不安と嫉妬
「もう嫌、もう当麻の事信じられないっ!!」
「美琴っ!!」
この部屋の家主である上条当麻と学園都市が誇る第3位の御坂美琴が付き合い始めて早くも3カ月が過ぎた。
クリスマスイブに想いを伝えあい、そのままの勢いで恋人達の階段を最終地点まで駆け上がった2人。
この3カ月の間に、上条は美琴のお陰でぎりぎり進級を果たし2年生になる事が決まり、
美琴は『自分だけの現実』に上条当麻を組み込むことに成功し、漏電することもなくなった。
今では自分から上条に甘える事も、まぁ多少は出来るようになった。(まだ、恥ずかしいみたいではあるが…)
クリスマスイブに想いを伝えあい、そのままの勢いで恋人達の階段を最終地点まで駆け上がった2人。
この3カ月の間に、上条は美琴のお陰でぎりぎり進級を果たし2年生になる事が決まり、
美琴は『自分だけの現実』に上条当麻を組み込むことに成功し、漏電することもなくなった。
今では自分から上条に甘える事も、まぁ多少は出来るようになった。(まだ、恥ずかしいみたいではあるが…)
「おっそいわね~。何してんのかしら…」
暦は3月24日となり、上条の高校も常盤台中学も今日から春休みとなる。
美琴は何日も前からこの日を待ちわびていた。
というのも春休みに入ってから2週間の間、寮監が休暇という名目で寮からいなくなるのだ。
一応、常盤台中学の教師が代理を務めるのだが、今年その役目を任されたのが常盤台中学卒業の教師なのだ。
『窮屈すぎるのは教育上よくない。いくら頭が良くて能力が優秀でも、箱入りのお嬢様で一般常識やコミュニケーション能力がないと社会にでても通用しない』がその教師のモットーだそうだ。
どうやら経験から生まれたもののようである。
そのため、普段なら罰せられるはずの門限破りや、外泊なども多少多めに見てくれる。
もちろん限度はあるが。
生徒にとっては夜遊びをする絶好の機会であり、美琴もそれにあやかって上条の部屋に泊まる予定だった。
美琴は何日も前からこの日を待ちわびていた。
というのも春休みに入ってから2週間の間、寮監が休暇という名目で寮からいなくなるのだ。
一応、常盤台中学の教師が代理を務めるのだが、今年その役目を任されたのが常盤台中学卒業の教師なのだ。
『窮屈すぎるのは教育上よくない。いくら頭が良くて能力が優秀でも、箱入りのお嬢様で一般常識やコミュニケーション能力がないと社会にでても通用しない』がその教師のモットーだそうだ。
どうやら経験から生まれたもののようである。
そのため、普段なら罰せられるはずの門限破りや、外泊なども多少多めに見てくれる。
もちろん限度はあるが。
生徒にとっては夜遊びをする絶好の機会であり、美琴もそれにあやかって上条の部屋に泊まる予定だった。
「美琴。悪い、遅くなった。」
「やぁっと来たわね。…って何でそんなに汗だくなのよ?」
「ちょっと学校でいろいろあってだな…」
「…また、女の子にフラグを建てたとか?」
「うっ…」
「それを土御門さんに見られて、クラスの男の子全員に追いかけ回されたとか?」
「うぅ…」
「それで放課後になって、うっかり今日からの予定をバラしちゃって今度はクラス全員に追いかけ回されて遅れたと…」
「美琴たんは何時からテレパシー能力を使えるようになったんだ!?それともテレポートでどっかから見てたのか!?」
寸分違わず今日の学校で起こったことを言いあてられて、焦る上条。
もっとも、美琴が多重能力者になったわけではなく
もっとも、美琴が多重能力者になったわけではなく
「アンタね、これが何度目だと思ってんのよ。バレンタインもホワイトデーも似たようなもんだったじゃない。あと、『美琴たん』言うな。」
「その話はやめてくれ…。上条さんにとっては忘れたい過去なんです………」
バレンタインでもホワイトデーでも、放課後に美琴とのデートがあったため待ち合わせをしていたのだが、両方ともクラス全員に追いかけ回されて、捕まった後、クラス裁判という名の魔女裁判にかけられた上条。
