とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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年末に



(12月31日・上条当麻の部屋)

「今年も色々あったな~」

と、コタツに入りくつろぎながらしみじみと思い、思わず口に出した。
これまで全くモテていなかった自分に彼女が出来たのだ、感慨深いものがある。
そして、今その彼女は年越しのために蕎麦を作ってくれている、料理上手でしっかり者の良い彼女だ。
彼女の後ろ姿を見ていたら急に近くにいきたくなり、コタツから出て後ろにそっと回り抱きしめる。

「コラ、そろそろ出来るから大人しく待ってなさい」
「ん、ゴメン。でもなんか急に抱きしめたくなったんだ。」
「………仕方ないわね」

彼女はコンロの火を消し、体の向きを変え正面から抱き合った。

「あなたって本当に甘えん坊ね」
「…………上条さんも初めて知った。ちなみに甘えるのはお前にだけだぜ?」
「知ってるわよ。ってか他の女の子にこんなことしたら許さないから。」
「しないよ、俺がモテないの知ってるだろ?」
「………どうだが」

彼女は上条から離れるとまたコンロに火をかけながら蕎麦を作り始めた。
蕎麦なんてものの数分で作れる。しかし少し離れただけで不安になりつい近くにいってしまう。
今は邪魔にならないように少し後ろをウロウロしているだけだ

「出来たわよー。」

彼女は蕎麦を二つコタツのほうに持っていった。
時刻は12月31日の23時55分だ。時間も完璧だ。

「俺は今幸せだよ。」
「当麻どうしたの?急にそんなこと言い始めて」
「お前がこうして隣にいることが幸せだなってしみじみ思ったんだよ。」
「当麻……」
「制理……」

(制理……?)

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「って、なんでアイツは私の夢の中で他の女とイチャついてんのよ!!!!!!!!!!」
「PIPI……ガシャ!」

そうここは常盤台の学生寮である。朝のアラームとほぼ同時に目覚めた御坂美琴は怒鳴りながら目覚ましを止めた。
隣のベットでは白井黒子が眠たげにこっちを見ている。

「朝からどうなさったのですか?お姉さま。」
「あ、黒子。ゴメンね。起こしちゃった?」
「いえ、ちょうど良い時間なので別に構いませんが……急に怒鳴ったり、何かあったんですか?」
「ちょっと嫌な夢見ちゃっただけよ、気にしないで」

御坂はそう言いつつ、目を覚ますためシャワー室に向かった。

「ったくアイツは!人の夢の中でまでほかの女にちょっかい出してるんじゃないわよ!」

ブツブツ言いながら温かいお湯を頭から浴びる。
好きな人の夢を見たのだから普通ならテンションがあがるのかもしれないがあんな夢ではまるで無理だ。
この間リサーチをしたところアイツにはまだ特定の人はいないらしいけど、いつアイツに彼女が出来るかわからない。

「どうにかして一緒に年越したいなー。あいつ大晦日用事あるのかしら?」
「おし!とりあえずこのあと自販機のところに行こ!」


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「不幸だ……」

そう呟いた本人、上条当麻は携帯電話を片手にうなだれている。
土御門、青ピの2人が
「カミやんだけ女の子と過ごすのは悔しい」
という理由でクリスマスも年越しも3人で過ごすはずだった。
しかし青ピと土御門に急に年越しは無理と言われた。
なんでも、青ピはインフルエンザにかかり、土御門は舞夏が帰ってくるから一緒に過ごすとか言いはじめたのだ。
元々デルタフォースで過ごすはずだったから、インデックスは姫神と先生と一緒に新春食い倒れツアーとかに行っているし、クラスのやつらももう予定が入っているだろう
どうやら‘始めて’の年越しは1人で過ごすことになりそうだ

「蕎麦とか買いに行こう。ついでに正月は暇になりそうだからビデオでも借りてくるか……」


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「「あ」」
「見つけたわ!!ちょっと待ちなさい!」
「人違いですよー。ボクは当条上麻(とうじょうかみま)ですよー。」
「アンタね!あんまり適当な事言うとまたビリビリするわよ。」
「……おー御坂、久しぶりだな元気か?じゃあまたな~」
「ちょっと待ちなさいって言ってるでしょ!!」
「わー!ゴメン嘘嘘!冗談!だからビリビリすんな!」

放電をし始めた御坂に対して上条は必死になだめた。
それでもまだ少し不機嫌そうにビリビリ音が聞こえているが、そこは無視しよう。

「で、なんの用だ?」
「えーと、あの、その……特別用事って訳じゃないんだけど……ゴニョゴニョ」

出来れば自分の好きな人と一緒に年を越したくて、とりあえず予定を聞きにきたんだがいきなりは恥ずかしくて聞けず、ついゴニョゴニョと口ごもってしまう。
上条のほうはそんな御坂の様子を不思議に思いつつ

「用事がないなら買い物に行っても良いか?」
「あ、待って!」
「どうした?やっぱりなんか用でもあったか?」
「えーあの、その……私もついて行っていい?」
「……は?まぁ別に良いけど普通にスーパーとかだぞ?」
「良いんだったらゴチャゴチャ言わずにさっさと行くわよ!」

