約束したのに…」
「あっ。」
確かに昨日約束した覚えがある。
昨日のことを思い出すのは精神衛生上あまりよろしくないが…
「なんででせうか?」
「名前――」
「えっ?」
「美琴って呼ぶって約束したのに…」
「あっ。」
確かに昨日約束した覚えがある。
昨日のことを思い出すのは精神衛生上あまりよろしくないが…
「ゴメンな…美琴。」
「…許してあげる。――ねぇ、昼ご飯何がいい?」
「なんでもいいぞ。」
なんでもいいっていうのが作り手にとっては一番困る。
だからちょっと意地悪をしてみる。
「じゃあ、白ご飯だけでいいのね?」
「美琴さん、さすがにそれは…」
上条が困った顔をしている。
「…冗談よ。ハンバーグでいい?」
「別にいいけど…。美琴が作るのか?」
口ぶりからして作ってくれるようだったが、料理の腕が分からないのに頼むのは勇気がいる。
そんな不安が顔に出ていたのだろう、美琴が告げる。
「美琴さんをなめんな。料理くらい出来るから、期待してていいわよ。」
「―――お願いします。」
反対する理由はなかった。
「…許してあげる。――ねぇ、昼ご飯何がいい?」
「なんでもいいぞ。」
なんでもいいっていうのが作り手にとっては一番困る。
だからちょっと意地悪をしてみる。
「じゃあ、白ご飯だけでいいのね?」
「美琴さん、さすがにそれは…」
上条が困った顔をしている。
「…冗談よ。ハンバーグでいい?」
「別にいいけど…。美琴が作るのか?」
口ぶりからして作ってくれるようだったが、料理の腕が分からないのに頼むのは勇気がいる。
そんな不安が顔に出ていたのだろう、美琴が告げる。
「美琴さんをなめんな。料理くらい出来るから、期待してていいわよ。」
「―――お願いします。」
反対する理由はなかった。
「そろそろ行かねーとな。」
準備が出来た上条が玄関に向かう。美琴はワイシャツのままだ。
ドアを開けた上条がそうだ…。と振り返り、
「美琴ー、パス。」
銀色の何かを投げた。
危なげなくそれをキャッチした美琴は何だろう?と手の中のものを確認する。
鍵だった。
「預けとく。料理するならここ使ってくれたらいいし、昼飯持って来たときに帰してくれたらいいから。」
「…アンタ、こんな大切なもの預けていいの?」
手の中の鍵を見ながら、美琴は言う。
顔が若干赤くなっているのは上条の気のせいではない。
「彼女に部屋の鍵預けるのがそんなに変なことか?」
「っ!そ、そ、そうね。私、アンタの、当麻の彼女だもんね――」
自分の手の中にある上条からの信頼の証を握りしめる美琴。
別に彼女なんだからいいわよね、と上条に聞こえないように呟いた後、上条に告げる。
「ねぇ、お願いしてもいい?」
「上条さんが聞けることならなんなりと、姫。」
ニヤっと笑いながら答えた上条。
「いってきますのキス…して欲しいな…。」
顔を真っ赤にしながら、お願いする美琴。
上条の表情はあまりの衝撃に固まっている。
「や、やっぱ今のなしっ!気にしないでっ!!」
「…分かった。」
「え?」
見ると上条の顔も真っ赤である。
「美琴――」
右手が頬に触れ、美琴もそっと目を閉じた―――。
準備が出来た上条が玄関に向かう。美琴はワイシャツのままだ。
ドアを開けた上条がそうだ…。と振り返り、
「美琴ー、パス。」
銀色の何かを投げた。
危なげなくそれをキャッチした美琴は何だろう?と手の中のものを確認する。
鍵だった。
「預けとく。料理するならここ使ってくれたらいいし、昼飯持って来たときに帰してくれたらいいから。」
「…アンタ、こんな大切なもの預けていいの?」
手の中の鍵を見ながら、美琴は言う。
顔が若干赤くなっているのは上条の気のせいではない。
「彼女に部屋の鍵預けるのがそんなに変なことか?」
「っ!そ、そ、そうね。私、アンタの、当麻の彼女だもんね――」
