とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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とあるカップルの浮気疑惑



最近当麻の様子がおかしい。
あれは絶対私に何か隠し事をしているはずだ。
「アンタ何か私に隠し事してるでしょ?」
と尋ねても、
「この上条さんが可愛い可愛い美琴たんに隠し事なんてするわけありませんのよー」
などと言ってはぐらかされてしまう。
アイツには前科がありすぎるのよ。記憶喪失とか居候シスターとか。
ここ数日など、毎日居残り授業があるとかでほとんど会えてないし、デートにも行けていない。
再来週の日曜日は私の誕生日で、それはアイツも知ってるはずなのに、デートの誘いがくる気配など微塵もない。
それどころか、
「次の土日も、その次の3連休も補講だぜ?不幸だ…」
なんて言ってたから、希望はもうほとんどないだろう。

「ホントにもう…なんなのよアイツ…。とはいえ私から言い出す、ってのもなんか癪よね…」

誕生日は再来週、まだ14日もある。
遠出はしなくてもいいからせめて放課後デートくらいはしたいな、などと考えつつ、悶々としながら今日も消灯時間を迎える。




最近黒子の様子がおかしい。
あれは絶対私に何か隠し事をしているはずだ。
黒子が私に隠して”パソコン部品”を購入するのはもう日常茶飯事なので、隠し事に関してはあまり気にしていなかったが、それより気になることがある。
ここ数日、毎日門限ギリギリで帰ってくるし、消灯時間を過ぎても布団の中でずっと携帯電話を弄っているのだ。
相手は誰だろう。初春さん?佐天さん?それとも私の知らない人?
メールを読みながら時折嬉しそうな顔になったりニヤリと笑ったりしているから、風紀委員関連の連絡ではないはず。
気になりすぎて、今朝ついに
「黒子、アンタ最近夜中にずっとメールしてるけど誰とメールしてんの?あ、もしかしてカ・レ・シ?」
と、冗談めかして聞いてみたら、
「うふふ…それはお姉さまのご判断にお任せしますの」
などと、笑顔で返されてしまった。しかも肯定とも否定とも取れない曖昧な返事を。
まさか…あんなに私に付きまとってたあの子に彼氏…?ありえないわよね…?
あの子の周りの男性…当麻?いや、アイツが浮気するなんてありえないし…
常盤台は女子校だから違うだろうし…あとは…風紀委員の誰かかしら…?
そんなことを考えていると、また黒子の携帯に着信が入る。
その音を背後に聞きながら、私はその日も眠りについた。



――次の日曜――

「と、いうことなのよね。佐天さんは何か知らない?」
「んー…私は何も知らないですねー」
「そっか…」

ひとりで悩んでいても仕方ないので、いつものファミレスでお茶にしながら佐天さんに探りを入れてみる。
ホントは初春さんにも聞きたかったんだけど…黒子も朝から風紀委員の詰所に行くと言ってたし、初春さんも風紀委員の用事があるのだろう、今日は来ていない。

「土御門経由でお義兄さんにも聞いてもらったから、居残り授業と補講の裏は取れてるのよね…」
「それより白井さんのほうが問題じゃないですか?今は門限内で帰ってきてるみたいだからいいですけど、門限破ったり無断外泊までいっちゃったら…」
「そ、そうよね。今夜帰ってきたら黒子にきつく言っておかないと…ん?」

突然私たちの席の前で人影が立ち止まる。
店員かな?と思ってそちらに目をやると、そこにいたのは

「御坂さん、佐天さん、お待たせしましたー」
「お、初春。待ってたよー」
「え?初春…さん?」

初春さんだった。
あれ?今日は今日はてっきり風紀委員の用事で来ないと思ってたのに。

「どうしたんですか御坂さん?そんな驚いた顔して…あ、もしかして私に聞かれちゃ困るようなこと話してたんですか?」
「い、いや、そんなことないけど…風紀委員のほうは結構早く終わったのね」
「え?確かに詰所には寄ってきましたけど、忘れ物取りに行っただけで私は今日非番ですよ?」
「もー御坂さんったらー。『初春は遅れてくる』って、ちゃんとここに来た時に言ったじゃないですかー」

…記憶にない。単に聞き逃してしまったのだろう。
あれ?とすると…黒子は?