もう、トラウマになりつつあるあの光景は思い出したくもないのだ。
もう、トラウマになりつつあるあの光景は思い出したくもないのだ。
「とにかく、早くしないとスーパーのタイムセール終わっちゃうわよ。ほら、行きましょ?」
そう言って何のためらいもなく、左手を差し出す美琴。
そうだな、と上条もその手を取り2人でスーパーへと向かう。
しっかりと繋がれた手は、2人が恋人である何よりの証拠だった。
そうだな、と上条もその手を取り2人でスーパーへと向かう。
しっかりと繋がれた手は、2人が恋人である何よりの証拠だった。
「しっかし、間に合ってよかったなぁ。まさか、トイレットペーパーまで買えるとは思ってなかった。」
「と言うか、ちょっと買いすぎちゃったかも?」
ぎりぎりタイムセールに間に合った2人は生活用品と食料を買い込んだ。
両手に買い物袋を持った上条の顔はとても嬉しそうであり、美琴もそんな彼氏の顔を見て頬を緩めている。
両手に買い物袋を持った上条の顔はとても嬉しそうであり、美琴もそんな彼氏の顔を見て頬を緩めている。
「美琴の作る料理は美味しいからちょっとくらい量が多くても問題ないですけどね。」
「ありがと。じゃあ、今日は何が食べたい?」
「上条さんは久しぶりに美琴たん特製ハンバーグが食べたいです!!」
「だから、『たん』言うな。じゃあ、今日はハンバーグに決定っ。」
「よし!楽しみにしてるな。」
「まっかせなさい!」
そう言って上条の腕に抱きつく美琴。
うわっ、と上条は驚いたが別段文句を言うわけでもなくそのまま歩いていく。
うわっ、と上条は驚いたが別段文句を言うわけでもなくそのまま歩いていく。
「今日から泊まっていくのか?」
「そのつもりだけど…、ダメ?」
「いや?確認したかっただけ。」
イブの一件以来、美琴は週1で上条の部屋に泊まっている。
本来であれば冬休みのように毎日泊まっていたいのだが、学校が始まってからはそうも言ってられなくなり、上条と話し合った結果、週1で泊まることになったのだ。
上条もまんざらではなく、美琴と一緒にいる時間が増える、と喜んでいた。
本来であれば冬休みのように毎日泊まっていたいのだが、学校が始まってからはそうも言ってられなくなり、上条と話し合った結果、週1で泊まることになったのだ。
上条もまんざらではなく、美琴と一緒にいる時間が増える、と喜んでいた。
「なら、もうちょっと嬉しそうにしなさいよ。春休みの間ずっと、こんな可愛い彼女が部屋に泊まるんだから。」
「十分嬉しいに決まってんだろ。つーか、美琴さん?さっきから腕に…」
「?」
成長期真っ只中の美琴は、同級生と比べると出るところが出てきていた。
このまま成長すれば母親である美鈴のスタイルにも匹敵するだろう。
このまま成長すれば母親である美鈴のスタイルにも匹敵するだろう。
(無自覚かよ!!言った方が良いのか?いやでも、言ったらもう外では組んで歩いてくれなくなるかもしれないし…)
もうすでに『純情少年』とは名乗れない『中学生に手を出した凄い人』も、身長が伸びている。
そのため、美琴は腕を組んで肩に頭を乗せて歩くことが出来なくなってしまったが、その分、力強さの増した後ろ姿が好きだった。
そのため、美琴は腕を組んで肩に頭を乗せて歩くことが出来なくなってしまったが、その分、力強さの増した後ろ姿が好きだった。
「当麻?」
(なんだかんだ言って俺も腕組んで歩くの好きなんだよなぁ。ただ、理性が…。こう、何て言うかガリガリ削られて行くんだよなぁ、不幸だ…)
こんな事で不幸なんて言っていたらデルタフォースの残り2人を筆頭にクラス全員からタコ殴りにされそうである。
上条は美琴の顔をジッと見つめた後、はぁ。ため息をついた。
上条は美琴の顔をジッと見つめた後、はぁ。ため息をついた。
「何よっ!言いたい事があるならはっきり言いなさいよっ!?」
