とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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二人の 2



「その、アンタがさ・・・、マフラーとかしてないし、さ」
と言うと、美琴は包みを開け始めた。
上条はなんだ?、と思っていたがその中に入っていたものが分かった。
マフラーだ、しかもとても綺麗な。
毛がほつれている所はなく、軽く値段でいうと一万円は越すのではないか?と
上条は思う。どこのブランド品だ、と不思議に思っているところ、
「これ、アンタにあげる・・・」
「ふむふむ・・・ってなんだってぇ!?」
まさかのプレゼントに上条は心臓が止まりそうになるかと思った。
つい先ほど女の子から編み物がもらえたらなー、なんて
叶うはずなかろう幻想が今ここで実現したのだ。
「い、いいのかお前?こんな高そうなの・・・」
「ア、アンタにあげるって言ってるの!・・・あとそれ手編み、だから・・・」
耳まで顔を赤くする少女。
しかし愕然としている上条にそんな彼女の異変に気づけるはずもなかった。
手編み、しかも『オンナノコ』からの『テアミ』なのだ。
それを空白の時間を用いてカタカナを変換したところ、
「ぶぅっ!!ってお前いいのか!?こんな、その、なんだ。こんな俺に」
自分の意識とは関係なく吹いてしまった。
それほどこの純情少年には大きな出来事であった。
「アンタだからあげたの!その、アンタの為を思って、さ」
と、美琴は顔を真っ赤にしながらも話し続ける。
これからが本番、と美琴は自分に言い聞かせ、
「別にお礼とか、気遣いとか、そんなのじゃないの。ただ純粋に喜んでもらいたくて、
アンタが、その・・・、首に巻いてくれてる所を想ったら嬉しくなって・・・」
「御坂・・・」
愕然としている上条は、『大好評驚き中です』とでも言うような
表情で美琴を見ていた。
「別にそんな驚かなくても!、・・・い、いいじゃなぃ・・・」
途中まで大声だった美琴も、後半から聞き取れないような声へと変わってしまった。
その理由はつまり、自分を見ていた上条と目があってしまった為。
あまりの心の居心地良さ、恥ずかしさにどうしようもなくなってしまったのだ。
(そ、そんなに見ないでよ!!)
と、美琴は上条を目覚めさせるかのように叫ぼうとしたが、
今の自分はパーソナルリアリティでさえ危ない状態なので、
「そ、そんなに見つめないで・・・」
小声で、こんな事を言ってしまった。
そんな声を聞いた上条は、ちょっといつもとは違う御坂に戸惑っている。
(な、なんであんな事言っちゃったの私!?普通に大声だすつもりだったのに!
けど、なんで、こんなに心が居心地よくなっちゃってるの・・・)
そんなふわふわしている美琴を調子が悪いと思ったのか、上条が
美琴の額に手を当てた。
突然の不意打ちに、美琴は跳ね上がる。
「にょわっ!?」
「熱はないみたいだけど・・・、お前大丈夫か?」
「だ、大丈夫よーッ!」
早く手を放させないと意識が飛んでしまう為腕をぶんぶんと振り回し
上条をあるい程度離させた。
「まぁ、なんだ御坂、ありがとな」
「ふぇっ!?・・う、ウン」
突然お礼を言われた事に胸の高まりが抑えられない。
ドキ、ドキ、と高まる鼓動を抑えようと胸に手をギューッ、とあてるが
それは効果がなかった。
そんな格闘中の御坂に、上条は話すのを続ける。
「今ここで巻いていいか?」
「ど、どうぞ・・・」
そう言うと上条は嬉しそうに首にまき、とまではいいのだがどうも
巻いたことがないのか少し雑だ。
そんな上条を見ると美琴は何か思いつくと、
「私が巻いてあげるわよ」
「お、おお。さんきゅ」
そう言うと美琴は彼へと接近し、首元へ手をかけた。
上条にとってはマフラーをかけてもらう、というだけなのだが
彼女にとっては、彼にやりたい憧れランキングトップ10に入ることだったので
現在大絶賛幸せ状態だ。
彼女にマフラーを整えてもらいお礼を言うと、そのマフラーに目を移し、
「このマフラーなんだけどさ、御坂」
そう言って今もらったマフラーを手で指さす。
「な、なに?」
「俺こんなものと相当の物は返せないし、だからといって何もしない
訳にはいかないからさ。今日お前と一日付き合う、って事でいいか?何でも言うこと
聞くって追加で。悪い、こんなことしかできなくて」
別にお礼をもとめた訳ではなかったのだが、素直に嬉しい。
おまけに、何でも言うことを聞くと言うのは自分のわがままを
聞いてもらえるということだ。
(何でも・・・何でもよね・・・)
彼にしてもらいたいことなら夢にまでみている。
洋服を選んでもらうこと。
ゲコ太のグッズをおそろいで買うこと。
行きたかった映画を一緒に見ること。
(やば・・・止まんない・・・っ)
自分の行きつけのケーキ屋に連れて行きいわゆるあーんをすること。
自分の手が冷たいと言えば手を握ってくれること。
自分がいいと言うまで背中から抱きしめてもらうこと。
自分が求めたらその唇に──
(─って待て待て!途中からなんて事考えてんのよ!)
ブンブン!、と首を思いっきり横に振りその思考を飛ばす。
そしてまた髪が乱れたことに気付き慌ててセットをした。寮内でもこんなことがあった
気がするのは気のせいか。
そんな美琴をよそに、上条は答えが返ってこない事に困っていた。
「なぁ御坂、なんか俺に出来ることが──」
「なっ、別に手を握ってほしいとか思ってないわよー!!」
はっ!!、と美琴は自分で何を叫んでいたと振り返る。
自分は何かまずいことを言ってしまったか、と色々思考を張り巡らせる。
「お前そんな手冷たかったのかよ、ほれ」
「ふにゃっ!?」
パシッ、と左手が彼の右手によって覆われた。
今までたくさんの人を助けてきた、右手。
それは暖かく、たくましく、優しく、そんな右手だった。
しかし彼と手を握る、それだけで美琴はパニック状態になる。
「にゃ、なんで手を握ってんのよ!」
「ん?駄目だったか?」
「だ、駄目じゃないわよ・・・むしろ、その・・・」
「ほれいくぞ」
グイッ、と手を引っ張られ彼女は彼へとついていった。
手を握っている。
この時間が永遠に続けばいいのに、そう思っている自分がいた。
(手、手を握ってるんだからこれくらいいいわよね・・・、何でも言うこと聞くんだし)
そう思うと美琴はすぐさま彼への腕へと抱きついた。
少し控え目なせいか離れるかくっつくかのラインであるため彼は
気付いていない。
この彼との感触を脳内に1秒でしっかり保管すると、さらにその
状況を自分の体全体に刻む。
自然にギュッ、と力を強めていた、そんな美琴に上条は気付くと、
「な、なんだ御坂?そんなお前寒かったのかよ?」
「そうよ!わ、悪い!?」
「いや悪くはないというか幸・・何でもない」
それにしても、彼女の柔らかな二つの感触が当たっていることは
意識しないでおこう、と上条は格闘していた。
「それにしてもアンタ、これからどこいくつもりなのよ」
「えっ!?あぁ、そ、そうだな~」
「・・・手をひっぱっておきながら・・・」
ボソ、と美琴はいったのだが上条には大きく心に響いた。
グサァッ!!とアックアもビックリする程の槍が心に刺さっている。
このままでは何かあれだ。