「ごめんごめん、ちょっと聞き逃してたみたい。ところで初春さん、黒子は?」
「?白井さんも今日は非番ですけど…いないんですか?」
「朝から”風紀委員の用事”で出掛けてるわよ。…ってことはあの子今日も”誰かさん”と一緒にいるってことかしらね…」

電話して黒子を直接問い詰めてみよう、と思って携帯電話を取り出した、その瞬間。

ヴヴヴヴヴヴヴヴヴ……

「ちゃ、着信?しかも土御門から…?何の用かしら…」  ピッ
『おー、みさかかー?』
「当たり前でしょ。私の携帯なんだから私以外に出る人いないわよ。で、どうしたの?」
『それもそうだなー。ところで上条当麻の耳寄りな情報が入ったん……』
「つつつつつ土御門!当麻がどうしたの!?何があったの!?何を知ってるの!?早く!早く言いなさい!」
『落ち着けみさかー。その様子だと知らないみたいだなー?落ち着いてちゃんと聞けよー』

と、そこで土御門は一度言葉を切り、

『今日は上条当麻の補講はないらしいぞー。兄貴情報だから間違いないぞー」

衝撃の事実を口にした。

「そ、それってアンタのお義兄さんだけ補講なくなったんじゃないの?だって今朝当麻がメールで『今日も朝から晩まで補講だ楽しいなー…不幸だー!』って言ってたわよ?」
『それはおかしいぞみさかー。だって今日の補講の中止が決まったのは昨日の帰り際らしいからなー」
「え…?じゃあアイツは補講がないことをわかっていながら、私に『今日も補講だ』ってメールを…?」

電話の向こうで土御門がまだ何か喋っていたが、無言で通話を切る。
向かいの席で初春さんと佐天さんが私に何かを話しかけてきているみたいだが、その声は私の耳には届かない。

ノロノロとした動きで当麻に電話を掛ける。1コール、2コール、3コール…出ない。
続けて黒子にも電話を掛けるが、やはり出ない。

頭の中が思考でいっぱいになる。

最近様子がおかしかった当麻と黒子。
補講がないのに『ある』と嘘をついた当麻。
非番なのに『風紀委員の用事』だと言って出掛けた黒子。
電話に出ない二人。


それってもしかして――――


その解答に行きついた瞬間、さっきまでいっぱいだった頭の中が真っ白になる。

信じていたのに。最愛の恋人と可愛い後輩、二人とも信じていたのに。

「ごめん、私もう行かなきゃ。初春さん来たばっかりだけどごめんね?また今度お茶しようね…」
「ちょ、ちょっと!?御坂さん!?」
「ごめん、ホントごめん。今度奢るから、今日は払っといて…」

そのままフラフラとファミレスを後にする。
後ろからあわてて二人が追っかけてくるが、気にする余裕はない。

寮に帰るわけでもなく、店に入るわけでもなく、あてもなくフラフラと歩いてゆく。
気が付くと、いつも当麻の待ち合わせに使う、自販機のある公園の前にいた。
仕方なく、自販機に八つ当たりでもして寮に帰ろう、黒子は夜にでも締め上げようと、そう考えながら自販機に近づき、私はその後ろ姿をを見つけた。

それは、何十回、何百回と追い駆け回した黒いツンツン頭の男。
そしてその横で彼と腕を組んで歩くのは、よく見慣れたツインテールの少女。


「あ…あ…」

頭に血が上っていくのがわかる。全身がバチバチと音を立てて帯電していく。
そして、

「アンタら何やってんだコラアアアァァァーーー!!!!」

怒声と共にフルパワーで電撃を目の前の二人の背中に向けて飛ばす。
だが、最早条件反射のように振り向いた男が右手で私のフルパワーをかき消す。
と、同時に少女もこちらを振り返り、驚いたような顔をしている。

「げ!やべぇっ!意外と早く追い着かれた!どうする白井!」
「ど、どうするも何も、逃げ切らなければわたくし達の命がありませんの!」
「そりゃそうだ!とりあえず俺が美琴を足止めするから、白井は先に俺の部屋行って準備してろ!」
「確かに上条さんを連れては空間移動できませんものね!わかりましたわ、先にお部屋に行ってお待ちしておりますの!ではご武運を!」

