とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part02

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去年、年末まであと数日という頃、美琴はロシアの内陸で打ち止めや10777号、番外固体と共にホテルの一室で休んでいた。
彼を見失った海沿いからその近辺の集落を転々としながら携帯の写真を使い聞き込みを掛けてみたものの、
戦争の直後でドタバタしていたという事もあり芳しい成果は得られず途方に暮れていた、
その時とある村の医者から「重症の患者は医療機材が整った内陸の市街に搬送された」と聞いた。
美琴は「もしかしたらアイツも搬送されたのかも」と思い妹達と市街に向かい町中の病院などを捜索したが、
それでも彼の足取りは一向につかめず、美琴のデビットカードでこのホテルに宿泊してもう8日目になる夕方だった。

「もうこの町の医療機関は全て見終わったわね。
今までで一番大きい町だったから結構時間が掛かったけど、
明日チェックアウトしてここを出ましょう。
次はどっちにいこうかしら?」
美琴は机に置いてある地図にマーカーでチェックマークをつけると地図とマーカーをバッグに仕舞った。

「あ~あ 今回もハズレかぁ ミサカ、足パンパン。これだけやって見付からないんだから、
もう無理じゃない?早く風呂に入りたい」
番外固体がベッドに座り足を摩りながら愚痴る。
「その台詞は今週既に15回ほど聞きました、
お風呂には賛成ですが、とミサカは番外固体のヘタレ具合に呆れます」
露ミサカは向かいにあるもう一つのベッドに正座で座りながら、
番外固体を「ム~」唸りながら睨み付ける。
「ほらほら、喧嘩しないの。そろそろ夕飯食べにいくわよ」
「んふ、パンパンなのは彼のアレだけで十分ってかんじかしらぁん?」
「な・・・ななな、なんて事言ってんのよ!この変態!!」
美琴は顔を真っ赤にしながら番外固体に怒鳴る。
「おうおう言うねぇ☆ オリジナルはツンデレ、第二世代は純情、学園都市の奴らも良く考えたもんってイタッ!」
パコンと番外固体の脳天に後ろに居た打ち止めからチョップが放たれる。
「そう言うこと言わないの!あなたが今ここに居て大好きなお風呂に入れるのも
あの人のおかげなんだからってミサカはミサカはちょっと怒ってみた・・・・り・・・・・・」
急に打ち止めが静かになったと思うと、続いて露ミサカ、番外固体も黙り込んだ。
「どうしたの?また情報が入ったの?」
急に静かになったので美琴はミサカネットワークから新しい情報が入ったのではないかと確認する。
妹達はネットワークを使って情報交換する際、決まって無言になる事は随分前から知っていた。
「上位固体・・・・」
露ミサカは打ち止めに向かって話しかける。
「うん」 
打ち止めも露ミサカに頷いた。
「う~ん・・・・・」
番外固体は顎に手を当てて考え込んでいた。
「なになに?!新しい情報?」
美琴はこのタイミングで来た新しい情報に期待した。
「はい。学園都市に居るミサカ13577号から。
ハッキングで新しい情報を見つけたようです、とミサカは報告します」
露ミサカは淡々と答えた。
「学園都市から?もしかしてアイツが学園都市に居たとか!?」
「いえ。残念ながらそう言う物ではありません」
ガクっと美琴は肩を落とした。
「でも少し不可解ですね、とミサカは意見を述べます」
「不可解?どんな情報なの?」
「はい。これはどうやら学園都市にある兵器開発機関のメンテナンスレポートのようです。
お姉様、学園都市が戦後ロシアとある条約を結んだ事は知っていますか?」
「ああ、あれね。確か研究のため以外に兵器を生産、所持しないって条約よね。
本当にそうしているのかは疑問だけど」
「そうです。学園都市は研究に必要最低限の兵器しか所持しないとロシアと条約を交わし。
実際、戦闘機や戦車、起動鎧など数台を残して残りのストックを全て破棄しています。
まあ、残った兵器それだけでも十分世界を相手に戦えるので学園都市側には特に問題は無いのです。
しかしある種類の兵器だけ書類上は破棄されているのにもかかわらず、メンテナンスされた記録が存在しているのです。
おかしいとは思いませんか?存在しないはずの兵器のメンテナンスが行われているなんて。」
「その兵器って?」
美琴は息を呑む。
「潜水艦です」
露ミサカは答えた。
「潜水艦?」
「はい。どうやら学園都市は戦後も潜水艦によりロシア沿岸の海域で偵察を行っていたようです。
その潜水艦のオートナビゲーションに記録されていたルートは、
東京湾沿岸からシベリアを回り丁度あの巨大飛行物体が墜落した付近で3日ほど滞在した後、Uターンして戻ってきています。
一回の捜索に6機出動し3日毎に潜水艦をローテーションしていたようです。
当然メンテナンスも3日に一度行われているのですが、戦後から約2週間後、最後に2回行われたメンテナンスは
わずか10時間程度しか空いていません。そしてそれ以降潜水艦での偵察は行われていないようです」
「なるほど、つまり偵察と言うよりは捜索ね。そして戦後2週間で目的である何かを見つけた・・・」
それは彼では?と美琴は最初に思ったがそれを否定した。学園都市が見つけた何かが彼であると確信するのは何が何でも嫌だった。
人間は2週間も水中では生きられない。それは最悪の事態を確信してしまうのと同じだったからだ。
どうやら露ミサカと打ち止めも同じ考えに行き着いたらしく、3人揃って暗い顔で押し黙ってしまった。
「・・・・う~ん・・・・」と番外固体だけはそのまま考え込んでいた。
「ま、まあこの情報とアイツの関係性は低そうね。ほら、何か食べよう!
飢え死にしたら元も子もないでしょ!ファミレスみたいな所でいいかしら?」
美琴は少し声を大きくして言う。自分でもただの強がりだとは解っていた。
「かまいません、とミサカは答えます」
「いいよ~!安物バンザイ☆」
「やった~!じゃあわたしはハンバーグ!
早く行こうってミサカはミサカはお姉様を急かしてみたり!」
……みんな、ありがとう……
美琴は彼女達も不安なのに自分の強がりに合わせてくれているのをわかっていた。