腕に伝わる柔らかい感触が上条を悩ませる毒であることに気が付いていない美琴。
説明するのも恥ずかしいので、早々にこの場を切り上げたい上条は、とりあえず、さっさと部屋に帰ろうぜ。と言って歩くスピードを速める。
説明するのも恥ずかしいので、早々にこの場を切り上げたい上条は、とりあえず、さっさと部屋に帰ろうぜ。と言って歩くスピードを速める。
「ちょっと、早いってば!ねぇ!!」
美琴はそれに引きずられるようにして、付いていく。
「「ただいま~」」
上条の部屋に着いた2人。
上条はそのまま冷蔵庫に向かい、買ってきた食材を詰めていく。
美琴はリビングに向かい女物の服を手にして、今度は脱衣所に向かう。
上条が冷蔵庫の扉を閉めると同時に、部屋着に着替えた美琴が出てきた。
上条はそのまま冷蔵庫に向かい、買ってきた食材を詰めていく。
美琴はリビングに向かい女物の服を手にして、今度は脱衣所に向かう。
上条が冷蔵庫の扉を閉めると同時に、部屋着に着替えた美琴が出てきた。
すると、入れ替わるように上条がリビングに行き、部屋着を手に脱衣所に向かう。
美琴は手に持っていた自分の制服と上条の制服をハンガーにかけ、エプロンを着用しキッチンに向かう。
冷蔵庫の中からハンバーグに必要な材料を取り出していく。
脱衣所の扉が開き、部屋着に着替えた上条が出てくる。
そのままリビングに向かい、鞄から勉強道具を取り出して机に向かう。
美琴は手に持っていた自分の制服と上条の制服をハンガーにかけ、エプロンを着用しキッチンに向かう。
冷蔵庫の中からハンバーグに必要な材料を取り出していく。
脱衣所の扉が開き、部屋着に着替えた上条が出てくる。
そのままリビングに向かい、鞄から勉強道具を取り出して机に向かう。
阿吽の呼吸で動いている2人には自覚はないが、他の人から見ればお前らもう結婚しろよと言いたくなるような連携っぷりである。
「美琴、ここってどういう意味だ?」
「どこ?」
「ここ。」
「これは、前にもやったことあるわよ。前のノート見て、それでも解らなかったらもう一回声かけて。」
「うぃ~。」
実はこの春休み、上条には補習がない。
というのも、というか今の連携を見たら分かると思うが、美琴は上条の勉強スタイルと生活習慣の改善をしてきた。
上条本人の努力もあり、成績も下の下に近かったところから一気に中の中まで伸びた。
まぁ、そのお陰でカンニング疑惑が持ち上がり、その誤解が解ければ美琴とのことを詮索され、クラス裁判。と中々に不幸なことは起こっている。
というのも、というか今の連携を見たら分かると思うが、美琴は上条の勉強スタイルと生活習慣の改善をしてきた。
上条本人の努力もあり、成績も下の下に近かったところから一気に中の中まで伸びた。
まぁ、そのお陰でカンニング疑惑が持ち上がり、その誤解が解ければ美琴とのことを詮索され、クラス裁判。と中々に不幸なことは起こっている。
「おっ、出来た!よし次、次っと…」
リビングから聞こえる愛しい彼氏の声を聞きつつ、美琴は料理を作っていく。
「よ~し、今日の分は終わりっと。美琴、何か手伝う事あるか?」
「こっちももうすぐ出来るから、お皿出してテーブル拭いてくれる?」
「サー、イエス、サー」
「なにそれ。もうっ。」
そう言いつつも美琴も上条も笑顔である。
「出来たわよ。」
「待ってました。ほほぅ、今日はまた一段と手が込んでますなぁ。」
上条の前に出されたのはハートの形をしたハンバーグとポテトサラダ、ミネストローネ風のスープ。
「今日からしばらくは泊まるんだし、最初くらいわね。」
「もう食べていいよな、いいですか、いいですよね、いっただきま~す。」
「あっ!もうっ、しょうがないわね。」
子供のような上条の行動。本来であれば、マナーが悪いと怒るべきなのであるが幸せそうにハンバーグを頬張る上条を見て、まぁいいか。と思いとどまる。