御坂はそう言い先にズンズン進んでいく。
今自分の顔が緊張と照れから真っ赤になっていて、喜びからニヤけている事を知られないためだ。

「なんだあいつは?」


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「そういえばアンタは何を買いにきたの?」
「ん?数日分の食料と蕎麦だ。」
「蕎麦…?もしかして年越しの?」

御坂の脳裏には今朝見た夢、そう髪の長い女性と年越し蕎麦を食べている幸せそうな顔が出てきた
もしも今恋人と食べる蕎麦を買うのに付いて来てしまったんなら御坂にとってこれ以上の皮肉はない。

「そうだよ。一人寂しく紅白でも見ながら蕎麦作って年越すの。」
(じゃあこいつ今夜フリーじゃん!)
「へー、そうなんだ。寂しい大晦日ね~」
上条は自虐気味に苦笑いで言ってるのに対して御坂は笑顔で機嫌がよさそうだ。
「じゃあそう言う、御坂はどうなんだよ?お前もどうせ一人でK-1でも見てるんだろ!」
「なんでK-1なのよ!!私は別に普通よ……」
「普通って何だよ?」
「もう良いから買い物終わったなら次行くわよ!」

元々チラシを見て安売りされているものを中心に買うつもりだったから買い物は上条の予想より早く終わった。
だから次と言われても特別買うものなどなかった。
しかし、しばらく一人ぼっちか~と考えていた上条にとって御坂と過ごす時間は騒がしくもあったが非常に楽しかった。
だからこんなに早く終わってしまっては残念と思い、

「御坂、良かったらこの後昼飯でも一緒に食わないか?買い物付き合ってくれたしファミレスくらいなら奢るぞ」
「ふぇ?」

御坂にとってその言葉は予想外であった。
一瞬、自分が何を言われたのかわからなかった。いや、むしろ本当に自分に言ったのかどうかも怪しいと思った。
しかし、同時に強く思ったこれは夢かもしれない。まさかアイツから誘ってくれる日が来るなんて
上条にとってはささいな事かもしれない。しかし御坂にとっては嬉しくてしょうがないのであった。

「なんだ?用事でもあるのか?だったら無理にと「行く!」」
「全然暇!行く!」

一生懸命に真っ赤になりながらそう言った。
今にも噛み付きそうな勢いだったので上条はその勢いに押されていた。


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「いらっしゃいませー。お客様、何名様ですか?」
「二人で」
「ではお席の方ご案内いたします。」

ウェイトレスさんについて行き席に着く。
四人掛けの席なんだが、二人で隣りあわせで座る、なんてこともなく普通に向かい合う形で座る。

「御坂はこの店によく来るのか?」
「あ、うん。その友達なんかと…」
「常盤台の生徒がぞろぞろとこんな普通のファミレスに入ってくるのか……?」
「あ、違うの。その柵川中学の友達と黒子と4人で」
「あーなるほど。まぁ白井とお前以外の普通の常盤台のお嬢様はファミレスには来ませんよねー」
「まぁね。私と黒子以外ってのがちょっとひっかかるけど……」

誘ってもらったときは嬉しさだけだったが、実際にファミレスについたら不安と緊張からか上手く話せない。
そんな御坂に気づいてか上条は答えやすいように「YES/NO」の2択で答えられる質問をしていた。
そのおかげで御坂も緊張が薄れてきて、いつもどおりになっていった。

「でも、正直すごい意外だわ」
「ん?何がだ?」
「アンタが私を誘うことがよ」
「誘うたってただの昼飯だぜ?」
「それでもよ……」
御坂は食後に頼んだ紅茶を飲みつつ言った
「アンタっていつも私のことスルーするじゃない。」
「そんなつもりないんだけどな~」
「アンタになくてもこっちはいつも無視されているように感じるのよ。」
「そんなこと……」
「私無視されるたびに、あー嫌われてるのかな?とか不安に思ったりするのよ。」
「俺は正直に言うとお前といると楽しいよ。電撃さえ止めてくれればな」

上条はコーヒーを飲みつつ苦笑いで冗談を挟みつつ本心で言った。照れているのかどうかはわからないが御坂のほうは見ずにコーヒ-に目線を落とし言いきったのだ。
御坂はその言葉を聞き驚き、喜びながらも一つのことを決心した。

「ねぇ、アンタ……」
「どうした?」
「一緒に年越さない?」

御坂にとってこの一言はとんでもなく勇気がいる言葉だった。
現に今彼女は耳まで真っ赤にしてうつむいてしまっている。そんな彼女の様子に驚きながらも

「良いぜ、どうせなら寺に鐘つきに行こうぜ」



鐘つきに行った寺がちょうどジャッジメントの警備対象で黒子と初春がいたり、土御門兄弟がいたり、友だちと鐘つきに来てた佐天や同じ理由でいた吹寄に会ってしまったのはまた別のお話


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