彼女たちはホテルを出て近くにあった世界の何処でもあるファミレスに入った。
美琴と露ミサカはパスタ、番外固体はステーキ、打ち止めはハンバーグを注文し、
全員の食事が来ると最早習慣になった「いただきます」を言って食べ始める。
「うわぁ!ここのハンバーグって今まで食べた中で一番美味しいかも!ってミサカはミサカは絶賛してみたり!」
「大袈裟ねぇ。こんなの冷凍食品だから何処で食べても一緒じゃない」
美琴は笑いながら打ち止めに言う。
「お姉様もあの人と同じ事を言うのねってミサカはミサカはちょっと昔を思い出してみたり」
「お姉様、間違っていますよ、とミサカは口を挟みます」
「え?なにが?」
「この食材は冷凍食品ではありません。
この地域は年間気温が3℃以上にはならない上、今の時期は外食する人も少ないので外部から加工された食材を仕入れるより
この周辺で取れる食材を使ったほうがコストを削減できるのです。なので上位固体が言っている事もあながち間違っては居ません。
私達が食べているこのパスタも無添加で鮮度の良い食材を使っているので味も良い筈ですが、気付きませんでしたか?
とミサカは少し意地悪になって質問します。」
「うっ・・・・」
ヤバイ!打ち止めに知ったかぶりをしてしまった上に、私がファミレスと高級料理店の味の違いも解らない人だと思われた。
美琴は姉としての尊厳の危機を感じ無理やり話題を変えた。
「そういえば、あの人って一方通行の事でしょ?へぇ、アイツもアンタをファミレスに連れてってあげるなんて以外だわ」
まるで今までの会話が無かったかのように打ち止めに話しかける。「ププッ」と露ミサカの方から聞こえたが無視する。
「そんな事無いよ~ あの人はちょっと恥ずかしがりやなだけで本当は凄く優しいんだよってミサカはミサカは彼の株を上げてみる。
あの人は私達を守るって言ってくれたんだよ。ね!」
打ち止めは番外固体に話を振るが反応がない。
美琴も番外固体の方を見ると彼女はステーキをほったらかし、まだ顎に手を当てブツブツと考え込んでいた。
「ねえ。あの子が何考えてるかわかる?」
美琴は打ち止めに聞いてみる。
番外固体は妹達の中でも一人で考える事が多く、こうなると周りの声が聞こえなくなるのだ。
「う~ん この人考えてる時邪魔されるのが嫌いだから後で聞いてみるってミサかはミサカはもう頭の中で怒鳴られるのは嫌だからほうっておく」
そう、と美琴は答えて番外固体が何をブツブツ言っているのか聞き耳を立ててみた。
「……潜水艦……捜索……海中……Uターン……3日……10時間……2週間……最悪…
…気候……冷凍食品?……新鮮?………あっ!!そうか!わかった!ヨッシャー!!☆」
急に番外固体が叫んだので美琴、打ち止め、露ミサカは飛び上がった。
幸い他に客は居なかったので周りの迷惑にはならなかったが
あまりの大声に3人はそのまま何も言わずに番外固体のほうを見る。
「どうしました?ついにイカれましたか?」
露ミサカが短い沈黙を破る。
「やっぱりミサカは天才?☆ いま情報を送るわ」
番外固体は勝ち誇ったようにそう言うと黙り込む。
そして5秒もしない内に打ち止めと露ミサカが同時に「あ!」と声を漏らす。
「え!?なになに!?どうしたの!?」