そう言って、少女―黒子は空間移動でその場から離脱した。

「へぇ…アンタと黒子がそんなに仲良かったなんて気付かなかったわよ?」
「あぁ、まぁなんだ、色々あったんだよ」
「そう。それで”準備”って何?お昼には遅いし晩御飯にはまだ早いわよね?あ、そっか。門限破ったり無断外泊とかしちゃうと黒子が怒られるものね。真昼間からそんなことするなんてお盛んなのね。流石男子高校生!」
「い、いや!そういう準備じゃねぇよ!」
「じゃあどういう準備よ!なんで私に言えないの!?私は!アンタの彼女じゃなかったの!?」
「みっ、美琴は俺の可愛い彼女sだよ!でもな、悪い!今ここでは言えねぇんだ!」
「”今ここでは”?じゃあいつどこでなら言えるのよ!…って、あ、コラ逃げるな!待ちなさいよおおおっ!!」

逃げる当麻の背中に向けて、追い駆けながら連続して電撃を放つ。
その電撃を後ろ手でかき消しながら当麻は逃げ続ける。

フルパワーで電撃を放ち過ぎた。スタミナ切れで、少しずつ当麻との差が開いていく。
気が付けば、彼を見失っていたが、彼の寮の前まで辿り着いていた。


「ハァ…ハァ…アイツ…『俺の部屋行って準備してろ』って言ってたわよね…ってことは少なくともアイツの部屋に黒子はいる、ってことかしら…」

つぶやきながら彼の部屋の前まで行く。
大きく深呼吸。一度、二度、三度。よし、少し落ち着いた。
ドアノブを回す。鍵が開いている…?
そしてドアを大きく開け放つと同時に



パン!パン!パン!
「きゃっ!何!?」

破裂音、火薬の匂い。思考が一瞬にして止まる。
そして、次に聞こえてきた声で、さらに私の頭の中は疑問符で埋め尽くされる。



「「「御坂美琴ちゃん、ちょっと早いけど誕生日おめでとう!」」」



「へ?は?何?これ…どういうこと…?」

部屋の中でクラッカーを手に立っていたのは、当麻と黒子、そして…土御門?

「ったく…ちょっとやりすぎだったんじゃねぇのか?本気で死ぬかと思ったぞ…」
「ですが、お姉さまの足止めなんて上条さん以外にできる人がいるわけないですの。」
「いやー見事に引っかかったなみさかー。仕掛け人のひとりとして私は結構嬉しいぞー」

え?引っかかった…?仕掛け人…?

「予想以上にうまくいきましたね!」
「ホント、見事に引っかかってくれましたね御坂さんっ!発案者兼シナリオライターとしては喜ばしい限りですよ!」

後ろから初春さんと佐天さんが満面の笑みで話しかけてきた。
あぁ、なるほど、来週は私の誕生日だもんね。誕生会ね。なんか早いけど。
って

「あ・た・し・を・騙したのかぁー!!!」

さっきまでとは違う種類の怒りが爆発する。

「おおおおお落ち着け美琴!電化製品がやばいから!」
「大体一週間ずれてるし!なんで間違えてんのよ!」
「いや、これで合ってるんだよ。『ちょっと早いけど』って言ったろ?」
「わけわかんないわよ!ちゃんと説明しなさい!言い訳くらいは聞いてあげるから!」
「はいはいわかったわかった。説明するからとりあえず入れ、な?お前がそこをどかないと初春さんと佐天さんが入れないから。」
「あ、うん…」

納得いかないが、とりあえず靴を脱いで奥に入る、と。
そこには”御坂美琴ちゃんお誕生日おめでとう”と書かれたチョコプレートの乗ったケーキを初めとする料理の数々。

「わかってると思うが、料理担当は私だぞー」
「そりゃ土御門が一枚噛んでるなら料理担当はアンタでしょうけど…いいから早く説明しなさいってば」
「まぁいいから食えよ。食いながらでも話はできるだろ?ほい皿と箸な。」
「あ、ありがと…」
「全員飲み物回りましたねー?じゃあ改めまして、ちょっと早いけど御坂さんお誕生日おめでとう!カンパーイ!」
「「「「おめでとー!」」」」
「それではそろそろ御坂さんが爆発する前に、ネタばらししますか?」
「その前に私は退散させてもらうぞー。みさかの誕生日を祝いたいのはやまやまだけどなー。このあとちょっと用があるんだー。申し訳ないが誕生日プレゼントは料理だと思ってくれー。じゃーなー」
「おう、口裏合わせに料理の準備までしてくれてサンキューな舞夏」