自分の手の中にある上条からの信頼の証を握りしめる美琴。
別に彼女なんだからいいわよね、と上条に聞こえないように呟いた後、上条に告げる。
「ねぇ、お願いしてもいい?」
「上条さんが聞けることならなんなりと、姫。」
ニヤっと笑いながら答えた上条。
「いってきますのキス…して欲しいな…。」
顔を真っ赤にしながら、お願いする美琴。
上条の表情はあまりの衝撃に固まっている。
「や、やっぱ今のなしっ!気にしないでっ!!」
「…分かった。」
「え?」
見ると上条の顔も真っ赤である。
「美琴――」
右手が頬に触れ、美琴もそっと目を閉じた―――。
バタッ!と大きな音を立てドアが開き、人が飛び込んで来た。
「上条ちゃんっ!補習をサボるなんて何考えてるんです、か…」
「お姉様っ!やっぱりここにいましたの、ね…」
上条と美琴はキスをしたまま目を見開た状態で固まり、小萌と黒子もドアを開けたときの状態のまま固まる。
形容しがたい空気が4人を包んだ。
上条は美琴から離れ、この後に待ち構えている光景を想像して青ざめる。
「上条ちゃんっ!補習をサボるなんて何考えてるんです、か…」
「お姉様っ!やっぱりここにいましたの、ね…」
上条と美琴はキスをしたまま目を見開た状態で固まり、小萌と黒子もドアを開けたときの状態のまま固まる。
形容しがたい空気が4人を包んだ。
上条は美琴から離れ、この後に待ち構えている光景を想像して青ざめる。
「「上条ちゃん(上条さん)、どういうことですか(ですの)?」」
2人は笑顔だったが、目が完全に笑っていない。
「えっとですね、何から説明したらいいのか分からないんでせうが、昨日、美琴に告白しまして付き合うことになって、美琴が門限を過ぎてしまったので泊まりたいと言ったので泊まっただけなんでせう。納得しましたか、してない、してないですね、すいませんでしたーー!」
昨日あったことを一部を除いて一気に説明する上条。と同時に土下座へと移行している。
「お姉様!今類人…もとい、上条さんが言ったことはほんとなんですの!?」
「えっとですね、何から説明したらいいのか分からないんでせうが、昨日、美琴に告白しまして付き合うことになって、美琴が門限を過ぎてしまったので泊まりたいと言ったので泊まっただけなんでせう。納得しましたか、してない、してないですね、すいませんでしたーー!」
昨日あったことを一部を除いて一気に説明する上条。と同時に土下座へと移行している。
「お姉様!今類人…もとい、上条さんが言ったことはほんとなんですの!?」
「…ぅん。」
顔を真っ赤にして頷く美琴。
「こんの類人猿がっ!類人猿の分際でわたくしのお姉様に手を出しやがって!!今日という今日はもう許しておけないですのっ!!」
金属矢を掴み、上条へと襲いかかろうとする黒子。
「ちょっと、黒子っ!!」
「止めないで下さいましっ!お姉様っ!!」
「こんの類人猿がっ!類人猿の分際でわたくしのお姉様に手を出しやがって!!今日という今日はもう許しておけないですのっ!!」
金属矢を掴み、上条へと襲いかかろうとする黒子。
「ちょっと、黒子っ!!」
「止めないで下さいましっ!お姉様っ!!」
美琴が後輩を殺人犯にしないよう全力で止めているとき、上条は正座で説教されていた。
「それで、上条ちゃんは何で補習に来なかったんですか?」
「単なる寝坊です。」
「そうですか。ならなんで寝坊したんですか?」
「………夜、眠れなかったからです。」
確かに嘘はついていない。
「なんで眠れなかったんですか?」
「それは、その…」
「上条ちゃん、先生は上条ちゃんのことを心配して聞いてるんです。ちゃんと答えて欲しいんですよ?」
「………」
どう答えろというのだ。
まさか、ありのまま話すわけにもいかない。
(――考えろ、考えるんだ、上条当麻!そうすれば何かいい策が―――そうだ!)