訳がわからず美琴は妹達に聞いてた。
「お姉様、やっぱり間違っていますよ、とミサカは答えます」
露ミサカが答える。驚く事に微笑んでいた。
「なにが!?」
美琴はさっきの会話を思い出し少しイライラしながらも聞く。
「実は前にロシア空軍に所属していた女性パイロットと話をしたことがあるのですが、
学園都市の戦闘機パイロットは脳以外の肉体を低温で仮死状態にして高負荷のGが掛かる操縦に耐えられる様にしていたそうです」
「それがどうしたのよ?」
「海水、この国の気候、潜水艦による捜索、最悪の事態、そして学園都市の技術、とミサカはお姉様にキーワードを教えます」
「へ?う~ん・・・」
美琴は露ミサカから聞いた一つ一つのキーワードの知識を引っ張り出す、そして・・・・・・・・繋がった。
海水、つまり塩水は真水と比べると氷点が低い。そしてあのストラップを拾った時には既に海は凍っていた。
つまりあの時海水は既にマイナス0℃以下になっていた。そして美琴が否定したかった最悪の事態。
もしあの時彼は救出されていなかったら?低温の水の中に沈んでいたとしたら?
---もし2週間以上細胞の破壊を免れ、新鮮なまま保存されていたとしたら?---
さらに学園都市には仮死状態を作り出す技術がある。つまりその逆の技術が有ってもおかしくない。
「ま、まさか!」
「はい。おそらく、確証はできませんが、今現在最も真実に近い情報です」
「アイツは・・・学園都市にいる・・・・・・・・・・・・・・・・ウッ・・・・ウエッ・・・ヒック・・ウワアアアァァァァァ」
涙が止まらなかった。止めようとも思わなかった。
ガタッと打ち止めが勢い良く椅子から立ち上がった。カランカランとフォークとナイフが床に落ちたが気にしない。
そのまま美琴に駆け寄り胸の辺りに抱きついた。目には涙が滲んでいた。
「よかったね。よかったね、お姉様ってミサカはミサカは心から喜んでみたり」
「うん。ヒック うん! よかった。ウッ よかったよおおぉぉぉ」
美琴も打ち止めを力いっぱい抱きしめた。すると番外固体も立ち上がり美琴の頭の上に手を置いてクシャクシャと頭を撫でた。
「ふふ~ん☆この天才に感謝する事ね」
番外固体は笑いながら美琴に話しかけた。
しかしその笑顔は今までの表情を曲げる様な物ではなく、まるで心の底から幸せを表しているかの様な素直な笑顔だった。
「うん・・・うん!」
「では次はどっちに行くか決まりましたか?とミサカは問いかけます」
そして露ミサカは微笑みながら美琴の肩に手を乗せた。
グシュっと美琴は鼻を啜ると、手の甲で涙を拭き顔を上げて笑った。
「うん・・・・・みんな、ありがとう」
美琴は心の中で彼の言葉を思い出した。
アンタの言う通りね。私はこの子達を誇りに思う。
それにありがとう。アンタがあの時立ち塞がらなかったら、この子達を知る事も無かったろうから。
「みんな、明日は学園都市に帰るわよ!」
美琴はもう迷わなかった。ポケットから2ヶ月ほど前に拾ったストラップを取り出すとそれを握り締めた。
ストラップは相変わらず冷たかったが、そのせいで自分の手が冷たくなる様な感じはしなかった。


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