と、舞夏はさっさと帰って行った。

「さて。じゃあネタばらしだな。まず事の初めは一か月前にだな…」



要約するとこういうことだ。

美琴の誕生日を一か月前にして、上条がサプライズパーティーを開こうと思いついた。
が、上条がひとりで美琴の誕生日当日に自室に美琴を呼んでも、すぐにばれてしまう、と考えた。
ひとりで悩んでも、何もいい案が出ない上条は、美琴と仲の良い初春・佐天に協力を仰ぐことに。
すると佐天が、「じゃあ長期計画でドッキリ仕掛けましょうよ!」と言い出し、その場である程度のシナリオを即興で考えた。
最初にできたシナリオは、「上条が浮気。浮気現場を目撃した美琴が上条を追い駆け回し、上条の部屋に押しかけたらそこで誕生会の準備がされてました」というもの。
上条の浮気相手役としては、様子の変化を美琴に気付かせやすい黒子が抜擢された。
当初は嫌がっていた黒子も、美琴にドッキリを仕掛けられると聞いて渋々承知。
黒子が連日門限ギリギリだったのは、ウィンドウショッピングなどで時間を潰していたから。


だが、私を一番驚かせたのは、

「実は居残り勉強はおろか、今週も来週も補講なんか入ってねぇんだよ」

これだった。

「どうせ美琴が舞夏経由で土御門に探りを入れるだろうと思ってたから、早めに土御門兄妹を仲間に引き込んだんだよ」
「ちなみに御坂さんが舞夏さんに連絡を取らなかった場合のプランは『上条さんと補講を受けているはずの土御門さんに街中で出会って、補講が無いという事実を知る』だったんですよ」
「あとですね、今日の一連の出来事は全部仕込みですよ?白井さんはもちろんのこと、初春も詰所になんか行ってません」
「佐天さんのカバンの中に、通信状態のトランシーバーを仕込んでおいたんです。御坂さんと佐天さんの会話を聞きながら、頃合いを見計らってファミレスに入ったんですよ」
「舞夏さんからの電話は、私が舞夏さんにメール送った直後に御坂さんに電話をかけるてはずになってて」
「お姉さま達がファミレスに出た後の動向は逐一メールで初春からわたくしに連絡が来てたんですのよ」
「で、美琴の動きを見つつ、『俺と白井のデート現場を目撃』できて『俺の寮から余り遠くない』ポイントに俺らが移動して、うまい具合に美琴を釣って」
「あとは御坂さんが上条さんを追い駆けてこの部屋に来るのを待つだけでした」
「ちなみにわたくしが毎晩メールしていた相手は上条さんですのよ?」

「はぁ…なんかドッと疲れた…怒る気力もないわよもう…」

それに、言い出しっぺが当麻だというのはちょっと、いやかなり嬉しかった。
こんな騒動になってしまったとはいえ、私のことを考えてくれていたのだ。嬉しくないはずがない。

「さ、ネタばらしも終わりましたし、次は誕生日プレゼントですの。ではまずわたくしから…お姉さまにこれを。」

と、黒子が手のひら大の小包を私に手渡してきた。

「黒子、一応聞くけどこれ下着じゃないわよね?」
「まぁお姉さまったら。そんなの決まってるじゃありませんの」
「下着ね?下着なのね!?」

カバンに下着(と思われる)小包を仕舞う。
まぁ…いつかは役に立つ時が…来るかしら。

「まぁまぁ御坂さん落ち着いて。私からはこれです」
「きゃー!初春さんそれってもしかして最近出たゲーセン限定のゲコ太ぬいぐるみ!?嬉しい!欲しかったのよこれ!」
「喜んでもらえてなによりです!」
「お姉さま…わたくしのプレゼントを受け取った時と反応が違いすぎませんか…?」
「じゃあ次は私からですね!」