名案を思い付いた上条。
「昨日の夜は、深夜の海外ドラ「御坂ー、上条当麻ー。」マを…?」
誰かに呼ばれたが、その姿が見えない。
今、上条がいるのは玄関だ。
しかし、先ほどの声は部屋の奥から聞こえてきた。
全員が?マークを浮かべていると奥の部屋から土御門舞夏が白い布のようなものを持って出て来た。
「それで、上条ちゃんは何で補習に来なかったんですか?」
「単なる寝坊です。」
「そうですか。ならなんで寝坊したんですか?」
「………夜、眠れなかったからです。」
確かに嘘はついていない。
「なんで眠れなかったんですか?」
「それは、その…」
「上条ちゃん、先生は上条ちゃんのことを心配して聞いてるんです。ちゃんと答えて欲しいんですよ?」
「………」
どう答えろというのだ。
まさか、ありのまま話すわけにもいかない。
(――考えろ、考えるんだ、上条当麻!そうすれば何かいい策が―――そうだ!)
名案を思い付いた上条。
「昨日の夜は、深夜の海外ドラ「御坂ー、上条当麻ー。」マを…?」
誰かに呼ばれたが、その姿が見えない。
今、上条がいるのは玄関だ。
しかし、先ほどの声は部屋の奥から聞こえてきた。
全員が?マークを浮かべていると奥の部屋から土御門舞夏が白い布のようなものを持って出て来た。
「舞夏!お前またベランダから入って来たのか!?」
「な、なんで舞夏がここにいるのよっ!?」
「兄貴の部屋が隣なんだなー。にしてもお二人さん…」
いつになく真剣な表情になる舞夏。
次に落とされた爆弾は最上級の代物だった。
「な、なんで舞夏がここにいるのよっ!?」
「兄貴の部屋が隣なんだなー。にしてもお二人さん…」
いつになく真剣な表情になる舞夏。
次に落とされた爆弾は最上級の代物だった。
「昨日はお楽しみだったなー。声がうるさくて、眠れなかったよ。」
空気が凍った。
(今日が上条さんの命日になるんですね…)
上条は命の危機を感じつつ、それを回避するための行動に出る。
「何を言ってるんでせうか、舞夏さん?紳士上条さんがそんなことするわけないじゃないですか。なぁ、美琴。」
「ぇ、う、うん…。そうよっ!私だっていくら好きな人だからってそんな簡単に、えっと、その、…ゆ、許すわけないじゃないっ!!」
いきなり振られて焦った美琴だったが、なんとか上条の話に合わせることに成功する。
「そうかー、そうだなー。御坂は身持ち固いもんなー。」
舞夏はあっさり納得したように見えた。しかし、爆撃機(まいか)はもうひとつ爆弾を積んでいたようだ。
上条は命の危機を感じつつ、それを回避するための行動に出る。
「何を言ってるんでせうか、舞夏さん?紳士上条さんがそんなことするわけないじゃないですか。なぁ、美琴。」
「ぇ、う、うん…。そうよっ!私だっていくら好きな人だからってそんな簡単に、えっと、その、…ゆ、許すわけないじゃないっ!!」
いきなり振られて焦った美琴だったが、なんとか上条の話に合わせることに成功する。
「そうかー、そうだなー。御坂は身持ち固いもんなー。」
舞夏はあっさり納得したように見えた。しかし、爆撃機(まいか)はもうひとつ爆弾を積んでいたようだ。
「なら、このシーツについてる赤いのは何なんだろうなー?」
「「~~~~っ!!!!!!!」」
「「~~~~っ!!!!!!!」」
紛れも無い物的証拠を見せつけられて、昨日のことを思い出してしまった2人。
顔を真っ赤にして俯いてしまう。
「はっはっは、2人とも初心だなー。楽しませてもらったお礼に、これは染み抜きしてから返すわー、じゃあまたー。」
2つの巨大爆弾を落として爆撃機は嬉々として部屋を出て行った。
顔を真っ赤にして俯いてしまう。
「はっはっは、2人とも初心だなー。楽しませてもらったお礼に、これは染み抜きしてから返すわー、じゃあまたー。」
2つの巨大爆弾を落として爆撃機は嬉々として部屋を出て行った。
「上条ちゃん。」「お姉様。」
「「先生に(わたくしに)詳しく話をしてもらえますか?」」
「「不幸だーーー!!」」
「「先生に(わたくしに)詳しく話をしてもらえますか?」」
「「不幸だーーー!!」」
上条と美琴に取って今日も今日で長い1日になりそうである。