(こういうのを幸せっていうのかな…?)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ふぃ~、食った食った。御馳走様、美琴。」
おなかいっぱいになるまで美琴の料理を堪能した上条はゴロンと横になる。
「お粗末様。行儀悪いわよ、当麻。」
悪い悪い、と言いつつ立ち上がり、2人分の食器を持ってキッチンに向かい洗い物を始める。
美琴はテーブルを拭いた後、テレビを点けて面白そうな番組を探す。
美琴はテーブルを拭いた後、テレビを点けて面白そうな番組を探す。
ちょっと面白そうな話題を取り上げていたバラエティ番組を暇つぶしに見ていると、上条が戻ってきた。
「ねぇ、当麻。ちょっと気になってたんだけど…」
「どうした?」
「当麻って腕組むの嫌いなの?」
ずっと気になっていたのだ。
普段から腕を組んで歩くことは多いのだが、その度に特に最近になって上条がそわそわしているのだ。
周りを見たりする回数も増えるので、もしかしたら見られたくないのかな?と美琴は思っていた。
普段から腕を組んで歩くことは多いのだが、その度に特に最近になって上条がそわそわしているのだ。
周りを見たりする回数も増えるので、もしかしたら見られたくないのかな?と美琴は思っていた。
「嫌いじゃないけど…」
「けど、何よ?」
「………」
ジーーーーー
美琴は上条の目を見ようとするが、上条はまったくこっちを見ない。
更に身体を乗り出していく美琴、それに対して上条も少しずつ距離を取る。
更に身体を乗り出していく美琴、それに対して上条も少しずつ距離を取る。
『ヴーーー、ヴーーー』
そんな時、テーブルの上にあった上条の携帯が鳴った。
上条は携帯のディスプレイを確認した後、そのまま元の位置に戻した。
その行動を見て、スッと美琴の目が細められる。
上条は携帯のディスプレイを確認した後、そのまま元の位置に戻した。
その行動を見て、スッと美琴の目が細められる。
「…出ないの?」
「土御門からだし、後でかけ直すからいいよ。」
「いいわよ、気を遣わなくて。出たらいいじゃない。」
「いいって。今は美琴との時間の方が大事なんだ。」
上条にしてみれば正直な気持ちを言っている。
まぁ、その心配はないのだが…
まぁ、その心配はないのだが…
「嘘ね。」
「何が嘘なんだ?」
「土御門さんじゃないでしょ?」
「っ、何で嘘つかないといけないんだよ?」
(どこで見抜かれたんだ?)
(どこで見抜かれたんだ?)
そう。電話の相手は土御門ではない。
「じゃあ、何で出なかったのよ。前のデートのときは普通に出てたじゃない。」
出来れば、美琴の前では出たくはないところからの電話ではある。
「それは、上条さんにも事情がありましてですね………」
「何よ事情って?…まさか、他の女の人!?そうなのね!!?」
「そんな訳ないだろっ!俺が好きなのは美琴だけだっ!!」
間違っても他の女の子ではない。
ばれても全然問題はないのだが、せっかく前から計画していたのだから計画通りに進めたいのだ。
ばれても全然問題はないのだが、せっかく前から計画していたのだから計画通りに進めたいのだ。
が…
「嘘、信じられないっ。当麻はいつも嘘ばっかりだもんっ!」
「それは…」
心当たりは多々ある上条。
だから何も言い返すことが出来ない。
だから何も言い返すことが出来ない。
「…何も教えてくれないのね、もういい。」
「美琴?」
美琴が俯いてしまい、上条からは表情が見えなくなってしまう。
どうしたものかと考えている上条だったが。
どうしたものかと考えている上条だったが。
「別れる…」
「!?」
美琴の言葉に驚く上条。
顔をあげた美琴はボロボロ泣いていた。
顔をあげた美琴はボロボロ泣いていた。
「もう嫌、もう当麻の事信じられないっ!!」
制服も持たずに部屋を飛び出す美琴。
「美琴っ!!」
上条も部屋から飛び出して美琴を追いかけたが、ついに見つけられなかった。