と、言いながら佐天さんが私に封筒を差し出してきた。

「実はですね、"コレ"を御坂さんに使って貰いたかったからこそ、誕生日会が一週間早まったんですよ!」

とりあえず開けてみてください、と言われて素直に封筒の中身を取り出す。
三つ折りの紙が一枚と、細長い紙が二枚出てくる。

「チケット…?」
「そうです!二泊三日の温泉旅行のペアチケットですよ!ホラ、来週は三連休だから丁度いいじゃないですか?」
「こ、こんなのどうやって…?」
「懸賞で当たったんですよ。ペアチケットだから初春と一緒に行こうかと思ったんですけど、せっかくですし御坂さん達に楽しんでもらえたらなぁと思いまして。御坂さんにはいつもお世話になってますしねー」

嬉しい。ここまで私のことを想ってくれる友人がいることが嬉しい。
だから、

「ホントはC賞の最新音楽プレイヤーが欲しかったんだけどねー。なんで特賞当たっちゃうかなぁ」

なんて言葉は聞かなかったことにしてあげよう。


「これで、誕生日会が早まった理由はわかったけど…あれ?肝心の当麻はプレゼントくれないの?」
「あ、あぁ…俺はな…正直今週と来週の休みに補講が入らないようにここ一か月は猛勉強してたから…用意してないんだよ。」
「えっ…?」
「だからさ…」

と、当麻が私の耳に口を近づけ、


「来週、な。だから今は…これで勘弁してくれ」

と、言い終わるか終わらないかの瞬間、触れるだけのキス。

ボン、と顔が真っ赤になって行くのが自分でもわかる。
幸い当麻の右手が私の手を握っているので、漏電はしなかったものの、恥ずかしくて顔を上げることができない。

(え?え?来週ってことは旅行中にってことよね?これはもしかして…もしかするかも…!?あ、そうだ!さっき貰った黒子のプレゼントがさっそく役に立つ…?)

「おーい美琴ー、帰ってこーい…って、顔真っ赤じゃねーか。大丈夫か?」
「だ、大丈夫よ大丈夫。」
「そっか、それならいいんだが」
「!!お姉さま!そろそろ門限が!」
「え?あ、も、もうこんな時間!?」
「あ、私達もそろそろ時間ヤバいわよ初春?」
「そうですね…でも片付けが…」
「あーいいよいいよ、片付けは俺がやっとくから。ほらほら門限あるんだから早く帰った帰った」


お邪魔しましたー と、当麻の部屋を後にする。

「それにしても…黒子、アンタいつの間に当麻と仲良くなったのよ?」
「それは一か月ほど前…いえ、本当はもっと前から上条さんのことは許してましたの」
「へ?どういうことよ?」
「お姉さまが選んだお相手ですし、二人が正式にお付き合いを始める前から上条さんのことは存じておりましたし。私自身、上条さんに助けていただいたこともありますしね…」
「………」
「あのお姉さまと同じまっすぐな瞳…あんな瞳で見つめられたら、お姉さまでなくとも世の女性はイチコロですの」

ま、わたくしはお姉さま一筋ですの、とつぶやく黒子の横顔を見つめる。

「ありがとね、黒子」
「礼には及びませんの。でもお姉さまが是非と言うならそうですね…わたくしのプレゼントの感想を聞かせてくださいですの」

笑いながら寮の208号室に戻り、手早くシャワーを済ませてベッドに潜り込む。
初春さんに貰った人形を枕元に置き、携帯をチェックしてみると当麻からメールが入っていた。

『今日は驚かせてごめんな。でも正直面白かったぜ?それにしても来週が楽しみだな。それまでにプレゼントは考えておくから期待して待ってていいぞ。じゃあまた明日の放課後、いつもの場所でな。おやすみ美琴。』

うん、すごく驚いたけど、すごく楽しい誕生日会だった。色々ありがとう。来週を楽しみにしてるわよ。じゃあまた明日ね。おやすみ当麻。

メールに返信をして目を瞑る。
来週が楽しみすぎて眠気が全くやってこない。
あ、外泊申請出さなきゃなぁ…などと考えているうちにいつの間にか私は眠っていた。


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