──いいぜ、俺が女の子の前でかっこつけられないっていうのなら・・・

「御坂、ちょっとここで待っててくれ」
「え?どこいくのよ?」
「トイレ」
「デリカシーがないわね・・・」
じゃ!、と上条は言うとそこにあったトイレまで走って行った。
そして彼女の見えないところまで行くと、電話に手を駆ける。
その連絡先は、天草式の五和だ。
彼女ならいいスポットや、お洒落な店を知っているはずだ。
上条は何かを強く思うと、発信、というボタンに力強く指を押した。

──まずは、誰でもいいから頼らせてもらうぜ!

女の子の事で女の子に頼る、変な所で決まらない上条であった。


そんなこんなで、今上条は五和と通話中である。
「あー・・・もしもし五和か?」
『はははは、はっはいぃ!!天草式十字正教所属の五和です!』
なんだ、彼女はなんでこんな張り切っているのかが不思議だ。
それよりも、電話の向こう側から『いけーっ!!五和!!言うのよ!!』
『いくんだ五和!!』『はっ・・・、電話越しだと彼女の武器が関係ないのでは・・・』
『ハッ!?しまったーッ!!ノーッ!!』『仕事しなさいよアンタら・・・』と言う声が聞こえてくる。
一体何だろうか、ちょっと気になるが分からない。
「えっとさ五和、学園都市のいいレストランとか知っているか?(今御坂と)一緒に
行きたいんだけど」
『え、えぇぇっ!?!?レ、レストランですか!?』
ぎゃあっ!?、と電話越しに五和が叫ぶのが聞こえる。
一方こちらの音声がスピーカー仕様になっており、周りの天草式の
連中に全部聞こえているのは上条本人は知る由もない。
『五和!これはいくしかないのよ!!』『確かアルコールの強いお酒がある店が!』
『これは千載一遇のチャンス、いくしかありませんな』『我ら天草十字正教、全力を
持って五和を応援します!』『アンタら仕事そっちのけってどうなの・・』と言う声が
聞こえてきた。
彼らはさっきから一体なんなんだろうか、不思議に思う上条だった。
「あー、それで五和、レストランとかなんだけどさ・・・」
五和から聞く限り、どうやら『Saizerua』というお店がいいらしい。
もっとも、五和は上条といく前提でプランを練っていた為に、デート向けで
彼女彼氏と来るのに相応しい店であるのだが。
それを上条は知るはずもないので、今は五和サンクス状態だ。
「じゃあな、ありがとう五和!」
『あ!あの!その、来週の日曜でいいでしょうか?』
何を言われたか分からないが、日曜は補習の確立が少なく大体暇なので、
「へ?まぁ日曜なら」
『ありがとうございます、では、ま、また日曜に!!』
という五和の元気な声と共に通話が切れた。
切る途中『えんだああああああ!!』と聞こえたのはなんだ。
もちろん自分自身の発言から、五和とデートを約束しているなんて
気付くはずがない。
そして上条は携帯をポッケにいれると、今待っているであろう美琴の下へと
向かおう。あまり女の子を待たせるのも駄目だ。
(・・・っとそうだ)
途中自販機を見つけると、彼は小銭を漁り120程を取りだす。
そしてカフェオレを二つ買うと、それを両手に持ち走り出した。


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